孫子の兵法に学ぶPVPの心得 その1【アルビオンオンライン】
孫子のことはご存じでしょうか?
風林火山とか、兵は詭道なりとか、そういった有名なフレーズを耳にしたことがあろうかと思いますが、それを言った人(元ネタと言ってもいいかもしれません)が孫子です。
歴史ものの漫画やアニメなんかは勿論、そうでないものでも策略家的なキャラクターは当たり前のように孫氏を引用する戦いの基本を押さえる上で非常に良い教材とされています。
そして更にはビジネス本でも教材として用いられる等、この孫氏の教えというものは単なる戦いの手引書に留まらない普遍的な内容であると考えられています。
さて、そんな中で私は猫も杓子も孫子孫子と文明の進んだ現代においても大昔の人物が持ち上げられ続け、その教えを記した兵法書から学べと言われてもどこか釈然としないなぁと思うことがありました。
新しいものが古い物より必ずしも優れているわけではないとはいえ、あらゆるものが時を経れば陳腐化するものだからです。
例えばニュートンの発見した万有引力、これを知った幼少期の私は「だから何なの?」と思いました。
今や引力の存在なんて幼児でも知っています、これに興味を持つことは難しいものでした。
またある時は尊敬する人物にアインシュタインを挙げる友人を見て新興宗教にハマった人を見るような哀れみに似た思いを抱きました。
IQ150だか180とか言われるような天才の事なんて100程度しかないであろう私には全然分からなくて、その難解な理論や数式を教わってふんわりと分かったような気分になるだけで心底理解することは出来ませんでした。
当然上っ面の功績だけ見て何か強い感情が呼び起こされるようなことは一切ありません。
それが自分にどう関係があるのか、何に使えばいいのかということを掴むことが出来なかったんです。
そんな私が何故孫子がどうこうと言い出したのか、それは単純に理解できる範囲内だったから。
量もさほどではなく単純明快に原理原則のようなものが示されていて、かつそれをどのように用いるかという説明があったことでこの知識を道具として役立てることが出来たからです。
万有引力の例で説明すると
質量を持つ物質には他の物質を引き付ける力がある
例えば石を投げた時その軌道が放物線を描くのは地球の引力に引っ張られているから
宇宙空間では直線的に飛び続けるだろう
こうした形で引力という原理を用いてその他の現象を説明することは「だから何?」に対する回答として納得がいくものですよね?
孫子の兵法から得られる知識はこのように原理を用いて戦いの基礎を説き、その使い方までしっかりと理解できるから有用なんです。
本題に移りましょう。
今回の記事の趣旨は普段自分がアルビオンをやっているときに疑問に思ったことを件の孫子の教えに照らし合わせて答えを出してみようといったものになります。
疑問1:マスタリーを上げに多くの時間を費やすのは正しいんだろうか?
武器の熟練度によって武器のコストパフォーマンスに大きな差が生まれる、というのは私のようなある程度長くアルビオンオンラインをプレイしているプレイヤーにとっては既に解消された過去の問題と言えるものです。
しかし全てのプレイヤーがそうであるはずがなく、大多数は延々とこの問題に悩まされ続けているのではないでしょうか。
マスタリーの低さは「戦っても勝てない」という結果として現れ、その影響からある人はPVPを拒絶するようになり、ある人はひたすらにファームし続けるようになる。
前者はかなりネガティブな反応として、そして後者はポジティブではあるものの両者共にPVPに対する意欲が大きく失われてしまったと見ることができます。
私はアルビオンオンラインのPVPに他とは一味違った独特な面白さを感じていて、積極的に楽しまなくては勿体ないと考えていますからファーム(レベル上げ)に時間を割いているのは間違っているんじゃないかと思えてくることがままあります。
これに対して私は以下のような文に答えを見出しました。
『勝兵は先ず勝ちて後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて後に勝ちを求む』
『利に合いて動き、利に合わざれば止む』
勝算を見出してから戦え、利益を得られるなら戦い、そうでなければ戦うな。
孫子の兵法には同じような意味の事が様々な言い方で書かれており、それを私は言われるまでもなく分かっています。
負けるのは別に構わないけど特に勝算も無く戦いに行くのってバカらしいですからね。
レベリングがかったるい気持ちをそれらしい理屈(例えば不利な戦いに応じることが立派であるみたいな)に歪めて浮足立った行動を起こすべきではありません。
結論として勝機を見出せるようになるまでファームするのは正しいということになります。
だって孫子がそう言ってるんだもん。
疑問2:いつまでファームすればいいのか
マスタリーはどのくらいあればいいのか、PVPを積極的に行っているプレイヤーのIP平均はいくつか。
という疑問に私は明確な根拠を持って答えることができません。
よく聞かれるんですけど自分が出向いた先にいる敵のIPなんて予想する余地がほとんど無いから肌感で答えるしかないんですよ。
無責任なPVP推奨派の私としては1300以上、T8.1相当以下がバリューゾーンではないか、マスタリーについては基礎武器は三種全て100、使用する武器は当然100を最低ラインと考えています。
これに厳格な根拠があれば孫子より優秀と言えるのですが残念ながらそんなことはありません。
一方孫子は五事という絶対的基準で自軍を評価し、七計という相対的基準で彼我の優劣を見極め8~9割有利なら勝てる、4~5割なら勝てないという判断基準を示したそうです。
50%を勝てないとするところから孫子がかなり慎重派であることが分かります。
「IPがどうとかじゃねぇ、勝てるか勝てないかだ」と言うのが孫子
「1300でいいよ、負けたら録画を見直したりしてフィードバックすればいいじゃん」と言うのが私
国家の存亡を賭けて戦っているわけじゃないゲームにおいては私の言ってる事の方が妥当な気がしなくもありません。
ところでみなさんは動画をご覧になられますでしょうか?
マスタリーがゼロの状態からPVPを行ったり、あるいはマスタリーが上がり切っている状態で低ティアの装備を使い高ティア装備の敵を倒したりする動画が検索すると沢山出てきます。
ゲーム理解度の高いプレイヤーによるゲームプレイ映像は我々の想定する技術介入度の水準を大きく上回っており、技術的にも知識的にも学ぶところの多い良い教材となります。
そしてそれはマスタリーが低ければPVPができないという考えを否定し得るものです。
戦いを始めるにあたり万全な準備を前提とする孫子ではありますが、8割勝てれば良いならその勝算は兵の強さ(IP)以外の部分で積み上げても良いと考えられますよね。
IPを軽視して8割の勝率を見出すのは困難なもの、ファームしてIP上げるのと手間が変わらないし確実性が低いのでは?
という疑問を持つ方に私は同意せざるを得ません。
しかし世の中にはそういうことが出来る人も大勢いるのでZero to Heroみたいなことがしたいのなら身に付けなければならない能力だと言えるでしょう。
上記の事から必要なファーム量は人によって異なるということが分かると思います。
前項で納得いくまでファームをするべきだと述べました。
本項で全くファームせずに勝つ事も可能であるという例を示しました。
これを矛盾なく解釈すると自分の技量を鑑みて必要な数字を自分で仮定しそこまではファームをするべきだと言えるでしょう。
前項とほんの少し解像度が高くなりましたがほぼ変わらない結論ですね。
そしてある程度マスタリー上がったからいけそうだけど自信がないなぁという人には
『勇怯は勢なり』
という言葉を送ります。
勇敢と臆病は表裏一体であり、ちょっとした勢い付けで反転するものだという教えです。
現代的に言いかえると
『うるせぇ行こう』
とかそういう感じでしょうか。
その他にも
『高きに登りてその梯を去るがごとし』
というやるしかない状態にすれば覚悟も決まるだろ的な感じの言葉があったりもします。
実は孫子って慎重論を唱えつつもノリを重視する部分があって、波が来てる時は何でも上手く行くみたいなことまで言っていたりするんですよね。
こういう孫子のチャラい部分を使って持論を補強するような姿勢にゾロも苦言を呈しそうなものですが、ビビらずにやればいいじゃんっていうアドバイスには現代にチャラ孫子が転生して来たら間違いなくイイネしてくれるはずです。
アルビオンに無敗の強者は存在しない、度重なる敗北は甘んじて受け入れなければならないものです。
やりすぎちゃって破産したらその時は金策を紹介している記事が他にあるのでそれを読んで実践してください。
疑問3:客観的に見て不利なのは自分なのに、有利なはずの相手が戦いに応じてくれないのは何故か
前二つは初心者向けの内容でしたがここからはある程度慣れてる人向けの記事になっていきます。
マスタリー700スペック以上、装備はT7~、料理バフが30分で50Kもかかるのしんどいよな。
そういう感じの人向けです。
まず最初に心得ておくべきことは、今のあなたの状態は一つの完成系であるということです。
『百戦百勝は善の善なるものに非ざるなり。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり』
戦わずに勝てる奴が一番すげぇと言う意味で、これに感銘を受けた武将は数多くいます。
ビビらせた奴が優勝ということなので、その辺の宝箱やスパイダーを金メダルの代わりに持っていくのが良いのではないでしょうか。
これがPVPをメインにしているプレイヤーにとってしょっぱい報酬にしかならないことは百も承知ですが、これの妥当性を身に染みて理解できないのなら考えが浅いと断じられます。
よく考えてください。
PVPを好む我々が求めているのは言わば「戦いのための戦い」であって、それは「手段が目的化」した状態にあるものです。
「戦いのための戦い」を求めるようなプレイスタイルを否定はしません、私もそうですし同じ考えを持つプレイヤーと出会えばかなり楽しめますからね。
しかしそこに「正しさ」のようなものを求めるのはいただけません、幼稚です。
自分には自分の、他人には他人の目的があります。
それを「尊重する」という言い方をすると行儀の良さを説いているように聞こえるでしょうから私は「道理を弁える」と表現しましょう。
さっき書いたじゃないですか、8割の勝率が見いだせないなら戦うなと。
実は孫子の教えなんて全く知らなくても多くの人がそうしているんです、わざわざ教えられなきゃ分からないんですかって感じでそれがものの道理なんです。
そもそも孫子の兵法なんて「知ってますよそんなこと」のオンパレードですから、読む必要無いんじゃないかとすら思えるほど当たり前の事しか書いてありません。
読むだけなら全く役に立ちません、読むだけで表面的な知識だけ得ようとするなら。
何か役にたてようとするなら「納得」する必要があります。
俺達はちょっと考えれば分かるような当然の道理を受け入れず、自分の利ばかりを追求した無茶な願望を相手に受け入れさせようとして暴論を振るっている。
つまりはこういうことです。
IPこそ自分の方が低くとも十分な勝算ありきで私たちは戦おうと相手に迫ります。
数字は嘘をつかないが噓つきは数字を使うとよく言われていますよね、その典型がこれです。
そんなことは重々承知していながらいつの間にかそれを意識できなくなってしまっている、これは誰もが陥りやすい事なんじゃないかなと思います。
孫子からの学びはまずこのことをしっかり受け入れ、人間ってそういうものなんだなと心得ておくところから始まるのではないかと考えています。
これは世のあらゆる名著と呼ばれるもので共通して説かれている訓戒です、言い方に多少の違いはありますが。
そしてこのことと向き合えるのであれば、この人類共通のアホさを利用して利益を得ることが出来るんだということまで孫子は言及してくれています。
『我戦わんと欲すれば、敵塁を高くし溝を溝を深くすといえども、我と戦わざるを得ざるはその必ず救うところを攻むればなり』
イケイケの雰囲気を出しても敵は警戒するばかりとはいえ、戦わざるを得ないような状況を作れば敵は自ら戦いにくるものだという意味です。
これをアルビオンに適用するなら宝箱とかスパイダーとかですね。
来ないならオブジェクトに触って来させる、MOBA系全般でベイトと呼ばれているプレイングそのものです。
箱やスパイダーから得られる利益はしょっぱいんだから、これを釣り餌にしてより大きなものを釣り上げようという試み。
この時重要になるのはいつ反転して敵に襲い掛かるかを考えておくこと、そのためにはどのような状態になっていれば自分が勝てるのかあらかじめ算段をつけておくことです。
相手に何かしらのスキルを使わせてそれを避ければ良いのか、ある程度近寄ってくればそれで十分なのか、事前にシミュレーションしておいて基準を設けておくといいでしょう。
この場合主導権は自分が持っているので判断が難しいのは敵側です。
『算多きは勝ち、算少なきは勝たず』
より具体的な戦いの流れを事前に思い描きそれが正確な人が勝ちます。
「負ける」ではなく「勝てない」と言っているのが私には非常にしっくりくる表現なんですよね。
確かに負けてないけど勝てもしなかったという状況は振り返ってみればよくあるでしょう、こういう時は負けた時ほど真剣に振り返ることも無く、いつまでの詰めの甘さを残してしまうものです。
真面目に向き合うと孫子の言葉は耳に痛い。
また、有名なフレーズである
『兵は拙速を聞く』
というのも忘れてはならない心得です。
「聞く」ではなく「貴ぶ」という表記の方が多く使われているらしいですが、いくつか読んだものの中で「貴ぶ」としているものは速さばかりを強調するきらいがあり云々と指摘しているものがありました。
なのでこれの解釈としては、完璧でなくても十分な条件であるなら機を逃す前に行動せよ、とするのが矛盾が無いかなと考えています。
万全を期すとは言っても10割ではなく8割で良いことは先述の通りです。
『凡そ戦は正を以て合い、奇を以て勝つ』
いかにして拙速ながらも8分の勝率を見出すかについてはこの辺がヒントになるように思います。
簡単に約すと戦いはセオリー通りに行われ、奇策によって決着を見る、といったところでしょうか。
これは知名度の1、2を争う有名フレーズである『兵は詭道なり』を一言で説明している、と私が解釈している一文です。
戦いとは詭道(敵を欺く行為)である、なぜならば戦いには正道がありそれに則って進める力の無いものは論外ではあるが、決着の要因となるものはそこから外れた奇策であることもまた事実である。
とするとちゃんと筋が通ってますよね。
『能にしてこれに不能を示し、用にしてこれに不要を示し、その無備を攻めその不意に出ず(中略)故に善く戦う者は人を致して人に致されず』
自分が強くとも弱く見せかけ、勝算があっても無いように振舞い、無警戒にさせたところを攻めて不意を突く。
戦上手はこうして主導権を保持して戦う。
アルビオンにおいても全く同じことが言えます。
そして教わるまでも無くそうしているんです。
まとめ
長くなったのでとりあえず今回はここで切り上げます。
タイトルでその1としているところで察しがついている方もいるでしょう、今のところその2までの用意があります。
今回は特に「言われなくても分かっている」と感じるであろうことをメインに語っていきましたが、次回はこれを「言われてみると確かにそうだ」と感じられるところまで踏み込む内容にしたつもりです。
近いうちにアップロードしますので今回の記事が面白いと思っていただけましたら是非楽しみにお待ちください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?