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invisible holidays(2020.11.21~11.30)


 2020年11月23日

 一日ずっと頭が痛かった。枕が合わない、だけで説明するには余りにも慢性的な頭痛。私の人生が視神経を刺すような痛みで削られていく。本当はコミティアに出掛けるつもりだった。それで一昨日、土曜日の混み入った秋葉原でコミティアの入場証を兼ねているカタログを探したのだけど、秋葉原ですら発見出来なかった。土曜日の秋葉原を歩くのは体力が要る。当日の発売分も冊数が限られていたし、下手に出掛けて寒いなか行列に並んだり門前払いされたりするのも嫌だから今日は諦めて二度寝した。昭和記念公園はこの数日のうちに強風で公孫樹の紅葉が全滅してしまったらしい。桜も紅葉もちょっと油断していると季節が過ぎるから難しいものだ。となると、最早出掛ける意味もなくなってしまって、頭痛い頭痛いと眉間に皺を寄せながら今日も日が暮れるまで何も出来なかった。光熱費を振り込むついでに住民税の用紙も持っていったら期限を過ぎていた。11月振り込み、というのは11月中ではなくて11月頭までにということだった。また川口駅前の行政センター行かなきゃ。近所のホームセンターで蛍光灯を買い換える。ホームセンターで洗剤とか消臭剤とか探してると何故か体調が悪くなってくる。ホームセンターは嫌いじゃないのに、ぎっちり商品が詰まった棚をうろうろ探してると意識が縮んできてしまうのだ。巨大な黒出目金の巨大な眼玉にちょっとゾッとした気分になる。銭湯でひたすら首を暖めたら幾分頭痛も楽になって、この調子で積み重なった諸々を片付けようとコメダ珈琲店に行ったら見事にスマホを部屋に忘れて何も出来なかった。真っ暗ななかで蛍光灯を換えるために背伸びして真上を向いていたら息が続かなくなった。息も絶え絶え蛍光灯を交換したら部屋がスッキリと明るくなった。二つ点灯させるとじじじーーーという不快に雑音が響いて、でも内側の蛍光灯を消すと外側の蛍光灯が切れ掛けていて部屋が暗い、という状況だったのだけど、これで普通に漫画が読めるようになった。今回はわざわざ千円ぐらい高い、COOL系の文字くっきり光パルックを買った。でも内側の蛍光灯のじじじーーーという雑音は収まらなかった。バランタイン12年をロックで呑み切る。まだ直呑みなんてしてた最初期に、バランタイン ファイネストの猛烈な薬草臭さでスコッチの恐ろしさを思い知った私も、今や平気で顔を真っ赤にしながらバランタインの空瓶に寂しさを覚える人間に成長したのだ。キンコーズで印刷した帰りに、秋葉原駅ののもので富山の地ウィスキーと福島の干し林檎、長野の干しキウイを買ったのだけど、全部後回しになっている。 一昨日と昨日は一文字も日記が書けなかった。一昨日はFleet機能で宣伝未満の呟きを吐いていたら時間が過ぎてしまった。一昨日の記憶と言えば、秋葉原の公孫樹並木が酷く銀杏臭くて、そうか、だから近所の公孫樹も銀杏が臭う前に枝葉を刈ってしまったんだ、と気付いたぐらいだった。あと実家からギフトカード送られてきたのでゆるキャン△を纏め買いしたとか。Fleetに挙げた内容のうちの幾つかは、出来れば後で日記に纏めておきたいと思う……私が旅小説を書けなかった理由とか……昨日は文学フリマ東京で、コピー誌は全然売れなかったけど、こんな御時世なのに出展者も来場者も沢山来ていてイベントとしては成功していたから、台風まで直撃しちゃった文学フリマ大阪の酷い閑散に比べれば遥かに安心してブースに座っていられた。佐藤友哉先生の雑誌を買いに行ったり、お隣のサークルさんに上中里について力説したりした。閉会後に私は「ちょっと寄り道」をした。私はどうやら生魚が食べられる体質になっていたらしいのだ。酒に弱いのにウィスキー趣味を始め、ブラックはまだしんどいけど缶珈琲のブレンドなら眠気覚ましにがぶ飲み出来るようになり、遂に刺身を平然と食べられるうになってしまって、私は自分がまもなく三十路なのだという事実につい真顔になってしまう。或いは、既に罪は許されている、ということについて。許しの概念なく、罪の概念だけを導入しても駄目なのだ。これは私には理解出来ない部分だからこそ興味深かった。後は、私が産まれる前のゲームのこととか、諸々。帰りの電車で鳩尾に裏切られてしまった。900円払って駅からタクシーで帰る羽目になった。生牡蠣には手を出してないのに……彼女の彼氏と彼女の弟が、風呂場に入っていく。彼女はそれを咎めない。彼女は、彼氏が妊娠すればいいのに、と思う。彼氏が弟の子供を妊娠すれば自分の遺伝子もちょっとは混じるだろう。彼女と彼氏は顔付きが良く似ている。良く姉弟だと思われる。彼氏が自分の妹だったら良かったのだ、と思いつつ、彼氏が女であれば良かったのかというと、それも違う。彼女達の奇妙な関係は、弟が突然彼氏を殺害するまで続く。逮捕された弟は動機を黙秘し、彼女だけが取り残されてしまう。本当なら、昭和記念公園の記録を頼りにして新しい旅小説のプロトタイプを作ってみたかったのだけど、すっかり目測が外れてしまった。千葉の少女は、関西から引っ越してきた埼玉の少女と一緒に大宮の本屋で働いていて(二人とも大宮の高校に通っている)埼玉の少女の下手くそな旅徒然に引っ張られてしまうのだ。つまり私が旅小説を書けない理由は……私だってゆるキャン△やKashmir先生のぱらのまみたいな旅ものを書いてみたいのに……北陸から関西を経由して埼玉に暮らす私が、未だに流浪の身である異邦人の感覚を捨てることが出来ないことにある。結果的に、旅そのものを中心に置くことが出来ず、湖からゴルフクラブ持った女が這い上がってきたり、長い長い廊下から覗いた真っ暗な部屋で人間が人間を食べてたりという強引な展開ばかり想像してしまって行き詰まる。旅が常に帰るべき場所を前提にするなら、帰る場所のない私はかえって「私達の街」というテーマ、つまりその街に産まれながら異邦人である少女の感覚にスポットを当ててしまうしかない。ならば私が旅小説を書くためにはまず、何処かに棲み家を想定しなければならないのだ。でも埼玉を棲み家にするのは面白くない。通い慣れているなら職場付近の土地だけど、東京23区のど真ん中に生息する少女では私から遠過ぎる。結局、千葉の友達の住んでるあたりをイメージモデルにして、相方を関西産まれの埼玉県民にするというところに落ち着いた。千葉の少女は漫画好き、マニアックな漫画を集めてマイナーな漫画家を応援している。部屋は汚い。埼玉の少女の趣味はスポーツとか紀行ものとかの動画配信を観ること。ガチャガチャで集めた玩具で部屋の一角に異世界を造ったりしているがセンスがない。関西では引きこもり気味な性格だったので、心機一転バイトを始め、巻き込み易そうだった千葉の少女を引き込んで基本計画性のない旅を企画する。若い男は個性がない。35歳過ぎてからやっと人間出来てくるものやと思わん? ついでに地味な性格だけどウィスキーと大量のCDに囲まれて自適な生活をしてる先輩の同僚さん、その同級生で酒浸りだけど旅の知識が豊富で免許も持ってる大学院生とかを配置してみる。何が起こるかはお楽しみ。文学フリマの開場がいつもより遅れて12時スタートということを失念して部屋を早く出過ぎてしまったので、時間を潰すために東京駅で降りて、丸の内の丸善で東山魁夷の展示を鑑賞した。東山魁夷は、抽象化や単純化が巧みというか、不完全な私達が自分の記憶を整理するうえで自然脳内組み上げてしまう抽象的で単純な世界をそのまま純粋に取り出し、かつその純粋さに絵画的な処理を加えて大胆かつ静謐な奥行きを与えることで、シンプルで親しみ易くも軽薄にならない芸術性を産んでいるのかな、などと考えてみる。代表作、道、など抽象化と単純化を突き詰め過ぎて下手を凡庸である。そこを凡庸で終わらせないところに東山魁夷の巧みさがあるのだと思う。このあたりを適切に総括するには私の知識が足りない。そして展示作品にはそれぞれ値段が付けられているのだけど、平然と二桁万件後半が並び、三桁万円は当たり前、肉筆画に到っては四桁万円のものもあってくらっとしてしまった。リトグラフなどの版画作品は一点物ではなくある程度の刷り部数があるのでまだ値段が抑えられているけれど……場合によっては復刻することも出来るし……それでも東山魁夷クラスになれば三桁万円で取り引きされるのだし、そして東京は丸の内ともなれば三桁万円の絵画の売買が普通に行われるのだ、とちょっと自分の場違いっぷりに息を飲んだ。そういえば、実家の玄関に、東山魁夷「風」の、湖に反射した白馬と山林という絵が飾ってあった。というかそっくりな絵画が今回展示されていた。私はいまいち実家の玄関の絵を好きになれなかったのだけど……抽象化と単純化が凡庸に思えたのだ……でも少なくとも東山魁夷「風」の絵画を選ぶセンスをあのド田舎の誰かが持っていたのである。しかし誰が選んだんだろう? まさか本当に東山魁夷のリトグラフだったりせんよな? 三日分の日記を纏めたら四時間睡眠になってしまった。なんと私は未だに家計簿を放置している。どんどん溜まっていくレシート。しかしもう寝なければ明日の仕事に支障が出る。じんわり頭が痛い。私の休日は頭痛に七割が喰われた。そして今日も私は眠るのを恐怖している。先週は完全に艦これを放置してたけど、今週はイベント前に勲章だけは回収しなきゃ。ゆるキャン△のカバー裏漫画、これは透明カバーを掛けてある満喫では読めないものである。


 2020年11月24日

 とあるバンドは作詞家がなかなか仕事をしないので楽曲を発表出来ない。バンドのメンバーが急かすけど作詞家が応えないものだから、彼等は痺れを切らして部屋のなかで勝手に演奏を始めてしまった。この演奏がとても上手くいって、彼等は作詞家を除いてこれで行こうこれで行こうと盛り上がり始める。寝不足ではあるが頭痛がないだけ遥かにマシ。牛丼屋の一番奥の席に座ったら電波悪くて艦これが動かない。さて、彼女は何処に住んでいるのだろう、新しく始めるには彼女の居場所を確定させなければならない。


 2020年11月25日

 座席の料金はかなり安かった。一人あたり375円とかそれぐらいだ。四人分の料金を同級生が纏めて払った。シラス、というのはとある高級な宝石に付けられるブランド名の一つなのだという。赤い部屋には宝石をあしらった装飾品が並び、この部屋の持ち主は宝石の鑑定などをする権利を持っている。何故か覚えているのはこの二つだけ。私達に何があったのだっけ、余り楽しいことではなかったと思うのだけど。ああそうだ、祖父が客間で何かの歴史を私達に説明していた、客間には額縁に色々とその歴史に関するものが飾られていて、祖父は最後には自分は感謝状も貰ったんだと自慢してから縁側のほうに出て入った。縁側には何がいたのだろうか。部屋は凄まじく寒い。電気毛布から零れる足元がすっかり冷えている。私はゲームを遣っている。とある場所からとある場所に空を飛んで移動している最中に何かアイテムを盗まれた。更にポケモンのフリーザーと遭遇した。レベルが低くて危うく倒してしまいそうだ。ギリギリまで体力を削ってボールを投げる。たった一度で成功する。近くにいた人が、あんまりフリーザー強いと思えないんだよね、と言ったので、その強さについて……私も又聞きだけども……説明したりする。私は奇妙な冒険の果てに学校に帰ってくる。みんな学校で自習している。私は浪人でもしてるのか酷く居心地が悪くて、後ろに座っていた軽薄な青年達と酷く悲惨な喧嘩をした。どうやら私は何とか彼等を遣り込めたらしい。彼等にも非があったとはいえ、我ながら暴力に訴えるような喧嘩はするべきじゃない……寒い寒いと思っていたら雨が降っていた。今年は過ごしやすい晴れ間が多かったから、今日は一気に寒くなった印象だ。昨日も日記も書かず寝落ちてしまった。荷物をあちこち放り出して寝たせいで姿勢がズレて肩凝りがするけど頭痛さえなければいい。ぐらっときた。世界がぐらっときた。結局最後にはゴルフクラブの女性が現れるのだ。最初は舞茸弁当から始まる。昨日は職場のとある後輩のとんでもなく雑な仕事に衝撃を受け、とある上司のとんでもなく面倒臭い仕事振りに苛々して、仕事の出来る先輩が間もなく退職してしまうというのに、こんなんで来年は大丈夫なんけ? とうんざりしながらとっとと退勤した。ユニオンで安物を漁ってから行政センターで納税して、普段寄らないラーメン屋にユニオンの袋を忘れたので走って取りに戻る。部屋に帰ったら途端に気怠くなってきてFleet機能で愚痴ってしまった。一利を百個並べても真理にはならない。百人が各々に一利を並べても真理にはならない。哲学者は大衆を憎悪する。哲学者はラーゲリを用意し、大衆は哲学者を殺すためにギロチンを用意する。彼女は大宮の本屋で働いている。昼間には烏の有明、夜には猫の東雲が現れて、近所の汚れた用水路には河童を名乗る少女が笑っている。彼女は普段は眼鏡を掛けて淡々としているけれど、眼鏡を外して自分の世界に浸っていると宇宙と交信してるみたいだと言われる。本屋には若くて健康的な高校生達とか親しい同年代の同僚もいて、彼女を介して小説を書いている呑んべえ女子とも知り合う。いいかい、そんなものはないんだ、と気付いてしまった人間が小説を書き始めるのさ。君はきっと小説を書く才能がある。そんなものはないと知りながら、そんなものと一緒に生きているのなら。彼女の部屋のロフトには身内が住み着いている。一向に降りてこない。河童を名乗る少女がお店に現れる。真っ赤に火傷して死んでしまう。彼女を介抱しようと駆け寄った高校生の少女達は、河童を名乗る少女の死体を回収しようとする男性に拳銃で撃ち殺される。男性はそのまま拳銃を構えながらエスカレーターで階下に逃げようとするが、同僚が咄嗟に仕掛けた罠に引っ掛かって、真っ逆さまに転げ落ちていく。彼女は青褪めた顔をしながらふらふらと本屋の隅っこに逃げていくが、そこには例の呑んべいがいて、どうだい、小説は書けそうかい? と呑気な顔をして問い掛けるのだ。雨が降ると具合が悪くなる。寒さと湿気で眠くなる。実際手遅れだったし。冬に向けてどんどん動きがトロくなっていく。首や背中が慢性的に痛くて、私は変な運動をしながら少女達の下手な旅のことについて考え続ける。Instagramに伊豆の写真を挙げて、200枚ぐらい一気にUSBに移してスクショの整理などをして、そして私はやっっっっとレシートの整理を始めることが出来た。二週間ぶりなのだ。家計簿を見てると気分が辛くなる、こう、せめて寒い部屋で遣るものじゃないと思う。ところで問題は電気代だ。良く分からないまま別の電力会社に移行して口座引き落とし設定をしてしまったのだけど、一向に引き落とし履歴が付かないのである。電力会社のHPは表示出来る範囲が限られてて全然状況が掴めないし、ネットダイレクトで銀行の利用履歴を確認しても、NHKが10月に知らぬ間に引き落としてた以外には特別な動きはない。勿論以前の電力会社からの振込用紙は届いてないし、つまり私は三ヶ月ぐらい電気料金を払っていないのだ! 確かに初月無料みたいなサービスはあったのだけど、三ヶ月は気味が悪い、突然何の通告もなしに電気を止められたら私は凍えて死んでしまう……些細な勘違いでガスを数日止められたことはあったけど、この季節に電気は非常に不味い。この三ヶ月電気を止められてない、ということはきっと大丈夫なのだろうと信じたいのだけど……不安が先走ってあれこれ検索していたら無駄に時間を潰して深夜だ。夕食もお風呂も、艦これの月末滑り込み勲章回収作業すらも終わっていない。部屋の寒さが身に凍みて布団から動けなくなる。お金の不安は神経を痛める。そういえば給料から引かれる保険料のランクが今月は一つ下がって千円程得をしていた。社会保険料が高過ぎて健康を崩してる気がする。健康保険や雇用保険はともかく、厚生年金でこんなに取られるのは……お金の不安は神経を痛める。深夜が眉間に突き刺さる。この露骨な冷気は何処から漏れてくるのだろう、布団に寝転ぶと、見事に私の額の位置をふわっとふわっと深刻に凍えさせていく。比較的楽なはずの2-5で大破撤退に編成ミスに索敵不足、一周すら出来ぬまま五時間睡眠が確定。寝る前に不要なストレスばかり重なる。人生が一歩も進まないという苛立ちを抱えて電気を消す。


 2020年11月26日

 バスに危うく飛び込んだ。マラドーナが死んだ。小林泰三先生に矢口高雄先生が亡くなった。私には余り関係のない方々とはいえ、自棄に訃報が重なる。日本シリーズ終わってJリーグ終わって、知らぬ間に今年が過ぎていって私はぼんやりとしている。頭痛はないけど絶妙に血の気が薄い。今日は天気が悪くて寒い日らしい指先の関節がピリピリするような体調の悪さだったけど、休憩中に牛丼突っ込んで五分程微睡んだらちょっとマシになった。膝や腰が痛む。雨と寒さのせいだろうけど立ってるのがしんどい。暇なときにこっそりメモ帳に書いてるプロットが随分可笑しな方向に転がって楽しくなってきた。自分の予期しない展開に脚を踏み外していく。破綻していく。土手の草は後で刈ればいいのだから、今は存分に転がり落ちればいいのだ。艦これは2-5と3-5の勲章集めが予想以上にすんなりと終わり、イベント前に幸先のいい状態に落ち着いた。で、俯せ姿勢で艦これ遣ってたら、首の左側面を痛めた。ここを痛めると視神経を抉る頭痛に繋がっていくらしい。何となく元凶が見えてきた。とはいえこの痛めた箇所をどうすれば治せるのかが問題で、一度痛めると全然治らないし、首が痙攣して跳ねるし、軽度の頭痛で作業も出来ないし眠れもしないしで夜中に完全に行き詰まってしまう。そうだ、先日ふと気が付いたら、血豆に溜まっていた血の塊がごっそり消え失せていた。漏れてはいないし、皮膚内に再吸収されるものでもないと思うから、多分何処かで剥がれ落ちたのだろう。今では透明な皮が浮いているだけだ。指に口が開いていたのに。今では口でも眼でもなくただの皮だ。あと、先日二千円ぐらいで買ったジェルクッションの中敷きを夜中のうちに仕事用の靴に入れてみた。一先ず然程窮屈ではないようだ。これで明日以降の立ち仕事がちょっとでも楽になればいいのだけど。あと何だっけ、何か忘れてる。私は大抵何かを忘れている。頭が痛い。寒い季節の頭痛は神経に響く。


 2020年11月27日

 バスに乗り損ねた。寝落ちたわりに良く眠れたけどかえって部屋でだらけてしまった。駅まで小走りしたものだから汗を掻いた。出社ギリギリになるし忘れ物もしてるしで散々。ジェルクッションの中敷きは、靴下を履くと若干窮屈だけど、前みたいに指が千切れるとかそんなことはないので良かった。効果はあんまり分かんない。不意に神経過敏がすすすと頭に乗り込んできて感情が不安になる。神経過敏は急に押し寄せてくる。落ち着かなくては。私は私の世界にしか責任を取れないのだから。幾つか偶然が重なって平出修という名前を連続で見掛けたので、一応覚えておこうと思う。帰りの電車のなかで、お爺さんが近くに座ってる部活帰りの女子高生にだらだら話し掛けている。普通に迷惑な酔っ払いといえばそうなのだけど、頑張れよう、勉強しろよう、と連呼する田舎の親戚のお爺ちゃんという感じでそこまで悪いひとではなかったから良かった。良かったのかは、知らないけど。女子高生のほうも戸惑いつつ穏和に質問に答えていた。柔道を遣ってるんだそうだ。お爺さんが74歳、女子高生16歳。お父さんは45歳。私はもう28歳だった。そんなことをこっそり日記に書いてたら一駅乗り過ごした。たまには違う道を歩いて帰ろう。艦これはメンテナンス中。延長してるみたい。George HarrisonからTom Pettyに飛ぶ。アメリカン・ロックとは何なのか私は未だに分からない。フォーク・ロックやサザン・ロックのような土着的なロックとはまた別の文脈にある気がするのだけど……

ついでにEric Claptonも。Laylaは結局アルバム版が最も完成してる気がする。それはやっぱりDuane Allmanがいるから?

虫が一匹、瓶の合間を這っている。しかし私には武器がない。仕方ないのでファブリーズで吹っ飛ばした。虫は何処かに消えた。何処に消えたのだろう? ロフト登って久々に頭を天井に何度もぶつけながら積山を漁った。これ持ってたっけ? という海外文学が隠れてたりするから驚く。今回の探し物は、日本文学全集の詩を集めたものだ。今冬はちょっと詩を勉強しよう。艦これのメンテナンスが空けたので任務消化してたら深夜四時である。なのに九時には起きて出掛けようってんだから、これで明日私は本当に群馬の山奥まで行けるのだろうか? サンシャイン・ウィスキーのロック。透き通った色合いで、これは、果実系の風味なんだろうか、甘味の強い匂いと味わいが氷が溶けても根強くて背筋がしっかりしたウィスキー。ロックだと後半苦味が雑になりがちなのは御愛嬌。地方ウィスキーは玉石混淆な印象だけど及第点は行ってると思う。エクアドル産クーベルチュール80%と一緒に。


 2020年11月28日

 みんなで教室に集まっている。理科室のような部屋だ。私達は合唱だか演劇だかを遣るようだ。そのまま身体測定の大会が開かれるから帰らないでね、と先生からお達しが出た。私は無料で配られていたよしずを貰って道を歩いた。やたら長いよしずの先が尻尾のように曲がって揺れている。運動場に突き当たると既に身体測定の大会が始まっていて、子供達が並んで馬跳びを始めていた。予定調和というか、午前中には全く起きれなかった。眠気と寒気に神経を遣られて全く布団から出られない。眠気はともかく「脚が冷えて動けない」季節が到来してしまった。群馬は諦めよう。まだ明日があるし。仕方ないので布団に籠ったまま艦これのイベントを始めたのだけど、初手から全く第一ボスまで辿り着けない。だらだら試行錯誤を繰り返し、軽空母二隻に増やしてやっと到達出来た。レトルトの味噌汁を飲んで、体内を軽く暖めてから部屋を出た。生憎素晴らしい秋晴れだ。京浜東北線に乗って大井町で降りる。大井町で東急大井町線に乗り換える。急行が来てたけど、目的地に停まるか分からなくて適当に各駅停車に乗った。何となく頭がぼんやりする。頭の血の気が足りないし、ついでに膝からしたがぴりぴりする。電車は高架を登ったり降りたり、秋晴れに広がる東京の住宅街を登ったり降りたりしている。アパートの合間、一軒家の屋根、空が近付いたり離れたり。しかし駅間が短いな……踏切、木柵、赤い座席、何となく緩い車内、トンネルと地下駅……全く馴染みのない駅名。微かに頭が痛くて、自棄に眼が乾く。ぼんやりした視界がするすると意識を通り抜けていく。これだから旅ものが書けないのだろうなぁと思う。自由が丘で一気に混んだ。目的地の等々力駅に着いた。それで、午後五時半に等々力駅に戻ってきたら、東京はもう真っ暗だった。カレーつけ麺を食べる。大井町行きの京急は暖房が弱いのかやたら寒い。大井町駅前のイルミネーションを見て、私は確かに一度ここに来たことがある、と思う。りんかい線で降りたのだ。あれは確か東京モーターショーの帰り道、友達と別れて……どうだったっけな。京浜東北線は暖房が効いていて随分マシだったけど、それでも膝からしたが痺れるような寒気が抜けない。しかも換気で窓が空いてるから暖房が抜けてしまう。私は迷惑にならない程度に貧乏揺すりをしながら日記を書く。日記をちょっと書いたところで私は疲れに負けて電車で寝てしまう。脚がすっかり冷えてしまった。ここまで脚が冷えると帰宅しても何も出来ないだろう、ということで快活に寄って日記を書こうとしたのだけど、寒さが腰や膝に居着いてしまって全く言葉が浮かばない。廃墟の映像を流す。面白い映像だと思うけど足腰が痺れてる環境で観るようなものでもない。仕方ないのでInstagramに伊豆の写真を挙げつつ、PC画面からブラウザ版の艦これにログインしてみた。PC画面のほうがプレイが快適とは聞いていたけど、本当だ、通信早いし、インターフェースも機能が増えてるし、ミニゲーム出来るし、エフェクトも滑らかだし、何より羅針盤の回転が早い。甲難度に挑戦したもののE-1初手から酷いスタートで、資源とバケツばかり無駄に消費した挙げ句に結局乙難度に下げた。帰宅してからInstagram作業を再開、眠気を押して200枚近く、長池公園脇廃道まで挙げたらもう深夜の二時だ。結局深夜になっている。肝心の等々力渓谷の日記は殆んど書けていない。冒頭の部分だけだ。人生の効率が悪いのはいつものことだけど、艦これの羅針盤の理不尽さはもうちょっとどうにかしてくれ。部屋は冷気が凍みてきて寒い。一日一呟もサボってしまったしInstagramの区切りの報告もしてないし、文芸活動も進んでないしそれなのに私は何故こんなにも慌ただしがっているのだろう? 明日こそ群馬に行くために午前九時には起きて……午前十時には部屋を出て……世田谷は住宅街の真ん中に渓谷が流れている。渓谷の先に御寺がある。遺跡がある。大きな公園が全面封鎖されていて、新しいアパートが全面封鎖されていて、古墳の斜面を駆け上がって子供が遊んでいる。宇宙 日本 世田谷という不思議なアルバム・タイトルを思い出しながら夕暮れの寒さを歩いた。


 2020年11月29日

 そのバスは怪しい場所に向かう。私達の仲間が何人か乗り込み、本当は閉じられているはずのカーテンを開けて、私達は並走する形でバスを追い掛けていたのだけど見失った。私達は音信不通になった仲間達の顔触れを確認する。夜になって仲間達が夜道を歩いているのを発見する。仲間達は口を閉ざし、私達は何があったのか追及しないよう気を付ける。私は仲間達が帰って来たことを職場の店長に報告する。他にも色々と私は変わった体験したはずなのだ。でも思い出すために布団に潜っているわけにも行かぬ、脚がちゃんと暖まっているうちに出掛けなくては。籠原は例の如く扉が開きっぱなし。滅茶苦茶寒い。暖房がいまいち効いていないのだ。籠原で十二時だからまだまだ先は長そうだ。ボックスは取れなかった。艦これは電池を使い過ぎる。高崎でも信越線が出るまで四十分待たねばならなかったけど、早めに停車していた横川行きの車内がわりと暖かくて助かった。脚に響く寒さのなかで山に向かうなんて相当な苦行だろう。大丈夫なのかな。駅弁のだるま弁当を食べる。それから、私は再び駅まで戻ってきて、16時18分発の電車に飛び込んだ。群馬の暗闇を突き破っていく車両には私を含めて二人しかいなかった。タクシーで十分ならば、急いで徒歩四十分ということだ。電車がが (ぱっ) たんと跳ねたから今日も線路は黒いのを踏む。要するに、温泉上がりとはいえ群馬の夜はもう息が白くなるということだ。高崎行きの信越線は結構長い。派手に揺れてごきんぱきんと金属が喧嘩している。今回の目的地であった妙義神社はとても良いところだったし、道中の寂れた殺風景な景色も楽しかったし、夜景観える温泉も良かったから総じて充実した旅だったけど、最後に急いで夜道を歩いてすっかり疲れたから電車のなかで日記を書く元気がない。容量不足には悩まされたけど無事に写真を撮り通せた。でもあの信号は撮り損ねた。タクシーで十分の範囲に信号は二つしかなくて、しかも一つは三叉路の脇道への注意喚起のために一方向のみに向いているから登りでは見えないのだ。結局高崎でまた二十分程待たねばならなかったので、八百円出してグリーン券を買ってしまった。この季節のグリーン車の最大のメリットは扉が開いても寒くならないこと。殊更時節柄で扉や窓が開きっぱなしになりがちなので、外気から遮断されて確実に暖房が効いた座席を確保出来るのはかなり大きい。適当に買ったチョコレートケーキ食べて、寝た。いまいち背中が合わなくて首が痛くなったけど大宮までずっと寝ていた。大宮まででグリーン券買ったけど、そういえば上野東京ラインは浦和まで出られるのだ。頭上のランプは赤くなってしまった。このまま気付かれずに浦和まで行けるものなのかな、とそわそわしてたのだけど車掌さんに見付かってしまった。料金は変わらないのだけど、行先変更の処理だけしてもらった。二つ前に座ってた男性も同様に大宮から浦和まで延長していた。夜の九時頃に帰宅。艦これのE-1の輸送ゲージを突破。乙難度でも戦力を温存出来たのは良かったけど、結局攻略サイトに最短編成を頼ってしまったのが悔しい。暫くはE-1でレア艦娘掘りをしよう。山崎を呑み切った。ドライのキウイと林檎も食べきった。今日は酔いが凄まじく回る。アルコール性の全身の痺れと眠気が襲ってきて日記どころじゃない。艦これどころでもない。部屋は寒いし疲れたし、今日はもう寝よう。夜道で満月がどんどん巨大になる。背後で山影がどんどん巨大になる。満月と山影夜道を覆い尽くして私達が逃げ場を失う前に無事に駅に辿り着けるだろうか?


 2020年11月30日

 無茶苦茶な冒険だった。何度も途切れて何度も繰り返される。なのに私が覚えていることといったら、四本の割り箸を拾う場面だけなのだ。神社の境内のような場所だ、一緒に母と兄がいて、私達は何処かに移動して……思い出せる内に書き残さなくては、と私は記録を始めるが、記録したという行為が記録されぬまま虚空に消えた。それを何度も繰り返した。知らない街で私達は奮闘していた。私達の細切れにされた奮闘は失われて何処にも残らない。睡眠時間は稼いでるはずなのに、何回も夜中に眼を覚ましたせいか眠気が全然抜けない。結局コンタクト外さないまま寝落ちてしまったし。今日はいまいち調子が上向かない一日で、動作のギアを下げて過ごすけど、月曜日から何故か厄介事ばかり重なって慌ただしい。帰り道で突然将来のことが不安になった。月並みな不安も熟成されると体が動かなくなる。気味の悪い話を考える、例えば、電車に飛び込んで眼を覚ましてを飽きるまで延々と繰り返し続けるとか。部屋に帰ったら落ち着いたので、妙義山の旅小説書き始めたのだけど、相変わらず細かい文章が気になってなかなか先に進まない。結局私の文体そのままで書いてしまっている。つくづく私を消して世界を記述するのは困難だ。とはいえ書けなくはない模様、もうちょっと進めてみよう。E-1の掘りは、新艦娘が落ちる輸送マスのボス装甲が全く削れず何度繰り返してもA勝利、魚雷カットインは全く出ないし、出ても装甲抜けなくて、実は新艦娘以外は輸送マスより戦力マスのほうが豪華という情報を得たのでこっちに切り替えた。バケツ消費量はこっちのほうが増えそうだけど、乙難度ならS勝利は可能だし、敵に艦載機がないので基地航空隊のボーキ消費も抑えられる。ただしこちらはS勝利ガシャンがある。というか三連続でS勝利ガシャンだった。それでも輸送マスで実りの薄いA勝利ドロップを延々と繰り返すよりはマシだろうか。眠気と寒さのダブルパンチ。天井は真夜中にバタバタと鳴り始める。日記の頁を改める。


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