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ZEROから始める血盟生活 No. 26

スバル達が小屋に到着する数時間前

スバルと村の子供達はアーリア村近くの山で山菜採取をしていた。

「スバル君!この山菜も食べれますよ。」

「おっ!!レムは物知りだな。お前が居てくれて助かったよ。レムは良いお嫁さんになれるなきっと。」

「そんな…。レムで良ければいつでもスバル君のお嫁に◯×▲□… 」

レムは、スバルがエミリアのことを一番大好きだと知っている。
なので、自分はスバルにとって2番目の存在でも構わないと思っていた。
彼女は、自分が告白する事でスバルを困らせたくはない、そんな彼への思いがレムの言葉を濁らせた。

「ん!? 今、何か言ったかレム?」

「い、いえ。別に何も……」

これでいい。

別に告白しなくても、スバル君はレムのことをきっと大切な存在であると思ってくれているであろう。

そうレムは心の中で自分を納得させるのであった。

「よし! 山菜はこれくらいでいいか。ペトラ!ちょっと魚釣りをしているカジル達の様子を見に行って来てくれるか?俺達は、その間に天ぷらの準備をしてるから。」

スバルはアーリア村の近くの川に釣りに行ったカジルの様子を見て来るようペトラにお願いをした。
ペトラは大好きなスバルの頼みとあって、喜んで川に向かった。

カジル達が釣りをしている川岸にたどり着いたペトラは、カジルが何処で魚釣りをしているのか分からず、川沿いをキョロキョロと見回しながら歩いていた。
すると、川の上流に何やら見覚えのあるリボンを巻いた布袋が岩の間に挟まっているのを発見する。

『!?』

「あれは、お母さんから貰ったリボンだわ。私の髪に結んでいるリボンはココにあるということは…。」

ペトラは母から貰ったリボンを、髪に結んでいる。
ということは布袋に結んであるリボンは、今朝スバルと会った時に一緒に居たお姉さんにあげたものだと直ぐに気付き、岩の間に挟まっている布袋を拾い上げた。
そして魚釣りをしていたカジル達と一旦合流してから天ぷらの用意をしているスバルの所へと戻った。

「お!? アイツらやっと戻ってきたか。どうだった、今日の釣果は?」

「へへ〜ん、見てくれよ。スバルの兄ちゃん、こんなに沢山釣れたぜ!」

カジルは沢山釣れたのがよほど嬉しかったのか、自慢げに樽の中で泳いでいる沢山の魚をスバルに見せるのであった。

「おおぉ!!いっぱい釣ったじゃねぇか!よし、これで美味い天ぷら腹一杯食わしてやるよ。」

早速スバルは釣った魚と山菜を油で揚げて天ぷらを作り、レムや子供達に振る舞ったのだった。

「うめぇ!!スバルの兄ちゃん、これすっげぇ美味いよ!」

「だろぉ〜!今は塩をつけて食べてるけど、本当は天つゆって言う専用のタレにつけて食うともっと美味いんだけどな。」

天つゆは、鰹節からとった出汁に醤油、味醂、砂糖、料理酒などを加えて作る。
しかし、この世界に似たような材料はあっても全く同じものはないであろう。
今回スバルは仕方なく塩で味付けしたのだが、それでも十分に美味い。

お腹いっぱい天ぷらを堪能した子供達は、食後の談笑タイムへと突入する。
スバルも同じくレムやカジルとの会話で花を咲かせていたが、彼の横にペトラがやってきて、服の袖口をクイッっと引っ張った。

「どうしたペトラ?」

「スバル、さっき川でこれを拾ったんだけど…… 」

ペトラは先ほどカジルを呼びに行った時に川の中で拾った、リボンを結んだ布袋をスバルに見せた。

「コレがどうしたんだ?」

「うん、このリボンは、今朝スバルと一緒に竜車に乗ってたお姉さんに私があげたリボンなの。それが何故か川に落ちてたから不思議に思って持ってきたの。」

「何!? この布袋が川に……。」

ペトラから渡された布袋をよく見ると、袋の両端にリボンが巻かれており、中にはメイザース領特産のアーリア豆が入っていた。

「スバル君 、この布袋がどうかしたんですか?」

隣でその様子を見ていたレムがスバルに質問する。

「ああ、コレは ねこから俺へのメッセージだ!!」

スバルはレムに、このリボンが結ばれた布袋の意味を説明する。

これは『袋の鼠』と言い、金ヶ崎城の戦いで織田信長の妹お市が、夫である浅井長政の裏切りにより前後挟み討ちとなってしまった兄信長へ危険を知らせる方法として送ったと歴史書に記されている事で有名である。

その意味は、袋の端と端を紐で結ぶ事で、貴方は前と後ろから挟まれているので気を付けてっと解釈出来るのだ。

今回の意味合いとは少し違うが、コレはエミリア達が誰かに捕まって身動きが取れない状態であると言う事を表しているのだろう。

スバルは、今の説明をレム達が理解出来るよう分かりやすく掻い摘んで話した。

即ち ねことエミリアは何処かに監禁されている!

次に監禁場所が何処なのかだが、こちらは袋の中身と、この袋が発見された場所から推測出来るであろう。

「ペトラ!川の上流沿いの小屋か倉庫で、アーリア豆が貯蔵してある所はあるか?」

「え? え〜と、……。あ!!あるよ!アーリア豆を擦って粉にする水車小屋が川の上流沿いにあったと思うわ。」

ペトラはスバルの質問に少し考えたが、川の上流沿いに水車小屋があることを思い出した。

「よし!!エミリア達はきっとそこに監禁されているはずだ!」

「スバル君はやっぱり鬼がかってますね。早くエミリア様達を助けに行きましょう!」

レムはスバルの推測に感動していた。流石は自分を助けてくれた英雄だと。
そうと分かれば急いでエミリア達を助けに行かねば。
レムは焦った様子でスバルに懇願する。

「まぁ待てレム。ねことエミリアを捕まえられるような連中だぞ。俺達だけでは戦力不足かも知れない。ここは一旦ロズワール邸に戻って誰か助けを呼んだ方が賢明だと思う。」

確かにスバルの言う通りだ。
精霊使いのエミリアと自分の姉であるラムを倒した程の手練れの ねこさんを捕まえる事が出来る連中が一筋縄でいくわけがないのだ!
レムはその事をすぐさま理解し、スバルの意見に賛同する。

「ペトラ、カジル!ここに居たら危険かもしれない、お前達も一緒にロズワール邸に来い!」

スバルは、何処かに誘拐犯の手下が居るかもという危険から子供達を守る為、一緒にロズワール邸に連れて行く事にした。

今いる場所からロズワール邸までは、竜車を飛ばせば30分もかからない距離にある。
スバル達は程なくしてロズワール邸へと到着した。
屋敷に着くと、ベアトリスが門の前でスバル達の到着を待っていたかのように立っていた。

「ベア子!!こんな所に居るなんて、一体どうしたんだ?」

ベアトリスはロズワール邸の禁書庫管理人である為、普段、滅多に書庫からは出てこない、そのベアトリスが門の前に立って居るものだから、スバルが驚いて尋ねるのも無理はないのである。

「ふんっ!エミリアとあの女が居ないのに戻って来たところを見ると、何かのトラブルにでもあったのかしら?お前が頼みごとをして来た時から厄介な問題を抱えている事は大体予想がついていたのよ。」

「かぁーー!ベア子には全部お見通しかよ!その通りだ。実は……」

スバルはエミリア達が何らかのトラブルに巻き込まれて、恐らくは監禁されているであろうことを事細かくベアトリスに話した。

「……っという訳なんだ。お願いだベア子俺に力を貸してくれ!」

「ふんっ!何回言えば分かるのかしら、ベティは、お前達を助けると約束したのよ。もう既に手は打ってあるかしら。」

ベアトリスはそう言うと、彼女の後に居る、見知らぬ男女4人組の方に目をやり、スバル達に紹介するのだった。

「さっきから気にはなっていたんだが、コイツらは誰なんだ?」

スバルもベアトリスの後ろに居る4人組の事は気にはなってはいたが、事の状況を早くベアトリスに話した方がいいと思い、取り敢えず4人組の方は後回しにしていたのだ。

「この者たちは、ねこが居た異世界から、ベティが扉渡りで連れてきたのよ。詳しいことは直接お前が聞くといいかしら。」

ベアトリスはそう言うと、テクテクと屋敷の中に帰って行った。

「おい、ベア子待てよ…チッ!相変わらず愛想のない奴だな…。」

スバルの静止も我関せずといった具合で帰って行くベアトリスに流石のスバルも舌打ちをしてしまうが、少し間を置き深く深呼吸を一回すると、ベアトリスが扉渡りで連れてきた4人組の方へと振り返り落ち着いた様子で話し掛ける。

「で、オタクらは ねこのお仲間さんで間違いないんだよな?」

スバルに質問された4人組で腰に短剣を装備している女戦士らしき人物が彼の質問に答えた。

「うん♪ ねこにゃんはアタシ達のリーダーで大切な仲間だよぉ!!」

「リーダー! ねこがか!?」

「……うむ。」

「まぁ、僕は認めてないけど…。一応そうだね。」

「お母さん…ムフッ 」

リーダーという言葉に少しばかり驚いた顔をしたスバルだが、4人中3人が認めたので、一応納得をする。(若干、訳の分からないコトを言って 一人で受けているものもいるが)

「そ、そうか。それじゃ早速でわりぃんだが、あんたらのリーダーが誘拐されてピンチなんだ!そこには俺の大切な人もいる。だから俺と一緒に助けに行ってくれないか?」

スバルは、ねこの仲間だと言う4人組にエミリア達を救出する助っ人として、一緒に連れて行こうと考えていた。
見たところ、4人共かなりの手練れに見える。
それは、ねこの強さを見て、それと同等か、それ以上に見えたからだ。

「あらら、ねこにゃんピンチなんだぁ!勿論行くよぉ♪ 皆んなも、ねこにゃん助けに行くよねぇ〜」

「……うむ。」

「うわっは!どんな顔して捕まってるのか見てみたい!」

「私はサボる …ムフッ」

「コラ〜!♪ アウさんサボっちゃダメェ♪ ほらほら、一緒にねこにゃん助けに行くよぉ」

「あう〜〜……。」

こうして、スバルはレムと ねこまんまの仲間『ルウ』『牛かつ』『レオニール』『アウローラ』の4人の助っ人を連れて、エミリア達が監禁されているであろう水車小屋へと急いで向かったのだった。

らんちゃん♪
@rantyann_0627
https://twitter.com/rantyann_0627

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