光素の泉の自主アンタップ
はじめまして。
lotus petalと申します。
いつもはtwitter(https://twitter.com/lotus_petal_)
でmtgの小話や二次創作などで活動しています。
今回はtwitterで発言したこの話題の話となります。
少々珍しい挙動をするためか、引用リプなどを見る限り、
ルール的に疑問視されてる方が多かったように見受けられました。
そこで、
どうしてこの解釈に至ったのかというのを解説する記事となります。
光素の泉とはこのようなカードです。
Halo Fountain / 光素の泉 (2)(白)
アーティファクト
(白),(T),あなたがコントロールしているタップ状態のクリーチャー1体をアンタップする:緑白の1/1の市民(Citizen)クリーチャー・トークン1体を生成する。
(白)(白),(T),あなたがコントロールしているタップ状態のクリーチャー2体をアンタップする:カード1枚を引く。
(白)(白)(白)(白)(白),(T),あなたがコントロールしているタップ状態のクリーチャー15体をアンタップする:あなたはこのゲームに勝利する。
このカードをクリーチャー化した場合の処理を語るには、
2010年の銀枠プロモカードである
Snow Mercyについて語る必要があるため、
カード画像と日本語テキストからご紹介します。
Snow Mercy(2)(白)(白)
氷雪エンチャント
クリーチャーがあなたにダメージを与えるたび、そのクリーチャーの上に球体(globe)カウンターを1個置く。
(T),(Q),(T),(Q),(T):球体カウンターが置かれているすべてのクリーチャーをタップする。
銀枠世界ではありますが、
ひとつの起動型能力の中に
タップシンボルとアンタップシンボルが同時に共存しており、
ある種クリーチャー化した場合の光素の泉の先祖といえるカードでしょう。
このカードは当時黒枠ルールで機能したかというと、実は違いました。
118.3 プレイヤーは、コストを完全に支払うために必要なリソースを持たずにそのコストを支払うことはできない。例えば、ライフが1点しかないプレイヤーは、2点のライフをコストとして支払うことはできないし、タップ状態のパーマネントをタップすることでコストを支払うことはできない。rule 202〔マナ・コストと色〕、rule 602〔起動型能力の起動〕参照。
・ 601.2h プレイヤーはその総コストを支払う。まず、無作為の要素やライブラリーから公開領域にオブジェクトを動かすことを含まないすべてのコストを任意の順で支払う。その後、残りのすべてのコストを任意の順で支払う。一部分だけ支払うことは許されない。それらのうち支払うことのできないものを支払うことは選べない。
この2つのルールに阻まれ、
当時のtesting_box、mtg質問箱さんは類似の問題をこのように回答しています。
質問のカードたちを知らない方も多いでしょうから、
画像と日本語テキストを貼ります。
Drought (2)(白)(白)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたが(白)(白)を支払わないかぎり、Droughtを生け贄に捧げる。
呪文は、それを唱えるためのコストがそれらのマナ・コストに含まれる黒マナ・シンボル1つにつき追加で「沼(Swamp)を1つ生け贄に捧げる」だけ多くなる。
起動型能力は、それを起動するためのコストがそれらの起動コストに含まれる黒マナ・シンボル1つにつき追加で「沼を1つ生け贄に捧げる」だけ多くなる。
Cabal Surgeon / 陰謀団の外科医 (2)(黒)(黒)
クリーチャー — 人間(Human) ミニオン(Minion)
(2)(黒)(黒),(T),あなたの墓地にあるカードを2枚、追放する:あなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。
2/1
つまり、質問では起動型能力の途中でコストを用意できるが、
前もって用意していなければ起動できないか?という問いに対し、
回答ではその通りと答えているわけです。
Snow Mercyはタップとアンタップが同時に行える必要があり、
上記のように前もってコストを用意できなかったため、
2016年当時の黒枠解釈だと、まともに起動できなかったということがわかりますね。
しかしながら、時は進み2019年。
とある質問が登場します。
この質問の回答こそが今までの解釈を変化させる理由となるのです。
このような質問です。
レンと六番の紋章を得ている。
手札に土地がなく自分の場に島があるとき、
スタック上の呪文を対象にして
回顧を得ている自分の墓地の目くらましを唱えることを宣言。
ピッチコストとして島を手札に戻し、
回顧で島を捨てることで唱えることができるか?
(https://apps.magicjudges.org/forum/topic/51541/?page=1#post-287339)より要約、原文は英語
Wrenn and Six / レンと六番 (赤)(緑)
伝説のプレインズウォーカー — レン(Wrenn)
[+1]:あなたの墓地から土地カード最大1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。
[-1]:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。レンと六番はそれに1点のダメージを与える。
[-7]:あなたは「あなたの墓地にありインスタントかソーサリーであるカードは回顧(あなたはこのカードを、それの他のコストの支払いに加えて土地カードを1枚捨てることで、このカードをあなたの墓地から唱えてもよい。)を持つ。」を持つ紋章を得る。
3
Daze / 目くらまし (1)(青)
インスタント
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、あなたがコントロールする島(Island)を1つ、オーナーの手札に戻すことを選んでもよい。
呪文1つを対象とし、それをそれのコントローラーが(1)を支払わないかぎり、打ち消す。
今までの解釈でいえば、
前もってコストを用意できているわけではないため、
不可能という解釈でした。
しかしながら、
Netrep(インターネット上における、WotC公認のルール回答者)
のlv2ジャッジNathan Long氏はこう回答します。
手札0枚からでも可能である。
最終的にコストが払えるならば問題ない。
唱える前に全てのコストが支払えるかを確認するルールはない。
(https://apps.magicjudges.org/forum/topic/51541/?page=1#post-287512)より要約、原文は英語
この回答により、
今までの解釈を変える必要が出てくるようになりました。
上記の解釈をすれば、Snow mercyも機能するようになったのです。
少し時を経て日本のlv3ジャッジであるtestingさんも以下の記事で今までの解釈との変化、新しい動き方を解説されています。
そして現代に戻ります。
クリーチャー化した光素の泉は上記の記事の
という解釈により、召喚酔いしてなくマナがあれば
個別にコストを払っていくことでアンタップ状態からタップして、
自身をアンタップしつつトークンを生成できるのです。
また、CR601.2hにより、任意の順番でコストを支払うことができるため
タップ状態からでも自主アンタップ後にタップを行い、トークンを生成できるというわけです。
また、クリーチャー化した光素の泉をアンタップ状態からタップ、アンタップした場合の質問に関してはtesting_boxさんから回答がなされています。
同じtesting_boxさんでも、
2016年の回答ではコストの支払いは
事前に全て支払える状態でなければならない。と回答を出したのに対して、
この2021年の回答では
コストの支払いが最終的に支払われればよいという
回答になっており、
2019年のレン6と目くらましの問答の後解釈の変化が起こり、
今の回答になったことが伺えますね。
以上により私はクリーチャー化した召喚酔いしていない光素の泉を
アンタップ状態からタップ>アンタップや、
タップ状態からアンタップ>タップが出来ると解釈しました。
おまけ
Magic OnlineやMTG Arenaでの挙動の推測について。
Magic Onlineでは
単体でクリーチャー化した召喚酔いしていない光素の泉が
アンタップ状態であるだけだと起動できません。
(横にタップ状態のクリーチャーがいれば自主タップ>アンタップが可能)
おそらく、Magic Onlineでは旧来の解釈のままであり、
支払う前に全てのコストが用意できなければ起動できない。
という状態のままであることが推測されます。
MTG Arenaでは、
クリーチャー化した光素の泉が、
アンタップ状態からタップ>アンタップが出来ることから、
内部的に最終的に支払えば問題ないようになっていると思われます。
しかしながらタップ状態からアンタップ>タップが出来ない理由としては
Magic Onlineにもいえることなのですが、
mtgのデジタルゲームにはコストを任意の順で支払う601.2hが機能しておらず、任意の順番で支払うことができないため。
と推測します。
以上になります。
最後までご覧いただきありがとうございました。
追記:2022/6/17
mtgアリーナは6/7のパッチで
光素の泉は任意の順番でコストが払えるようになり、
タップ状態からアンタップ>タップもできるようになったようです。
水銀さん、情報提供ありがとうございました!
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