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3年生と1年生で出会ったからこその物語(『SOTUS』感想①)

『SOTUS』の好きなところ

抱えきれないほどたくさんありますが、一つ挙げるとするなら、これです。

作品の根底にあるSOTUS制度の真髄が、とても深く刺さりました。
そしてそれを象徴するものとして、アーティットとコングポップの心の動きが丁寧に描かれていて、そこが本当に大好きです。

SOTUSとは「Seniority(敬意)」「Order(秩序)」「Tradition(伝統)」「Unity(団結)」「Spirit(精神)」の頭文字。
ラップノーン(「SOTUS制度」)と呼ばれる大学での通過儀礼を通して、アーティットとコングポップの愛や仲間たちとの友情、絆が描かれます。

そこで感じたのは、受け継いだものを後輩に返し、切れない絆を結んで、お互いに助け合って、気にかけ合って……という途方もない誠実さや優しさ。物語全体のテーマであるとともに、アーティットとコングポップの関係性そのものだと思いました。

最初の2話で見えるもの

1年生たちは、理不尽とも思える3年生の仕打ちに戸惑い、恐怖し、拒絶反応を示します。その中でコングポップは、誰よりも真剣にアーティットの言葉を聞き、行動を見つめ、受け止めようとしています。
アーティットを理解したくて、本当の姿を見たくて、サインを集め、新入生の数を調べ、友達の名前を覚える努力をする。

2話でコングポップがこう言います。「知りたいんだ、彼らが次にどうするのか」。
オークに「好奇心が強すぎる」と突っ込まれますが、彼の本質が伝わってくるとても好きなセリフです。先輩たちが繰り返し口にするSOTUS制度の教えを真剣に受け止めて、行動に移す努力ができるコングポップ。
その想いはアーティットにも伝わっていて、彼も仲間に「相手を尊重して変化していかなければならない」と語っています。

出会ってすぐの頃から、お互いに強烈に惹かれ合って、真剣に相手に向き合って、そして影響を与え合っているんですよね。彼らの魂が同じ形をしていて、同じ方向を向いていることが伝わってきました。

1年生も3年生も一度きり

1年生を指導しながら、3年生もまた試行錯誤を繰り返しています。作中に「1年生は一度しかない」という言葉が出てきますが、それは3年生も同じ。手探り状態で、時にグラウンドを54周しながら、時間も手間も注ぎ込んでSOTUS制度の本質を1年生に伝えようとする……。

それはひとえに、彼らはそうして得難いものを手にしたから、1年生にも同じ気持ちをあげたいんですよね。ただただ愛なのだと思います。

だからこそ、コンテストで「SOTUS制度をどう思うか?」と問われたコングポップの答えが胸を衝きます。100点満点の回答!
……もう全部わかっている。コングポップには伝わっている。
この時のアーティットの心情を思うと、涙なしには見られません。
そりゃ速攻「いいね!」も押しますよね😢

すべてが結実する旗奪取イベントとギア継承式のシーンでは、私の涙腺が決壊しました…。
大合唱を聞いて「鳥肌が立つぜ!」と道を空けたブライト先輩、1年生に囲まれて真っすぐな感謝の言葉を贈られたアーティット……。受け継いだ想いを無事に手渡すことができて、誰よりも嬉しかったのは先輩たちだったはず。
コングポップは正式に工学部の後輩として認められますが、アーティットもまた、コングポップに3年生にしてもらったのだなと思いました。

真心を贈り合うこと

旗奪取イベント後のセレモニーで、手首にお守りを結びながら、3年生が1年生に心からの言葉を贈ります。

「最高の4年間になりますように。勉強も恋愛も」
「充実した4年間を過ごせますように」
「勉強に集中して、1年生の1年間を大事に過ごせますように」

『SOTUS S』では、3年生になったコングポップがこう言います。

「これからの4年間、たくさん勉強して、君が持っている能力を君自身にもほかの人にも十分に発揮して、たくさんの幸せが訪れることを願ってるよ」

こんな風に後輩の未来を願えるってすごいことです✨
大学生活を大切にして、より良い人間になろうとする精神が本当に眩しい。
真心を伝え続けること、優しさを相手に手渡すことは、とても大切なこと。心から後輩を思う優しい気持ちが満ちていて、とても美しいシーンです。

そして何より感じたのは……真摯に心を傾け合うこの姿勢こそが、アーティットとコングポップの関係そのものなんですよね。二人は、この数ヶ月の活動を通して、本当に丁寧に真心の応酬をしていたのではないでしょうか。

売り言葉に買い言葉でお互いに挑発し合って、反発しているようにも見えるけれど、真剣な気持ちを相手に伝えて、それを受け止めて、そして返して……という行為を、何度も何度も繰り返していたのだと思います。
2年後のSでも変わらない二人の本質。真心を贈り合っている。

『SOTUS』は、アーティットとコングポップが3年生と1年生として、この時この場所で出会ったからこそ、為し得た関係性の物語だと思います。
この作品のとても好きなところの一つです。

作品と俳優陣の化学反応

そしてもう一つ外せないのが、主役の2人を演じたKristとSingto‼
二人を見ていて、しみじみと誠実な演技だな…と感じました。
彼らが演じるアーティットとコングポップが本当に魅力的で、物語を力強く引っ張っている。彼らが出会うべき役で、彼らが演じたからこそ輝いた作品だとよくわかります。

キャリアのほぼ最初の作品であることも大きかったのかもしれません。作品の中で成長していくアーティットとコングポップに重なって、相乗効果を生み出したのだと思います。

キャリアの最初の役柄は文字通り一度しかなくて、無色透明がゆえの輝きがそのまま役に投影されることがあると思います。(そういう作品は得てして伝説になることが多いような…?)
一度しかない本当に貴重な機会が『SOTUS』で、本当にどうもありがとう……と、何度でも天に感謝したい気持ちです……。

……ま、偶然ではなくて、運命で必然だったと思っていますが😀
(KS沼から這い上がれなくなるのはまた別の話)


★2020年8月視聴、原作未読
★画像 cr.GMMTV(YouTube)

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