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【マンガ業界Newsまとめ】何故かWEBTOONの件で心配されるマンガ業界、大変なのはむしろ新聞業界では?など|10/30-024

マンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。
最近、この記事を社内スラックなどで流している企業が増えていると聞いていまして、ありがたいお話です。そういったことなども、SNSシェアで感想いただけると、とても嬉しいです!

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産経新聞や、oriconニュースの記事を各地方誌が転載し、唐突に新聞各社からWEBTOONが伸びてるけど、日本のマンガは大丈夫か?というご心配をいただいております。

結論としては「大丈夫です」
むしろ新聞のほうが心配ですが、大丈夫でしょうか?

おかげさまで、2020年の国内漫画市場は過去最高の1995年をはるかに超える、6000億円に到達。今の所、国内市場におけるWebtoonは5%を超え、10%に届かないくらいの規模感で、ともに伸び盛りです。国内においては、当初あった片方が淘汰される懸念のようなこともなく、両者並び立って伸びている感じです。

さて、海外へのWebtoon展開ですが、国内企業も次々とWebtoon部署を立上げ、または準備中です。特になんも言わず、しれっとWebtoonを既に作ってる出版社多々もあります。中でも注目されるのが、KADOKAWAのタテスクコミックなど、膨大な日本の既存IPを縦スクロール化する動きです。

これまで、国内勢の中では、オリジナルのWebtoonを1から制作する志向が強かったですが、横スクの白黒漫画と、縦スクのWebtoonの売れ線が、表現や構成など、あらゆる面で違うことの理解が各所で進み、既存作品をリデザインしてWebtoon化する対応に行きついています。

膨大な日本のマンガIPを海外向けにロールアウトするこの手法は、日本漫画の十八番「アニメ化」にも似、日本アニメのお陰で原作やキャラが既に有名な作品を海外向けに再度掘り起こしたり、縦カラー化によって、違うキャラデザでもう一度アニメ化されるなど、巨大な金鉱が改めて眼前に現れた感があり、とても将来有望に見えます。

そうしたことは、国内マンガ出版社各社の好調が、新聞各社とは大きく違うレベルで維持されていることや、次のニュースのような積極展開からもうかがえます。


今年2月、KADOKAWAがソニー、サイバーエージェント(CA)から、100億円を調達したことも記憶に新しいですが、今度は中国テンセントグループとの資本業務提携です。

先の国内提携の際は、Netflixなどの海外巨大プラットフォームに対抗する、国内資本連合という見方もありましたが、今回はKADOKAWAが単独でテンセントと提携しています。

これはやはり、作品の作り手たるIPホルダーは強いということなのか、こうした動きで、国内資本に限らず広く海外との提携などで展開できる自由度も残っているというのはとても良いことだと思います。というか、上記2社に止められなかったのでしょうか。

ちょうどKADOKAWAの第2四半期の決算が好決算だったというニュースも出ております。


先日、アカツキの国内Webtoonプラットフォーム発表以来、次々とWebtoonに参入する企業が名乗りを上げていますが、今度はソーシャルゲーム大手のドリコムが名乗りを上げています。

こうした新規参入の動き、マンガ業界にとって良いことかというと、結論的には良いことです。停滞はしておらず成長中の市場に、新しいプレイヤーが次々入ると、作品数(=商品数)が増え、市場はより成長します。

逆に言えば、こうして新しい参入がなくなって、古参だけで細々と商売している業界こそ、停滞していると言えるでしょう。ですので、歓迎しましょう。


現在、出版社の宣伝や、書店の販促の現場などで、Tiktokの話題がひっきりなしです。これは、先行して小説の世界では、Tiktok内に大きなバズが起き、Tiktok売れという実績が出来てきています。

こう言うケースで、漫画の売上は小説などの文字ものに比べると大きいので、同じ効果でもなかなか評価されなかったりするのですが、このTiktokerの影響力が上がってきて、そろそろマンガのPRともコストや売上が合ってきたということなのでしょう。各社も、これに対応する宣伝素材の提供など、課題に取り組んでいると聞きます。

記事にも出ている「書店員はな」さんなどの動画を見てみました。
私は以前、漫画のレビューサイトを運営し、自分もレビューを書いたり編集したりなどしていましたが、文字で書くレビューの場合、書き手の知名度や文章の内容が重要です。

一方で、TikTokerの紹介は作品の内容を説明する所が多く、自分の意見を言う部分は少ないです。でも、その紹介してるテンポや言葉そのものが、見て聞いているととても楽しくなってきます。そこが「書評」と「TikTok」の違いなのでしょう。興味深いです。


アプリではなく、Web媒体のお話です。講談社アフタヌーンから「&Sofa」という新媒体。また、Webtoon制作参入を宣言していたコルクスタジオは、その作品を販売する「コルクスタジオストア」をオープンしました。

先日、KADOKAWAコミックウォーカーが、アパンダレグルスといった、新たな雑誌の立ち位置と言えるWeb媒体を立ち上げました。これらの流れは、電子コミック市場が好調な中、アプリではなくWebにて、新たな雑誌の形態を目指していく動きと言えると思います。

「&Sofa」は、元々強い作品を沢山生み出してきたアフタヌーン本誌2誌とは別に新たなブランドとして立ち上げたようです。やわらかスピリッツなどに近い形でしょうか。

一方コルクスタジオストアは、コミチの仕組みを応用した形ですね。ここの作家さんたちは、コルクラボ漫画専科というマンガ講習会出身の作家さんたちが主で、その作家の集め方は、従来の新人賞や持ち込みと違ってユニークだなと思います。


今週、Twitter上で漫画家の原稿料が安いということが話題になりました。(定期)というやつですね。原稿料については良く言う「昔の漫画家と変わらない」金額感なのはそうですね。

これを今度は編集部側と話すと、原稿料を水準以上に高くすると、そもそも連載開始のハードルが上がったり、打ち切りの確率も高まったりと、なかなか難しいところです。

また、こうした議論では印税率の低さみたいな議論も良く出ます。しかし、これについては紙の時代とデジタル時代は、それこそ考えを変えたほうが良い状況になっています。つまり、考えをデジタルシフトする必要があるかなと。

紙の時代、単行本の印刷数や流通量は、文字通り物理的に制約されます。特に低い水準の印刷数の単行本の場合、どれも同じような売上・冊数の為、その印税をなんとか上げれば、収入が上がるのは確かです。

一方、電子コミックを販売する場合、紙の本以上に目立つ場所(買い手の目につく場所)に置いてもらうことや、広告を打ってもらうことが重要になってきます。その場合実は、販売で力を入れられやすい作品とは、印税率の低い作品や、そうした施策に気軽に乗ってくれる、窓口の対応がフランクだったり、返事が早い体制ができるような作品が選ばれやすいのです。

在庫という概念が無く、そして読み手から見える棚の広さが狭い電子書籍は、誰の目にもつかないものは極端に売れず、目につく機会を得た作品は、文字通り本当に沢山売れます。定価で置いておいた作品が何年も売上毎月数百円だったのに、1冊10円にした瞬間、作家収入で数百万円、数千万円がはいるというようなことも多々あります。

電子時代において作家さんがこだわるべきは、実は「取り分」ではなく「売上」のほうで、その「売上」をつくるには、販売の現場の人たちの要望に柔軟かつ迅速に対応したり、印税にこだわらず、売り手と多くシェアするように振舞うとが大切で、そのほうが最終的な収入は上がったりします。

このあたりは、作品にもよりますし、なんでもそれでというわけではありませんが、自分の作品のタイプと、展開されてる電子書店によって状況が変わってくることは間違いないので、柔軟に対応することが重要です。なかなかこの考え方が関わる方皆さんには広く伝わらないのが、頭の痛いところではあります。


これは、漫画に関わる方なら、誰でも読み物として面白いと思うので、ご一読お勧めします。写真のポーズが好きですw


マンガ学会内のシンポジウムのご案内です。

11/21の13時~、マンガ学会内にて「BLとメディア」というウェビナーがあるのですが、登壇が豪華です。

13:10~15:10【第1部】BLのメディア史:少年愛・JUNE・やおい
竹宮惠子(マンガ家)
佐川俊彦(元『JUNE』編集長・京都精華大学准教授)
田亀源五郎(マンガ家、ゲイ・エロティック・アーティスト)
高口里純(マンガ家)
司会:藤本由香里(明治大学国際日本学部教授)
15:30~17:30【第2部】「ボーイズラブ」の現在
雲田はるこ(マンガ家)
紗久楽さわ(マンガ家)
三好久子(『BE×BOY』デスク)
岡田夏実(『ちるちる』スタッフ)
司会:西原麻里(名古屋短期大学准教授)

田亀先生や雲田先生のBL感とか、超聞いてみたいです。

このウェビナーは、生配信一回のみということなので、ご興味ある方は万障お繰り合わせてご覧ください。


クリップスタジオを提供するセルシス社のサービス「マンナビ」にて、漫画家のデジタル制作環境調査アンケートになります。実は、この形態で数百人の回答を得るタイプの業界調査は珍しいので、是非にです。

実は、マンナビもこの調査も、2017年に筆者が立ち上げたものなのですが、マンナビの運営を引き継いでくださったセルシスさんから第2回の調査をやるという連絡をいただき、お手伝いをさせていただいております。

既に、出版社やマンガアプリ企業に編集者編のアンケートを実施済みで、今は漫画家向けアンケートを11/1までやってますというところです。漫画家さんは回答と拡散を、そうでない方も、Twitter上などでの拡散をお願いいたします!

ちなみに、前回調査結果はこちらです。2017年当時、この調査結果発表そのものがなかなかバズりました。今回も、2021年現在の漫画家の実態に合うように設問などを調整しました。回答数が多いほど良いアンケートになりますので、ご回答・拡散、なにとぞよろしくお願いします!


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