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ラブリラン まっちーに密かに思いを寄せる隼人、恋のリングに上がる?!

新感覚ラブコメディー「ラブリラン」特別編が放送中です。
古川雄輝くんと中村アンちゃんがW主演です。

9話は中村アン扮するさやかも古川雄輝扮する町田も一生懸命「正しい場所」に戻ろうとする回です。さやかには、幼なじみ亮ちゃんが、町田には元カノ杏子がいるわけで。本当はさやかもまっちー(町田)もお互いが好きなのに、どんどんすれ違って悲しいです。(一体どこがラブコメディーなんだか)

まっちーの誕生日、さやかは約束の場所でまっちーと会えませんでした。

でも、隼人誕生日の前日である6月3日に(当日じゃないところがいいよね)、行きつけのバーで待ち合わせて、バースデーケーキサプライズプレゼントしたりしましたね。

そういえば、彼はずうっと、同性のまっちーのことを思ってきたんですさやかとの仲がこじれてる(別れた?)ブルーなまっちーを慰めれば、隼人にチャンスがあるかも! 隼人、恋のリングに上がるか?!


隼人が選んだケーキは生クリームがたっぷりのってるもので、狙い通りまっちーはおいしそうに食べた。
おれはまっちーの好きなものはだいたい分かるぜ、付き合い長いからな。
隼人はにんまり。

二人はバーのカウンターに横並びに座って飲んだ。

「今日杏子に会ったよ」
「何それダジャレ?」
さやかとの仲がうまくいってないのは知っていたが、杏子と急接近? 想定外だ。
「オレのことダンメダメのダッサダサだって」
それノロケ? やめてよ~。
「オレにロンドンの仕事の話持ってきてさ」
「そういえば、前もロンドン行くって言ってなかった?」
「うん、あのときは諦めたんだけど、またチャンスがありそうなんだ」
「世界的に有名なクリエイターのチームだっけ、一緒に仕事なんてすごいじゃん、まっちーは英語ペラペラだし、絶対イケるよ」
「だといいけど」
「いつ行く感じ?」
「決まったら今月か、来月か」
うへ、すぐじゃん。
「どのくらい?」
「わからない。1年とか?」

まっちーがロンドン。
まっちーがロンドン。
まっちーがロンドン。

さやかさんと別れたからって、一緒にいられる時間がそうそう増えるとも思わなかったけど。
スマホで世界のどこにいてもつながれるご時世だけど、やっぱり遠いのは寂しいよ。
杏子が恨めしかった。

どうしてロンドンの仕事なんかまっちーに紹介すんだよ。
だいたい、まっちーのこと好きなくせに、自らまっちーを遠くにやる話持ってくるなんて、馬っ鹿じゃねーの。
どうせなら、***とか、***とか、ロンドンに行かなくても十分刺激的な、日本にいるすんごいクリエイターにつなぐとかさ、できなかったわけ?
結局、あいつのコネの力も、まだまだだな、ふん。

心の中でグチ三昧の隼人。

ちっくしょー。おれが女なら、杏子になんか絶対まっちー渡さないのに。
ミントの入ってるモヒートをぐびー。
「マスター、次、ギムレット」

さやかさんとは、同じまっちーのこと好きな者として、楽しく話せた。長い期間、片思いしてきた者同士、分かり合えるところがあったな。

記憶を失ったのをいいことに、おれがひどいウソをふっかけたことも、理解して許してくれた。

おれに「恋のリングに上がれ」ってアドバイスくれたしなあ。ライバルだったのに。

「はい、ギムレット」
化学室にあるガラスの足長漏斗みたいなショートグラスに入った液体をちょっとすすって考えた。

これってもしかして、告白の最後のチャンス?

さやかさんだったら「がんばれ」って言うかな?

隼人の鼓動、速くなってきた。ヤバイ。

ギムレットぐびー。
「つぎ、XYZ」

注文してからXYZという名前にまでドギマギする隼人。いやそんな、最後までいっちゃうみたいな。
濃いカクテルを注文しなくちゃ。

「あ、おれも」
そうそう、まっちーにも酔ってもらわないと。言いだしにくいもんね。

ショートグラスを片っ端から注文してみた。
そこそこ酔っぱらってきた頃合いに。

「まっちー」
「なに?」
「ずっと言えなかったんだけど、実はおれ、」
その後がないので、まっちーは隼人を見た。
二人の目と目が合う。まっちーの目がかわいくて死にそうになる。

隼人が息を吸って「好き」と吐き出そうとしたそのとき、二人の間に山盛りのポップコーンが。
「店からのバースデープレゼント」
「あ、どうも」

「あ、そうだ、これ」
気をそがれたので、紙袋からガサゴソときれいに包装されたものを渡す。
「買ったんだけど、おれよく考えたら着る機会ないからさ、まっちー着てよ」
まっちー開ける。出てきたのはストライプのカラーワイシャツ。
「いいじゃん、こういうの合わせやすそう」
そうだよ。まっちーに似合うと思ってつい買っちゃったんだから。
「ありがとう。明日さっそく着てみるね」
よっしゃー。
「まっちー」
「なに?」
「実はおれ、お前のことす、す、」

ガチャーンとカウンターの奥で音がした。
「マスター大丈夫?」
「あー、ごめん、ごめん、手がすべっちゃって」
なんか、おかしいな。何なんだ一体?
くそ、勢いで今度こそ。

「おれ、まっちーのことが好きなんだ」
言った、おれ!

そのとき、「ああああ~」と叫びながら、「白鳥の湖」の白鳥のコスチュームをまとったマスターがくるくる回りながらまっちーと隼人の間に割り込んできた。

「どどどどどどうしたの、マスター」
「おもしろいでしょう」
つけまつげにアイライン、赤い口紅まで塗ってる。トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団か、あるいは場末のおかまバーのショータイムか。

「ぼくからのサプライズよ~♪」

これにはまっちーも大笑い。
隼人は困惑。告白したのに、マスターのコスプレで見事かきけされてしまった。涙を流しながら笑うまっちーを見ながら隼人は力なく笑うしかなかった。

ひとしきり笑った後、まっちーが隼人に
「何か言わなかった?」
「……いや、別に」
もう完全に告る気力は失せた。

「じゃ、おれ帰るわ」
「うん、わかった」
「マスター、サプライズありがとう、ぷぷっまた来るね」
まっちーは最近見せることのなかったすっきりしたビッグスマイルをマスターに見せると、店のドアを開けて外に出た。

おごると言ったので、隼人は会計する。外でまっちーが待ってる。
「面白かったよ、マスター」
「おめーに見せるんでやったんじゃねーよ」
「へ?」
思わずマスターを見る。目がメラメラ光ってる。
隼人は慌てて店を出た。

「ありがと。またな」
「うん」
駅で別れた。隼人は一人家に向かって歩き出す。

結局言えなかったな。

でも、
まっちーが笑ってるとこみたの久しぶりだったな。
最近イラついたり辛そうだったから、良かった。

それにしても、こんな身近に恋のライバルがいたとはね。

マスターなんかに負けられない。

隼人は闘志がみなぎってくるのを感じた。






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