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【マンガ業界Newsまとめ】KADOKAWAシステム障害対応続く、岸田首相「コンテンツ産業を国家戦略に」 など|6/16-157

マンガ業界ニュースの週1まとめです。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。

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KADOKAWAシステム障害対応続く

法人発表:6/9第1弾、6/14第2弾-夏野社長、ドワンゴCOO、CTOメッセージ

他に、ドワンゴCOO栗田氏、CTO鈴木氏からもお詫びと今後のお知らせがでています。

先週日曜に発表されたKADOKAWA/ドワンゴへのサーバーに対する攻撃に対して、両社から発表が出ています。

対象としては、
・ニコニコサービス(動画、生放送、漫画など)
・KADOKAWAオフィシャルサイト
・エビテン(ebten)
などがその範囲となり障害が発生した模様です。

他にも、学習アプリ「N予備校」にも障害が発生するも、こちらは学生に優先的にサービス再会するなど対応。一方、カドコミ、BOOK☆WALKERと言った電子コミックなどの直接サービスを行うサイトには影響がなかったようですが、この障害期間内に新作のプロモーションを行う特設サイトが止まるなど影響があったようです。

各社の報道

復旧に向けて

今回の攻撃はランサムウェアによる攻撃であったと発表されています。
ランサムウェアは一度サーバーに入り込むと、重要なデータなどを暗号化し、使用できないようにしたうえで、その暗号化を解くための復号キーを提供する代わりに身代金を要求するというもので、非常にやっかいです。

既に乗っ取られたデータが深刻なレベルの深い所まで達していることと、復旧作業開始時にも攻撃者から更なる攻撃があったということで、相当に執拗な相手とのようです。

復旧には最低でも1か月はかかると説明されていますが、その工程についてドワンゴからロードマップが出ており、FAQなども公開されています。セキュリティを担保しながら徐々にシステムを復旧することにより、一からシステムを再構築す過程の中で2007年当時のニコニコのデータがアップされるなど、話題になっています。

ニコニコを中心に動かなくなることにより、ユーザーの配信予定が実現できなかったり、日常的に使用している発信側使用者双方からは、早く復旧して欲しいという声と同時に、頑張れと応援する声もあるようです。

個人的に知る中の人の方々のお顔を思い浮かべると、KADOKAWAのシステムを担っている組織は、かなりレベルが高いIT人材が揃っている印象を持っています。そんな方々でも回避しえなかった、システム的にも人為的にも難しい攻撃であったのだろうないう印象を持っており、システム攻撃は「攻めるに易く護るに難し」という難しい問題だなと改めて感じています。


漫画家初の国会議員・赤松健氏「漫画やアニメなどコンテンツ産業を国家戦略に」岸田首相に要望

岸田首相が、参院の質疑内で、赤松健議員の質問を受けて「コンテンツ産業振興を、日本の国家戦略に」という発言をしました。赤松議員が引き出したとも言えそうです。

ご本人のポストをまとめると。

■メディア芸術ナショナルセンター構想

■新たなクールジャパン戦略

■新しい資本主義2024年改訂版案

様々な施策や方針が出ています。

まず、これらにどんな意味があるかといえば、内容についてはこれからものがほとんどのものです。こうした国の施策に対して、進めて行く準備が整ったという所かと思います。

これらを、1期目の赤松議員が一人で推進したというわけでは無いのですが、先陣を切って広い範囲で質問しているところを見ると、少なからず影響を与えているのだろうなと思います。

赤松議員の守備範囲は、出自のマンガ以外にも、アニメやゲームなど広くに渡ります。上記のポストは、ゲーム業界のベテランライター新清士氏のものですが、新さんは自身もAIやVRの事業に関わりつつ、ゲーム業界全体の取組にも関わり、通暁する方ですが、赤松議員の動きを評価されています。

逆に言うと、広くエンタメ産業の中で、業界の中から議員を選出して送り込んでいるのは、アニメでもゲームでもなくマンガだけということも言えるわけです。まず、ここに立ってるだけでも価値がありますね。そして、背負うものがいかに大きいことか。

今回の、赤松議員の質疑については、以下の動画です。リンクは頭出ししてあります。約20分くらいです。

これは、業界関係者の方は、一度は見ておいた方が良いかなと思います。個人的なxのポストでも、これに関して言及したものが、今週一番伸びました。

政府与党側の議員として、政策に直接的に関わるという意味では、及第点どころか、100点を大きく超える得点をしているかなと個人的には思います。当選1期目から、たった一人の業界代表議員が、ここまで影響力を発揮してくれるとは思ってませんでした。議員になる前から政策提言で国政の外殻に触れていたのも大きいのでしょうね。普通、著名人枠の初当選議員といえば「勉強します」などとおとなしくしてるタイミングですからね。

例えば、この動きに対しても、インボイスでは期待外れであったという指摘などもありました。気持ちはわかりますし、指摘することそのものは自由です。

ただ、任期前から決まっていた法の施行に対して、すぐに出来るのはダメージコントロールが良い所ですし、こうしてコンテンツ分野を重要事業と国が定めれば、今後そうした分野への影響力を高めることで、長期的になんとか影響を与えることも期待できるかもしれません。あくまで、難しいことを実現するための仕事の手順のうちだと思いますし、堅実な進め方かなと。

今回の質疑では、日本の「表現の自由」にも触れ、首相から「クリエイター個人の創造性が最大限発揮される環境整備に取り組んで行く」(動画の1:12:00以降)という言葉を引き出してます。これも、今後、色々な所で利かせられる、クリティカルに良い布石だと思います。

こうした中でも、具体的な施策にすぐに落とし込まれそうなのが、原画保存の分野です。
これは、物理的に原画を保存することも重要ですが、その原画や知財を、作品やコンテンツビジネスに詳しくない遺族に代わり有効活用して収益を戻したり、相続の難しい問題なども控えています。このあたりの具体的な施策や法制化、大規模な取組などが、これから動きそうですね。


国内News

10代に10ページからの新人賞、とはキャッチ―で面白いですね。
逆に言うと、ジャンプが才能を集めることにおいて、若年の新人漫画家の募集がそれだけ重要なのだろうと思いました。


ナンバーナインが、BL専門レーベル「Blend」を立上げ。デジタルコミックとBLの相性は良いですものね。


DMMグループ採用サイトより https://special.dmm.com/recruit-comic-editor/

2022年の12月に、DMMグループ(CLLENN)がマンガ編集者100名採用という打ち出しをした件、動向が気になっていました。

あれから1年半ほど経ちましたが、募集サイトに「採用数メーター」というものがついていて、これが50%になっていました。つまり50名採用したということでしょうか。すごいですね。


先週、多くの記事が出てましたが、そこから漏れていたものです。

1本目は、この記事の前編にあたるものを、とうまとめに載せていたのですが、私も読み漏らしてました。2本目は今週の記事です。ともに、現場に精通した方の記事で、読ませるものでした。


1作品として最大部数作品は5億部を超える『ONE PIECE』なわけですが、では1巻当たりの平均部数で多いのは?という記事です。
ワンピ、DG、スラダン、鬼滅を、1巻当たりの部数で超える作品が2つもあるとは驚きました。


今週のWebtoon新規参入・新たな動き

No9の『神血の救世主』が英語化して、北米はじめとした英語圏展開です。

現在、国産Webtoonが海外展開する際に、北米を中心とした海外で最有力なWEBTOONに掲載される一番の正規ルートが、この「LINEマンガでヒット」→「英訳」→「北米WEBTOONで掲載」というルートになると思います。

LINEマンガ上でヒットした国産1号ですので、ルート一番槍ですね。


エブリスタ原作の映像化ということで、原作もとのエブリスタ、Webtoonを掲載したcomico、制作に関わったメディアドゥなど、各社からリリースが出ています。


海外News

*:外国語の記事をご紹介します。自動翻訳など適宜。

タイトル訳:アニメが好調 - Netflix の 2023 年視聴者数データの分析

記事より

昨年下半期のNetFlix視聴データですが、「わたしの幸せな結婚」が1位でした。コミックの売上にも影響がありましたね、そういえば。

他にも、興味深いデータがいくつか出ていました。


ICv2がWebtoonの記事を複数出しています。上記2つは、Webtoonを紙出版する企業の責任者インタビューです。

タイトル訳:GLOBALCOMIX がウェブトゥーンの読書体験をパネルとページのコミックに取り入れようとしている方法

こちらは逆に、アメコミをWebtoonにしてスマホ情報で提供することの記事です。「パネルフロー(ガイドビュー)」という読み方の補助機能があるようです。

以下が機能説明なのですが、これは我々からすると、ブックサーフィンファイルというか、オーサリング済みガラケーデータというか、テクノロジーが行ったり来たりしてる感がありますね。このほうが読みやすいのか―。


タイトル訳:春のウェブトゥーン人気タイトル - ブックチャンネルとダイレクトマーケット

こちらは、2024年1-4月のWebtoon→紙出版のランキングなのですが、書店流通では「俺レベ」だらけなのですけども、コミック専門店流通では以下のように、DC/マーベル勢と、WETBOON勢に「俺レベ」が混ざるという、拮抗といいますか、色々ですね。

コミック専門店ランキング 2024/1-4 ICv2より


タイトル訳:韓国政府が「漫画振興委員会」を発足

現在のKOCCAの枠組みの中で、Webtoon共存協議会なるものが発足し、Webtoono制作や産業関連専門人材を20名ほど組織し、産業振興に主導的役割を果たす。とのこと。これどんなことするんでしょうね。日本でも有用なようなことなのかしら。


タイトル訳:パンデミック後、韓国のウェブトゥーン制作者は苦境に陥る

パンデミック時の韓国Webtoonはかなりの好景気だったが、パンデミック後は動画系に押されているとのこと。そういうものですか。


タイトル訳:WEBTOON、プロのクリエイターの平均給与を公表

WEBTOON上のクリエイターの収入は、上位100人が100万ドル超とのこと。だいぶ大きくなってきましたね。ただ、これは給与というより、スタジオ単位の売上ではないかなとも思います。


タイトル訳:デリトゥーン: フランスのウェブトゥーンの柱が変化する市場で際立っている

先日、ピッコマの現地法人撤退(事業の完全撤退ではない)があったフランスですが、Kidariが買収したDelitoonは、まだ頑張っていくという趣旨の記事のようです。


タイトル訳:ウェブトゥーンアカデミーがアングレームにオープン

現在、絶賛映画祭中のアングレームですが、このタイミングでWebtoonアカデミーを韓国Kenazが実施とのこと。これまたユニークですねぇ。


コミコン、本家7月のサンディエゴ、ロンドン、チリのサイトです。チリのサイトは原色がまぶしくて、お国柄を感じます。


libroさんの北米ニュースまとめです。今週は、Netflixのデータなど参考にさせていただきました。


AI・画像生成関連

タイトル訳:WEBTOONが「描画時間を大幅に短縮」する物議を醸すAI製品を開発

物議を醸すとのことなんですが、確かにサンプルとして出されている画像が、いきなりヒロアカの画像で、これはかなりヤバいやつなのではと、ひしひしと感じます。MSNさんも、この記事大丈夫なんでしょうか?


タイトル訳:ネイバーウェブトゥーンが「ウェブトゥーンの中の主人公」話し方を真似するAIチャットボットサービスである「キャラクターチャット」を10日公式発売した。

キャラとチャットで話せるというのは楽しそうですね。推しと話せるというのは、ファンにとってどうなんでしょ。


実写系データですが、どれを見ても、アジア人ではなくて、かなり日本人だなーと思いました。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

U-NEXT:「小説家になろう」発アニメがすごい!特集


記事のみ紹介


告知関連

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