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冬の足音(自叙伝的短編小説)

 白い枝のクリスマスツリーが欲しいと何年も前から思っていた。赤い飾りが映えるやつ。キラキラした玉や、リボンをこれでもかと付けて部屋の片隅に置きたかった。
「今年も買えなかったな」
そう思いながら、コーヒーの茶色が染み込んだカップで安い粉のコーヒーを今日も飲む。コーヒーカップの染みをクレンザーで磨いたのはいつの事だっただろう。ネットオークションで格安で買った花柄のコーヒーカップが与えてくれた、買ったばかりの頃のときめきは、もう殆ど残っていない。

 クリスマスの訪れは、11月に入った頃に街に並べられる雑貨達が教えてくれる。赤や緑の色とりどりの雑貨達は、華やかな人々のクリスマスを想像させる。今年も一つ、何か買おうかな。そんな、ウキウキした、主婦や、働く女の人や、カップルの年末の愉しみな顔。
「今年はその人形一つしか残ってないのよ。ノルウェーから来たのよ。クリスマスだけじゃなくて一年中飾れる物もいいわよね。」
いつも通りがかりに尻目で見ていた雑貨屋を覗いていたら、上品な店の人に声をかけられて伸ばしかけた手を引っ込めた。
「そうなんですね。素敵ですね。あ、こっちのも素敵。」
そう言って手にとったネズミのマスコットは、どこかで見た事のある外国のキャラクターだった。すごく可愛い。そう思ったけど、ありがとうございますと言って店を後にする。

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