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『井の頭公園のラスクちゃんはお砂糖とお塩でできている』はなぜ生まれたのか?


井の頭公園の無頼派エルフ、るいざ・しゃーろっとです。今回は私の代表作である怪文書『井の頭公園のラスクちゃんはお砂糖とお塩でできている』はどうやって生まれたのか、そして『井の頭公園のエルフの物語』は何を目指しているのかについて書きたいと思います。

『井の頭公園のラスクちゃんはお砂糖とお塩でできている』とは?

東京都三鷹市にある京王電鉄井の頭線の井の頭公園駅およびその周辺を舞台とする小説です。登場人物は井の頭公園駅辺りに引っ越してきた「私」と池の竜神様、そしてその語られる話の中に登場するラスクちゃんハオランくんの二人のカップルの物語です。この後もシリーズは展開し、私が過去に書いた小説の人物や様々なアバター、さらにはVRChat上に暮らしている人たちも多く登場していきます。そういう意味では、何でも「ぶち込んで」しまった結果の小説だといえるでしょう。

なぜ舞台は井の頭公園駅なのか?

なぜ井の頭公園駅とその周辺を舞台に選んだかというと、VRChat上に井の頭公園駅を再現したワールドの再現度の高さに感動してしまったからです。

実際にこのワールドはいろいろな方が記事にしていますが、本当に完成度に驚く人が多いです。

このワールドはウクライナに住むnyanyaさんによるものです。実際にnyanyaさんにあった方のお話によると、日本には来たことがないし、「今後も行けそうにない」と思っているようです。

しかも、ここは私が現実の高校時代に下校時間後に応援団のダンスを練習するために集まったり、行事の終わった後に駄弁ったりする場所でもありました。私の高校は都立の進学校でしたが、行事もがんばる人が多い高校でした。しかし、1学年下の人たちが起こしたこのような事件が起こったことによりこの文化は廃れてしまいました。

そんな地がメタバースの世界に飛んできて以来、私は40回ぐらい聖地巡礼をしています。その結果、作中にも登場する居酒屋である万星さんや、チーズケーキを作っているcheerk fikaさんなどのお店を見つけてきました。そのチーズケーキを売っているcheerk fikaさんの隠れた人気アイテムが「井の頭公園ラスク」だったのです。

そう、「ラスクちゃん」と「ラスク」……それがきっかけです。そして、そのラスクの材料に「砂糖」と「塩」が入っていることを見つけてしまったのです。

ラスクちゃんと言えば、VRChatの世界ではかなり知る人も多いアバターです。来年の頭で発売から3年が立とうとしていますが、現にパーカーも発売されるなど人気も高いアバターです。

さらに、「お砂糖」は「バーチャルの世界での恋愛などのパートナーシップ」を指す言葉であり、「お塩」はその破局を指す言葉です。幸いながら、井の頭公園の池には「カップルが池のボートに乗ると別れる」という都市伝説があります。そして、池には弁財天と習合した竜神の伝説があり、現実世界のVRChatの突発オフ会で参加者が救急車で運ばれていく事件に遭遇……そう気付いた私の中に、ささっとプロットが思いついてしまったのです。

ぶいちゃ民に刺さるキーワードから創作を行う

ここで、4つのワードが出揃いました。

  • 井の頭公園

  • ラスク

  • 砂糖

その結果生まれた言葉が「井の頭公園のラスクちゃんはお砂糖とお塩でできている」でした。この言葉は最初画像だけにしてPNGミュージアム4に投稿するだけにするつもりでしたが、どういうわけかキャラクターが勝手に動き出し、物語になってしまったのです。次に当初の画像を紹介します。

PNGミュージアム4に投稿した画像

このお話は2つの構成でできています。エルフの小説家である「私」とどう見ても少女に見える池の竜神様が駅前の居酒屋さんで話をするところから始まります。この居酒屋さんは後で紹介しますが、そこで様々なものを食べながら話が進んでいきます;
そしてオフ会お馴染みのスマートフォンでお互いの自撮りを表示させて写真を撮った後、竜神様から一つの話を聞かされます。それこそ、ラスクちゃんのお話でした。

ラスクちゃんは幼なじみで恋人のハオランくんと井の頭公園に花見に来て井の頭公園の駅で待ち合わせるのですが、お弁当を食べるベンチがなかった二人は池のボートに乗ってしまいます。その後の話は、読んでのお楽しみということで……。その後、物語はシリーズになって今に至ります。

井の頭公園駅聖地巡礼ガイド

さて、作品の舞台の井の頭公園駅の前ですが、様々なお店があります。併せてここで紹介させていただきます。また、お店以外の施設もちょっと紹介します。

万星(作中にも登場する居酒屋さん)

ここが作中に登場する居酒屋である万星さんです。様々なメニューがあり、その中でもイチ推しが作中にも登場する明太バターうどんです。

万星名物、明太バターうどん

なお、白山たえさんというイラストレーターにより、なんともおいしそう案絵が紹介されています。

本当に、本気の〆うどんだからおすすめです。そして、おでんもまたおいしいです。この出汁も薫り高く、そこに日本酒を注いで飲む出汁割りも絶品です。

万星のおでん

なので、これからの冬の時期におすすめのお店だといえるでしょう。夏にはおでんはありませんが、焼き鳥もありますので、四季を通じて楽しめるお店です。

ビアンカーラ(自然派ワインの名店)

リスポーン地点で180度向きを変えると見えるワインバーです。このお店は基本的に自然派ワインと呼ばれる無添加で製法にもこだわったワインを取り扱っています。なおXもありますが……たまにアクの強いツイートが流れてきます。

実際に、結構よいワインを取り扱っており、こんなツイートを残しています。

扱うワインはよいものなのでちょっと値は張りますが、なかなかよいワインがいただけるお店です。

阿部(イタリアワイン専門の名ソムリエによる隠れ家的なお店)

前のビアンカーラとは異なり、ここはイタリアワインに的を絞ったお店で卸も行っているとのことです。どういったお店かはこの動画を見てみるとわかりやすいと思います。

店内は映画のポスターとジョジョ関連のもので溢れており、なぜか石仮面もあります。しかし、扱っているワインはどれも素晴らしいものです。しかもちゃんとワインは開いて出してくれるので、その妙技もまた素晴らしく感じます。

(2023/12/16 追記)
なお、オーナーの阿部さんはソムリエとして目白の椿山荘や恵比寿のバール&エノテカ インプリチト オステリア スプレンディド ディレットーレなどに勤めた後に2014年に井の頭公園駅前にお店を開業したそうですが、なんとイタリア本国最大のワイン見本市vinitalyにて国際コンクール ワインリスト部門 最優秀ワインリスト賞を受賞しているそうです。イタリア本国にも認められたワインのチョイスを、是非とも堪能していってください。

Craft beer TOCA(多種多様なクラフトビールが飲めるビアバー)

こちらはワールドではお寿司屋さんの隣にある方のクリーニング店の跡地にあるお店です。ここには多種多様なタップがあり、なかなかおいしいビールをいただけます。なお、2階は貸し切りにできるぐらい広いスペースがあるので、ここでオフ会にするのもありかもしれません。

BOB Kitchen(デカ盛りでうまい)

ここの特徴はこのデカ盛りです。

カツがすごくおいしいのですが、この大きさ。ごはんは白米も玄米も選べますが、そのままだと足りなくなってしまいます。でも、ご安心を。1杯おかわりできます。そして、小鉢として付いてくるわらび餅がとてもおいしいです。と、ここまで来れば普通の定食屋さんなのですが、アルコールのメニューはなぜか充実しています。キリンの御殿場のグレーンもあったりするのがちょっと不思議な感じです。

cheerk fika(あのラスクとチーズケーキを売っているお店)

ここはチーズケーキのお店なのですが、ここで売っているのがあの井の頭公園ラスクです。チーズケーキは甘さ控えめでおいしいですし、コーヒーも良く作られていておいしいのですが、それ以上にラスクは推しです。

そして、このお店には私の書いた小説本をお持ちしていますが、どういうわけか店頭に置いてくれています。常連さんの中にはこの本を読んでくれる方もいるとか……。これは、感謝なのです。

なお、このお店はだいたい土日しかやっていませんし、井の頭公園ラスクは常にあるとは限りません。なお年内のラスクはこれで最後なので次のチャンスをお待ちください。

トムネコゴ(静寂な空間でコーヒーと向き合う喫茶店)

次に紹介するのがトムネコゴです。ここは私語禁止・電子機器禁止の、心地よい音楽とコーヒーと向き合うための喫茶店です。

なお、このトムネコゴ、以下のような誕生秘話があります。もしかするとAndroidの人たち、特にかつての「クエ集」を知る人には共感できるエピソードかもしれません。店長さんの素晴らしい言葉が、実に刺さります。

シャララ舎(2024年1月オープン予定)

次はこれからオープンするお店になります。

元は笹塚にあった琥珀糖のお店なのですが、井の頭公園駅前に移転してくるとのこと。

このお店はかなりユニークな琥珀糖を作っており、サカバンバスピスの琥珀糖というのもありました。また、喫茶が併設されており、そこも静かな空間になるのではないかと予想しています。

吉村昭書斎

現在進行中のプロジェクトですが、吉村昭さんというこの地に住んでいた小説家の書斎をワールド内のかつて駐輪場があった場所に移築するプロジェクトが行われています。

この吉村昭さんですが、有名な作品としては『戦艦武蔵』や『海の史劇』といった戦争ものや、『羆嵐』のような動物ものなど幅広い作品を手がけており、「うなぎ」という映画の原作を担当したことでも有名です。

特に、『羆嵐』に関してはここ数年クマによる被害が多発している一方で「クマを殺すな」と役所に抗議電話が入るなどいろいろと社会問題になっているホットなトピックを扱った小説です。もっとも、非常にグロいですが。というか私が体長2.7mのヒグマと鉢合わせたら……生きては帰れないでしょうね……。

その他のお店

なお、井の頭公園駅の近くには様々なお店があるので、是非とも訪れてみるとよいかもしれません。

また、お花見の時期には桜がきれいなので、2024年は是非ともお花見をしたいと考えております。これについては続報をお待ちください。

私は『井の頭公園のエルフの物語』で何をしようとしているのか?

さて、ここまで井の頭公園駅の魅力を紹介してきましたが、ここから私の創作の営みが何を目指しているかについて書きます。

リアルとバーチャルの関係性

先日行われたソーサツ・チエカさんのソーシャルVRライフスタイル調査に関する記事の中に、気になる一文がありました。

一方で、ソーシャルVRでの体験をきっかけにして物理現実の商品を買ったことがある層が半数に満たないのも納得できます。Vketなどへの企業の出展を除いて、具体的な商品への購買意欲を起こさせる仕掛けはまだソーシャルVRには少ないと感じています。それがもっと増えるべきかどうかについては、私は判断を保留しているのですが、観光・食品については増えていいと思います。当面はVRで代替できないものだからです。服飾については、アバターの可能性を狭めるのではないかという懸念があります。

観光について、あるエリアの中にある商店などをどれだけ精確に再現するかは権利の問題もあって難しいのではないかと思いますが、井の頭公園駅などを見ていると、物理現実の名前やデザインそのままの方が集客効果はあるような気がします。また、単に3Dで見た目を再現するだけでは不足で、そこで展開されそこに紐づく物語を伴わなければならないのは、アニメや小説の聖地形成と同じです。その点で、Vketのパラリアルワールドは企業の宣伝が多くのスペースを占め、訪れたユーザーが自分たちの体験で物語を形成するには公開期間が短いため、街そのものへの集客効果がどれほどあるかは疑問だと私は思っています。

ソーサツ・チエカ「ソーシャルVRライフスタイル調査2023レポートの感想」より(太字は筆者)

また、「ワールドの寿命」にかんして、「ボストン茶会事件」ワールドの作者であるいとよさんが次のように述べています。

ここから、私は「VRChatに現実世界を再現したタイプのワールドには物語が必要である」と考えるに至りました。その成功例が大阪の道頓堀です。2023年の阪神タイガース日本一が世間の注目を集めるようになった中、本来禁止されている道頓堀へのダイブもメタバースならできてしまうことがテレビに採りあげられるほど話題になりました。そして現実世界より多くの人がメタバース道頓堀にダイブしています。

事実、私も参加しつつ、『アレ』を上梓しています。

このような流れができることによって、現実世界とメタバースで様々な循環を創り上げることが目的なのだと実感しています。

「井の頭公園ラスク」に対する関心

なお、私は「井の頭公園ラスク」についてTwitterでアンケートをとってみたところ、28件の回答をいただき、半数近くの人が「井の頭公園ラスク」を初めて知ったということを知りました。

なお、約3分の1の人が興味があると回答しており、これは現実世界にメタバースの人たちを誘導するよい試みになればと考えています。

最後に

リアルとメタバースの循環を続ける事によって、様々な問題をそれを解決できそうな人に結びつける一つの試みができたらと考えています。

なお、1年前の記事を併せて貼っておきます。

では、井の頭公園駅で、会いましょう!

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