小説_ZEROから始める血盟生活

ZEROから始める血盟生活 No. 29

〜ペテルギウスVSねこまんま、スバル戦〜

ペテルギウスは見えざる手で牛かつさんの遺体を放り投げ、不愉快そうな顔をしながら何も触れていない自分の手をパンッパンッと叩(はた)いた。それは、まるで不潔な物でも触った後のような仕草だった。

「やっと死にましたか。まったく、本当にしぶといウジ虫でしたね!」

私はそれを目にした途端、頭の中の何かが『プチンッ』っと切れる音がし、怒り…いや、そんな生易しいものでは言い表せないような感情で頭が一杯になり、気付いた時には、剣を握りしめて戦闘体勢をとっていた。

「ウジ虫…それは牛かつさんの事か…?」

「ああぁ?」

ペテルギウスは当たり前だろうという顔をして私に聞き返す。

「牛かつさんのことかーーーーーーーー!!!」

私は叫びながらペテルギウスに向け、一瞬で距離を詰めつつ手にした剣で斬りかかる!!

『!!』その速さに驚いた様子のペテルギウスは見えざる手で私の攻撃を防ごうとするが、私は御構い無しにそれを斬り裂き、尚もペテルギウスを一刀両断にしようと剣を振った!

慌てたペテルギウスは、間一髪のところで見えざる手を使い、空中へと回避する!
しかし、彼が逃げた空中へ既に回り込んでいた私は、ペテルギウスの背中の肩口から脇腹に掛けて斜めに剣を振るうが、見えざる手の自動防御によって防がれてしまう。

「い、一体何だというのですか!?さっきまでとは、動きがまるで違うのデス!!」

ペテルギウスが私から大きく距離を取りつつ私の変化に戸惑っているが、私は怒りのあまり自我を失いそれに答えることはなかった。

尚も私の怒涛の攻撃が続き、一進一退の攻防を繰り広げている丁度その時、スバルはエミリアとルウさんの3人でこんな会話をしていたようなのだが、それが私の耳に入ることはなかった。

「うわぁ〜!ねこすご〜い。何だか急に強くなってない?」

「いや、見えざる手は視認出来ないからこそ脅威なんだ!それが見えている ねこなら本来アレくらいやれてもおかしくなかったはずだ。もしかしたら見えざる手に何かされて恐怖心を抱いていたのかもしれないな。」

「そういえば、ねこが水車小屋に連れてこられた時に酷い怪我をしていたの。」

「多分それが原因だろう。最も、今は怒りでそんな感情は微塵もないだろうがな。これも、かっさんの尊い犠牲のおかげだな…」

「あぁ、そのことなんだけどぉ♪ 牛かつさんは生きてるよぉ♪」

「何だって!!ルウ、それは本当か!?」

「うん、牛かつさんはパラディンって職業なんだけどぉ、パラディンって言う職業はタンクって呼ばれていて攻撃を受ける事が仕事みたいな物なの!だからアレくらいのダメージじゃ絶対に死なないはずだよぉ♪その証拠に、ほら!牛かつさんの手を見てみなよぉ。」

スバルはルウさんにそう言われて、うつ伏せに倒れて動かなくなった彼の手を見てみると、何と指を二本立てて、ピースサインをしていたのだ!

「たぁっは〜!かっさんの奴、ピースしてらぁ! ねこの恐怖心を取り除くためにワザと死んだフリをしてるってわけかぁ〜!」

「そう言う事なん ♪」

「おっ!?今度は親指を立てたぞ!! かっさんカッケェー!! あれ!?何んか足をバタバタし始めたぞ?」

「ああぁ。 もしかしたらダメージは大した事なくても、出血多量で本当に死にそうなのかもぉ ♪ 」

「おいおい、それってヤベェんじゃねぇか?エミリア!早くかっさんの治癒を頼む!!」

「う、うん。任せて!!」

こんなやり取りが行われていたとは思ってもいなかった私は、激しい攻防戦で疲れが見え始めており、少しずづつ自我を取り戻してきていた。

「はぁ、はぁ、はぁ、ダメだ、自動防御の反応速度が速過ぎて攻撃がペテルギウスまで届かない…。やっぱり剣一本じゃこの辺が限界なのかもね。」

粉塵爆発の際に剣を一本犠牲にしているので、今はもう一本の剣だけで戦っている。
これでは本来の双剣スタイルを発揮することが出来ないのだ。私は短剣を借りるため、ルウさんに声をかけようとした。

「ルウさん!あの…」

短剣を貸してと言おうとしたのだが、ルウさんは既に短剣を渡す準備をしており、手に持っていた短剣を投げて寄越してくれたのだった。

「そう言うと思ってたん♪ ねこっち頑張ってぇ〜 ♪」

さすがだ、何も言わなくても分かってくれた!正に阿吽の呼吸ってやつね。

さぁ、これで双剣スタイルで戦う事が出来る!!
双剣で一番の特徴といえば手数だろう、攻撃と防御を同時に行うことができるのだ。

見えざる手の攻撃を短剣を使いギリギリまで引きつけてから否し、且つ長剣で攻撃を繰り出す!
今まで一進一退だった戦況が徐々に崩れ始め、ペテルギウスの体に少しずつ傷を負わせれるようになってきた!

それに焦ったペテルギウスは、見えざる手の数を限界まで増やした!その数は、何と数百本にも及んでいた!!
それを全て攻撃に回してきたのだった!

「ふっ。 貴方バカね!そんな事をしたらどうなるか分からないの?」

「な、何〜!!?」

見えざる手の厄介なところは、攻防のバランスが良く、特に自動防御による防御面が優秀だったからなのだ。それが全て攻撃に回るということは……。

私はペテルギウスの目の前から消え、一瞬で彼の背後に回り込むと、双剣でバツの字を書くように斬り裂いた!!

『バシュッバシュッ!!!』

口から血反吐を吐き、白目を向きながらペテルギウスは地面へと倒れ込む!
しかし、私の攻撃はそこで終わらなかった。
スバルから奴は相当しぶといと聞いていたからだ!
先ずは両足を切断、次に両肩、首、と順に切り落とし、そしてペテルギウスの心臓を剣が地面に刺さる勢いで突き刺してから、少し距離を取るように後ろに飛び退くと、最後に止めのメテオを放った!!

メテオの衝撃は凄まじく、跡にはペテルギウスの黒焦げになった遺体が残るだけとなっていた。

「はぁ はぁ はぁ……ふぅ〜〜。牛かつさん…やったよ!ペテルギウスを倒したよ!」

「「「わぁ〜〜〜やったなぁ〜ねこ〜」」」

戦いの疲労でその場にへたり込んでしまった私の元へ、スバルを始め皆んなが一斉に駆け寄って来た。

そしてスバルが私の腕を引っ張り起こしてくれると、次にルウさんが私に抱きついて来てくれた。

「さすが♪ ねこっち!!ヤッタネぇ〜!」

「うん、ありがとう!ルウっち!!」

最後にエミリアが牛かつさんを支えながら駆け寄ってくるって……ん!? 牛かつさん!?

「ええぇぇ!!!牛かつさん生きてたのおぉぉ!?」

「い、いやぁ〜。な、何とか一命は取り留めてな。エミリアに魔法で治療してもらったんだ。」

すかさずスバルが説明するが、何故かぎこちない…。
まぁ、何はともあれ牛かつさんが生きていてくれた喜びが大きかった為、そんなことには気付きもしなかったのだが。

「そうだったんだ。良かった、本当に死んじゃったのかと思ってたよ。」

私はエミリアに支えられている牛かつさんの元に駆け寄り、ソッと彼の顔に触れながら涙を流すのだった。

「さぁ、ペテルギウスも倒した事だし、別の小屋に向かったレム達と合流して屋敷に戻るとするか!」

そうスバルが言って、皆が一斉にレムやレオさん達と別行動をとった小屋の方に目を向けた瞬間、小屋の壁をぶち破り、何やら人影のような物が外に飛ばされてくるのが見えた!

小屋から飛ばされてきた人影をよく見てみると、ぼろ雑巾のように傷ついたレムだったのだ!

「あ、あれは。レ、レム!!」

スバルが慌てて駆け寄って優しく抱き起こすと、今にも途切れそうなか細い声で喋りだした。

「に、逃げて…スバル君…に…逃げて… 」

「レムー!!一体どうしたんだ!!あの小屋で何があったんだ!」

レムが小屋から飛ばされてきてから数十秒後、今度はレオさんが同じように飛ばされてきた!

「こ今度はレオさん!!?」

私がレオさんを優しく抱き起すと。

「に…逃げて…僕を連れて早く逃げて… 」

『ガンッ!!』

私は思わず抱き寄せた手を離してしまった。
手を離した拍子に地面から剥き出しになっていた拳大の石に頭をシコタマぶつけたレオさんのことなど御構い無しといった具合に叱りつける!

「どうして貴方はいつもそうなの!!少しはレムを見習いなさい!ほっんとにもう!!」

「い、痛い…。ごめんなさい… 」

切羽詰まった緊迫感が多少なり和らいだところでスバルがレオさんに事情を聞いてきた。

「それでレオさん、中で一体何があったんだ?」

「それがね、僕達が小屋の中に突入したら、小さな女の子がグッタリしていて黒頭巾の男達に何か怪しそうな薬を飲まされていたんだ。それを見たレムちゃんが男達をすぐさま蹴散らした処までは良かったんだけど、外で2回目の爆発音が聞こえたと思った途端に、その女の子の様子が急変したんだ。」

グッタリしていた女の子とは、おそらくアルファーのことだろう。1回目が粉塵爆発だとすると2回目はメテオか…

「急変したって、解毒薬が間に合わなかったのか?」

「解毒薬? よく分からないけど、そんな感じじゃなかったかな。こう、′お父さん、お父さんが′って叫びながら化け物の姿に変わっていったんだ。」

お父さん!?アルファーはペテルギウスのことを、お父さんと呼んでいたような…
まさか私がペテルギウスを倒したからかも…

私がそんな事を考えていると、小屋の中から突然物凄い呻(うめ)き声が轟き、小屋が崩壊したかと思うと体長20メートル程の巨大な化け物が姿を現したのだ!!

銀髪に紫苑の瞳がアルファーの面影を残してはいるが、筋肉の塊のような躰つきにオーク色の肌、口からは鋭い牙が剥き出しとなっており、まるで超人ハルクの女版を彷彿とさせる化け物だ!!

らんちゃん♪
@rantyann_0627
https://twitter.com/rantyann_0627


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