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【イタリア滞在記Ⅳ】④2023年12月第4週

Ad augusta per angusta.
「あんまり食べ過ぎないようにしなくちゃ...」


2023年12月

18日(月)【無題】

昨日 12/17(日)、夕食後、地元の中心街にある中華料理店へ。そのせいか、今朝は胸焼けが半端なかった...にもかかわらず、バールでドーナツを食べカプチーノを飲んだら、絶望的に気持ちが悪くなった。

ドーナツもカプチーノも見たくもないので、バールに飾られていたクリスマスツリーと『誕生』の写真を載せておく。

食後、席についたまま動けないでいると、アンドレアのスマホがメッセージの受信を告げる。彼の母親からだった。明日、急遽ボローニャの病院で脳の検査をすることになったという。
「付き添おうと思うんだ」と、やつは申し訳なさそうに言った。

「知ってる」

「予定通りには出かけられないけど、そんなに時間はかからないと思うから、帰ってきたら...」

「大病院での検査に『そんなに時間がかからない』? どうだろうね。別に、僕のことは気にしなくていいよ。ただ、明日は一人で出かけたいんだけど、いいよね」

「検査は時間予約制だから、そこまで遅くなることはないよ。帰ってきたら一緒に...」

「でも、どんなに早くても帰りはどうせ午後だろ」

「...一人で出かけるって、どこへ行くつもりなんだ」

「ラヴェンナ」
僕がそう答えると、アンドレアは大げさに舌打ちし、得意のジェスチャーで露骨に不快感を示した。わかってて聞いたくせに。

「緊急性はないとはいえ母親の検査でただでさえ不安なのに、どうしてわざわざ心配かけるようなことをするんだ?!」

「僕のことは心配しなくていいって言ってんだろ。そもそもいい大人に外出禁止とか言って、行動制限するのおかしくない?」

「外出するな、なんて言ってない。君は自由だ。でも、わざわざラヴェンナに行かなくても、半日一人で過ごすのに必要なものは全部地元にあるだろ」

「何もねぇよ、あんなところ」

「じゃあ、今週、ラヴェンナへ行こう。一緒に」

「だから、違うんだよ! お前がいたら...」

「俺がいてもいなくても変わらないと思うよ。君がいた頃と『違う』のはラヴェンナなんだから。君もよくわかっているはずだ。一人で行っても、また悲しい思いをするだけだよ」

その後、なぜか突然優しくなったアンドレアと一緒に、ワインの醸造所へ行き...

コルクのクリスマスツリー

赤・白のボトルを計6本買い求めたのち、Oriolo dei Fichi を訪れた。

教会の敷地内に立つサイプレスの木
その実(?)を引きちぎって…
蹴鞠(?)をして遊んだ。

明日、ボローニャから帰ったときに僕がいなかったら、あいつ、怒るだろうな。

231217

20日(水)【どのフレーバーにしようかな?】

ネットで調べた情報によれば、霊長類ヒト科において老化は20~30歳以降に始まり、それに伴い重いものが持てなくなったり、日常生活の中でできないことが増えてくるという。
僕はもう歳かもしれない。家出もできないなんて。

最後に家出をしたのは、去年の夏。あと、これは家出ではないけれど、今年の夏はみんなで昼食をとっている最中にレストランから逃げ出したっけ。
両者ともに何の迷いもなく自然にできて、普通に楽しかったのに... 老化って、半年や一年で急速に進行するものなのかな。

昨日 12/19(火)、母親の付き添いでボローニャの病院へ行くアンドレアが車で家を出た数分後、僕も家を出て鉄道駅そばのバスターミナルへ行き、そこからラヴェンナへ向かうバスに乗る... たったそれだけのことなのにひどく面倒に感じて、結局、昨日はずっと家にいた。
検査の結果、自分の母親の脳に何の異常も見られないことがわかったアンドレアが午後の早い時間に帰ってきて、「これから出かけて、帰りに外食をしよう」と誘ってきたが、体調が悪いから、と、それも断った。
嘘をついたわけじゃない。先週の日記に熱や頭痛より不快な症状はないと書いたが、自己嫌悪ほどではないから。

どうして家出できなかった...?

風邪が治りきっていないからか? 気管支炎がいつかみたいに肺炎になるのが怖かったから?

本心ではラヴェンナへ行ったところで何もないと思っているからか? もう昔には戻れないと本当はわかっているから?

自ら戻るか連れ戻されるかして家に帰ったとき、アンドレアと揉めるのが嫌だからか? 「もう二度と帰ってくるな」と言われるのが怖いのかもしれない。

昔は... 道端で生活していた他のやつらとは違って、いざとなれば親に助けを求められる環境にあり、短い期間ではあったけれど、生活費は自分で調達していたし、ひとりでも平気だった。怖いものなんて何もなかったのに。

僕はもう、ひとりでは生きていけないのかもしれない。


そして、今日 12/20(水)。朝食後、実質 昨日からクリスマス休暇に入ったアンドレアに「出かけよう」と言われ、あまり気乗りはしなかったが、ずっと家に閉じこもっているのもどうかと思ったので、誘われるがまま車に乗る。アパートの駐車場を出る前に、彼は言った。

「たまに風邪を引くのは普通のことだし、数日間出かけられなかったくらいで落ち込むことはないんだよ。俺だって先月末に引いた風邪が尾を引いてるし、ジュリオもダヴィデもインフルエンザにかかっただろ。同じ階に住んでいるロレンツァは一昨日40℃の熱を出したらしい。君だけじゃないんだから気にするな。これから一緒にたくさん出かけような」

親身になって見当違いのことを話す姿を見ていると、なぜか笑えた。

その後、いつものようにあてもなく車を走らせ、教会やワインセラーに立ち寄り、ベルティノーロのレストランで昼食をとる。

アンドレアが食べたウサギ。やつは食ってる最中「こんなに美味いウサギは初めて食べた!」とずっと言っていて、帰り際、店のスタッフと出くわす度に「あのウサギは誰が料理したんですか?」と聞いていた。
味にうるさいアンドレアがあれだけ褒めていたし、10ユーロ以上の料理は二人分の前菜のみと、値段もリーズナブル。僕が食べたタリアテッレは6ユーロ50セントで、とても美味しかった。というわけで、お勧めのレストランなのでショップカードを載せておく。

レストランを出たあと、家に戻り、昼寝。そして、夕食後、散歩がてらジェラテリアへ向かった。車で。

今回滞在中 初☆ジェラート

Che gusto prendo?
Dopo che ho cenato
mi sto scegliendo
 
un ottimo gelato…
Vaniglia e cioccolato!

どのフレーバーにしようかな?
夕食を食べたあとに
選んでる

最高のジェラートを...
バニラとチョコレートにしようっと!

作/訳: ローリス M.

Tanka gelato

Non è un gelato
Però non è salato
Me l'han scaldato!

È un bel tiramisù
E tazza prendo su

短歌 ジェラート

ジェラートじゃないけど
塩からくはない
温めてくれた*!

美味しいティラミス
カップは持って帰ろう**


* 冷凍庫に陳列されていたティラミスを注文したら、お店のスタッフがスプーンが刺さる程度に温めてくれました。

** テイクアウトを想定した商品のため、耐熱性ガラスのカップに入れられていました。

作: アンドレア M.
訳: ローリス M.

ジェラテリアを出たあとは、クリスマス前の地元をドライブ。

なんか怖い
すげぇ怖い
川沿いを散歩しようとしたが、寒かったので秒で車内へ戻った。

明日はグイードのところへ遊びに行く。すげぇ楽しみ!

231220

23日(土)【はじめての食中毒(?)】+追記

注意:サブタイトルからご想像いただける通り、以下、これから食事を控えた方、食事中の方、そして食事をされて間もない方にとって不適切な表現が含まれます。ご注意ください。

21日(木)。カザルボルセッティ(ラヴェンナ県)に住むグイードを訪ね、男3人で食事をしたり、ショッピングモールを見て回ったり、楽しい一日を過ごした。

ショッピングモール内の大型スーパーマーケットでは、36歳と38歳の男がぬいぐるみを選ぶ様子を遠くから眺めた。最終的に36歳は上から2段目のクマ、38歳は上から4段目のトナカイ(?)をカートの中に入れていた。

夕方5時半過ぎにカザルボルセッティを出た直後、助手席で眠ってしまう。道中ずっと寝ていたにもかかわらず7時前に家に着いてからも眠気が酷く、歯だけ磨いてそのままベッドへ直行。夕食はとらなかった。
そして、夜中の3時。事件は起こった。胃の辺りが気持ち悪くて目が覚めたのだ。

食べ過ぎた時に胸焼けがすることはあるけれど、夕方以降は何も食っていないし、そもそも昼飯だってふつうの量をふつうに食べだけだ。
それに、いつもの胸焼けとは何かが違う。

本能的に危機感を覚え、アンドレアを叩き起こして何とかしてもらおうと自室を出ると、リビングに明かりが点いており、ベッドで爆睡しているはずの彼が気だるげにソファに座っていた。
やつが夜中の12時前に寝ることはほとんどないけれど、3時まで起きていることもまずない。
「どうした?」とハモったあと、

「すげぇ気持ち悪いんだけど...」
「胃が痛くて...」と、各々言いかけ、互いに顔を見合わせた。

「君もか」

「僕は痛くはないけど... お前が胃が痛いなんて珍しいね」

「そうなんだよ。あと、下痢が... 一時間くらい前からなんだけど、君もほぼ同じ時間に体調を崩したっていうことは、これは...」

「何?」

「たぶん食中毒だ。昼に食べた魚が原因だと思う」

「そういえば、お前、残してたよね。『あんまり好きじゃない』って」

「実は、一口食べた時にあまり新鮮でないことには気づいていたんだ。久しぶりに3人で食事をするのに場の雰囲気を壊すのもな、と思って言わなかったんだけど... 大きな間違いだった」

「でも、お前が注文したのは魚のフライだったけど、僕のは焼いたエビだったじゃん。別のものを食べたのに、どうして二人とも...」

「シェアしただろ。ちなみに、君のエビも少し変だった」

「...嘘。むしろ美味いと思ったけど」

ほら、すげぇ美味そう

「グイードに連絡してみるか。もしかしたら彼も...」

「でも、あいつは魚食ってないじゃん」

「フライドポテトは彼も食べただろ。あれもおかしかったんだよ」

「...お前の味覚すげぇな。ふつうに美味かったし、そもそもフライドポテトなんてどれでも同じだと思うけど...」

朝に寝て昼に起きるグイードにメッセージを送ると、体調は悪くない、という答えが返ってくる。
...ということは、きっと魚が原因だね、と結論付け、それぞれの寝室に戻ると、アンドレアは快方に向かい、僕の症状は悪化した。

午前7時前までベッドに横たわり、もはや吐き気と呼ぶにふさわしい症状と戦っていたが、ついに耐えかねて飛び起き、
「胃が口から出てくると思う! 変なものを食べたカエルが口から胃袋を出して洗っている動画をYouTubeで見たことがあるんだ!(?)」と大騒ぎしたあと、アンドレアにバスルームへ連行され、
「君はカエルじゃないから大丈夫だ。すぐに終わるし、出してしまえば楽になるから安心して。さぁ、一緒に吐こう!(?)」と励まされながら嘔吐し、少し落ち着くと、
「よく噛んで食べろといつも言っているのに、どうして言うことを聞かないんだ!」と、なぜか叱られた。

その後、気分はだいぶ良くなったものの、水様の下痢が続いたのち酷い悪寒を感じ、38℃弱の発熱。
夕方にはグイードからアンドレアと同様の、自らの体調不良を告げる電話があった。そのため、「魚に加え、きっとポテト、もとい揚げ油も悪かったのだろう」と結論付け、今に至る。

3人の中で僕の症状が最も重かったのは、エビが一番ヤバかったからか、フライドポテトを他の2人より多く食べたからか、それとも体が彼らよりも小さいからかはわからないけれど、今朝は元気になったから良かった。

先週は風邪で、今週は食中毒... なんかもう神の怒りに触れたとしか思えない。
クリスマス・イブとクリスマスは無事に過ごせるといいけど...

231223

(追記[同日])
コメント欄でご指摘いただいた通り、体調が悪くて上記では詩歌を詠むことができなかったけれど、元気になったので、ここで一首。二人共通の症状が下痢だったから、脚韻で...w


Pesante il vomito...
Che lo stomaco prenda
botta del gomito,

sembra. Proprio tremenda...
Resto senza merenda.

吐くのってキツい...
胃に肘打ちを
食らうみたいだ

ほんと半端ない...
間食もできない

作/訳: ローリス M.
本当は間食どころか丸一日なにも食べることができなかった。まぁ今日の夕飯で取り戻したけど。腹いっぱい食えるってガチで幸せ…

Tanka skifo

Pesce 🐠 avariato
Stronzi l'han cucinato
E io l'ho mangiato

Ma non ho vomitato
L'ho soltanto cagato

短歌 不快

傷んだ魚
あいつらが料理して
それを俺が食べた

でも、吐かなかった
排泄しただけ

作: アンドレア M.
訳: ローリス M.
「一緒に吐こう!」って言ったくせに、お前は僕を裏切った。

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