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猫なんて大嫌いだったという彼女が行き場のない猫たちを抱えて追い詰められてしまったのは・・・①

今日ラブコに新たに5頭の猫がやってきました。
全員、個人で保護猫活動をしてきた山川カナさん(仮名)・51歳 の元からやってきました。
心身ともに病んでしまい、今抱えている保護猫のお世話をきちんとやり続ける自信がなくなってしまったー厚かましいお願いとわかってはいるけどなんとか猫たちを助けてほしい、と。

自分で保護しておいて、結局他人に頼むなんて無責任じゃないか。
猫のためにならもっと頑張れるんじゃないの?
そう言い切ってしまう前に、カナさんのことを知ってもらいたいなと思います。

カナさんとの出会いは数年前。自宅はキャパオーバーで保護してあげられないけどリリースするにはどうしても忍びない猫たちがいて、なんとかお願いできないか、と相談を受けたのが始まりでした。
それから時々同じような相談があり、かれこれカナさんのSOSで15頭くらいの猫をラブコで引き受けてきました。
今まで猫の保護の経緯について詳しく聞いたことはあったけれど、カナさんのことはあんまり突っ込んで聞いたことがなかった。

第一印象はどちらかというとぶっきらぼうな感じで(失礼!)、あんまり人とのコミュニケーションが得意そうな感じはしませんでした。でも猫のことには本当に一生懸命で、ラブコに猫を連れてくる時も医療ケアはきちんと済ませていて、一回のご飯の量も一頭ずつグラム単位で分けて持ってきてくれたりしてとても生真面目。たくさんの猫を抱えているのに一頭ずつこんなにきめ細かにお世話をしているのかと驚いたことを覚えています。

動物は好きだけど人間は嫌い。
愛護団体の世間一般のイメージってこんな感じかもしれないですね(爆)まあながち間違ってもないかもしれません。だって保護活動やってたら人間不信にもなりたくなることが色々ある。

カナさんもそんな印象でしたが、なんと昔は猫なんて大嫌いだったというじゃないですか。走ることが好きなごく普通の生活を送っていたという彼女がどういう経緯で現在に至ったのか知りたかった。そして多くの人に知ってもらいたいと思いました。



第一章 自分は無敵だと思っていた

カナさんは今年51歳。猫の保護活動を始めるようになったのは10年くらい前からだと言う。最初の猫との出会いはペットショップで「0円」の札をつけられたガリガリに痩せ、片目が濁ったロシアンブルー風の猫で、ロシアンブルーと店側はいうものの、尻尾を見るとキジ柄で「売り物にならないから持ってってくれていいよ」と言われて家に連れて帰ったそうです。といってもその時は保護猫活動のことなど何も知らず、ただ不憫に思ってうちの子にしたそう。

2頭目は小学生の甥っ子が拾ってきた子猫。カナさんがたまたま帰省中だった出来事で、数日で飽きてしまったのをみかねて連れて帰りました。
3頭目との出会いはランニング。公園に人懐こい子猫がポツンといて、思わず連れて帰ってしまう。
と、ここまできたら十分猫好きと言えるけど、野良猫を保護する活動を始めるには至らなかったそうです。ではいったいこの後何があったのでしょう。


きっかけ

次の出会いがカナさんの保護活動の始まり。
ある日、またランニング中に一頭の猫を見つけ、持っていたおやつをふと差し出したところ、わらわらと30頭近い猫がカナさんを囲みました。
それを見た近所の人が近づいてきて、「猫がたくさんいすぎて困ってるから連れて帰ってほしい、糞尿で迷惑してるし」と話しかけてきて、猫たちが近隣の人たちからよく思われていないことを知ったそうです。
そんな無茶な、と猫を連れて帰ることはしなかったそうですが、ある日、一頭の白い猫の死骸を見つけてしまいます。近くで草刈りをしていたおじさん曰く、猫を減らすために自治体でを毒を撒いたりしているという噂もあると言う。
ショックを受けたカナさんは猫を増やさないためにどうすれば良いか考えるようになり、区役所に相談したところ、一人の動物愛護推進委員の女性を紹介されました。その女性にコンタクトを取ると、「捕獲器を貸してあげるから取りに来てくれる?」という感じのようなことを言われ、捕獲器の使い方もTNRの右も左もわからず困惑するカナさんにまた別の保護活動をしている女性を紹介します。


初めてのTNR


いつの間にかその女性の指導でカナさんのTNRが始まりました。女性がやり方のコツなどを指南しましたが、あくまでもTNRの実行者はカナさんです。
カナさんはいつの間にか旦那さんとふたりでガッツリTNRをやっていました。(どうしても捕まえられない子だけ指南してくれた女性が捕まえてくれたそう)。理不尽な気持ちを抱えつつも「とりあえずこの現場だけは頑張ろう」と心に決め、朝晩猫の餌やりを初めて現場にいる猫たちの写真を撮り、エクセルで管理表まで作って(!)30頭以上いる猫たちのTNRを終わらせたそうです。
これが終わったら、普通の生活に戻れる、その時はまだそう信じていました。
ところがTNR活動のために現場に通っていると、いろんな人がカナさんに猫の相談をしてきます。「この先のどこどこにもたくさんの猫がいるよ」「うちの近所にもたくさん猫がいて困ってる」「毎年子猫が生まれて死んでる」云々。。。
そこで相談のあった現場を見に行ってしまったのが運命の分かれ道ー以来野良猫の保護活動に明け暮れる毎日がやってきます。
もうね、現場を見に行ったら最後だと私は思っています。
TNRだけするって言っても、絶対にリリースするに忍びない猫が出てくる。
それに相談してくる人って相談っていうか、ほとんどただの通報ってパターンが多い。費用を負担する気もさらさらない。それまで饒舌に話していたのに費用の話になると口をつぐむ。猫が可哀想だからなんとかしてあげたい、でも自分は何もできないからお願いね、あなた猫好きなんでしょ?という感じ。
そんな無責任な!ムキーってなるでしょ。でも猫にはなんの罪もないのです。自分がやらなかったらこの猫たちはどうなってしまうんだろうか。しかも目の前に猫が真っ直ぐな目で見てくる。人懐こい子もいる。具合が悪そうな子もいる。自分がもうちょっとだけ頑張ったら助けてあげられるんじゃないか。。。


そうなってしまうのは想像に固くありません。私もそうだったから。
でも私はそういう通報に対応するのをすぐやめました。見てしまったら最後だから。自分を守るためにキャパオーバーの時はそういった通報には耳を塞ぎました。
でもそれが正解なのかどうかはいまだにわかりません。

カナさんは無責任な通報の現場にも行きました。何度も。

なぜそこまでできたのか尋ねてみました。そしたら当時は自分のことを無敵だと思ってた、って。自分だったらできる、猫を助けられる、と思っていたそうです。

なんか他人事とは思えない。
私は個人で活動してた時も自分なりにコントロールできると思っていたし、実際に一度に何十頭も抱えることはなかったけど、私とカナさんと何が違うかと言ったら、カナさんの方が真面目で、一生懸命で、頑張っていた、というそれだけな気がします。もちろん、一度に何十頭もの猫を抱えるのは行き過ぎだと思うけど、見て見ぬふりをしなかったらそうなってしまったわけです。譲渡が決まってスペースが空いてから新しい子を保護するのが理想かもしれないけど、人間の都合などお構いなしに目の前に猫は現れるし、完璧な人なんているんでしょうか。

だから私は偉そうなことは何も言えません。


長くなってしまったので次回に続きます。
次回は地域猫活動に夢を抱いたカナさんのお話を書きたいと思います。




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