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ZEROから始める血盟生活 No. 22

その夜夢を見た、小さな女の子が一人荒野にポツンッっと立っている、少女の瞳からは一粒の涙が溢れていた。
私はその子に(どうしたの?)と尋ねると、(お母さんが居ないの…)と答えた。
私はまた少女に質問する。(お母さんはどこに行ったの?)
(分からないの。朝、目が覚めたら居なくなっていたの。お母さん、お母さんはどこに行ったの…。)
母親を探して泣く少女の手を握って一緒に
探すが、辺りには誰もいない。
周りは次第に暗くなり、少女はとうとう立ち止まってしまった。
(お母さん、私が悪い子だから居なくなってしまったの?ごめんなさい、皆んなごめんなさい…)
次の瞬間、私の手を握っていたはずの少女は硬い氷壁の中で静かな眠りについていた。
硬い硬い氷壁……まるで少女の硬く閉ざされた心のように硬い氷壁……。

……………こ…ねこ……ねこ起きて………

「ねぇ、ねこ起きてったら。」

「う、う〜ん。ごめん、ごめんなさい…。」

「どうしたの ねこ?何で謝ってるの?」

「え!?……エミリア?」

目を覚ますとエミリアが心配そうな顔をしながら、私の寝ているベットの横に立っていた。

「お早うエミリア。どうしたの、何かあったの?」

「どうしたのって、聞きたいのはこっちの方よ。朝起こしに来れば、ねこが泣きながら、ごめんなさい、ごめんなさいって魘(うな)されているんだもの、わたし心配しちゃった。」

よく憶えていないが、どうやら私は夢で魘されていたようだ。
そういえば、何か悲しい夢だったような気もするけど。
取り敢えず、エミリアには大丈夫、心配しないでとは言っておいたが、私の中で何かが引っかかっていた。
まぁ、特に気にする必要もないか、只の夢なんだから。
それよりも今日はいよいよエミリアと村にお使いに行く日だ。
気を引き締めて掛からねば。

私達は軽い朝食を摂って身支度を済ませてから屋敷に残るロズワール、ラム、ベアトリスの3人と挨拶を済まし、早々にロズワール邸を後にした。
スバルとレムは村の子供達と川に遊びに行くため、途中まで一緒に行動する事になっていた。
ロズワール邸から村までは街道を下る一本道になっており、四人は竜車に乗って移動していた。
竜車の手綱を握っているのはメイド姉妹の妹である青髪のレムで、私を含め残りの3人は荷台といった形である。

「ねぇ、スバル。今日は川に行って何をするの?」

「うん? ああ、そうだな。先ずは、魚釣りだな。そんでもって釣った魚と山で採った山菜を天ぷらにして皆んなと食う!」

「天ぷら?変わった名前の料理ね。それはスバルの祖国のお料理なの?」

「ああ、こっちには天ぷらってのはないんだったな。天ぷらっていうのは、食材に小麦粉をまぶして解いた卵に付けて油で揚げた料理なんだ。
今度屋敷でエミリアにも作ってやるよ。」

「ふ〜ん。変わった調理方なのね。うん、楽しみにしてるね ♪」

「スバル君。もう子供達が村の前で集合していますよ。」

竜車の中でたわいもない話をしていると、レムが間も無く到着する村の方を指差しながらそう報告してきた。

それを聞いた私達がレムの指差す方へと目を向けると、子供達が村の入り口付近で、今か今かとスバルの到着を待っているのが見える。

「アイツら家まで迎えに行くから待ってろって言ったのに。まったくせっかちな奴らだなぁ。」

「きっと子供達も楽しみにしてたのよ。いいわねスバルは人気者で。」

そして竜車は子供達の前で静かに停車すると、待ちわびていた子供達がワラワラと集まってきた。

「遅いよ兄ちゃん!皆んな待ちくたびれてたんだぜ。」

「お早う皆んな!待ち合わせの時間まではまだ結構あるはずだけどなぁ?お前らがせっかちすぎるんだよ。」

集まって来た子供達の一人一人の頭を撫でながらスバルが話しをしている横で、何やらモジモジして頬が薄っすらと紅くなっている女の子がいる。
その少女は、茜色の髪を綺麗な柄のリボンで結んでいて、私と同じ黒茶色の目をした可愛らしい女の子だった。

「どうしたんだペトラ、そんな所でモジモジして?オシッコでも我慢してるのか?」

あ〜〜…スバルの奴は何てデリカシーのない男なのだろう…。あれはどう見てもスバルを意識している女の子の態度なのに…。

スバルの言葉に『ムッ!』っと顔を歪めた少女は彼の脛(スネ)をポカッっと蹴り飛ばし竜車を降り立ったばかりの私の方へと走って来た!!

『バンッ!!』

ペトラと呼ばれていた少女とぶつかり、彼女はその場で大きく尻もちをついて座り込んでしまった。

「君、大丈夫?何処か怪我とかしてない?」

「う、うん。何ともないよ」

私は倒れたペトラを抱き起こし、土で汚れてしまった部分を手で払い落としながら彼女の無事を確認する。

「そう、良かった。ペトラとか言ったっけ、そのリボン綺麗な柄ね。よく似合ってるよ!」

「本当!?このリボンはお母さんに貰ったんだぁ!すごく可愛くて私のお気に入りなのぉ。」

この子はスバルにリボンの事を可愛いと言ってもらいたかったんだろうなぁと思いながら、さり気なく彼のフォローも忘れない。
私ってなんて出来る女なのだろうか…。

「そうだ!このリボンもう一つあるんだぁ。
気に入ってくれたんだったら、お姉さんにもあげるよ!はい、どうぞぉ。」

そう言ってペトラは服のポッケからもう1組同じ柄のリボンを取り出し、私に手渡してくれた。

「これを私にくれるの?ありがとう!大事に使わしてもらうね。」

そんな私達のやり取りを見ていたのだろうか。
スバルと話をしていたリーダー格らしき男の子が私とペトラの間に割って入るように話しかけて来た。

お!?この『おばちゃ…』

ギロリッ!!!

男の子が私に対して失礼な形容詞を口にしようとした瞬間、思わず鋭い目で睨みつけてしまった。

「お、おば…お姉ちゃんは誰だ…ですか?」

「お、おう。カジルそいつは俺とエミリアたんの友達で ねこって言うんだ。今日は別の用事でここまで一緒に来ただけで、俺達と一緒には行かないが、仲良くしてやってくれ。」

カジルという少年はスバルから私の紹介をしてもらい、改めて私に辿々(たどたど)しく挨拶をしてくれる。

「お、俺…僕はカジルって言う…言います。お、おば…お姉さんよりしく。」

「はい、よろしくね!カジル君。」

最初はムッっとしたが、こうしてちゃんと挨拶してくれると可愛い男の子だ。
私はカジルと握手して笑顔で答えた…が、何故かカジルは半泣き状態になりながらスバルの影に隠れてしまった。

「おいおい、幼気(いたいけ)な少年を泣かしてやるなよ ねこ!」

「え!? 私は別に何もしてないわよ!!」

子供達のリーダー格を泣かした女として、それ以降子供達は私に近づいて来なくなってしまった…。
私が一体何をした〜w

らんちゃん♪
@rantyann_0627
https://twitter.com/rantyann_0627


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