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ケケケのトシロー

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うだつのあがらないサラリーマン人生を終え、現在は時給1070円で働くトシロー。家族は妻と娘が二人。収入が減少してますます家庭の中での存在感をなくす一方で彼は小説家を目指すも、才能…
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記事一覧

ケケケのトシロー 18 

(本文約2500文字)  あれから三日が経つ。マンションの共用廊下から見える不帰橋界隈は黒い…

ケケケのトシロー 17 

(本文約3500文字) 「先生、何があったんですか。ベストセラー作家が急に出家されてしまった…

ケケケのトシロー 16 

(本文約2740文字)  瀬戸内海小豆先生は言わずとしれた大作家である。数多くの文学賞を総な…

ケケケのトシロー 15 

(本文約2300文字)  キダローはカズを呼び戻したあと、またゴソゴソと長持の中を探り、ほぼ…

ケケケのトシロー 14 

(本文約2560文字) 「さあ、こっちへ来い」  キダローは俺とカズを例の物置の中へ手招きす…

ケケケのトシロー 13 

(本文約2500文字) 「権藤会言うたら、大きな反社のとこやろ? カズ君もそこにおるんか?」…

ケケケのトシロー 12 

(本文約3780文字) 「あんたー! 来てはるでー」  真由美の呼ぶ声に俺はキーボードに『ああああああ』と入力した。  またか、また来たか。今日も来たか。  あの日からカズ(本名は笹川和弘というらしい)は毎日のように家を訪ねてくる。あの日、つまりキダローが天誅をくだすところを俺が助命嘆願してからだ。 「おやっさん、おはようさんです。今日は休みでっしゃろ?」  カズはグレーのジャージの上下に薄手のピンクのダウンのいで立ちで玄関で挨拶をしてくれる。なんとセンスのいい恰好なの

ケケケのトシロー 11 

(本文約2600文字)  俺はつぶれたゴキブリをじっと見る。普段、真由美が台所で『出た~Gや…

ケケケのトシロー 10 

(本文約3600文字)  フキさんに見送られて俺とキダローは店を出る。辺りはそろそろ夕闇が迫…

ケケケのトシロー 9 

(本文約2500文字)  二人が歩く川沿いの道にはいくつかの橋が架かっている。そのうちの一つ…

ケケケのトシロー 8 

(本文約3400文字) 「ほれ、はよ立たんかい」  キダローが手を差し出す。それに掴まり立ち…

ケケケのトシロー 7 

(本文約2900文字)  カップの珈琲は随分と前からすっかり冷めてしまっていて、ただの苦い液…

ケケケのトシロー 6 

(本文約2600文字) 「わしは『キダロー』や。 ケケケ」    シルエットはそう言い、羽織って…

ケケケのトシロー 5 

(本文約2200文字) 「あんた…… 正直に言わんかいな!!」  怒号というのはこういう声のことだ。    真由美は俺が差し出した食材満載のビニール袋をわなわなと震える手でつかむと、白目部分が血走っているのを隠そうともせず眼を見開き、俺より身長は低いくせに、2mは高い位置から見下ろすような。要するに世間一般でいう鬼の形相で俺を睨む。大根はそこに入っているから、大根を買い忘れたから怒っているのではない。  北島さんの奥さんは、笑いたいのに笑えないみたいな感じで俺と真由美を交