7日間で世界を作ることはしないだろう
小説を書いている。すごく久しぶりだ。長い時間をかけて、なにを書こうか考えていて書き出したのは数か月前だったけれど、2,000字ほど書いてずっと手が止まっていた。あれこれしているうちにもう締め切りがすぐそこに迫っていて、それでも私はまだ内容をこねくり回して考えあぐねている。
書くことがすごく楽しかった何年か前に比べると、今はそれほどの楽しみも興奮もない。そもそも書く機会や書く時間が減っているのだから当然といえば当然だと思うし、書く内容を考えることもほとんどなくなってしまった。書きたいな、と思うことはあってもひどく漠然としていて、まだ生きて間もないころの今とは違う意味で愚かだった私の方が、自分の思いに輪郭を与えることに一生懸命だったと思う。まっすぐだったと思う。楽しかったと思う。もう、その感覚が手元にないのでなんとなく、そう思う、のだ。
この世にあふれる幾千幾万もの言葉の連なり、物語、詩、随筆、評論、そういうものを考えるといつも畏れ多く途方もない気持ちになる。そんなものを、私も作りだそうというのか。私も、少しでも仲間になろうとしているのか。私は私の物語の神様になろうとしているのか。ばかばかしい。ばかばかしいけれど、なれると信じていた少し前の私はきっと、屈託なく物語をつづることを愛していた。
今はといえば、否定的な言葉しか出てこないので我ながら嫌になるが、私は物語の神様になれないのは重々承知しているし、私は私の生活の登場人物であることを理解した。登場人物は登場人物であって、神様にはなれない。そんな気持ちが私を覆うので、なかなか、小説を書くということがままならない。人間は、ただの人間。私に偉大な力はない。七日間で世界を作ることは到底できない。
それでもまだ、私は物語を考えあぐねている。考えようとしている。