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小説 #11 ソルは冗長性のパラメータをいじる。

小さな巻き毛の女の子が、わっかを棒で転がしながら走り回っている。

ああ、明るい場所だな~。天国のようだ。

ありきたりだ・・・。すっごい人工的だ。つうか、僕が自分で今つくってる映像って感じ満載だ。VRっていうの?僕の考える天国観てのが、こんなもんってことか。ありきたり。がっかりだ。もうちょっと盛りたい。盛りたいっていうか、意外性がほしい。自分で自分を驚かすってのは、実に難しいね。

つうか、このありきたり感、ものすごくなじみがある。僕の人生のすべてにおいて、このありきたり感(観?)で無理やり押し通してきたことに今突然気づいて、驚愕・・・。なんつうか、すべてにおいて、反応が手垢にまみれてる(つう言い方そのものがクリシェ)。mastery of アリキタリ。そんな称号を与えよう。自分に。

このありきたり感(観?)(←めんどくさいからアリキタリでいく)、あまりにも自動的に出てくる。すっかり血肉化されている。

ん?アリキタリの正体がわかった気がする。

そこに本当にあるのは、自動的な反応アルゴリズムだ。なんかそういうプログラムというか、システマチックな回路っぽいものの存在を感じる。思いのほか、物理的。

周りの人たち?あぁ、誰もこの巻き毛の天使系女の子には気づいていない。というか、見えてない。他の人たちと僕との間には、もんのすごい深淵しんえんが口を開けてるのだ。

いや、単に、他の人はのほほーんと何も考えてなさそうで、平和そうで、くつろいでいる。そっちのほうが楽しそうだ。

ふと気づくと僕は別の場所へ移動していた。・・・暗い廊下が奥へ伸びている。

こうでなくっちゃ、待ってましたって気分。ダナ・タートの小説ぽくしてみたいのだ。あぁ、そう。そういう欲望があるわけだ、僕に。今わかったとか言うのも、しらじらしいけど。見えたものをそのまま書けって村上春樹とか、坂口恭平とか、会田誠が言うから、見えたものを書く。そう言い訳しておく。別に悪いやり方ではない。ぜんぜん。

どこかヨーロッパのいくつかの言語が混じった音が聞こえる。音はしゅるしゅると渦を巻いている。小さな台風のようにして廊下を行ったり来たりしている。騒がしい。

死者のいる部屋は匂いに満ちている。人びとが歩き回る靴音。木の床に光があたり、無数の傷が陰影とともに浮かび上がる。

ペールグリーンの壁、開いた窓。
あっ、もう飛び出した!

そうだ、僕の視点は元気な鳥たちを追って外へ飛び出した。
鳥たちからすれば、街は足元にある。
眼下に見える市街地。
丸天井の寺院、大きな百貨店、路面電車。

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