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ZEROから始める血盟生活 No. 18

ロズワールの部屋を後にした私は、スバルを観察する為、彼の仕事を見学する事にした。
まずは、屋敷の全ての窓拭きから始まり、床掃除、各階に二個ずつあるトイレ、最後に一体何部屋あるのか見当もつかない程の部屋の掃除といった具合に、スバルの仕事は大忙しであった。
仕事の合間にも、メイド姉妹の姉ラムの厳しいチェックが入る。

「はぁ〜っ。 バルスこれで掃除したって言えるの? 窓枠の隅にまだ埃が残ったままよ!ちゃんとやり直しなさい。」

「え〜〜そうか?ラムはちょっと厳し過ぎるだろ。そんな事じゃロズワールにも嫌われるぜ!もっとこう、ファジーにだなぁ〜…」

「そうですよ姉様。多少いい加減な所も多いですが、スバル君はスバル君なりに頑張ってます。」

「おいおい、それあんまりフォローになってねぇよレム」

メイド姉妹の妹レムは、スバルを擁護しながら姉であるラムとスバルの間に割って入った。

「ふんっ。姉である私よりラムはスバルの味方をするのね…まぁいいわ。もうすぐ昼食の準備をするから、レムは私と一緒に厨房に来なさい。それからスバルはベアトリス様をダイニングまで連れて来てちょうだい。」

スバルの味方をしたレムに対して、少し寂しそうな顔をしたラムだが、すぐにいつもの凛とした表情に戻り、レムと一緒に厨房の方に歩いて行った。

ラムと一緒に厨房に向かうレムが後ろを振り返り、納得がいかないとむくれているスバルを気にしているが、その頬は薄っすらと赤くなっていた。

「どうしたんだ ねこ?」

スバルを見つめるレムの乙女心を敏感に察知した私の顔はどうやらニヤついていたみたいだ、その顔を見たスバルが訪ねてきたが、私は何でもないとすぐさま話題を変える事にした。

「ところで、ラムが言ってたベアトリス?様って誰の事なの?私はまだ逢った事がないんだけど。」

「ああ。このロズワール邸には歴史的にも貴重な書物が沢山保管されているんだ。ベアトリスは、その書庫を守る言わば管理人だな。」

「書庫?この屋敷に書庫なんてあったかしら?スバルの仕事を見学してる時に全ての部屋を見たけど、書庫なんて無かったわよ!
私の知らない部屋か地下室みたいな物があったりするわけ?」

私は確かにこの屋敷の部屋を全て見たはずだがスバルは書庫があると言う。
記憶違いかと悩んでいると、彼は得意げに鼻の下を指で摩りながら語り始めた。

「ベアトリスは魔法を使って部屋の扉を別の扉に繋げる事が出来るんだ。普通の奴ならこの屋敷の部屋を一つ一つ調べないと見つけることは出来ないが。」

と言いながらスバルはある部屋の前で立ち止まると、勢いよく扉を開けて中に入って行く。

「俺はその扉が何処か何となくわかるんだ!」

スバルの開けた部屋の中に入ると、そこには確かに書庫らしく本が騒然と棚に並べられている。

「と、まぁこんな具合だ!」

得意げな顔で胸を張るスバルをよそに部屋の中を見回すと、中央に木製の脚立があり、その脚立を椅子がわりにして、金髪ロールツインテールの幼女が本を読んでいた。

「ようベア子!もうすぐ昼飯の時間だから呼びに来たぞ!」

「もう当然のように扉渡りを破ってくれるかしら。まったくもって忌々しい虫なのよ。」

幼女は本を読みながらスバルに毒舌を吐く。
見た目の愛くるしさとは裏腹にキツイ性格をしているようだ。

「俺とお前の仲じゃないか!そんなにキツイ事言うなよ〜」

スバルはベアトリスのくるくるツインテールをビョ〜ンと伸ばしながら遊んでいる。
本当は仲良しなのかなと一瞬思ったのだが。

「え〜い!止めるのよ!そんなにベティに殺されたいのかしら〜!」

ズキューーン!!

「ぐぎゃーっ!!!!」

ベアトリスはスバルにマナドレインの魔法を使った。その場に力なく倒れ込んだ彼は、暫く動く事が出来なくなってしまう。

「ぐ、ぐじょ〜。だにもぞごまでずるごどはなぎだろ〜 べ、ベアご…。」

「ふんっ!これでもまだヌルいかしら。」

唖然として傍観している私に、ベアトリスが話しかけてきた。

「そこのお前もスバルと同じ目に遭いたくなければ、さっさとこの禁書庫から出て行くかしら…… お前……。お前はこの世界の人間ではないのよ!そう、お前もスバルと同様、嫉妬の魔女に連れて来られたのかしら。」

ロズワールも私が別の世界から来た事を知っているような口振りだったが、この幼女もなのか…ひょっとしてこの二人には何か共通の情報を得る力があるのではないか…そんな事を考えていると、少し動けるようになったスバルがベアトリスと私の間に入って来た。

「ねご、あんじんしろ。ベアごは俺だちの味方だ!そうだよな?ベアご。」

「ふんっ! 話しくらいは聞いてやるのよ。でも、お前達を助けるとは限らないかしら」

スバルはロズワールと違ってベアトリスには信頼を置いているようだ。味方は多いに越したことはない。私はスバルの言葉を信じることにし、この世界に来た経緯(いきさつ)と、これから起こる出来事を事細かくベアトリスに説明した。

「大体の事情は分かったかしら。それでお前達はベティに何をして欲しいか言ってみるのよ。」

何だかんだ言いつつも一応助けてはくれるみたいだ。
私が説明している間に体力が回復したスバルは、ベアトリスにしか出来ない頼み事をする。

「ベア子の扉渡りは異世界にも繋げる事は出来るのか?先ずはそれが知りたい。」

顎に手を置き少し考えたベアトリスだが、さも当然のように答えを出した。

「できるか出来ないかで言うと、出来ると答えるかしら。そこの女はスバルと違って、こっちの世界に来てからまだ日が浅いのよ、嫉妬の魔女の影響力が少ないうちなら扉渡りを繋げられるかしら。」

「さすがベア子!やっぱりお前が居てくれると助かるぜ!今日は手を繋いで一緒に寝てやるよ〜」

スバルはベアトリスを抱きしめ幼女の柔らかそうな顔に頬ずりをして喜びを表現したのだが。

「ん、もぅ!!何故お前はそうやってすぐにベティの嫌がる事をするのかしら〜!またマナを吸われたいようね!」

「おおっと。そう何度も同じ手は食わないぞ!」

スバルに再びマナドレインを仕掛けようとしたベアトリスだが、寸前で後ろに飛ばれて失敗してしまう。悔しそうな目つきでスバルを睨むベアトリスにスバルは苦笑いで返した。

「それじゃベア子、俺達が無事にエミリアを助けて戻って来れたら、ねこを元の世界に帰してくれるか?」

「ふんっ!本来、お前ごときがベティに頼み事を出来る立場ではないけども、100年に一度あるかないかの気まぐれで、その願い聞いてやらないこともないかしら。」

こうして元の世界に帰れる目処がついたところで、私達はベアトリスと共に禁書庫を後にし、昼食が用意されているダイニングへと向かうのであった。

らんちゃん♪
@rantyann_0627

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