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【イタリア滞在記Ⅳ】①2023年11月第4週~12月第1週

Sedit qui timuit ne non succederet.
「立って、歩け。なんなら走れ」


2023年11月

26日(日) 【旅立ちは…】


旅立ちは 十三夜月 浮かぶ夜
秋から夏へ 夏から冬へ

...というわけで、横浜を出発したときは涼しく、ドバイで飛行機を降りたら暑くて、グリエルモ・マルコーニ空港を出ると寒かった。

空港へは、アンドレア、ルイージ、そしてカルロが迎えに来てくれた。
前回、僕が帰国したのは8月下旬だったから、みんなと会うのは約3か月半ぶり。そんなに長いあいだ会わずにいたわけではないので、ルイージとカルロが思い描いた通りなのは当然として、アンドレアとはいつ再開しても、なんかこいつ想像してたのと違う...ってなるのはなんでだろう? あと、1年4か月会っていないときと、3か月半会っていないときの懐かしさの程度が同じなのはなんでなんだろう...?

...まぁいいや。昨日 25日(土) イタリア到着後、男4人でボローニャ近郊のレストランで遅めの昼食をとった。

食ったものの写真を全て載せると記事が飲食店のメニューみたいになっちゃうから、今回も食べた料理の中で "特に美味かったもの"、"珍しかったもの" のみ載せるスタイルで行く。こちらはピスタチオのクリームとボンゴレのタッリョリーニ。他のレストランでも家でも見たことがない料理だ。美味かったけど、スカルペッタには合わない。やはり、パンで拭って食べるならオリーブオイルとニンニクのソースが一番だ。

その後、帰宅するや否や僕はリビングのソファで夜まで寝た。フライト中も、家に帰る車内でもずっと眠っていたのだけれど...
アンドレアはいつも僕が来る前に、キッチンのテーブル、そしてリビングのローテーブルにたくさんの包みを置いておいてくれる。目が覚めると、それらを開封した。

僕のアドベント・カレンダー!
アンドレアが開けて、中に入っているチョコレートを僕が食うアドベント・カレンダー!

僕がイタリアを離れていた僅かな間に、こちらでは大きな変化があった。それは、Baciの新作が2種類出たということだ。

上段: アマレットフレーバー
下段: コーヒーフレーバー
中に入っている紙のデザインも変わった。アマレットコーヒーに包まれていたものだ。以前は格言が4言語で表記されていたけれど、こちらはイタリア語と英語の2言語で書かれている。

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27日(月)【ツリーが煌めく】

昨日 26日(日) 午前9時過ぎ。アンドレアと二人、エミリア街道沿いのバールで遅めの朝食をとりつつ、翌週の予定を組む。
「車の修理費がかさんで近年稀に見る財政難だから...」と、やつが言うので、
「市場で売ってるものは買わなくていいよ。必要なものを僕に言ってくれれば...」と返すと、仁王像のような顔で睨まれたので、最後まで言い切るのはやめておいた。

バールを出て、ディスカウントショップへ買い物に。
僕が、「なぁ、金ないんだったらさ、生活必需品だけ買おうよ。さっき節約しようって話したばっかりだろ」と言うと、36歳児は言った。
「嫌だ! クリスマスにクリスマスツリーがないなんて有り得ない!」

買い物を終えると、購入品の入ったショッパーをフォルクスワーゲンの後部座席にぶち込み、公園へ。

日曜日は大抵、教会で懺悔か公園で散歩をさせられる
この日、アンドレアが僕をこの公園へ連れてきたのは、こいつを見せるため。Messengerのスタンプのネコ並に太っている。僕が彼女をなでているあいだ、やつは後方から「ローリスよりも大きいな。ダイエットした方がいいよ」と、さも嬉しそうに、レディに対して失礼な言葉を投げかけていた。

帰宅後、ディスカウントショップで買ったクリスマスツリーを飾った。

Tricoloreになった瞬間を激写

Albero brilla.
Mini Natività.
Stella scintilla.

Natale arriverà,
quest'anno finirà.

ツリーが煌めく。
小さな『誕生』。
星が瞬く。

クリスマスが来て、
今年が終わる。

作/訳: ローリス M.

僕がスマホのメモ帳に短歌を入力していると、36歳児は「俺も作る!」と言い、『誕生』の隣に、あらかじめ買っておいたサンタクロースのスノードームを並べ、一首詠んだ。

Tanka albero 🎄 natale

Bell'alberino
Si illumina un pochino
Segno divino

Sotto c'è un presepino
E un babbo 🎅 Natalino

クリスマス 🎄 ツリーの短歌

かわいい小さなツリー
少しだけ光ってる
聖なる証

根元には小さなプレゼーペと
小さなサンタクロース

作: アンドレア M.
訳: ローリス M.

実は、ディスカウントショップで彼は僕の背丈ほどあるツリーを買おうとしていた。当然阻止したけれど、三句を除いて縮小辞で韻を踏んでいるところを見ると...相当恨まれてるんだろう。

普段の日曜日なら、アンドレアは午後になると女の子のところへ遊びに行くのだが、この日は僕が到着した翌日だから...ということで、二人で近所のスタジアムへサッカー観戦に出かけた。セリエDの試合だけどな。

写真には撮らなかったけれど、メインスタンド側には先日亡くなったアンドレアの友達の名前が、最後の挨拶と共に掲げられていた。

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28日(火)【3種類のサンドイッチ】

近年稀に見る財政難の解決策として、バールで朝食をとる頻度を抑えることにした。
家での朝飯は、スーパーマーケットで買ったブリオッシュやビスケットなどを食べることもあるけれど、アンドレアが作ることの方が断然多い。彼はケーキの類はあまり焼かず、得意種目はパニーノとサンドイッチだ。

昨日 11/27(月)の朝食
スペックとチーズのパニーニ
美味かったけど、量が全然足らねぇ。
全然足らなかったので、食後にこれを食った。レンズ豆のスナック菓子。すげぇ美味い。
本日 11/28(火)の朝食
サンドイッチ3種(左から、ツナと玉ねぎ、ジャルディニエーラ、卵とケッパー)
量が改善された。散歩がてら車で出かけ、近所の公園で食べた。寒かったけど、外で食うとより美味いような気がする。

Tre sapori di
tramezzini.
Tres bien, tres bien!
 
Tra loro mi piaccion di più
traballanti due di tonno.

3種類の
サンドイッチ。
めちゃくちゃ美味い!

この中で一番好きなのは
ぐらついてる2つのツナ。

作/訳: ローリス M.

Guardali là
I tramezzini
Son all'italiana 🧄🍅🫛

La cipolla dà il color bianco
Fave e pomini il verde e il rosso

ほら、見て
イタリア風 🧄🍅🫛
サンドイッチ

玉ねぎの白
そら豆の緑とトマトの赤

作: アンドレア M.
訳: ローリス M.
そら豆とトマトが入ってたのか…??

朝食後、車で近所の丘を散策(?)し、帰宅前にスーパーマーケットへ寄って買い物をした。

自宅から徒歩5分のスーパーマーケット

ルピーニをカートに入れていると、アンドレアが、
「君がイタリアこっちに来る前にアッリョーネを手に入れておいたんだよ。今日はストランゴッツィにしようか」と言った。
Strangozzi all'aglione は、トマトソース・パスタ(スパゲッティを除く)の中でも群を抜いて僕が好きな一品だ。

僕とアンドレア… じゃなかった、普通のニンニクとアッリョーネ
Strangozzi all'aglione
見た目はトマトソース・スパゲッティと大差ないけど、味は全然違う。

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30日(木)【犬のカルロと…】

一昨日 11/28(火) 夜、アンドレアが風邪を引いた。夕飯前にK2登山を
したせいだろう。

地元のK2。公園内に位置する。
k2頂上からの眺望

それでも、昨日 11/29(水)。エミリア街道の起点 リミニへ、車で遠足(?)に出かけた。ちなみに、具合の悪いアンドレアに僕が強要したわけではない。

午前9時半。家を出ると、アンドレアの運転する車が思いがけない方向へ走り出す。

「エミリア街道も高速もそっちじゃねぇだろ」と突っ込むと、やつは僕を一瞥し、
「どうしてもガイド役に連れていかないといけない人がいるんだよ。俺じゃ君に十分な説明をしてやれないからね。頼むから仲良くしてくれよ...」と答えた。

程なくして辿り着いたのはジュリオの家。確かに、この辺りの歴史に一番詳しいのは彼だけど... あいつ、いちいちムカつくんだよ。

「久しぶり。なんかお前、また小さくなったな」
「黙れデブ。二年前の冬にイタリアこっちに来たとき6キロ太ったから、今回は日本にいる間に予め6キロ減量してきたんだよ。小さくなったんじゃなくて痩せたの」...という挨拶を済ませ、高速ではなくエミリア街道を通ってリミニへ向かう。
道中、2挺のマシンガンが街道の歴史について、それぞれ別の内容を浴びせかけてきたので、結局何も分からなかった。僕は厩戸王じゃない。

リミニに着くと、見覚えのある名所旧跡を、僕はジュリオと小競り合いしながら、アンドレアは『エミリア街道中歌合』の資料集めをしながら回る。

観光案内所で、事件は起こった。

ジグソーパズル「街道の起点 ローマ時代のリミニ」

なんと、レセプションの女の子がパズルをくれたのだ。アンドレアではなく、僕に。
大切な事なのでもう一度言う。レセプションの女の子がアンドレアではなく僕にパズルをくれた。あいつよりも僕の方がかっこいいと思ったに違いない。

観光を終えて、遅めの昼食は San Giovanni in Galilea(フォルリ・チェゼーナ県) の 『Ristorante Belvedere di Rigoni』で。

Stinco di maiale
すげぇ美味かった

食後、レストランで飼われている犬*と2時間ほど遊び、帰路についた。

Con cane Carlo
in italiano parlo.
Gli porto carne.

Le sue carni son scarne
perché ne mangian gatti...

犬のカルロと
イタリア語で話す。
彼におみやげを持っていく。

あいつのえさは不十分。
猫たちが食べちゃうからね...

作/訳: ローリス M.


Tanka Carlo

Lo chiamo Carlo
È un cane un po' ciccione
Spesso gli parlo

Ma Kyra è il vero nome
È un cane 🐶 coccolone

カルロの短歌

俺は彼をカルロと呼ぶ
ちょっと太った犬
よく彼に話しかける

でも、本当の名前はキーラ
甘えん坊の犬🐶

作: アンドレア M.
訳: ローリス M.
"-arlo" で韻を踏もうと思ったら、まぁそうなるよね

*レストランで飼われている犬の本名はキーラ。女の子です。初めて Belvedere を訪れ、彼女を見つけた際、アンドレアが「Carlo!」と呼びかけたところ振り向いたため、それ以降、僕たちはこの犬を Carlo と呼ぶようになりました。

そして、本日 11/30(木)。バールでの朝飯帰りに高校の歴史の参考書を買ってもらった。

231130


2023年12月

2日(土)【彼らにお誂え向き】

昨日 12/1(金)。アンドレアの風邪はまだ治らず。すげぇハスキーなバリトンボイスがたまに裏返るのがめちゃくちゃ面白い。特に、怒っているとき。

「ロ⤴リス、君はいったい何を⤴やってるんだ!?」www

...もしかしたら、僕がわざと怒らせるから治らないのかもしれない。

それはともかく、この日は家で朝食をとった後、近所の circolo へコーヒーを飲みに出かけた。

カプチーノ
circolo内のビリヤード場
昔ここで僕にboccettaを教えてくれたおじいちゃん、今でも元気にしてるかな…

そして、今日 12/2(土)。アンドレアのすげぇハスキーなバリトンボイスは、しばしば裏返る上に、全ての発音に濁点が付くようになった。

「ロ゛⤴リ゛ス゛、君゛は゛⤴い゛っ゛⤴た゛い゛何゛を゛⤴や゛っ゛て゛る゛ん゛だ゛⤴!?」www www www

今朝、彼はそんな感じの声で言った。
「やっと『エミリア街道』の参考になるサイトを見つけた。これに倣ってピアチェンツァまでの行程を六つに分けよう。この前はリミニへ行ったから、今日はその続きからフォルリまでを辿るよ。さぁ、早く出かける支度をして」

こいつ風邪引いてるくせにスマホばっかり見てるから治らねぇんだよ、と思っていたのに、まさか資料探しをしてくれていたとは...

そんなわけで、今日はアンドレアが見つけたサイトを参考に、予定通りリミニの外れからフォルリの辺鄙なところまで、二人、車でエミリア街道を辿ったわけだが、道中、珍しいものを見かけた。

まずは、サンタルカンジェロ・ディ・ロマーニャ(リミニ県)にある教会 "Santuario Madonna Della Visitazione" にて。

消毒用アルコールかと思ったら聖水だった

Tanka acquasanta

La pandemia
Ha tolto ogni speranza
Buuuuuu tecnologia!

Finta anche l'acqua santa
Ma è la fede che conta!

聖水の短歌

感染症の流行が
あらゆる希望を奪った
テクノロジー反対

聖水も偽物
しかし 重要なのは信仰だ

作: アンドレア M.
訳: ローリス M.
未だにグリーンパスに恨みを持っているようだ

そして、フォルリンポーポリ(フォルリ・チェゼーナ県)のジュゼッペ・ガリバルディ広場で行われていた、古い車の展示会にて。

警察のランボルギーニ! ムカつくなぁ… じゃなかった、かっこいいなぁ…
ランボルギーニの後ろ姿

È perfetta per loro,
una macchina d’oro,
bassa la carrozzeria
come abilità di polizia!

彼らにお誂え向きの
すげぇいい車。
低い車体。
警察の能力みたいに!

作/訳: ローリス M.

帰宅前、アンドレアが、
「今朝は雨が降ったから、川の様子を見に行こう!」と目を輝かせるので、例によって近所の川へ向かう。今年5月の豪雨で氾濫した、あの川だ。

天気予報によると来週は雨の日が多いのに、すでに水位が高め… 失うものはもう何もないとはいえ、洪水は勘弁してほしい。
カモがたくさん浮かんでいる

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