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上半期電子コミック前年比25%増!など|マンガ業界Newsまとめ 11-210729

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。

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2021年上半期の出版市場ですが、電子書籍の好調、中でも引き続き電子コミックの好調(前年比25.9%増)が続いています。

コロナ禍における需要増や、引き続きヒット作が出続けていることもコミックの好調に繋がっていると思います。一方で雑誌の活路と目されていた雑誌のサブスクサービスの減少などは気になるところです。

紙のマンガ誌の発行部数減はずっと言われ続けていることで、電子コミックは好調なれど新作や新人が出てくる起点となる雑誌の減少は各社頭の痛い所で、自社アプリなど出版社自前の販売や新作認知の施策が加速化していくのではないかと考えられます。


既に大手出版社やDMM、アカツキなどから出資を受けていた、最大手電子書籍取次のメディアドゥグループでもあるMyAnimeList(MAL)が、新たに電通、ブシロードなどからも出資を受けつつ、電通と業務提携したというニュースです。

MAL代表の溝口敦氏は、日本のコンテンツを世界に届けるにあたり、どこの誰がなんの作品を見ているか日本側のプレーヤーが把握していないことに問題意識を持っていると、以前から話されていました。(溝口氏講演@IMART

海外の日本コンテンツファンが多く集うMALを通してそうしたデータを把握していくには、地道なデジタルマーケティングができる体制が重要になり、そのための電通社との提携というわけです。

作品に関わる関係強化が中心となるコンテンツホルダー各社の出資に対し、マーケティングや分析面での関係強化に繋がる、電通社との出資・提携となり、一先ず体制が整ったという所でしょうか。どうしても日本が苦手としてきた、国際展開におけるデジタルマーケティングやユーザーデータ取得について、今後の進展が期待されます。


「漫画界のアカデミー賞」とも呼ばれる「アイズナー賞」で、漫画家の伊藤潤二さんが2部門での受賞を果たしたというニュースです。

こうした海外におけるマンガの受賞については、一昔前は当の作家が受賞の事実も知らないまま、人知れず式典まで終了してしまうというようなことも多かったと聞き及んでいます。

マンガ・アニメ共に日本から直接海外へ進出できる地盤が十分に強まった昨今、こうした取り組みでクリエイターや出版社が積極的に授賞式に出席するなど、動きが増えていくことが期待されるところです。


有料記事な上にゲームの話題なのですが、この中でマンガかと編集者のマッチングをはかるDAYS-NEOや、今回ゲーム作りも目的の一つとしたクリエイターズラボを立ち上げた鈴木綾一氏のコメントが興味深いです。

鈴木 そうです。紙媒体しかない時代では、連載を継続できるようにするため、読者アンケートの結果で人気を維持しなければなりませんでした。そうした状況とは違い、「ちゃんとまとまった名作を作りましょう。そうすれば、10年後、20年後も読まれます」というようになってきています。

過去にはマンガ誌の根幹であった雑誌上での人気よりも、在庫の概念が無く、新作旧作が平等に並んでしまう電子コミック隆盛の時代では、作品の作り方は変わってくると述べています。

そこからゲームクリエイターに繋がる話だと思うのですが、これだけでも漫画家や出版社の意識が変わってきていることが良く分かる記事でした。


作品名や「アパンダ」という新サイト名も特徴的なのですが、何より私が目を引いたのは、このサイトがMFCレーベル、すなわちKADOKAWA内における旧メディアファクトリー部隊の作品をまとめたサイトであることです。

KADOKAWAはMFCの他にもエンターブレインやアスキー、旧角川書店内でも電撃、あすか、ドラゴンなどなど、かなり特徴の違うレーベルを歴史的経緯から多数抱えており、これらがそれぞれ括られて事業部となる組織形態になっています。

これらの組織はそれぞれが違う方向性の作品を作ってきており、グループ再編により一旦は内部集約して連載作品を集めるのがComicWalker、グループの外販窓口となり対外取引を担当するのがBOOK☆WALKERという位置づけになりました。これに対し、改めて雑誌に近い体制のレーベルに特化した配信サービスができていくのも、今の流れとしては自然かなと思います。

他の出版社が、雑誌や部局(青年誌とか少女誌のような単位)でアプリやサイトを作っているところに対抗する形となるかと思います。作品売上そのものは好調であろうことが予想されますので、これを起点としたデジタルマーケティング施策が成立すれば、こうした形のサイトは更に増えていく気はします。

なんとなくですが、エンターブレイン系もこうした方向で強化すると上手くいく気もします。


KADOKAWA社のニュースをもうひとつ。記事をひとつ取り上げるより、この三崎さんの一連ツイートに情報がまとまってます。

個人的には、現今の環境における、売る側の理屈と作る側の理屈を超えたアイデンティティがぶつかる結節点みたいなところの話で、出版関係の経営者であれば、AppleやGoogleとの折合については、心の中に去来することも多いことだと思うのですが「あぁ、言葉にしてしまったのですね」という感想です。

編集者出身の経営者なら言わないだろうなぁとか。


小泉今日子さんのPodCastで、浦沢先生が電子書籍について語ったというニュースです。

マンガの電子書籍化について、今か今かと待たれ続けてきた大御所がお3方ありまして、森川ジョージ先生、井上雄彦先生、そして浦沢直樹先生と御三家みたいなことになっておりました。

先日ついに、森川先生の『はじめの一歩』は、マガジンポケット上での電子書籍化が開始しました。井上先生は、もとより作品により電子にするかどうか別けるというスタンス。残るは浦沢先生ただ一人というところで注目されるところです。

「<前略>,,,漫画がこれまで育んできた大らかな可能性を、新しいメディアの中でどう進化させられるか、日々考えています」とのことで、大手2出版社にまたがり、待たれて久しい所の雪解けが待たれるところです。

個人的には、最近ちょうど話題になった『あずまんが大王』が電子化してなかったのは、多くの方が購入をとどまってしまったのではないかなぁと思いました。新装版電子化しないかなぁ。

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