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ZEROから始める血盟生活 No. 24

暗い!? まだ昼過ぎだというのに家の中はカーテンが閉まっており薄暗くてあまりよく見えない。
ほぼ手探りで散策するが、人の気配が全く無いところを考えると、やはり留守で鍵をかけ忘れていただけなのか?

私は、ようやく見つけた窓のカーテンを静かに開けて再び中の様子を確認するべく後ろを振り向いた。
するとさっきまで誰も居なかったはずのリビングに5〜6人の人が立っていた!!

その人影は全員が黒い三角頭巾に、これまた黒いマントを身につけ、ユラユラと小刻みに揺れながらたたずんでいる。

「貴方達は一体誰? ここの家の人?…では無いようだけど?」

「………………。」

反応がない…。

「 答えないのなら、ちょっと痛い目に遭ってもらうけどいいわよね!!」

今の私ちょっとカッコイイかも〜♪っと思いつつ両腰から長刀の双剣を抜き、目の前の敵を威嚇するように構えて戦闘の準備を整えた。

だが黒装束の者達は、ブツブツと訳の分からない言葉を発しながら依然としてユラユラと小刻みに揺れるだけで何もしてこようとしなかった。

お互いに暫く睨み合いが続いたその突如、家の外からエミリアの悲鳴がしたかと思うと、私の後ろの窓ガラスが『ガシャーン!』という音と共に割れ、そこから何処か見覚えのある黒い手が数本現れた。
次にその黒い手は私の体を掴み物凄い力で地面へと押し倒したのだ。

「くっ!!」

身動き一つ取れない!!僅かに動かせるのは首から上の部分くらいか。
私は、どうにか黒い手から脱出しようともがいていると、玄関の扉が開き、そこから緑髪のおかっぱ頭で顔色が悪い、如何にも悪役のような男が現れた。
その男は神父の格好をしており、手の爪には赤いマニキュア?をしている。

「おや? おやおやおや? 中にもう一人居たのですか。おかしいですね、この家の住人は全て殺すようにお願いした筈ですが。」

男は、その外見とは裏腹に丁寧な口調で怖ろしい事を言っている。

「そこの貴方。」

「ギィッ!?」

「そう貴方です。ちょっと此方へ来て頂けますか?」

「ギィーィ!!」

はい!!というような返事をした黒装束の一人が男の元へ歩み寄って行った。

「私、貴方達に命じましたよね、この家の住人は全て殺せと。なのに、どうしてこの女は生きてらっしゃるのか?」

「ギ、ギィ……。」

そう詰め寄られた手下らしき者が申し訳なさそうに手を頭の後ろに乗せて、こうべを垂れたのだが…。

「あ〜〜、こうしている間にも、あの方の愛が遠くなっていくかも知れません。貴方達が私の命令を疎かにしたせいだとは思いませんか?………。貴方………怠惰ですね〜。」

『グキッ!!』

男が訳の分からないことを言った後、最後に斜め上に首を傾けながら上目ずかいになり『怠惰』と口にした瞬間、黒装束の手下の首があらぬ方向へと曲り、グキッっという音と共にその場に崩れ落ち息絶えてしまった。

それを見届けた頭目らしき男は静かに私の方に向き直しツカツカと歩み寄って来た。

「あ、さて。さてさてさて。今度は貴女の番ですね。」

近づいて来た男は、黒い手に押さえられて首から上しか動かせない私の目線に合わせるように、気持ちの悪い姿勢でしゃがみ込み、私の顔を覗き込んできた。

「貴女は一体誰なのですか?見たところ、この家の住人では無いようですが……私の福音書にも貴女の事など何処にも書かれていませんでした。あ、さてさてさて。」

「ぐっ! そう言う…貴方こそ…誰なのよ!」

スバルの語った武勇伝から、この男の正体は大体想像出来たが、私は男の質問に対して、逆に質問で返してやった。

「私ですか?おおぉよくぞ聞いてくれました!私こそ、あの方の一番の下部にして魔女教大罪司教怠惰担当『ペテルギウス・ロマネコンティー』〜〜デス!!!以後お見知り置きを。」

やはり私の予感は当たっていたか。ペテルギウスと名のったこの男は以前スバルが倒したと聞いていたが、死んではいなかったみたいだ。
スバルはコイツを倒すのに相当苦労したと言っていたな…。
私一人ではどうすることもできそうにないか。
しかし、大人しく捕まるのも癪(しゃく)に触るな。少し探りを入れてみるか。

「フンッ! 大罪司教だと? とてもそんな大物には見えないんだけど。それに怠惰のペテルギウスは死んだって聞いてたぞ!大方大悪党の名前を語って伯を付けようって根端じゃないのか?」

「あ? この私が偽物だとでも?確かに私は一度死にました!あ〜〜あの怠惰極まりないナツキ・スバルという少年に、この魔女教大罪司教ペテルギウスがあまつさえ遅れをとるとは…これは、あってはならない事なのデス!!私は、あの方に愛された存在なのですから…なので私は再びこの世に蘇えったのデス!!あの方の愛に、愛に、愛に、愛に〜…応えなければならないのデス!!
っということで私は本物のペテルギウスなのデス!お分り頂けましたか?お分り、あ、かり、かり、かり?」

「う〜ん、ゴメンちょっと何言ってるか分からないわ。」

「あ〜〜〜?貴女……怠惰ですねぇ〜」

『ベキィッ!!』

「ぎいゃーー!!!」

ペテルギウスが怠惰と口にした途端、私を押さえつけていた黒い手が、私の中指を容赦なくへし折った!

「う〜〜ん、実にいい音がしましたね〜。それに貴女、良い声でお泣きになる!あ、ほれもう一本。」

『バキィッ!!』

「ぐわっーー!!!」

続いて人差し指も折れられてしまった!
私は、あまりの激痛に意識が朦朧としてきて、これ以上ペテルギウスに探りを入れることが出来なくなってしまった。

「あら〜?どうしました?もう言葉も出ないのですか?困りましたねぇ〜この程度で音を上げて頂いては拷問のしがいがないのですがね〜。」

私は気を失いそうになりながらも最後の力を振り絞ってペテルギウスに毒舌を吐いてやった。

「ぐっ……キモいんだよ……この…似非神父が!!」

「は〜い、似非神父頂きました〜。貴女…やはり怠惰ですね〜」

『ボキャッ!!!』

そして最後に両足の膝関節を折られて私の意識は途絶えてしまった……………。

……………………。

…………………。

………………。

……………。

…………。

「う、う〜〜ん……。」

!?

「ねこ!? 良かった、起きてくれて。」

目がさめるとエミリアが膝枕をしてくれていた。私を心配して泣いたのか、エミリアの目が赤く腫れているのが分かった。

「エミリア……。心配掛けたみたいでゴメンね。もう大丈夫だから!」

「うん。うん。ねこが死んじゃうんじゃないかって、すっごーく心配したんだから!」

また泣きそうになっているエミリアの頬に手を当てソッと彼女の涙を拭って、初めて気が付いた。
あれ!?ペテルギウスに折られたハズの指が動くぞ?両膝も何ともなってない。

「エミリアが治してくれたの?」

「うん。ねこが、ここに連れてこられた時すごい怪我してたから魔法で治しておいたんだ。」

「そっか、ありがとう!エミリア。」

私は、エミリアの膝から起き上がり、彼女のオデコを自分のオデコに合わせ、心の底から感謝していた。

「それで、ここは一体何処なのエミリア?」

「分からないわ。ここまでは目隠しされてたから。でも、見たところ何処かの小屋みたいね。」

私は起き上がって小屋の様子を伺ってみた。
勿論ドアには鍵が掛かっており開けることは出来なさそうだ。
他に出口のようなものは……無い…か。
小屋の中には麻袋が山のように積み上げられており、私は袋を破って中身を確認した。

「これは…豆?大豆か何かかな?」

それを見たエミリアが何かに気が付いた。

「これはアーリア豆ね。ここメイザース領の特産物で、私達がさっきまで居たアーリア村でしか売られていないものよ!」

「と言うことは、ここはアーリア村の近くにある小屋なのかな?」

「うん、多分そうだと思う!」

あと小屋には、この豆をすり潰す機械を動かす為か、水車が止まることなく『パッタン、パッタン』と動いていた。

う〜ん…。アーリア村の近くの水車がある小屋か……。これでかなりこの場所が限定出来そうね!

あと使えそうな物と言えば……やっぱりこれしかないよね!!

「ねこ さっきから一体何をしているの?」

これをこうして、ここと、ここを結んで〜
それをここから……ポチャンッ!!

良し!これで後は運を天に任すのみっと!

「ああ、エミリアこれはね。スバルに、私達がこの小屋に居るよって教えてあげたの!」

「え!?さっき水車に乗せて川に流した物でスバルに、ここの場所が分かるの??」

「うん! あれが運良くスバルの元まで届いたらだけどね。彼なら絶対に気付いてくれると思う…はず…たぶん…かも知れない。」

「自信があるのか無いのか不安だけど、スバルが気付いてくれるといいね。」

そうなのだ。『アレ』がスバルの元へと届きさえすれば!
私は祈る気持ちでスバルが助けに来てくれるのを待つことにした。

らんちゃん♪
@rantyann_0627
https://twitter.com/rantyann_0627

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