Sorround me Music, Feel Good #13

Xìn/古川麦

ジャズやラテン、クラシックからのリソースが、日本語・英語歌詞の混じるメロディーとバンドアンサンブル両方へと綺麗に昇華されている。

角銅真実をゲストヴォーカルに迎えた『Why(feat. Manami Kakudo)』は、ピアノイントロからはじまる優しく落ち着いた世界観に、次第に熱が宿り鼓動が早まるような展開と曲の構造とのリンクが完成度高く仕上がっていると思うし、続く『雪』とも併せて、映像的な美しさ、アルバムとしてのストーリー性を感じる。

『Vacilando』『灯火』では、ボサノヴァ風のギターリフに乗って、フルートが呼ぶ快活でさわやかな風、弓で弾かれるウッドベースの副旋律やパーッカションなどによる演出、響きのディテール、それぞれの要素がユニーク/豊かで楽しさもあり、立体的に優れた作品。

Fragments/Ryo Sugimoto

先に紹介した『Xìn』にも参加しているピアニスト/キーボーディストのソロ作品。落ち着きのあるミニマルミュージックというのがファーストインプレッション。あるいは、アンビエントやヒーリングといった言葉がわかりやすいとは思う。

一方で、筆者にはゲームミュージックをバックグラウンドに感じるような、もう少しだけ、現代人(あるいはミレニアル世代以降と言う方がより適当か)の誰にとっても身近な、聞きやすいと思えるセンスが自然に溶け込んでいると感じる。高級感や洒落たムードもあるが、そこを突き詰めたというより、もっとリラックスして、かけっぱなしにしておけるような、どんな気分や空間でも、リスナー次第で再生する状況を選んで良いような「許容」を感じる。

鍵盤の響きは美しいが、グランドピアノのように確たる響きであり過ぎず、電子ピアノのようにメカニカル・代替可能でなく、体温・気配がありつつ、その距離感のデザインが秀逸。

SUPERNATURE/CERRONE

日本では2019年11月に公開されたギャスパー・ノエ監督のホラー映画「CLIMAX!」のオープニングを飾る鮮烈なダンスシーンのBGM(映画用のアレンジ版)で、オリジナルはCerroneの『Supernature』。

公開前からこの映画に注目しており、Youtubeでアップされていたダンスシーンのみの動画を先走って楽しんでいた。無論、映画作品全体でこそ監督の意図したひとつの作品なだろうけれど、ホラー映画、ドラッグムービーの要素など刺激の強い作品なので、この部分だけでもという気持ちで紹介。

オリジナルのヴォーカルトラック入り・バンドアンサンブルとは違うループ感(没入感)で、ドープなリミックスとなっており、まさに「聴くドラッグ/観るドラッグ」を実現。ファッション、ジェンダーが繰り広げられるダンスのもと混ざり合う狂乱の長回しワンカット。

Back When Tiger Smoke/NST & THE SOUL SORCE

FUJI ROCK FESTIVAL '19初日に出演していたことから知った韓国のインストバンド。ルーツDUB/レゲエから発展して独自解釈/アイデアの一部とした音楽性を持つバンドという意味で、韓国版初期TAMTAMのような趣がある。

ライヴでも韓国語ヴォーカル(キム・ユルヒ)をフィーチャーするなどアクチュアルな姿勢に加えて、ダブ/レゲエ特有の時に気だるく、時に劇的な移ろい、民族色やEU/US的なポップ、ロック、ファンク、ブルースなどのハイブリッド感を醸しており、アンサンブル/立体感の変化は自由かつこなれてる。

出発点としての様式や形式の模倣から、そこに頼ることなく、自分たちにとってのよりフィールグッド、よりバイブス高いところを追及していくスタイルには、近年のK-POPミュージシャンしかり、現代韓国の貪欲な輸入意欲や国外へ出ていく気質を感じる。

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