ZEROエンブレム-HDTV1080

ZEROから始める血盟生活 No. 23

「それじゃエミリアたん、夕方頃に迎えに来るからよ!ここで待ち合わせな。あと、ねこちょっといいか。」

村の入り口で別行動をする事になった私とエミリアは徒歩で村長の家に、スバル達は竜車で川に向かう事になった。
そして別れ際にスバルが私を呼び止めて、小声で耳打ちしてきた。

「エミリアの事は頼んだぞ!絶ってぇに今回でこのループを終わらせるからな!」

「うん、勿論わかってるわよ!」

村長の家に向かう道中、私は先ほどカジルが泣いた原因の事で落ち込んでいた。

「何よ。私の笑顔が怖いって…そりゃぁ多少は引きつった顔をしていたかもしれないけど、何も私の顔を見て泣く事ないでしょ…」

「何をさっきからブツブツ言ってるの?ねこ。」

そんな私の様子を見ていたエミリアが心配して話しかけてきた。

「え!?ああ、べ、別に何でもないわ気にしないで。それよりもさっきからいい匂いがするわね、一体何処からしてるのかな?」

「そう?ならいいけど。このアーラム村は小さな村だけど、王都と隣のゲンダール国との丁度中間に位置していてね、旅人や商業人なんかが結構往き来するの。だから屋台なんかの出店が沢山出店していてね、その匂いがここまで届いているんだと思うわ。」

ふむっ。なるほど、よく辺りを見回すと屋台などの出店がちらほらと軒を並べているのが見えた。
中でも白髪で体のガッシリとした老人が焼いている焼き鳥のような串かつ屋から漂う匂いが一際私の鼻と胃袋を刺激し、思わず『ぐ〜っ』っと腹の虫が鳴ってしまった。

「あははっ!ねこったらお腹空いたのね。」

「だって〜。朝は軽めの朝食だったし、慣れない竜車に乗ったせいで変に緊張して踏ん張ってたからだよ!普段は小食なんだから〜。」

「うんうん。私も丁度小腹が空いてたの。あそこの串かつでも買って食べながら行こうよ。」

エミリアの同意を得た私は白髪のガッシリとしたお爺さんがいる屋台へと早足で向かい、焼きたての串かつを注文することにした。

「お爺さん、今焼いている串かつを2本下さいな。」

「あいよ!お嬢ちゃん見ない顔だね、旅人か何かかい?」

笑顔がとてもダンディーなお爺さんは、慣れた手つきで焼きたての串を2本掴み取り、鉄板の横に置いてあるタレ壺にサッと潜らせると、タレの滴る串を私に手渡しながら聞いてきた。

「ありがとう!旅人じゃないわ。今日は友達のお使いについて来たの。」

私は、熱々でいい匂いのする串かつを受け取りながら満面の笑顔で答えた。

「うっ!……。そ、そうかい。もう一本やるからとっとと友達の所に帰んな!」

お爺さんは何故だか急に機嫌が悪くなり、もう一本串かつをサービス?でくれると直ぐに俯いて黙々と串かつを焼き始めてしまった。
私は屋台に来た足取りとは違ってトボトボとショボくれてエミリアの元へと帰って来た。

「な、何よ!!何で私が笑顔を見せると、皆んな態度が急変しちゃうの…。ブツブツ…」

「ど、どうしたの?またブツブツ言って。屋台のお爺さんと何かあったの??」

「え〜ん。聞いてよエミリア〜!!」

私はあまりの理不尽さからかエミリアにカジルとの一件から今までの事を全て愚痴ってしまっていた。

「そっか〜。よしよし、もう泣かないの。ねこは魅力的な大人の女性だよ!いつまでも気にしてないで、串かつでも食べて元気出そうね。」

「うん、そうする。ありがとうエミリア!」

エミリアに言われて、せっかく買った美味しそうな串かつをパクリッと一口食べると、中から肉汁がジュワ〜っと浸み出し何とも言えない肉の甘味が口の中いっぱいに広がっていく。牛肉よりもアッサリしていて鶏肉よりも味が濃い、両者の丁度中間辺りの味わいで食べやすい。

『これは上手い!』

そのまま一本目をペロリと平らげ続けて2本目も一口食べた所で、これが何の肉かが気になりエミリアに聞いてみた。

「ねぇエミリア。これは何ていう動物のお肉なの?」

「これ?美味しいでしょ!これはね、スプリング・ライス・キャットって言う魔物の肉で、春の暖かい季節にしか取れない貴重なお肉なの。今の時期だと何処のお店でも大人気だよ。」

『え!?』………。

「エミリアさん。つかぬ事をお聞きしますが、その魔物はニャ〜って鳴くのかな?」

「うん。そんなに可愛くは鳴かないけど、そんな感じかな」

私は口の中にある肉をゴクリッと飲み込んで暫く動けなくなってしまった。
………。

少し頭の中を整理しよう。
キャット、ニャ〜と鳴く、オマケにライスだとぉ〜!!それから連想される動物と言えば……。

『猫だな…間違いなく。』

ああぁぁ!!魔物とは言え、私は猫の肉を食べてしまったのかぁ〜〜
……共食い……。嫌々私は人間だしw

「どうしたの ねこ !!すごい汗よ!それに顔が真っ青だし…。」

大好きな猫の肉を食べて顔が青くなった私を見て、エミリアが心配してくれているが彼女の声は私に届くことはなかった。

…………………

…………………

…………………

「ねこ!……ねぇ ねこったら!!村長の家に着いたわよ。」

半ば放心状態で歩いているうちに、いつの間にか目的地である村長宅に着いたようだ。
私はエミリアに肩を揺すってもらい、ようやく我に帰ることが出来た。

「はっ!? ここは何処?」

「もぅ!大丈夫?ここが村長の家よ。早く中に入りましょ!」

「う、うん。ごめんねエミリア心配掛けて。もう大丈夫だから、ここが村長の家ね。」

エミリアが村長の家の呼び鈴を鳴らそうとした時パックが私達の目の前にパッっと現れた。

「ごめんリア。僕そろそろ寝ちゃいそうだよ。」

確か精霊はこの世界に顕現するだけでマナを消費するとスバルが言っていたな。
パックも1日のうち、約8時間は眠らないといけないらしい。
これから8時間は、私がエミリアを何としてでも守らなくてはいけない!
私は心の中で強く思うのだった。

「うん、分かった!ねこも居るし安心して。」

「それじゃ ねこ。僕が居ない間リアのこと頼んだよ!くれぐれも……無茶な…事は……しない……ように…。」

そう言いながらパックは、す〜っと消えていった。

パックが眠るのを笑顔で見送ったエミリアは次に村長の家の呼び鈴を鳴らす。
暫く待って居たが、家の中から誰も出て来る様子がない。
もう一度鳴らしてみるも、やはり反応がない。

「変ねぇ。留守なのかしら?今日ここへ来る事は事前に知らせてあるはずなんだけど…。」

不思議に思ったエミリアが不意に家のドアノブを掴むと、『ガチャリッ!』という音と共にドアが開いた。

「鍵が掛かってないわ!何かあったのかしら??入ってみようか ねこ。」

これは危険だ!!既に誘拐犯が中に居るかもしれない!
そう感じた私はエミリアに待ったをかける。

「待って!!私が先に入って様子を見て来るわ!エミリアはここで待ってて。」

エミリアを村長の家の前で待つように言った私は、中の様子を探るべく、恐る恐るドアを開けて家の中に入っていった。

らんちゃん♪
@rantyann_0627
https://twitter.com/rantyann_0627

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?