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医療系イベントプランナーとは…

私がかつてお世話になったコンベンションアカデミアという会社は、学会年次総会・講演会・学術集会運営事業を行っています。これだけでも知らない人にとってはなんのこっちゃい…ですし、実際の業務もマルチタスクで説明するのが難しいので、過去を振り返りながらまとめてみました。

コンベンションアカデミアに愛を込めて...

学会年次総会・講演会・学術集会運営事業?ナニソレ、呪文?

何度も書きますが「学会年次総会・講演会・学術集会運営事業」は、早口言葉でも呪文でもありません。
医師を中心とした医療従事者の方は日々進化する医療を学び、患者さんを助けています。また自分が経験した症例を発表することで、情報共有をする場でもあるんですね。所属する学会によっては学会参加が専門医などの単位取得要件になっていることも多いので、とても大切なものです。

学術集会の大会長は、大学病院の教授などがされることが多く、もちろんイベントは専門外それも本職がとても大事ですから、主催の先生が円滑にイベントを開催できるようにお手伝いする仕事です。
大会長はその学術集会の顔ですし、名誉ある立場の方なので、運営側の不手際で恥を欠かせるわけにもいきません、というわけです。

合言葉は「先生のために、未来の医療のために」です。

また医療系の流れで、製薬会社のセミナーも担当することが多かったですが、こちらは各メーカーさんのお薬を医療従事者の方に正しく理解してもらうためのセミナーで、講師になっていただく医師の招聘をするのがメインです。MRさんのお手伝いですね。

合言葉は「MRさんのために、安心安全な医薬のために」です。

主催者からの問い合わせ、まずは丁寧にヒアリング

総会などの大規模な医療系学術集会となるとイベントは2年前から動き始めることが多いです。大会長が決定し、会期(イベント開催時期)の目安が決まったところから「さて、どうしよう」となるわけです。

最初の打ち合わせで主催者(大会長の先生や学会事務局担当者など)とどこまで細かく内容をすり合わせられるかはイベント成功の鍵になります。準備も打ち合わせも「やりすぎ」というほど念には念をおくのが基本です。
下記の事項は最低限抑えてます。

会期・会場選定・想定参加者数・必要会場数・会のコンセプト・委託業務事項・予算 など

イベントの始まりは会場を抑えることから。人気のある会場は争奪戦です。学会ができそうな会場も限られてます。会場予約というのは、大体1年前からとなってるのですが、実はいつも使う会場の担当者とは仲良くなっていて、1年以上前から正式ではなくても次回もよろしくなんて言っていたります。

これが全体感です。スケジュール案とお見積もりを算出

ヒアリングした内容をもとに、イベント進行プランやお見積もりを提出します。

例えばこんなもの…

学会当日までの業務リスト(主催者がやること・運営会社がやること)
全体スケジュール(TO DO)
コンベンションアカデミア内体制図(誰が何を担当するか、問い合わせ先)
予算案・お見積書
プランニング企画書(会場は?集客は?コンセプトは?)
過去の事例資料 など

特に過去の事例は先生は気にされます。前回の大会長の先生はどのように運営されたのか、とても気にされます。今までの先生の活動を尊重される方が非常に多いです。

ちなみに予算内は厳守するので、この段階でお見積もりNGが出たことはないです(個人談)。いや、冗談で値切られたことはあるかも…。

準備が何よりも大事

本番よりも力を注いているといっても過言ではありません。
先生に提出したスケジュール表に沿って、1つずつ漏れのないように業務を進めます。準備と一言にいってもやることは多方面に渡ります。あくまで一部ですが、以下のような業務です。

①趣意書の作成・配布(共催セミナー/併設展示会/広告/募金など)
趣意書というのは「今度、この先生がこんな会の会長をやるんです。」というような会の概要を説明するものです。
学術集会を運営するには、当然予算を集める必要があります。もちろん参加者からの参加費も見込んではいますが、そもそも利益目的のイベントではないので、それだけで十分な準備ができる訳ではありません。
そこで、製薬メーカーなどの医療関係の団体を中心にスポンサーを集める必要があるのです。
例えば製薬会社が共催セミナーを行えば、参加者の先生方に自社製薬の詳しい説明や有効性がPRできます。展示会に出れば、立ち寄ってくれた先生に営業をかけることができるでしょう。また会のプログラム集に広告を載せることもできます。製薬会社は各予算に応じて、学会を営業活動やPR活動の場とすることができる訳です。
そんな訳で、企業様の問い合わせ対応をするための窓口をコンベンションアカデミア内に開設して、製薬会社と連携します。

②指定演題登壇者への依頼状(海外招聘者含む)
学術集会には、テーマがあり、そのテーマに沿って、専門の先生に登壇をお願いします。著名な先生であればあるほど講演のスケジュールが何年先まで決まっていて、予定を抑えるなら早い時期からアサインしないといけないのです。(海外の先生など遠方の方であれば、尚更…)
指定演題の登壇者候補は、主催の先生からいただきますし、なんなら根回しもしてくれているのですが、口約束ではなく、きちんとした依頼状を運営事務局からお送りします。(先生はそれを病院に提出して、現場を離れる必要があるようです)

③演題登録画面の設定/登録に関する問い合わせ窓口開設
学術集会では、指定演題だけでなく、一般から症例募集をして登壇してもらうというプログラムもあります。(一般演題と呼ばれます)
ここでの登壇者は何もよくテレビに出ているような…とか、教授で…などということはなく、研修医の先生や現場で働く医師が症例を発表します。
そのため運営事務局は、演題登録期間を設け、発表をしていただく内容をシステムに演題登録してもらうのです。
演題登録に関する医師たちからの問い合わせも運営事務局で窓口対応をします。

④抄録集編集/印刷/発送
指定演題と一般演題の抄録を整理し、どの順番でプログラムを組むか会長の先生と相談をして、それらをプログラム順にまとめた抄録集を作成します。

抄録とは、論文やレポートなど長い文章の内容を簡単にまとめたもの
抄録集とは複数の抄録を集めて組み合わせたもの

これミスれません。
当然、登壇される方はプログラム抄録集に載っている時間に発表するものと思うので、その時間目掛けて会場にいらっしゃる方もいるのです。プログラムと実際の発表時間が違かったら大惨事です。
実は過去に一度だけ、失敗をしたことがあるのですが、会長の先生や登壇する先生方、皆様に頭を下げる悲惨な事態になりました。発送前の早い段階で気づいたのが不幸中の幸いですが…当時は冷や汗が止まりませんでした。。

⑤印刷・制作物
学術集会には多くの制作物が必要になります。
参加者が会場内で迷わないための会場案内図、関連学会のPR用のチラシ、展示会会場や受付などのパネルなどなど。言い出したらキリがないほどです(あるだろ)。
これらの制作物ディレクションも運営事務局の仕事です。時にはチラシのデザインから担当する場合もあります。

⑥HP制作
学術集会のHP作成も運営事務局で担当します。
プログラムの掲載や事前予約、宿泊手配などがある場合も会のHPからできるようにするためのものです。

⑦そのほか細々した手配
細々した仕事はいくらでもあります。会場との折衝は前述した通りですが、主催者や招聘した先生方、ドリンクコーナーやランチョンセミナーのための飲食手配も行いますし、プログラムが進行しやすいように会場の図面もひきます。施工・装飾、映像機材手配、スタッフ手配も業者さんと連携を取りながら当日に向けて準備を進めます。

入社する前は、イベント会社って派手なイメージでしたが、実際の業務は地味で地道なものです。

学会当日はやりきるのみ

準備に念には念を入れても、実は「あぁこんなことが!」というトラブルがあったりするものですが、当日はやるっきゃないです。
万全の体制で臨みます。
主催者様、ご参加の皆様が有意義な時間を過ごせるように各スタッフが動きます。
参加受付の対応はもちろん、各会場進行管理、映像/照明/音響管理、飲食管理、各共催・出展企業様の対応を行います。それらに対応するスタッフのケアや管理も現場責任者たるプロデューサーの仕事です。
経験豊富なディレクターやスタッフ、主催者全員の協力があって、当日を乗り越えます。

学会後のフォローも大切

会が終わっても、全てが終了ではありません。
登壇された先生方へのお礼状の送付、イベント後の問い合わせ対応、受付集計報告などの事後処理まで全てフォローすることで、次回もコンベンションアカデミアにお願いしたいと思っていただきたいのです。
請求書の送付ももちろんお忘れなきよう。。

チームビルディングが重要

ここまでの膨大かつ細かい仕事を全てプロデューサー1人でできる訳ではありません。
プロデューサーは全ての工程に責任は持ちながらも、細かな連絡をしてくれるアシスタント、専門性の高い抄録集の校正、制作物の制作会社、会場担当者、映像機材会社や現場ディレクター・スタッフたちと良好な関係を築いて、的確な指示で全員のモチベーションを高く保つことで、イベントを成功させることができます。
「ヒト」の力なくして、プロジェクトの成功はありえないのです。


コンベンションアカデミアは、会長(前社長)の人柄に吸い寄せられるように、穏やかで優秀な人材に溢れています。専門領域が違くても、時には別の担当者の案件も手伝ったり、自分たちのスキルを惜しみなく貸し合って切磋琢磨しています。
ある意味、家族より長い時間を過ごし、出張に出かければ、お土産を配りあって盛り上がったり、誕生日にはケーキでお祝いしてくれる。あまりこの表現は好きではないですが、まさにアットホームな会社です。
小生意気なだけの私にも先輩方は根気よく仕事を教え、暖かく見守ってくれました。私の経験の中で、これほどまでに好きになれた会社はないかもしれません。

亡き会長・帯刀田靖興さんに改めて感謝するとともに、ご冥福をお祈りします。

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