【イタリア滞在記Ⅳ】③2023年12月第3週
Aut viam inveniam aut faciam.
「たとえどんな道であっても」
2023年12月
11日(月)~14日(木)【足たたば】
11日(月)
喉が痛くて、熱っぽく、部屋を暖めても服を着ても寒い。多分、風邪を引いた。
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12日(火)
昨夜は最悪だった。頭痛と悪寒がひどくて、息を吸う度に咳き込むので眠れないし、熱も上がった。といっても38℃だけど。しかし、僕は滅多に風邪を引かないため(過去10年間の感染例は2回のコロナのみ)、熱耐性がない。今までにいくつか変な病気にかかったけれど、発熱より不快な症状はなかった。
それにしても、この風邪、症状が過去2回のコロナとそっくりなんだけど... PCR検査をしたら、もしかしたら陽性反応が出るかもな...
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この日の午後、さらに熱が上がり、頭が割れるのではないかと思うほどの頭痛に見舞われたのは、朝に食べた物が悪かったのか、それとも、看病してくれる人に日記にすら書けないような暴言を吐いた報いなのかどうかは、定かではない。
13日(火)
男に二言はない。それでも『発熱より不快な症状はない』という前言は撤回する。
頭痛、半端ねぇ。
昨日レベルの頭の痛さを経験したのは2年前、コロナにかかったときが最後だったから忘れていたけれど...
昨夜は半泣きで「痛い、助けて」と日本語で連呼し、何事かと自室に飛び込んできたアンドレアに「今 我慢すればクリスマスは楽しく過ごせるから、頑張れ」と勇気づけられ(?)、彼が持ってきた薬を飲んだらそのうち眠ってしまった。
そして、本日早朝。目が覚めたときには頭痛は治まり、熱も37.8℃まで下がっていた。良かった。普段の行いの賜物だ。
ところで、もう3日も外に出ていない。早く遊びに行きたい。
足たたば 北イタリアの エミリアと
ロマーニャ州の 幸くはましを
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ちなみに、この日の夕飯は...
エミリア地方の名物でもロマーニャ地方の名物でもないけれど、めちゃくちゃ美味かった。
14日(木)
昨夜は寝汗が半端なく、一時間に一度の見回りの度にTシャツを着替えた。そして、今朝。検温してみると、36.2℃。
Vittoria, vittoria! Vittoria, vittoria, mio core!!
...というわけで、朝食のとき、僕はアンドレアに言った。
「お前、今日仕事休みだろ。ボローニャに行こうよ」
「『エミリア街道』のことを言ってるのか? ダメに決まってるだろ! ボローニャは見るところがたくさんあるんだ。そんなに長い時間、君を出歩かせるわけにはいかない」
「なんでだよ! もう治ったって言ってんだろ!」
「まったく、昨日まで体調悪くて泣いてたくせに...」
「は? 熱で目が潤んでただけだけど? 過去のことなんかどうでもいいからボローニャへ行こうよ!」
「絶対に行かない。外出は様子を見ながら少しずつしような」
「たかが風邪くらいで何言ってんの?! お前、頭おかしいんじゃねぇのか?!」
「『たかが風邪』...? Pericolo passato, voto scordato...」
そんなわけで、今日は近所へドライブに出かけた...ものの、自宅を出てすぐに路駐する。
小さな紙袋を持って出てきた彼は、再び車を走らせる...が、またすぐに止まり...
しかし、薬局を出たあと、次に車が止まったのは、公園の駐車場だった。
あぁ、公園を散歩できるならよかった... と思い、ドアハンドルに手をかけると、
「見るだけだ!」と、運転席から、なぜか叱られる。
公園を『見るだけ』だと...? と、愕然としていると、やつは満面の笑みを浮かべ、
「ほら、君の好きな鳥がいるよ。なんてかわいいんだ!」と、その入り口を指さした。
僕が鳥の写真を撮り終えると、アンドレアは言った。
「かわいい鳥が見られて楽しかったね。ずいぶん長いあいだ外にいたし、もう帰ろう」
...この鳥、よく見るとあんまりかわいくないし、外にいた時間は20分くらいなんだけど...
...それでも、まぁ、月曜日から3日間も家に閉じこもりっぱなしだったんだし、とりあえず家と駐車場を徒歩で往復して外に出られただけでもよしとするか...と、無理やり自分自身を納得させ、家に入る。すると、僕の背後でドアを後ろ手に閉めたアンドレアが言った。
「君がかかったのがコロナだったとしても、もう感染の心配はなさそうだし、君の寝室をリビングに移そう」
「...は? もう治ったんだからそんな事する必要ないだろ!」
「君は元気になるとろくなことをしないからな。"気管支炎が治るまで、パソコンに触っていいのは一日に一時間" っていう約束もどうせ守らないんだろ。だから、最後の最後まで看病してあげないとね...」
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16日(土)【いたるところに】
ここはロマーニャ地方エミリア街道沿いの、とある小さな町。中心街からそう遠くない駅近のアパートに、二人の可憐な姉妹、アンとロリーが住んでいました。
12/14(木)の夜、病気の妹ロリーは、病み上がりの姉アンに言いました。
「お姉さま、わたし、ロートロ* が食べたいの。どうかピアディーナスタンドへ連れて行ってください」
「まあ、ロリー。夕食はもう済んだでしょう」
「でも、2時間も前のことだわ。たくさん咳をするとお腹がすくの」
「わかったわ。だけど、あなたは出かけてはだめ。わたしが買いに行ってくるから、お家で待っていてね」
「やだよ。買ってすぐ現地で食うのが美味いのに」
「だったら気管支炎が治るまで待つんだな。食べたいのか、食べたくないのか、どっちなんだ」
「...食べたい」
こうして、夜の7時半頃。アンはフォルクスワーゲンに乗り、近所のピアディーナスタンドへ出かけていったのでした。
そして、ロリーが「あいつ遅ぇな、ロートロ1個買うのに何分かかってんだよ」と姉の身を案じ始めた頃、アンは怒り狂った...じゃなかった、絶望に打ちひしがれた様子で、家に帰ってきました。
「Bastardi… Comune di merda, brutto stronzo…!」
「お帰りなさい、お姉さま。いったいどうしたの?」
「ああ、ロリー、聞いてちょうだい。ひどいのよ。いつもわたしたちが行くピアディーナスタンドの近くには駐車スペースがなくて、歩道に駐車するしかないでしょう? さっきもたくさんの車がスタンド前の歩道に停まっていたわ。でも、ロートロを買って車に戻ったら、わたしのフォルクスワーゲンにだけ違反通知書が貼り付けられていたのよ! 他にも罰金を取れる車が何台も停まっているのに、わたしの車にだけ! ああ神様、わたしがいったい何をしたというのでしょう!」
「きっと、お姉さまは交通違反の常習犯だから警察に目をつけられているのよ。たぶん『あ。いつもスピード違反してるナンバーの車が、今日は違法駐車してんじゃん。ウケるw 罰金取ってやろwww』みたいな感じで通知を貼られたに違いないわ」
「ひどい... そんなの、ひどすぎる... でもね、ロリー。わたしは60ユーロ90セントを払うことが嫌なわけじゃないの。ただ、その支払先が自治体だということが悔しくて...!」
「わかる... わかるわ、お姉さま。さあ、その忌々しい違反通知をわたしに見せてちょうだい」
アンは言われるまま、ちょっとぐしゃっとなった白い紙を妹にそっと渡します。ロリーはそれを受け取って、視線を落とすなり口角を上げました。
「なんだ。これ、日付間違ってんじゃん。23年13月14日。無効じゃね? この書類」
「あら、本当だわ。でも、きっとどんなに抗議しても結局は支払うことになると思うの... それを考えると抗議する時間と労力が惜しい... 」
「それな」
「わたし、払うわ、罰金。とても悔しいけれど...」
「ああ、かわいそうなお姉さま。そうだわ。こうしましょう。わたしのブログでその違反通知書を晒すの。そして、キャプションで『13月っていつのことなんだろうねぇ? イタリアの地方警察は1年が何ヵ月かもわかんねぇくらい無知w ばーーーか!』ってディスるのよ。わたしのブログに影響力はないけれど、それでも何人かの日本人が地方警察の書類作成ミスをあざ笑うことになるわ!」
「まあ、素敵! ああ、ロリー、小物感がすごいけれど、わたしの気持ちをわかってくれてありがとう!」
「お前一言多いんだよ。さて、短歌を作ろう。ただ単に悪口を書くんじゃ、あまりにもかっこ悪すぎるからな」
*****
前置き(?)が長くなったが、昨日 15日(金)。
快気祝い的な感じで、最近ついに我が町にできたオールド・ワイルド・ウェストへ夕飯を食いに出かけた。
Ovunque c’è
“Wow!” Poi la rete, cioè
Wi-fi. Il thè
te lo porta il Bob.
È bello il suo job!
Tanka Old Wild West
Sembra il far West
C'è anche la prigione
Direzione est
Qui non c'è religione
Ci vai se sei un mangione
そして、今日 12/16(土)。ドライブがてらバールで朝飯を調達し、車の中で食べた。
今週、僕の看病のために仕事の時間を削ったアンドレアは、日曜日を返上する。明日は "PC使用1日につき1時間" ルールを破り、一週間ぶりに『エミリア街道中歌合』の続きが書けそうだ。
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