見出し画像

【マンガ業界Newsまとめ】本当に色々あった2021年のマンガ業界Newsまとめ|1/9-034

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジン、、、なのですが、1月の第1週は年末年始以上にビジネス系ニュースが少なく、今回は2021年振り返り号にさせていただきます。

―――

2021年のマンガ業界も好調に推移、多くのビジネス的な動きあり

2020年に3000億円を超え好調だった電子コミック市場の流れを受け、2021年のコミック市場・マンガ業界は上半期時点の総括でも好調で、成長率を考えると電子コミックだけでも通年で4000億円を突破しそうな動きでした。

これを受けてか、マンガを取り巻くビジネスニュースが今年は相当に増えました。それを捉え、本まとめも2021年下半期初日の7/1から開始しました。

実際、マンガ業界全体に大きな動きがあり、必然Newsも増えたわけですが、その変化については文末で総括しています。


Webtoonに業界外からも大きな投資、ピッコマ600億円、快看260億円、アカツキ進出等

5月、マンガ業界に衝撃が走りました。ピッコマ社600億円調達、企業価値(≒時価総額)8000億円超と。数字が大きすぎて、ちょっと現実味が無かったのですが、9月にはスマートニュースが、2021年の国内スタートアップでは最大級の資金調達を行いましたが、その2倍超の調達額となります。

それほど間を置かず、今度は中国のマンガアプリ快看が、約260億円(2.4億ドル)の資金調達を行っています。同社は2017年、2019年と大型調達を行っており、その3回の合計は5億ドル超、合計するとピッコマに並ぶ規模です。

国内勢でも、ゲーム「ドッカンバトル」などで好調な売上・利益を推移しているアカツキ社が、内部留保を投資する形で、Webtoonに特化したプラットフォーム「Hykecomic」を22年春にスタートすることを発表しました。

これらの動きを受けてというわけではないですが、調査会社から、2026年には、世界のWebtoon市場の規模(日本含む)が約1.8兆円、つまり現在の日本国内の漫画市場全体の規模の約3倍ほどになるという試算結果が発表されました。

ピッコマ社の金社長も各所のインタビューなどで、「漫画が好きな人」を狙わないということで、市場を既存の漫画市場より大きくとらえていることを示しています。

今年各所で話題となったWebtoonは、これまでなかなかマネタイズの難しかった海外のマンガ市場に対して、新しい市場を作っていくことが期待され、そのことに着目したマーケットが、マンガ業界外から多額の資金を集めている状況となったというわけです。

そして2021年は、大手出版社、電子書籍プラットフォーム、アニメ制作会社や業界内外のスタートアップ企業が、軒並みWebtoonの制作着手を発表した年でもありました。先述のアカツキ社のリリースの中でも、アーチ社のトゥーンワークスなど、新たなWebtoon制作に進出する企業の動きが話題になりました。


業界の新しい動き「NFT」

2021年はマンガ業界に限らず、猫も杓子もNFT的に多くのNFTの話題がふりまかれました。

その中で、電子書籍取次最大手のメディアドゥは、日本円決済(通常は暗号通貨のほうが多い)かつ、紙の出版社を多く取り込む手堅い形で、NFTマーケットプレイスFanTopを開始、開始2時間で「『北斗の拳』漢の死に様シリーズ 南斗六聖拳ボックス」(税込4910円)が売り切れるなど、話題になりました。

また、大手出版社でも、講談社ヤングマガジンが、ライフネット生命を創業した岩瀬大輔氏が率いるNFTプラットフォーム「Kollektion」でプロジェクトを介するということで話題になりました。


好調な電子コミック市場の陰で、マンガアプリは転換点に

好調な電子コミックの立役者で合ったマンガアプリですが、既存の大手プラットフォーマーの他、大手から中小出版までマンガアプリ立上一巡した結果、唯一のユーザー獲得手法であるWeb広告費が高騰し、毎月億単位の予算を投下できる強者だけが生き残る、超レッドオーシャンになりました。

そんな中、すでに1週間に100万人が訪れているというヤンマガWebや、KADOKAWA-ComicWalkerの中における、アパンダ(旧メディアファクトリー系)、レグルス(旧電撃コミック系)など、新しいWebレーベルが立ち上がっています。Webについては、丁寧に運用すれば広告に頼らずとも読者を獲得できるということで、脱アプリの取り組みが増えてきています。


大ヒット後も緩まない、少年ジャンプ+の挑戦

2020年に『鬼滅の刃』の社会的大ヒットにより、2021年決算も絶好調で話題になった集英社ですが、そのアプリ・Webサービスであるジャンプ+は全く緩まず、次々と様々な手を打ちました。

ジャンプのグローバル展開を担うWebサービス「ManagaPlus」は、継続して展開言語を増やし、今年は、フランス語、ロシア語など、対応言語をさらに増やしていきました。

話題になったのは、誰でもネームが簡単に作れる「WorldMaker」です。マンガ作りの中でも要になるネームづくりを、スマホで簡単に出来てしまう仕組みは、更なるジャンプ志望作家を生みそうです。

現在のジャンプ+は、単に週刊少年ジャンプをサブスクで売るだけの存在に留まりません。

まず連載陣は『SPY&FAMILY』『ダンダダン』『怪獣8号』など、アニメ化で話題になったり、このマンガ賞を取るなどする強力な作品が連載中です。この3作は最新話が更新されると、その都度100万PVを超えると言います。

「あのマンガ」とSNSで呼ばれた『腐女子除霊師オサム』や、ルックバック現象とまで言われ、読切なのにすぐに単行本化、このマンガが凄いのオトコ編1位をもぎとった『ルックバック』など、強烈な読切によって、ネットバズをきっちり作って受け止めるなど、アプリやWebの運用と「ジャンプ漫画」の特徴がしっかり馴染んできたように感じられました。

連載の強さ、読切の位置づけの新しさ、など、これはもう新しいマンガ雑誌の形を、現在の環境を前提と捉えなおし、再構築することを成しえたと言えるのではないでしょうか。

また、門外不出の編集者・編集術をエンタメとしてさらけ出す、MLLIONTAGや、ジャンプ漫画学校2期など、これまでタブーとされてきた部分にも、トップレーベルであるジャンプが率先してスクラップ&ビルドしていく様子は、盟主として圧巻でした。


メタバースと漫画表現、VR/XR方面

これもバズワードとなったメタバースですが、マンガ業界には大きく2つの切り口で入ってきており、その一つが先述のNFTなどビジネス・流通面、もう一つが作品表現の手法です。

中でもVR/XR方面については、メディアドゥ社が運営する「コミなびVR」LINEマンガが運営する「スフィアトゥーン」など、マンガの読書体験そのものを変えていく新しい取り組みも行われました。

この2つについては、以下の記事が詳しいです。


DMMブックス、セールをやり過ぎて60億円の損害

個人的に好きなニュースだったのがこちらで、セールをしたら効果が出過ぎてしまって大きく予算オーバーしてしまったというもの。現場の責任者もこの細山田さんのみならず、辞表を覚悟して亀山会長に報告したそうですが、今でも元気に働いてます。なんというかDMMらしくて好きなお話です。


コミケは1/4の規模で冬に再開!

2019年冬の開催以来、開催数にして3回、期間にして2年間開催を自粛してきたコミケが、ついに2021年冬に再開されました。めでたかったですね。社会の変化に大きく影響を受けた形ですが、コロナ後の新しい掲載形態を上手くつくっていっていただきたいなと思っています。

そうした状況を横目に、ComicVketは第2回(実質3回か)が開催されまして年々規模感や内容を充実させていっています。こちらはメタバースですね。


赤松健さん、「表現の自由を守るため」自民党参院選から出馬へ

漫画家で、日本漫画家協会の理事でもある赤松健さんが、来夏に自民党参院選から出馬します。「表現の自由を守るため」という目的です。

もともと表現系の活動などをするための協会理事就任だったと思うのですが、その文脈からこうしたことになりました。あらゆる方向からの罵詈雑言にさらされ、損な役回りとしか言いようのない現在日本の議員というお仕事を、目的に対する最大効果の為に引き受けてくださるという覚悟と理解しています。業界関係者としては応援するしかいないですね。

------

ここからは、個人的Newsです。

セルシス社マンナビ:漫画家編集者のデジタル制作実態調査

こちらは、2017年にマンナビというサイトを私が立ち上げた際に、セルシス社さんと一緒に行った一度調査を、4年を経て2021年に再度調査したものになります。

この4年間でマンガや漫画家・編集者を取り巻く環境は大きく変わりました。その実態を捉えるもので、調査結果には多くの人がSNSなどで言及しました。ちなみに、Webサービスである「マンナビ」はセルシス社が現在運営しています。


現代のトキワソウとマツコ会議

わたしの古巣トキワ荘プロジェクトが、東京都日野市に35人の新人漫画家が共同生活できる多摩トキワソウを運営しています。立ち上がるなりすぐに満室となり、既にデビュー漫画家も輩出しているそうです。

12月にはマツコ会議でも紹介され、ユニークな新人漫画家たちとマツコさんのやり取りがSNSをにぎわしました。年の瀬に良い番組を見ることが出来ました。


―――編集後記かつ2021年の振り返り
1月頭は全然Newsがなかったので、去年のNewsまとめをまとめてみました。
ここ10年、こうして業界にNewsに関心を持ちながら眺めてきましたが、明らかに2021年はニュースの量が増えていたと感じます。

というか、Webtoonの話題が増えたのが、そのまま乗っかったと言ってよいくらい、取組量がそこに新しく生まれたというか追加された感じですね。そりゃみんな忙しくなります。

ただ、一番インパクトのあった変化は、非上場企業がトップを寡占していた漫画業界は、大型投資が外から生まれにくかったところに、電子書籍でかなり外から入っていた文脈から、Webtoonでさらに巨大な投資が入ってくるようになったというのが、マクロ的に言えるというところだと思うんですよね。

これで、6000億の漫画市場とは別の切り口で、グローバルに3倍規模のWebtoon市場が生まれるというわけです。(その中に日本のWebtoon市場も内包するわけですが)アニメも似たように見えますが、これはマンガ業界とは近いようで、同じリソースを使う地続きではありませんでした。

Webtoonは、完全にマンガ業界と地続きで、かつ金、人、企業、情報など、今までと全く違うところからの流入を生み出します。2021年は、完全にここのパラダイムが変わったんだと思うんですよね。

というわけで、今回は2021年のマンガ業界Newsを、このNewsまとめを制作している観点でまとめました。

2022年もこのまとめNewsで、なんらか業界に貢献できるように頑張っていきたいと思います。

当まとめは主に週末に週1更新ペースで書いています。マガジンTwitterのフォロー、よろしくお願いします!

著者個人へのお問い合わせなど、以下までお願いします!



Twitterもやってます!フォロー、よろしくお願いします! https://twitter.com/t_kikuchi