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マーティン・フリーマンのような獣を登場させた小説。

僕は今、ご飯を炊いている。
換気扇の音がうるさい。

坂口恭平の文章はおもしろい。
現実とは別の「リアル」を勝手に創る。すきなだけ、いくつも創る。
それ以上に楽しいことはないって気がする。

坂口恭平は、~部といって、好きなことを部活化していたが、僕は部活動にいい思い出がないので、~の会とか、そんなのにしよう。
もしくは、~課とか。ダサいか・・・・・・。

とりあえず作ってみたいのは「朝4時に起きて書く」会だ。
朝4時に起きて、村上春樹のように書く会。
村上春樹のように朝4時に起きて書く会。これにしよう。

ところで先だって書き終えた小説に出てくる津田という男。
津田は何者だったのかというと、ヒロインのフェイをユロージヴァヤたらしめる者だ。

ユロージヴァヤというのは、ざっくりした言い方で言うと、ロシアの巫女だ。男性の巫者はユロージヴイと呼ばれる。

フェイはたんに巫女ということではなく、もっと昏いドロリとしたものを抱えているように思えたので、ユロージヴァヤという衒学げんがく的な言葉を使ってみた。

で、フェイはいつもどこか心ここにあらず、虚ろな感じを漂わせているのだが、神託を告げる相手がいるときだけは、職業人となる。束の間、しゃんとなるようなのだ。だから、フェイに神託をせがむ津田は、フェイにとって貴重な人物なのだ。

小説の中で、フェイはフェイ・ヒューという名前だ。日本人だとは、わざわざ書かなかったが、たぶん日本人。ところが、この女性を小説の中でたびたびフェイと呼ぶうちに、フェイはどんどん日本人のようではなくなってきた。上背があって、髪の色が薄い。ぼんやりとだが、スラブ人のイメージだ。

ところで、この小説には緑色のモンスターが出てくる。緑色の毛がふさふさした、基本、サルのような存在なのだが、顔はマーティン・フリーマンで、黒いセルロイドの眼鏡をかけていることになっている。マーティン・フリーマンて、知的なけものの役が似合いそうだと思いませんか?

で、このモンスターのサリー君は、小説の中で次第に獣らしさが消えて、普通の人間の登場人物のように変化していくんです。佐藤くんだったり、中田くんであってもいいような。

僕はそのことを少し寂しく思っています。モンスターのサリーが人間社会に馴化じゅんかしてしまった。

この次、サリーを登場させることがあったら、彼の異端さを損なうことなく、思う存分、無茶をさせてあげたい。


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