小説_ZEROから始める血盟生活

ZEROから始める血盟生活 No. 32

「レム、レム。お客様が酷い顔で泣いているわ。」

「姉様、姉様。本当に酷い顔ですね。まるで…〝 ピィー 〟のようです。」

私達の傍で、メイド姉妹のラムとレムは両腕を広げて抱き合いながら、いつものように毒舌を吐いていたが、私はワザと聞こえないフリをしてやり過ごそうとするが…

「「無視をしないでこの 〝 ピィー 〟顔の〝ピィー 〟なお客様!」」

「 さっきからピィー、ピィー五月蝿(うるさ)いわね!ちゃんと聞こえてるけど、使用禁止用語だと〝ピィー 〟にしか聞こえないのよ!」

「あら、やっぱり聞こえていたのね。まぁ、そんなことより、妹のレムを助けてくれたそうね、お客様には感謝しているわ。向こうに行ってお腹が空いたらコレでも食べて。」

ふざけて嫌味を言っていたラムが、一転して私に感謝してきた。しかも紙袋いっぱいのホクホクに蒸した芋を手渡してくれるというオマケ付きだ。

意表を突かれた私は、呆然と芋の入った袋を受け取ってしまう。それを確認したラムは軽く一礼し、ロズワールの元へと帰って行く。
ラムの隣にいたレムも、私にペコリッと頭を下げて、こちらは大好きなスバルの元へと帰って行った。
二人とも、私に御礼を言いたかっただけの様だが、性格的に素直に言えなかったようだ。

次に挨拶に来たのがエミリア王選候補の推薦人ロズワール伯爵だった。
彼とはあまり話してはいないが、エミリアを救った功労者に一応の礼を言いに来たようである。

「やあ〜、やあ〜君達。今回はエミリア様を救っていただき、誠にありがとうと言っておこうかぁねぇ〜え。」

相変わらずの歯に絹着せぬ言葉使いである。
ロズワールは握手を求めてきたので、嫌々ながらもそれに応えた。

「いえいえ、エミリアは私の友達なので、当然のことをしたまでですよ。」

「ふふ〜ん、友達ねぇ〜…。貴女は不思議な方ですねぇ〜え、一体誰に連れて来られたのやら… 」

「え!? ……それは……。」

「おい!!ロズワール!もうその辺にしとけ。」

私がロズワール伯爵の返答に困っていると、スバルが間に入って助けてくれた。
やはりロズワールは何かを知っているような口振りだ。果たしてこの道化師はエミリア達にとって敵なのか味方なのか…
出来れば後者であって欲しいと私は心の中で願うばかりであった。

「すまねぇな。アイツは、これから俺が何とかするから、お前は安心して元の世界に戻ってくれ。」

「うん、エミリアのことは頼んだわよ!」

「おう!エミリアは俺が命に代えても守ってみせるぜ!!ってもう何回も死んでるかw」

そして最後に、私はスバルと固く握手をし、これからのお互いの健闘を祈りあった。

「じゃぁ、そろそろ元の世界に帰るわね!皆んな元気で。さようなら!!」

スバル達との別れの挨拶を終えた私は、ロゼの手をしっかり握ってZEROのメンバーと共にベアトリスの開けてくれた扉渡りを通ってリネの世界に戻ったのであった。

『ガチャリッ』

扉を開くと、そこはZEROのアジトであった。中央の池に青白く輝くクリスタルが何だかとても懐かしく感じる。その横には招き猫のように微動だにしない〝パン〟が、私達の帰りを一番最初に出迎えてくれているように見えて、少し可笑しかった。

最後の一人、レオニールさんが扉を渡りきると、〝 フッ 〟っとドアが消えて無くなってしまい、あ〜もう向こうには戻れないんだと実感してしまう。

「ここがお母さんの居た世界デスか〜、向こうとあまり変わらないデス!!」

今まで握っていた私の手を離し、少し駆け足で辺りを見回しながらロゼがリネの世界の感想を述べる。

「うん、そうよ。本当の意味では違うけど、今はここが私達の世界ね。って‥‥うん?」

そう言えば、私達がLR要塞トーナメントに勝って元の世界に帰れたらロゼはどうなるのかなぁ?まさか、彼女はこの世界に取り残されるのでは…まぁ、いざとなったら私だけはここに残ればいいか。

ロゼのことを責任を持って育てると決めている私は、例え戻れなくても彼女と牛かつさんさえ居れば良いと、この時固く心に誓うのであった。

「さぁ、早速ZEROの皆んなに、私達が戻ったと知らせてあげないとね!」

そう言って私は、久し振りに血盟チャットを開き、心配してるであろうZEROのメンバー達に無事に帰還したと知らせることにした。

[血盟]ねこまんま:皆んな〜!!ただいま〜! ねこまんま 無事に戻ったよ〜

……

……

……

……

「あれ!? 反応がないぞw」

……

……

……

「反応がないねぇ〜♪まだ寝てるのかもぉ♪」

ルウさんの言葉を聞いた私は現在時刻を表示する欄を見てみると、今は午前3時を半ばほど過ぎた頃であった。

ふむっ。この時間ならば皆んな寝ていても仕方がないか…私はロゼと晩餐会場に行く少し手前の階段で皆んなが起きだすのを待つことにした。

「お母さん、さっきは誰に話し掛けていたデスか?」

不意にロゼが質問してきて、私は頭の中がハテナマークになったが、ロゼはまだZEROに加入してないのだったと気付いた。
なるほど、血盟に加入していなければ、さっきの私の行動は、側(はた)から見れば只の独り言を言っているおば…お母さんにしか見えないわけだ。

なので、早速私は盟主権限を執行して、ロゼをZEROのメンバーに加入させるのだった。

[血盟]ロゼ:うわぁ〜♪ これは凄いデス!私の喋った言葉が、この四角い枠の中に文字で出てくるデス!
[血盟]ねこまんま:うふふっ。凄いでしょ〜これで何処に居ても皆んなと会話が出来るのよ!

血盟チャットに興味津々で〝はしゃぐ〟ロゼと暫く血チャを楽しんでいると、不意に誰かのログが流れた。

[血盟]ぜろ:皆さんおはようございます
[血盟]ねこまんま:あ、ぜろじぃおはよー
[血盟]ぜろ:……
[血盟]ねこまんま:ぜろじぃ ?久し振り〜 やっと帰ってきたよ〜!
[血盟]ぜろ:まんま  おはようございます
[血盟]ねこまんま:うん、おはゆー
[血盟]ぜろ:……
[血盟]ねこまんま:ってそれだけーー!!?あの、メテオ爆死からの失踪で久し振りに帰ってきたのに〜w
[血盟]ぜろ:いま  次元ちゅうー
[血盟]ねこまんま:あ、はい。りょww

ぜろじぃは日課の真っ最中で忙しいようだ…
久々に帰って来たというのに何とも切ない気持ちになってしまった。ぜろじぃは、いつもマイペースなので、これが普通と言えば普通なのだが。

それから夕方頃まで待つが誰もインして来なかった。もしかして皆んな私に愛想を尽かしてリネを辞めてしまったのか…そんな不安に陥っていると、ロゼが私の手を引いて何処かへ連れて行こうとするのだ。
何処へ連れて行くのかと聞いてもハッキリと答えてくれなかった。
私は渋々彼女に連れられて行くと、そこは晩餐会場であった。

テーブルの上には高級料理がズラリと並べられており、ルウさんを始め、ZEROのメンバーのほぼ全員が勢揃いしていた。

[血盟]ねこまんま:え!?  皆んなどうして…。

私が声にならない驚きと感動で胸がいっぱいになっていると、全員を代表して親衛隊長のネオンさんが一歩前に出て。

[血盟]ネオン:え〜この度、無事におぱ…ねこニャンが帰還したということを祝しまして
[血盟]ネオン:ささやかではありますが、晩餐会を開きたいと思います!
[血盟]ネオン:ねこニャンお帰りなさい♪

『『『お帰りなさい!!!』』』

[血盟]ねこまんま:皆んな……ありがとぅ!!…うぇ〜ん

私は皆んなの優しさに感極まり、いつものことながら、涙と鼻水で顔がグチャグチャになってしまった。

これは後から聞いた話だが、朝一で私達の帰還に気付いた ぜろじぃが様々な手を尽くしてZEROのメンバーと連絡を取り合い、秘密裏に今回の歓迎会を用意してくれていたのだとか。何だかんだいうが、やはりぜろじぃは優しいおじいちゃんなのだ!

そして晩餐会の宴もたけなわとなった時、私の胸ポケットから〝プルルルルップルルルルッ〟っと聞いたことがない音が鳴り、一瞬で皆んなの大注目を浴びることとなった。

あがり症の私は、恥ずかしさから慌てて胸ポッケを弄り、音の正体を突き止めようとした。

すると、今までに見たことがない携帯電話が出てきた。こんな処に携帯を入れた記憶がない。そう、コレは私が忘れているだけで、実は確かに受け取っていたのだ、嫉妬の魔女からの贈り物として。

その携帯は昔ながらのガラケーで、スライドさせるとボタンが現れるタイプだった。
私は皆んなの注目の中〝ドキドキ〟しながら電話に出た。

「も、もしもし… 」

「お!? 本当に繋がった! もしもし ねこか!?」

受話器越しから聞こえてきた声は、何とスバルであった!私は何故!?っと思いながらも彼と会話を続ける。

「もしかして貴方スバルなの?一体全体どうしたのよ!」

「悪りぃ。急いでんだ!!訳は後でちゃんと説明する!!今すぐそっちと扉を繋げるから、兎に角急いでこっちに来てくれ、エミリアが大変なんだ…〝プツッ〟」

「え!? な、ちょ、ちょっと〜…」

わけが分からないまま電話は途中で切れてしまい、そのすぐ後に何も無い空間から〝ボワ〜ッ〟っと赤茶色の扉が出現した。

私が向こうに行こうか迷っていると、ルウさんとロゼが私の両腕を〝ガッシリッ〟と掴んで。

「さぁ、ねこっち行っくよぉ〜 ♪」

「お母さん何してるデス、早くスバルのお兄ちゃんの所へ行くデス!!」

「え!? ちょ、ちょっと待って〜」

私は二人に引きずられる様にスバル達の世界に連れて行かれながら、呆気にとられて呆然としているZEROの皆んなに再度別れの挨拶をすることになる。

[血盟]ねこまんま:み、皆んな〜!!また暫く戻れないと思うから、
[血盟]ねこまんま:私の居ない間のことは、よ、ヨロシクね!!
[血盟]ねこまんま:じゃ、じゃあねぇ〜〜!!」

この後、私は向こうの世界で大変な大冒険をする事になるのだが、それは、また次のお話し……。


Fin

らんちゃん♪
@rantyann_0627
https://twitter.com/rantyann_0627

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