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ZEROから始める血盟生活 No.28

〜ペテルギウスVSねこまんま、スバル戦〜

誘拐犯、2強の一角ともいえるエルザを見事に撃退してくれたルウさんは、今現在、戦いで負った傷をエミリアに治癒魔法で治療してもらっている。

なのでペテルギウスと戦えるのは、私を含めスバル、牛かつさんの3人となっていた。
そのうち牛かつさんは治療に専念しているエミリアの護衛をして貰うことにしたので、実質は私とスバルの二人なのだが。

「ねぇスバル、この前はどうやってペテルギウスを倒せしたの?参考までに聞いておきたいんだけど。」

「そうだな、前に戦った時は…… 」

スバルは前回ペテルギウスと戦った内容を簡単に話してくれた。

「うわぁ〜それじゃぁ最後は車輪に巻き込まして倒したのね…それにしてもしぶといと言うか何と言うか… 」

彼の話を聞く限りでは、ペテルギウスという男は相当しぶといことが分かった。
倒したと思っても何度も復活してくるとは…

「ねこ!! 避けろ!!!」

ペテルギウスとどう戦うかを考えていると、いつの間にか見えざる手が私の目の前まで迫って来ており、私は慌てて前のめりに避けた。その勢いでペテルギウスとの距離を縮めようとするが、不意打ちの攻撃に焦っていたのか、脚がもつれてヘッドスライングの形になりながらペテルギウスの足元付近まで滑ってしまった。

「おやぁ〜、こんな所で寝て何をしてるのですかぁ〜?わざわざ私に殺されに来たのなら、貴女は非常に間抜けですが…」

「は、あははっ。こ、これも作戦のうちよ。気にしないで!」

ペテルギウスは、私の顔を覗き込むようにしゃがみ込んで嫌味なことを言ってきたが。
恥ずかしくて脚がもつれたなど死んでも言えない私は、思わず嘘でごまかしてしまった。

「い、今よスバル!あんたの望み通りコイツのす、隙をついてやったわ!!」

そして、嘘を嘘で誤魔化すためにスバルに無茶振りをするw

「おい、おいw ここで俺に振るのか!!けどナイスだ ねこ!」

スバルの武器は腰にさげた鞭のようだ。
それを使って彼は器用にペテルギウスの腕を絡め取ると、目一杯強く引っ張りペテルギウスをうつ伏せに転倒させたのだった。

「チャンスだ ねこ!!」

これ以上ないくらいの好機を逃すまいと、私は渾身の力を込めて、隙だらけであるペテルギウスの背中目掛けて双剣を突き立てた!!

『ガキンッ!!』

数10センチ…ほんの後数10センチでペテルギウスの背中に双剣が突き刺さるという所で見えざる手が私の攻撃を弾いた!

「な!?」

『ドォオンッ!!』

私は攻撃を弾かれた勢いで激しく後方へと飛ばされて、壁に激突してしまう。

「ぬぁははは〜!甘い、甘いのデス!!この私に死角などという隙は有りません。何せ、見えざる手は私への攻撃を無意識に防いでくれるのデス!!」

ペテルギウスは何食わぬ顔でゆっくりと起き上がり、激突のダメージで動けない私へと近付いてくる。

「くっ!! そ、そんなのありなの!」

「さぁ、貴女をどう殺してあげましょうか?このまま串刺しにしてあげましょうか…イヤ、全身の骨を一本ずつ折っていくのも面白いですかね?」

「止めろペテルギウス!!」

スバルが動けない私を助けに入ろうとするが、見えざる手が彼の首と両手足を掴み、身動きが取れないようにしてしまう!

「ごぉのぉお…」

「くうっくく。そこで黙って、お仲間が死んでいくさまを見ておくといいのデス!!」

私は、身体は動かないが喋る事が出来るので、ペテルギウスにあらん限りの罵声を浴びせてやる。

「スバルを離しなさい!この似非神父!!キモいのよ!箪笥の角に小指ぶつけて死んでしまえ〜!!」

普段人の悪口なんて言わないから上手く言葉が出てこない…でも、何とかして動けるくらいダメージを回復する時間を稼がなくては。
私は更にペテルギウスに罵声を続けるが…

「この色白モヤシ野郎!オカッパ頭のえ〜っと変態!それから〜…… 」

「え〜い黙るのデス!!決めました!先ずはその減らず口から潰して差し上げましょう!」

頭に血が昇ったペテルギウスは私の口を封じようと見えざる手を使って攻撃を仕掛けて来た!

『ザシュッ!!』『ザッザッザシュッ!!』

罵声を浴びせている間に何とか動けるくらいにまで回復した私は、双剣を使って見えざる手を切り裂き、ついでに捕まっていたスバルも救出したのだった。

「あ、ありがとよ ねこ!」

「スバル。私、いい事思いついちゃったから、合図を出したら皆んなを連れて水車小屋の外に出てくれるかな。」

そうスバルに告げた私は、アーリア豆をすり潰した粉を袋詰めにして山の様に積んである場所に走り出して行き、その袋をペテルギウスに向かって、幾つも投げつけた!

「ふんっ!何ですか一体?これで牽制しているつもりなのですか。こんな物、私には効かないのデス!!」

ペテルギウスは自分に飛んでくる袋を、見えざる手でバスッバスッと斬りきざんでゆく!
彼の斬った袋からアーリア豆粉が飛び散らばり、水車小屋中が粉まみれになったところで、私はスバルに合図を出した。

「今よスバル!!」

「お、おう!!」

スバル達は私の合図と共に水車小屋から外に飛び出して行った!!

「こんな目くらましで、この私から逃げられるとお思いですか?」

その時私は、中学時代の科学の授業で習ったあることを思い出していた。

「ねぇ、知ってる?」

「ああ!? 何がですか?」

「こんな風に密閉された空間で、粉塵が大量に散霧した状態の時に火がつけばどうなるか?」

「さぁ、どうなるというのですか?」

「そう、じゃあ教えてあげるわ! こうなるのよ!!」

そう言って私は双剣の一本を水車小屋の豆擦り機に向かって投げつけると扉から外に飛び出したのだった。

『ドゴォォォォン!!!』

水車小屋から出ると同時に、今まで私達が居た小屋が凄まじい爆発と共に跡形もなく消し飛んだ!

私はその爆風で数十メートルほど飛ばされ、岩に激突しそうになる寸前の所で牛かつさんが受け止めて助けてくれた。

「牛かつさん、ありがとう! 」「ポッ♪」

この時、助けてくれた牛かつさんに見惚れてしまったことは内緒にしておこう。

「大丈夫か? ねこ!!」

そこへスバル達が駆け寄って来た。

「ええ、何とかね。」

「それにしても、どうして小屋が爆発したんだ! ねこが何かしたのか?」

私は中学の科学の授業で習った『粉塵爆発』のことをスバルに話した。
密閉空間で散霧した粉塵に火を点けると爆発的に燃焼率が向上するのだそうだ。

「ちょっとやり過ぎちゃったかなぁ?アレじゃ死体がバラバラで区別付かないかもね…」

小屋が丸ごと消し飛ぶ程の爆発だった為、ペテルギウスを倒したはいいが、死亡の確認が取れないのではと心配していたのだが、スバルを見ると、何やら険しい顔をして、さっきまで小屋があった場所を見ていた。

「どうしたのスバル、そんな怖い顔をして?」

「イヤ、アレでペテルギウスが死んだとはどうしても思えなくてな。俺の思い過ごしならいいんだけど… 」

「まさか…。幾ら何でもあの爆発でも死なないなんてことはあり得ないでしょ……」

「!? み、見て!!スバル、ねこ!!!」

ルウさんの治療を続けているエミリアが何かに気付き、小屋があった場所を指差していた。彼女の示す方向を見た私達は砂煙の中から黒い球状の物体が存在しているのが見えた。

その黒い球状の物体は頭頂部からペラペラと、まるで蜜柑の皮を剥ぐようにめくれていき、中からペテルギウスが五体満足で姿を現したのだ!

「ふぁははは〜!!この私があれしきの爆発で死ぬわけがないのデス!しかし、よくもこの私に、ほんの少しでも恐怖というものを与えてくれましたね、その罪は万死に値するのデス!もう、お遊びはここまでです!」

私達が驚愕して戸惑っていると、私の足元の土が急に盛り上がり、その中から見えざる手が出現したかと思うと、その手に両足を掴まれ一旦空中高くまで持ち上げられ、背中から勢いよく地面に叩きつけられてしまった。

『ガフゥッ!!』

い、息が出来ない!?それに頭を強打したのか、意識が朦朧として立つことはおろか、手足が全く動かない…

「「「ねこーー!!」」」

遠くの方でスバル達の悲痛の叫びが聞こえる。どうやら空中に持ち上げられた時にペテルギウスの近くまで引っ張られてしまったようだ…

「クックック。さぁ、このまま一気に心臓を貫いて、差し上げましょう!」

「くっ!!」

そして、見えざる手が私の心臓目掛けて真っ直ぐに飛んで来るのが見えた。
ダメだ。逃げようにも動けない!!
私は諦めて目を閉じてしまった。

『グサァッ!!』

……………。

次に目を開けた時、そこには四つん這いで私に覆い被さっている牛かつさんの姿があった。

「牛かつさん!?」

何と牛かつさんは動けない私を庇って見えざる手に背中を貫かれていた!!

牛かつさんは見えざる手を見ることが出来ない、だから私に覆い被さることで何処からくるか分からない攻撃を、その身を呈して護ったのだった!

「ぐ、ぐふぁっ!よ、良かった…ま、まんまさんを守ることができて…」

「ああぁん?何ですか貴方は!邪魔をするんじゃありません!どきなさい!!」

ペテルギウスは背中を貫かれ瀕死の牛かつさんに追い討ちを掛けるように、何度も見えざる手で彼の背中を串刺にしていく!

「いやぁーーー!牛かつさん!もう護らなくてもいいからぁーーー!!」

身体中からから大量の血を流しながら牛かつさんは、尚も私を護り続けている。
壮絶な痛みに耐えながらも、その顔はいつもの優しい笑顔でニッコリと私に笑い掛けてくれていた。

「さ、最後まで…き君を護れて…よ…よかっ……………… 。」

『最後まで君を護れてよかった。』

牛かつさんはそう言いたかったのだろう。
しかし、その言葉を言い切る前に彼の命はこと切れてしまっていた…。

らんちゃん♪
@rantyann_0627
https://twitter.com/rantyann_0627


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