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invisible holidays(2020.05.21~05.31)


 2020年5月21日

 バラエティ番組のゲームに参加させられている。鉛筆の質が極悪過ぎて文字が書けない。きききき、という、黒板を引っ掻いたあの鳥肌の立つ音がする。時間内にお題を書き切れなかった。どうやら、ここは余り情勢が良くない国。本音で喋ると捕まってしまう。私はこじんまりとした小料理屋のカウンターにふらっと座って、もちもちするピンク色の郷土料理を食べた。カウンターの奥のおばさんが色々と出してきた。私はその小料理屋に着替えを置いてきてしまったので、箪笥の底から相当に古い、お土産で買ったダサいTシャツを着た。都市が一つ壊滅して誰もいない。巨大な怪物がこの奥にいるようだ。私は仲間とともに怪物に接近して、崩れた建物の隙間から、木製のような、鉄製のような肌の凸凹した巨大怪獣を垣間見る。私は他の仲間と違って何も出来ないので、怪獣を引き付ける囮役を遣らねばならない。私は怪獣との距離を図りながら逃げる体勢を取るけれど、突然に如何にも理系という若者達の一団が自動車に乗って遣ってきた。一人は大学で何度か見掛けた青年だ。それから私は、大学の先生達との飲み会に参加したような気がする。研究室の先生を久々に見た気がする。少年はモノローグとともに凄まじく長い緑色のトンネルを歩いていった。彼は、多分シンジ君だ。私は本棚の整理に呼び出された。本棚の整理の前に、誰かの奥さんの紹介が始まってしまった。彼女はドイツ語の講師として雑誌の監修とかを遣っているらしかった。寒いのだ、壮絶に寒いのだ。上着一枚増やしただけでは耐えられそうになかった。電車は換気で窓開けてるのだし、寒い。明日も明後日も雨が降るらしい。すっかり冬の気候に逆戻りだけど、御存知の通り私は冬が大嫌いなのである。調べたら、この時期では30年ぶりぐらいの寒さとのことである。従業員割引の利率が何故か上がった。これは単なる朗報。従業員は自分の店にお金を落とすように、ということなのだろうか。暇を持て余したのでRaNi Musicを聴いていたら、度々耳覚えのあった楽曲のタイトルが、大人の掟であることを知った。椎名林檎だなぁと思ってたけど、ドラマの演者が歌ってるんだ。緑黄色社会のShout Baby。これも耳覚えがある。でもバンド名を今まで知らなかった。手慰みにまた麻雀freshを開いた。勝った、二連勝。勝ったけど、全体の上がりの半分以上ツモって、麻雀ってそんなゲームじゃないだろうに。久々に脚が冷えてしまった。脚が冷える、という謎の言葉、懐かしい感覚。別に思い出したくはなかったけれど。ともかく脚が冷えて動けなくって、わりと大味にしか計測してくれない部屋の気温計が遂に20℃を切ったので、これは本格的に冬の寒さである。咳も出るし嫌な頭の痛さもある。こんな突然に気温が落ちたら風邪っぽくもなる。職場の二階はまだ暖かさがほんのり溜まっていたので、一日凌ぐことが出来た。一階の寒さだったらちょっと私の胃腸が耐えられなかっただろう。また麻雀freshで一局遊んだ。勝った、三連勝。このくらいが丁度いい難易度だと思う。CPU相手の麻雀は、適度に頭を使って適度に気分が盛り上がるので、神経のいい体操になる。お陰で艦これを触る余裕は出来たけど、期間限定の海外艦掘りが面倒臭い。でも今掘っておかないと次にいつ手に入るか分かんないし……ウィークリー任務のために4-2も周回している。これが更なる難敵で、上ルートに流れるように確率を上げるために最低3隻固定している駆逐艦が次々中大破に追い込まれて手駒が切れてしまうし、挙げ句の果てが何故か四連続で下ルートに逸れるし、ネジのためとはいえ、周回のリスクが高過ぎてやってられないのだ。今日は白州とボウモア12年でロック。カレ・ド・ショコラ70%とドライフルーツのパイナップル。ロックは段々と薄れていく風味の変化を楽しむようなものなのかな。白州はロックが渋い。ボウモア12年も段々と磯臭さが薄まるのでちょっと呑みやすくなる。アルコールを挟んだから頭は痛いけど、深刻だった脚の冷えは軽くなった。夜中に天井が鳴り始めた。なんでこんな夜半に床を踏み鳴らさなければならないのだろう? 私の部屋は一層静かになって、天井の物音ばかりが響き渡る。寝る前に機嫌が悪くなってしまった。部屋置きの眼鏡が見付からなかった。眼鏡眼鏡、と私は一人呟いていた。


 2020年5月22日

 魔王の城に攻め込んでいる。詳細は忘れたので省略。ちっこい魔王軍をちっこい勇者達が押している。ちっこい魔法部隊のちっこい兵士が、ある場所に火薬仕掛けて爆発させたら、派手な土石流が発生して下流の街が危険に晒されてしまった。下流の街に住む人達は巨大な団地に避難している。疑似家族的に喋る腕時計がある。とあるお母さんはそれを息子代わりにしていたのだけど、機能に満足せずに怒り出した。とある為政者は青色と緑色の腕時計を非難して、赤色の腕時計はまともだった、赤色の腕時計を増産しろと怒鳴っている。とある少女達は厳つい顔の列車の表面についた白い膜を剥がそうと奮闘する。列車は久々に黒い表面が露出して喜んでいるし、少女達は剥がした白い膜にまみれて、刺々の衣装を着ているみたいになった。この世界では、物にも魂は宿る。少年は妊娠する。いや妊娠ではなく、ブラック・ジャックの、ピノコの出生の、何だっけ、あれだ。ところで私だってもっと冒険的なことをしていたはずなのである。裏庭? 河沿いを登って……最近は窓の外が明るくなると、目覚ましが鳴る前に一度眼が覚めてしまう。今日は曇り空が真っ白に眩しい。背中の痛みは軽いのだけど、頭痛がする。いやぁな頭の痛さ。ずうんとするような。今日も一日寒かった。disk unionが再開していたので四枚ほど買ってしまった。挙げ句に、秋葉原アトレの成城石井でアイリッシュのジェムソン700ml瓶を買ってしまった。直舐めと違ってロックは消費が早いので、一本ぐらい700mlがあっても呑み切れるだろうという判断。眠気がどんと襲ってきた。帰りもバス使ってしまった。帰宅後も眠くて仕方がない。700ml瓶は明らかに頭二つほど背が高い。まずはストレートを軽くグラスに注ぐ。アイリッシュは呑みやすい。ノンピートなので刺激が滑らか。じっくり舐めれは舌は痺れるし鼻や喉に酒気が抜けてくるけれど、スコッチやバーボンの強烈さに比べればずっと大人しい。これと比べるとシーバス・リーガル ミズナラ12年ですら濃過ぎるように思う。白州と比べてみる。白州やはり「落ちる」なぁ……砂肝スパイス焼を開けた。アイリッシュやジャパニーズは舌への刺激が弱いので、それを補うようなスパイシーな肉が実に良く合う。艦これを触る。3-3の新艦堀り、肝心のSamuel B.Robertsさんは10周でわりとあっさり無事に落ちた。西方ウィークリー任務では大破撤退には追い込まれるし、また駆逐艦の手駒が足りなくなるし、この任務ネジ回収は諦めたほうがいいかもしれない。ジェムソンの試飲までが今日の私の限界だった。執筆どころか、今日は日記すら億劫だ。雨と寒さが全て悪い。寝る前に、最後の気力を振り絞ってジェイムソンのロックを注いだ。氷で冷やすと苦味にも似た刺激が強まる気がする。落ち着いて待ってると、波が二度来る。その二度目の波でくうーー、っとなるのがいい呑み方だ。アイリッシュはいいよね。そして、Jesse 繋がりで買ってみたJesse Winchesterがいい。スワンプ系のようでいて、声色はそこまでダミってなくて丁寧な歌い回し。けれど、一筋縄ではいかない。哀愁漂うようで、なんか絶妙に変。なんだろう、スタンダードのように思えて、何処か上手く外している。ギターの最小の音で完璧に目立ってみせる巧みさ凄いクール。音質が決して高くない掠れたギターの音響もいい。でも今日は深追いする余裕はない。一聴で切り上げて、お風呂入って寝る。コミットメントとデタッチメントのことについて考える。関与するために、私達が社会から離れるということ。


 2020年5月23日

 私がナレーションを担当した演劇の映像がみんなの前で流れていて恥ずかしい。早速知人達に笑われてしまう。私達は巨大なセットのうえを歩いている。プログラムに沿って演技でもしているのだろうか、でも私は途中で脱落してしまった。駅の真横に巨大な規模の寺院がある。寺院以外には、駅周辺には特に何もない。巨大なパンフレットを貰う。私は以前一人で来たことがあるけれど、今日は知人達と一緒に観光に来たのだ。付属している大きな近代建築物は食堂兼学校になっていて、豪華な和風装飾が施されている。勿論写真を撮る。入館料のことで知人の一人が揉めている。私は横から何か偉そうに知識を披露して知ったかぶったような気がする。もう夜中で、家の門は閉まっている。しかし祖父が夜中なのに自動車を道の脇に停めて出歩いている。私は低い車止めを飛び越えて、庭に繋がる脇道に入った。駅で電車が急停止した。わりと直ぐに復活した。ユニオンでまた派手に散財してしまった。今日も帰りの電車のなかで寝落ちたので頭が痛い。電車で寝落ちると貧血のような症状を起こすのは何故なのだろう? 無料公開中されていたプリズマイリヤを読んだ。こういう派手な漫画も結構好きなのだ。人智を越えた神話に到るだけの新鮮な熱量を放ち続けられる派手さというのは、なかなか難しいものなのだから。今日もジェムソンのロック。お供にはチョコレート効果72%。そしてJesse Winchester。全然優雅になんないんだから駄目だね。冷たさに研ぎ澄まされた苦味と、微かに舌に光る甘味、そして最後にもう一波。ウイスキーの当たりの強さもなくて落ち着く。しかし、どうしたものだ、ここ数日は寒さに負けて日記すらダレてしまっている。寝不足も重なってるし、思ったより疲れている。艦これを適当に触る。


 2020年5月24日

 部屋に風が強烈に吹き込んで来ている。私達は箪笥のうえに並んだ硝子製品が壊れないよう、どうにか支えようとするが、風はいよいよ強烈になり、硝子製品は次々に落下してしまった。余りに激しく落下したので私は硝子の破片を大量に吸ってしまった。水道で喉を洗おうとするけれど、これはこれで喉を痛めそうで危険だ。硝子の破片の塊が喉にゴロゴロしている。誰か、テロ行為をした容疑で取り調べを受けている。薄れた記憶を思い出そうとしながら何度も眠ってしまって、殆んど新しい記憶と化した断片でもう本来の記憶に戻れない。とある一家達が、下手な立ち回りが裏目に出てばかりいる物語だ。けど最後に暖かい集合写真も撮れたみたいだし、一先ず良しとしよう。今日は朝から胃がぐるぐるしている。山を登っている。或いは、塔を登っている。入り乱れた記憶のなかにおいては同じようなことだ。最初は確実に山登りだった。湿った山道を登っていた。もっと最初は、とある胡散臭い寺院を観に行こうと、門前の急な坂道を登っていたような気もするのだけど。別ルートを歩いていた誰かに追い付いて、君はそっちのルートを進め、私はこっち登るから、と私は偉そうに指示して、有り得ないほどの軽装で、看板を見る限りかなり本格的な山道を登り始めた。山道なのに私の足取りは異様に軽かった。私はワクワクしていた。この調子ならば日暮れまでに結構な高さまで登れそうだ。途中で山小屋に寄った。山小屋、というか、この奇妙な宿泊施設では行方不明の女の子がいるらしくて、それを探しにきた女性が女将に問い詰めていた。山小屋は複雑な構造になっている。私には関係のない部屋を幾つか渡り歩いて、やっと玄関に戻ってこれた。私は私の靴を発見したけれど、靴下を忘れていた。そして私のサンダル。まさか、私はここまでサンダルで来たのか? サンダルを荷物に詰め込むときっと邪魔になる。私は塔を登っている。何か悲劇的な殺人事件が始まって、終わった。犯人達は塔のオブジェの一つで弔われた。この塔は外光が差し込んで明るくて、前衛的なオブジェが幾つも斜めに歪んでいて、内部に急勾配が続く奇怪な塔だ。オブジェの並ぶ急配の隙間に次のルートを見付けた。写真を撮った。これは私の悪い癖。無駄な癖。誰かが、次のルートを見付けたと叫んだけど、犬の鼻、だというのだ。私達は立ち並んだ犬のオブジェの合間を巨大な怪物から逃げる。塔のなかに敷き詰められた岩盤から、冷たそうな水が流れ出ている。この水の流れをどうにかしなければ先に進めない。ふと少年が流れに流されてしまった。別の少年が彼を追い掛けて流れに飛び込んだ。四角い水路を暫く流されて、少年は流された少年に追い付いたけれど、ここまで流されると元の場所まで遡上は難しい。二人は絡み合うように流され続けて、そのまま何処かの部屋のマンホールのようなものをぶち破って外に飛び出た。一緒にネズミのようなキャラクターまで飛び出した。うやもやあって、その映画は酷く中途半端なところで終わった。映画の監督の、言い訳じみた直筆の手紙も出てきた。でも文字が崩れて上手く読めなかった。私達はこの冒険映画にわりと満足していた。私はスマホに感想を書こうとしたけれど、またスマホの容量が限界のようだ。映画は結構楽しかったし、塔登り、或いは、山登りを再開しよう。そして朝から胃がつらかった。一日ずっと艦これを遣っていた。無駄な人生ではあるけれど、艦これ出来るだけまだ元気なほうなのだ。或いは、ひたすら意味のない単語を出鱈目に検索していたら、一日が終わった。これは流石に無駄に過ぎる。体調は決して悪くないのに、お風呂に入るのも眠るのすらも面倒臭い。あらゆるエネルギーが足りない。スマホが熱くなって電池消費が加速した気がする。コンビニで当選した二本目の三ツ矢サイダーを無理に飲んだら、胃袋を更に痛めて余計動けなくなる。


 2020年5月25日

 寝落ちた。遅刻しないように15分毎に眼を覚ましては、時計を確認して直ぐ意識が途切れる。女の子達が現れた。でも私は女の子達のことをまだ知らない。昨日は寝落ちてしまったので、急いでお風呂に入らねばならない。天井がバタバタと鳴っている。つくづく、上階の人間がバタバタ騒ぎ出す時間帯の法則が読めない。頭が痛い。首が回らない。マスクが息苦しい。日記も書けない。マック寄った。銭湯行った。Twitter覗いてまた具合が悪くなった。私の居場所は無い。いつものこと。最初は貧血型の頭痛かと思ったけども、段々頭痛がズキズキと前のめりになってきたから、偏頭痛かもしれない。春と秋の、気温の上がり目に起きやすいのだ。特に前兆はなかったのに。眼が開かない。酸っぱいのが上がってきた気もする。布団に倒れ込んでひー、ふー、と嫌な汗と一緒に虫の息を吐きながら艦これのデイリー任務消化をする。頭痛くて眠れないのもある。文字入力がしんどい。スマホの明かりすら眼に響く。最近妙に活性化してる中学時代の同級生達のグループラインが、いよいよ下劣で下世話な話題ばかりなので、私には本当に何も言うことがないのだ。とはいえ、一人は浪人も長かったのでまだ大学院にいるようだ。それも博士号。私など関東で一体何年間フリーターを遣っているのだろう? 結局、だらだらと艦これ関連のニコニコ大百科やpixiv百科辞典を泳ぎ回り、ジェムソンのロックに、セブンのスモークタン摘まんでた。ちょっと気分が回復したので、寝よう。


 2020年5月26日

 学校のマラソン大会だ。でも規模が凄まじくて、スタートの行列が折り返している。私は妙に乗り気で、同級生や先生達と会話しながら、殆んど先頭のスタート位置に陣取った。序盤は快調な滑り出しで、眼の前の先輩を追い掛けて、自分でも驚くほど自然にくるくる回る脚に任せて思いっきり飛ばしていた。それから……どうなったのだっけ? 酷くだらだらとした朝だけど、部屋が蒸し暑い感じになってくると自然に起き上がってしまう。寒くて動けないよりはずっとマシだ。スマホの写真の整理をする。スマホがすっかり熱を持ってしまって、電池の消費も明らかに悪い。データの移動に時間が掛かるので、Jesse Winchesterをヘッドフォンで聴きながらだらだらする。ヘッドフォンには眼鏡の弦が邪魔である。流石に昼間からアルコールを摂取するのは自重して、そこそこだらだらしてからコメダ珈琲店に出掛けた。あみ焼きチキンホットサンドを頼んだ。ソースがまぁどろどろと溢れてパンが染みる。先日まで七時閉店だったけれど営業時間が伸びようだ。紫陽花の冒頭を一時間近くひたすら手直し続けていたら、頭がぼんやりと動かなくなった。驚くほどに全然言葉が回らなくなった。今日は文字を書くには不適切な具合らしい。そういえば、雨が降っていた。このまま部屋に帰ってもまた寝込むだけなので、駅まで歩く。駅前のmister Donutも店内飲食が復活している。『36℃を越えない日々』というエッセイの構想を考えながら歩く。概ね内容は固まってるけれど、執筆し切るには気力が足りない。艦これのスクショが溜まりまくっていて、不味い。日記も何処かに纏めておきたいし、遣ることはわりと沢山あるのに、部屋に帰ったら案の定寝込んでしまった。こうなると起き上がれないのは確定、艦これの任務消化すら気力が湧かないし、サッカーも九十分追い掛けるのは結構体力を使う。そもそもまだYouTubeの特別無料公開続いてるのかな? 微妙に蒸し暑くて寝苦しい。冬の間は、脚が冷える、脚が痺れると評していたこの「寝込む」現象だけど、暖かくなると脚は特につらくなくて、ひたすらに頭が重くてぼんやりする。頭に血が登ってるのか登ってないのかだけでも明らかになれば対策が出来るのだけど。中学時代の同級生のグループLINEをやたら更新するようになった意識高い系の一人、とうとう、自分の転職経験について語ったnoteなど挙げ始めた。なんでこんな場所でアピールし始めるんだろう? 怖くてとても読む気になれない。誰も反応してないし。もう懐かしい同級生達の雑談場でやるようなことじゃない。ちょっと心配になってきた。地元から逃げ出したのもあって、真っ先に全く反応しないことにしてる私が言うことではないけれど、私以外のみんなも生活の在り方が余りにもバラバラになってきていて、酷く下世話な話題ぐらいしか共通項がなくて、ガタガタの歯車を退屈に回すことしか出来なくなっているのを遠くから見守るのは、正直、つらい。寝る前にジェムソンのロックを突っ込んだらどうも眠れなくなった。寒くて布団から出られないのよりはマシとはいえ、蒸し暑さでだれているのも宜しくない。でも扇風機付けるとお腹を壊す。うう。あと、ジェムソンの最初の数口に「甘い」という形容を感じ始めた。ちょっと進歩した気がした。誰かのむさ苦しい咳がはっきりと響く。私は眠るのが下手。みんな、どうやって寝ているのだろう。眠たくなるから寝るのだろうか。眠るべき時間が来たから寝るのだろうか。何処から私達は眠るための体勢に落ち着いていくのだろうか。一日中布団に転がってるせいなのか、私は眠かろうが、寝るべき時間が来ようが、ここから先が、眠るための時間なのだという区別を付けることが出来ない。だから昼間でも唐突に寝るし、夜中は眠くても寝れない。昨日や今日みたいに座ってることすら出来ずに、眠れないまま寝込むこともある。不眠症ではない。過眠症の気すらもある。なのに私は毎夜毎夜眠るのに苦労する。そしてへんてこな記憶に溺れて、苦しい寝起きに辟易する毎日である。寝込んでる間、足元を高くして心臓より高くしてみたのだけど、効果あったのかどうか全然分からない。貧血にはこうしましょう、と言われて、中学か高校の保健室で脚の位置を高くして寝たのだ。でも、あのときは貧血性の頭痛ではなく偏頭痛だったから、特に意味は無かったと思う。私にだけ重力が三割増しになったような動けなさ、他人から見たら、最早病気だろうか。私も病院に相談したら病名ぐらい付きそうだと思っている。私は私の普通のために、或いはそれ以上に、自分の健康をまともに維持出来ないほどの倦怠のために、布団にめり込み続ける。


 2020年5月27日

 寒さに飛び起きた。扇風機を掛けて寝ると朝が痛烈に寒い。最近は雨か曇りばかりで梅雨じみていて元気が削がれるし、寒い目覚めだったので寝起きから胃の調子が悪い。バスに乗る前にマスクの紐が切れた。予備に鞄に入れておいたマスクの紐も切れた。実家から送ってもらった安物の50枚入りマスク、着ける前から/着けた瞬間から紐が切れててまともに使えないマスクがこれでもう10枚目ぐらい。セロテープで応急処置しようにも手元にない。今日はマスクなしで荒川を越えねばならないのかな、と危惧したけれど、駅のドラッグストアに一枚1000円の布マスクが売っていた。仕方ないから買った。買ってから苛々してきた。自己責任ですらない理不尽は道理が合わない。コンビニの袋まで切れた。今日は何か危険な日だ。でも引き返すことは出来ない。それが、私達の生活である。電車が明らかに混雑している。座席は満席だし、遂に立ってる乗客の人垣で向かいのドアが見えなくなった。ちょっと時間を遅くして出勤しているのにこの混雑だから、やっと日常と生活が戻ってきたのだと思いながら、でも私は今頃に新しい布マスクを買わされるし、この混み入った生活は、これはこれで毎日朝から要らぬストレスだったことを思い出した。昨日が眠れなかったので眠い。帰りに秋葉原に寄ってみたら、女の子達は元気に客を追い掛けてたし、駅前では馬の被り物をしたドラマーが、上手いんだか下手なんだか分かんない演奏をしてるし、秋葉原アトレは概ね通常営業に戻っていたし、遂に秋葉原駅名物、アンケート宜しいですかと無理やり話し掛けてくる宗教の勧誘までもがわらわらと活動し始めていたので、寒くても、春だ。こんな不自由な人生は可哀想だな、と憐れに思いながら、声を掛けてきた男性を完全無視して通り過ぎた。また成城石井に寄ってしまった。クーベルチュール72%を補充して、北海道えびすかぼちゃのパンプキンプリン。相変わらず食費が押している。電車は当たり前のように混んでいて、座席を一マス空ける余裕なんてない。六月から職場も通常営業になるからまたあの日常的な通勤帰宅のラッシュ地獄に戻ることになるのだ。やだな。最寄り駅の側に新しい中華そば屋さんが出来てたのだけど今日は我慢した。埼玉の夕暮れが、紫の手前で淡いピンク色にうねっていて、こんな時節でも、春だ。疲労と眠気の混じった部屋で寝込んでても生活の無駄だし、いっそ久々にランニングして体力を付けようと、500円玉と鍵だけをポケットに突っ込んで夜空に出た。首には濡れタオルを巻いた。久々のランニングなのにわりと走れた。でも初手からAEONまで走ったら大変なことちなるので、最寄りのマクドナルドまで往復する。夜中の埼玉のマクドナルドは得体が知れない。外国人夫婦がずっと眼の前で大袈裟な身振りで喋っている。若者達の一団の一人が、酷い無精髭で、酷い胡散臭い顔で、バーカーを食べながらバーガーを注文して、バーガーを食べながらうろうろ歩き回っている。窓には無数の羽虫。何の使命でここに集うのかすら分からぬほどちっぽけな沢山の羽虫。店内の客は少ないのに、ドライブスルーが立て込んでいるのかカウンターの奥は酷くバタバタしている。なかなか呼ばれない客、なかなか受け取れない客、赤い荷物を持ってくる配達員、店員の慌ただしい声、或いは店員の無駄な雑談ばかりが跳ね返る店内で、私は冷めた心で黙々とポテトのSとマックシェイク チョコレートのSを胃に注ぎ込む。人間しかいないのに、人間が見えない街だ。帰りも順調に走り切って、往復で2キロぐらい、でもまだ余裕があったので、近所の誰もいない公園で濡れタオルで素振りと素投げをした。私は右利きなので、左で振ったり投げたりすると所作が物凄く不自然になる。神経が届かないような感覚がいつも恨めしい。上手く全身を綺麗に使う神経を通せるようになりたい。上半身も多少筋肉痛が残りそうな程に動かしたので、部屋に帰ってお風呂に入って、艦これして、酷く動作の重いスマホを眺めてたら折角動かした体がまた固まってしまった。どうもこの寝床が体勢に悪いみたいだ。結局今日もまた、ジェムソンのロックを、クーベルチュールで。特に何も考えない最良の組み合わせ。運動すると疲労と眠気が混じった中途半端に不快な倦怠感は晴れるので、定期的に設けていきたいと思う。夜風が丁度いい具合の季節だから、熱帯夜が始まる前にランニングの回数を稼いでおきたいと思う。紫陽花の冒頭を一気に書き直す。随分と良くなった。やっぱり「私」をきちんと据えなくてはならないのだ。じゃないと「私」の目撃する世界の描写ではなく、書き手の私が書かなくてはならないこと、書かなくてはならないことを中和するための、書かなくてもいいことばかりが無駄に伸びて、作品が退屈になってしまう。如何せん挫折し続けている別のプロットの横脇をなぞるような話だから、私の都合に流れがちになってしまいそうだけど、大事なのは私の都合ではなく、そこにいる「私」が、そこで目撃している世界の全てだ。やっぱり適度な運動は頭に余裕を作るらしい。あとは適度な睡眠を取るだけなのに、でも私にはまだ修行が足りないから、寝る前に人間の醜さを覗いてしまった。自分達の醜さを、絶対に、自分達の醜さとして認めようとしない、そんな「私達」の深刻な醜さに対する「私達」の抵抗、いや「私達」の誠実な反省は、もうたった一つ、徹底的な沈黙、徹底的な、切断だけしか、ないじゃないか。私はもうニュースすら観れなくなった。場合によっては逃げ場がない分だけTwitterより更に酷い。「私達」に接続すること自体が「私達」の悪行であるならば、私は、孤独に、徹底的に孤独に、私のことを呟くしかない。私達は血塗られている。私達は人殺しであり、私達は害悪であり、私達は恥辱であり、私達は地獄であり、私達は悪魔であり、私達に残された道は集団自殺だけであり、そして私は洗濯物を干す。もう殺すべき王様も神様もいないのだ。ならば私達が「私達」を殺すためには、もう自殺しかないだろう? でも私は私が意地汚く生き残るために、パイプハイターを撒いて、洗濯物を干すのである……って、殆んど自棄になってTwitterに挙げてしまったのだった。私は私の忍耐のなさにがっかりする。さて、宣言したからには、洗濯物を干そう。私は洗濯物を干した。偉いぞ、その調子だ。静かにしていると気分が落っこちそうなので、御近所迷惑にならない程度に部屋のなかを喧しくする。流石にジェムソンの二杯目はやめとこう。夜食にサッポロ一番塩ラーメンを煮た。私達は手遅れだし、私は孤独だけど、私達が自殺したあとの世界が平和でありますように。やはり私は眠るのが下手なのであった。


 2020年5月28日

 ごく短時間だけコンビニのバイトの掛け持ちを始めたらしい。でも同僚さん達の立ち回りが雑で雑で、全然フォローしてくれないし、雑談ばかりしてるし、私一人にレジ業務の負担が押し付けられている。私は慌ててレジを飛び出して、散らばったカートを適当に片付けて……コンビニなのに? ……次の仕事に間に合うために急いで退勤しようとするのだけど、出退勤を管理する機械の操作が分からない。慌てて触ったら変な画面に飛んでしまった。多分、退勤出来ているはずなのだけど……横から現れた店長のおじいさんは、私のことを誉めてはくれるのだけど、機械の操作を手伝ってはくれない。駅のホームで乗り換えを待っていたら、線路の際、向かいのホームのしたあたりに異様に輝く切れ目があった。その切れ目がうねうねと、ちかちかと、気分が悪くなるように動いているから、私は自分の眼が狂ったのかと心配になる。こんなもの、時空の裂け目じゃないか。これは、本当にホームの一部分に隙間が出来ていて、このホームが駅の一段高いところにあるから、下段の景色が微かに透けているのだ。チカチカしているのは電車の車体だろう。正体が分かれば別に怖くない。なのに尚も切れ目の向こうが不自然に動いていて、眼がガチャガチャして、こうやって私達は日常のなかに異界を発見するのだな、と思ったりする。電車に乗り込んでも後遺症が残っている。頭痛を起こさなければいいのだけど。夕方には、夕立が降った。夕立らしい夕立というのも季節感があって乙なものだ。甘く焼けた空気が湿っている。帰りの電車で寝落ちて、最寄り駅で慌てて飛び起きたら扉を跨ぐ寸前に、かちゃん、と何かが落ちた音がした。咄嗟に意味が分からず動転してしまった。私のボールペンが何かの拍子に飛び出して床に落ちたのだ。私は不格好にくるっと一回転して、運良くホームの隙間に落っこちずに済んだボールペンを拾い上げてホームへと飛び出した。我ながら無様な醜態である。寝起きに不意の動転を喰らったせいで、首筋の動悸が凄いことになってる。線路沿いの空には紫色の平べったい痣が浮かんでいる。随分と日が長くなった。今夜は午前五時まで延々と『36℃を越えない日々』を書き続けた。最後の二時間は、脳味噌の体力の限界がきて論理がぐらぐらに崩れ掛けたけど、今日のところはギリギリのところで誤魔化せたんじゃないかな。誤魔化したところで完全に頭が止まった。脳味噌が野球ボール並みに固まってしまっている。寝不足が確定した夜、というか朝、というのは本当に絶望的な気分になる。


 2020年5月29日

 その行列は,最初は船だったけど、途中から運搬用の歩行ロボットになる。もうオンボロの歩行ロボットだ。今日はペンギン型のロボットが寿命を迎えた。子供達が、ぺんたんばいばーい、と手を降った。私は驚いて飛び起きた、良かった、まだ出勤には全然時間がある。動悸がばくばく騒いでいる。とある女の子との約束は、何年も掛かった。少年はおんぼろの自分の船を濃いで、お互いすっかり歳を取って、水辺で再会するのである。その洋風屋敷ではパーティーの途中に殺人事件が起こる。全て繋がっている。覚醒と微睡みを細かく交互に繰り返してどうにか起き上がる。舌には巨大な口内炎が出来ている。こんな派手な口内炎は久し振りだ。外は眩しいぐらいの天気だけど、高架橋を渡るバスから富士山は見えなかった。私は今日も考える。考えて、考え過ぎて、頭がぐるぐるしてきた。閃きが上手く繋がらなくて文脈が凸凹し始める。それで、考えに考えた挙げ句に飽きてしまうのは私の悪い癖なので、時間が掛かっても最後までは根気で書き切ろう。昨日の寝不足も祟って体調は最悪なので、一旦横になって回復に努める。シーバス・リーガル ミズナラ12年のロック、氷で冷やすと一層甘さが際立つ気がする。もう一押しがあるウイスキーだけど、氷が溶けてくると随分あっさり弱くなるようだ。クーベルチュールの80%エクアドルが終わって、普通の72%に戻ってきたのだけど、どうもあの野性的な濁りが足りない。エクアドルに比べて一枚が薄くて噛み応えも弱いというのもある。でも脂っぽさというか、嫌みのない甘ったるさは健在だから、直ぐにこの味にも慣れた。部屋に帰ると強い眠気に襲われるし、寒暖差で胃を痛めたせいか最近は日記を書く気力すら弱っていて、それなのに一度考え過ぎると限界まで粘ってしまうから身体に悪い。スマホも直ぐに熱くなる。部屋はまだ熱を溜め込んでないし、服装次第では肌寒いぐらいだけど、それでも機械の熱を吸い取るには暖かくなり過ぎたのだろうか。結局午前三時まで『36℃』を書いていた。そこからお風呂に入って、二日連続で五時間睡眠を切ることが確定した。あれこれ論じたいことはあったはずなのだけど、ともかく纏まって書ける範囲で自分に前向きな結論を出せた気がする。こんな陰気な私であるが、何故か無理矢理にポジティブに持っていく不思議な才能はあると思っている。


 2020年5月30日

 今日は一日ずっと眠い。職場の忙しさも一段落がついてしまったし、すっかり気が抜けている。一度も入ったことのないまぜそば屋が潰れた。わりと新しい店だったのに、例の感染症の煽りをモロに喰らったようだ。一度も入ったことのない本屋が潰れた。こちらはちょっと衝撃的だった。確かに人通りの少ない立地だったとはいえ、通勤圏内の本屋が潰れる寂しい。でも東京は確実に賑やかになってきている。帰りの京浜東北線は異様に車体の揺れが大きい。キィー、キィーと怖い程に車体が軋む。駅への侵入が余りにも下手過ぎるので、多分、運転手が新人さんなんだろうと思う。今日は五月の終わり、そういう時期という気がする。ところで次の出勤から私の職場は通常営業に戻る。バスの時刻表も既に元に戻っている。私達の感覚に先立って、関東は元通りになる。線路沿いが今日も紫色に染まる。帰宅して艦これしてたら、スマホを何度も取り零す程に眠気が限界だったのでそのまま寝落ちて、案の定首を痛めて息も絶え絶えで眼を覚ました。明日こそは『36℃』を一気に詰めて公開したいと思っているのだけど、今晩は執筆の類いは無理そうだ。中途半端に眼が冴えてしまったので、朝の五時までそのまま延々とニコニコ大辞典とpixiv百科事典を泳いでいた。


 2020年5月31日

 自室なのか職場の作業所なのか分からないけれど,私は私服のまま、積まれた段ボールの中身を整頓している。休憩時間に私はふらっと外出して、何故か電車に乗り込んで帰ろうとした。電車のドアが不自然に早く閉って、戸惑った乗客達が引っ掛かってドアが再び開いた。元同僚さんがキャリーケースを引いて歩き去っていったのを見た。私は、休憩時間に電車に乗り込んでいる自分の不自然さに気付いて慌てて電車から降りた。駅はどんよりとした暗さである。私は母の実家周辺を歩いていた。私はそこで起こった出来事を丸ごと忘れてしまった。頭が痛い。天井はばったんばったんと引っくり返る。布団から立ち上がれないし、肝心の『36℃』を詰める元気もない。僧侶は眼前で、奇妙な方法で父親を殺されてしまう。けれど催眠術でその記憶を失っていたようだ。何か危険なものが河沿いを遡っている。もう普通の生き物ではない、捕獲は無理だ、仕留めねばなるまい。ところで私は母と一緒に、山の斜面に築かれた観光名所を見上げている。階段を登っていくと池が幾つかあって、ここからでは門の一部しか見えないけれど、その先には山寺が続いている。私達は地図を確認していて、山寺の更に向こう、一の池までは、私も行ったことがあるはずだった。私の記憶はぼろぼろで詳細が失われている。序盤のうちにRPGゲームで怪しい洞窟に入った気がするけれど、何処までが私の記憶で、何処までが私のフィクションだったのか? 夕方の六時半である。まだ外はぼんやり明るい。寝床がばたばたで、変な体勢で寝続けたものだから、頭が痛い、腰は痛い、首は回らない、喉は乾いた、寝込んでいるといえば、まさにその通り。天井で何かが転げ落ちる。今日は一日ずっと天井が五月蝿かった。主人公は鎖に繋がれてしまっている。彼は存外元気そうにしている。突如、鎖の怪物達の様子がおかしくなった。それから、怪物達が夜の公園に溢れ出した。実写映画が始まった。薄暗い公園を舞台に、白いぶよぶよした塊に軽トラックが吹っ飛ばされ、獣の怪獣の群れに少年が襲われて助けを求め、友達のカップルはそれを見捨てて走り出す。出撃するキャラクターを選ぶのだけど、頭がぼんやりして編成画面から進まない。私は結局夜の八時半まで寝込んでいた。月末の日曜日なので、艦これの任務だけ片付けた。体調が全く優れないままに六月になってしまった。今月のシフト表が行方不明になる。これでは次の出勤時間が分からない。再配達の紙が郵便受けに入っていて、締め切り寸前で慌てて再配達の手続きをする。夜中になって急に蒸し暑くなって、扇風機回して、倦怠していると眠るのすら億劫で、あちこちが痛くて、四時間睡眠を切りかねない勢い。日記を書くのすら怠いのだから執筆どころではない。行き詰まっている。息が詰まっている。遠くで、ごご、ご、ご、という雷のような音が聞こえた。シフト表は見付けた。日記の頁を改める。



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