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雑記:日本人から愛される「ロータス・ヨーロッパ」、愛されない「ヨーロッパS」

日本は国土の大半を山が占めています。その為、国土の中で更に狭い平野で生活しなければなりません。
そのため、日本では小さな車が人気で一番売れているのはローバー・ミニより少し大きい「軽自動車」と呼ばれる車です。
そんな国で、小さくてスリリングなワインディングロードを走るのに最適な「ロータス」が人気なのは必然でしょう。
事実、市場規模が劣るアメリカに比べて日本ではエリーゼ・エキシージがよく売れました。
アメリカ人がエリーゼやエキシージに乗れるのかって?(体型的な意味で)
いや、よく分かんなかったです。(衝突安全基準)
(尚アメリカはエヴォーラが人気です)。

「ロータス人気」は漫画から始まった

とても日本的ですよね。
サーキットの狼」という漫画の主人公がロータス・ヨーロッパを駆り、フェラーリやポルシェ、マセラティなどのスーパーカーを相手に公道レースを繰り広げる。
パワーのないヨーロッパが数々のライバルと競い合う姿に、当時の少年たちは魅了された。
日本では過去に2度ほど「スーパーカーブーム」と呼ばれる社会現象が起きたことがあります。
ノートや筆箱、下敷き、衣服などあらゆるものにスーパーカーのプリントが施され、飛ぶように売れた(らしい)。
第二次世界大戦後、原爆で二度にわたって無駄に焼かれた(個人の歴史解釈)日本の復興を支えたのが自動車産業です。
そうした過去がある日本人にとって、自動車は単なる道具ではありません。
話を戻します。
当時、スーパーカーは宇宙からやってきた未来的な乗り物であり、驚くべき技術とデザインで自動車を皆が憧れる「未来の乗り物」そのものだったのです。
少なくとも、フェラーリのポスターで部屋を飾った少年達はそう感じていたはずです。

いずれにせよ、イギリス人が納屋で作り始めたプラスチックカーのベストセラー「ロータス・ヨーロッパ」は、東の端っこにある島国がスーパーカーの魅力にとりつかれた理由のひとつであったことは間違いないでしょう。
漫画の中で見ていた未知の車が、現実に存在することを知った当時の日本人の衝撃はネット世代の私には想像することもできません。

このように、「ロータス・ヨーロッパ」は日本人にとって特別なクルマなのです。
ディーノやカウンタックと言ったスーパーカーと同じポジションにヨーロッパを置きたいのだ。
これは本当の話。

復活したロータス・ヨーロッパ......?

これは15~6年前の話。
LOTUSがエリーゼ(厳密にはオペル・スピードスター)のシャシーを使ったクルマを販売した。
それが「ロータス・ヨーロッパS」だった。
マイク・キンバリー名義でかつてのベストセラーの名前を復活させたのです。
このクルマは500台も売れなかったという商業的失敗作ですが、なぜ失敗したのでしょうか。
いろいろな意見があります。
私個人としては、熟成されたZ20LEHエンジンを載せなかったこと、あるいはエリーゼやエキシージのようにトヨタ製エンジンを載せなかったことのどちらかだと思います。
もしトヨタの3S-GTEを搭載していたら、今頃エキシージは10年前に廃車になり、エリーゼ・エウロパス・エヴォーラの図式が出来上がっていたかもしれません。
あるいはK20Aを積めば…。
売れなかった最大の敗因は、パワーがなかったことです。

もちろん、日本にも「EuropaS」は輸入されています。
日本ではすでにエリーゼやエキシージが人気で、VTECへのスワップも行われるくらいチューナーには人気です。
そんな時に、かつてこの国をスーパーカーに夢中にさせた車の名を冠したクルマが入ってきたのです。
日本人は大きな期待を寄せていたでしょう。
しかし、蓋を開けてみると、重くて力のない車でした。
軽量化のかけらもない。
その上、LOTUSは「快適性を重視した」と謳います。
MAZDA MX-5(ロードスター)を作った日本人を前にして、よくもまあそんなことが言えたものです。
LOTUSはかつてM100エランをMX-5の登場によって完全敗北していますが、どうやら「Europa」でも完全敗北したかったようです。ていうかした。
私から見ると、積極的にダメにされにきている様にしか見えない。
「Lotus」は負け戦が好きなようです。
その結果、EuropaSは日本で108台ほど売れたそうです。
すごいですね。
総生産台数500台弱のうち、4分の1くらいが日本なんですよ。
日本はEuropaSの第二の故郷となってしまいました。
故郷で愛されているかはどうかは別として。
因みに、日本にはオペル・ヴォクスホールのディーラーがなく、車よりもニンジャを探す方が簡単です。
そんな国で乗るということは、二度と車を修理してもらえないということです。

現在。
オペル・ヴォクスホールは現在も日本には存在しません。
部品もない、知識もない、手段もない、ノウハウもない。
もっと言えば、私は日本で最初の、そして最も先進的なオペル・ヴォクスホールのエンジンのパイオニアです。
ロータスオーナーでありながら。
ただの一介の車好きでありながら。
その程度の人間が、誰よりも先頭を走る羽目になっている。

そんなわけで、日本でEuropaSはまったく人気がない。
かつてのヨーロッパにあった夢も、エリーゼやエキシージにあった走行性能も無い。
そんなクルマに誰が魅力を感じることができるのだろう?

「私がパイオニア」

そこで見つけたのが、かつて英国で活躍していたクリス・ランドール氏とキャンベル・キャシディ氏のEuropaGTです。
Z20LExは、ヨーロッパではカスタマイズのベースとして人気のあるエンジンです。
タービンを交換した瞬間、300~400psまで一気にパワーアップします。
400psのエンジンに、エリーゼよりわずかに重い1トンのボディを載せれば、同じパワーを出力するライバルに比べれば結果的に超軽量マシンとなります。
今までそんな話は聞いた事がない。
現実の奇跡のようなEuropaGTを見たとき、私の心はかつて部屋にフェラーリのポスターがいっぱい貼った少年達を圧倒するほどの喜びと希望でいっぱいになりました。
つまり私は、海の向こうからギャレットタービンで武装したEuropaGTという宇宙船によって、3つ目の爆弾を落とされたということです。

私はずっと信じていました。
1.8リッターのスーパーチャージャー付きエンジンより、2.0リッターのターボチャージャー付きエンジンの方が速いことを。
この国のEuropaS事情は、この事実を否定してきました。
つまり、ロータスが大人しくトヨタの3S-GTEやVTECを積んでいれば、こんな悲劇は起こらず、みんながハッピーになれたはずなのだ。

日本人はロータスやヨーロッパが好きだが、EuropaSには興味がない。
しかし、ここにはEuropaSを信じ続けEuropaGTの希望を見せられた人間がいいます。
どうか、この奇跡を忘れないでください。

https://youtu.be/u120ra-V2UQ

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