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「どれだけ純度の高い思い入れがあるか?」発達障害者の就労支援アプリ開発・寺戸慎也さん

このマガジンではクラウドファンディングを成功させた方々に、プロジェクトへの情熱や人の心を動かせた理由をインタビューし、ご紹介しています。

今回ご紹介するのは、大阪府豊中市で発達障害のある方も含む若者の就労支援を行う寺戸慎也(@terashin1226)さん。

寺戸さんは発達障害者の職場でのコミュニケーションを改善して、働きやすい環境を作るアプリ「CONDUCTOR」のリリースを目指して、クラウドファンディングに挑戦しました。

寺戸さんが挑戦したクラウドファンディングの期間は、2019年12月17日から、2020年1月31日まで。終了時には目標金額100万円を大きく超え、なんと260人から112万円もの支援を集めました。

特にラストスパートには目を見張るものがあり、なんと支援総額の半分以上にあたる60万円以上を、ラスト2日間で集めたのです。

そこまでクラウドファンディングが盛り上がった要因は何だったのでしょうか?

寺戸さんがクラウドファンディングを成功させた理由を知るため、寺戸さんがクラウドファンディングに挑戦した理由やアプリのリリースの先に見据える目標を聞きました。

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寺戸慎也さん / 水泳インストラクターやSE、介護職を経験後、現在は発達障害のある方も含む若者の就労支援を行う。2019年4月に開催された「ハッタツソン」で「CONDUCTOR(コンダクター)」をチームで開発・提案し、最優秀賞に輝く。大阪府豊中市在住。

発達障害者の働く環境を改善したい

――まずは、寺戸さんの活動内容について教えてください。

寺戸さん:発達障害の方が働きやすい環境をつくるために活動しています。現在は大阪府豊中市で、発達障害のある方も含む若者の就労支援をしています。

――なるほど。実は、私も発達障害の診断を受けていて……。障害が原因でクビになったこともあるんです。

寺戸さん:あっ、そうなんですね。発達障害の方は実際に就労できても、二次障害(うつ、適応障害など)を発症するか、就労支援事業所で単純作業につくか、という方が多いんですよ。

――そうですよね……。私も新卒で就職した会社では精神的に追い詰められて、苦しみました。

寺戸さん:発達障害のある方って、人生の9割くらいを他人から否定されるなどの、ツラい経験をしている方が多くて……。就職するとよけいにツラくなることも多いんです。

――そう。まさにそうです。発達障害者の現実は本当に厳しい。

寺戸さん:発達障害者の就労状況を「なんとかしたい!」と思いました。その折に参加したのが「ハッタツソン」です。

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ハッタツソンでの寺戸さん

――「ハッタツソン」とはどのようなものなんですか?

寺戸さん:発達障害者はさまざまな種類の特性を持っています。その特性が持つ課題をテクノロジーでどう解決できるか?を、ハッカソン形式で考えるイベントです。

ハッカソン・・・プログラマーやデザイナーなどから構成されるチーム同士で、与えられた時間で開発を行ってできた成果物を競うイベント。

――おお、なんだか面白そうですね。

寺戸さん:3日間で発達障害当事者・エンジニア・デザイナー・プランナーでチームを組み、実際にプロダクトを開発するんですよ。

――寺戸さんは「ハッタツソン」でどのような開発を行ったんですか?

寺戸さん:発達障害のある方が働きやすい環境をつくるアプリの提案をしました!「CONDUCTOR」といいます。

――アプリで働きやすい環境をつくる……いったい「CONDUCTOR」はどんなアプリなんでしょうか?

寺戸さん:上司には適切な指示が出せるタスク作成画面、作業者は集中しやすいタスク管理画面が表示されるんです。このハッタツソンでの提案は最優秀賞をいただいたんですよ。

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ハッタツソンでの寺戸さん(前列右)

――最優秀賞とはすごいですね! 「CONDUCTOR」のどのような点が評価されたのでしょうか。

寺戸さん:審査員の方からは、発達障害の特性をよくとらえていると評価してもらいました。高く評価してもらえたことがうれしくて、僕やプロジェクトのメンバーも「世の中に出せるのでは?」と思いました。

――「ハッタツソン」で評価されたことが、クラウドファンディングへとつながったんですね。

寺戸さん:そうです。「CONDUCTOR」が世の中に出せるかどうかを試すために、クラウドファンディングに挑戦しました。


自分の特性による「生きづらさ」との向き合い方

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働くことについて市民講座でお話しする寺戸さん

――寺戸さん自身は発達障害のある方も含む若者の就労支援をやっているんですよね? ご自身は発達障害の診断は受けてないんですか?

寺戸さん:僕自身は発達障害の診断を受けていません。今、発達障害の特性で困っていることもないし。だけど、今と環境が違えば発達障害と診断されるかもしれないなと思っています。実際、20代のころはすごく困っていました。

――どんなことに困っていたんですか?

寺戸さん:20代の頃はSEをやっていましたが、納期を守れた試しがありませんでした。周囲から一定の評価を得ていたものの、納期が守れないことで生きづらく感じてしまったんです。タスク管理も苦手でした。

――ご自身も働きづらさ、生きづらさを感じたあと、発達障害のある方も含む若者の就労支援をする仕事に就いた、と。

寺戸さん:その経験もあって、今はなるべくタスク管理をしなくていいように仕事をしています。そういう仕事を僕はあえて選んだんです。試行錯誤してやって、やっと生きやすくなりました。

――そういう仕事をあえて選んだことで、生きづらさがなくなったんですね。

寺戸さん:今はその働き方ががすごく楽です。特性を活かす、もしくは出さないようにすることで、生きづらさはなくなると思います。その経験が「CONDUCTOR」のアイデアにも活きているし、クラウドファンディングをやりきった情熱のもとでもあります。

――発達障害とひとくくりに言っても個々で困っていることや特性は違うから、働きやすくするために特性を活かした方がいい人と、出さない方がうまくいく人がいますもんね。

寺戸さん:僕の場合は多動が自分の特性なので、それをクラウドファンディングにも活かしました。

本業と並行して挑戦する難しさ

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――今は就労支援の仕事をしている寺戸さんですが、クラウドファンディングも普段の仕事と並行して挑戦したんですか?

寺戸さん:はい。僕だけでなく他のメンバーもそうでした。

――普段の仕事と同時進行というのは、大変だったのでは……?

寺戸さん:とても大変でした。仕事が忙しくなって、心も折れかけて「もうやらなくていいかな…」と思いましたが、クラウドファンディングのプロジェクトメンバーと話し合い「とりあえずやりましょう!」と。

――踏みとどまったわけですね。

寺戸さん:むしろギアを入れ直すタイミングになりました。同時進行することを踏まえて、事前準備は半年間かけて念入りにやりました。

――準備期間に半年も!かなりの長期戦ですね。

寺戸さん:長期戦でした。メンバーとはオンラインでやりとりしていましたが、それでも時間を合わせたり、モチベーションをキープするのは難しかったです。

――途中で心が折れそうになったとはいうものの、ラスト二日間で60万円以上の支援が集まりました。すごいラストスパートでしたね!

寺戸さん:自分でもびっくりしました。「CONDUCTOR」のリリースを考えると、喜びよりもプレッシャーがすごかった。とくにラスト1日は行けそうだと思ったので「とうとうやらなアカンな」という気持ちになりました。僕としては、偶然が重なりに重なった結果だと思っています。

周囲の後押しと自分自身の情熱で成功へ

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豊中市で行われた音楽イベントで実行委員会をつとめた寺戸さん(左)

――私、ブログやクラウドファンディングのページにも載っていた「#寺戸祭り」が気になりました。「#寺戸祭り」って、一体何のことですか?

寺戸さん:僕が豊中市にある行きつけの「喫茶ピーコック」のマスター・うえしばさんに相談したことから始まった、僕のクラウドファンディングを後押しする「祭り」です(笑)

――いったい、どういう内容だったんですか?

寺戸さん:「クラウドファンディングの状況が厳しい」という話をうえしばさんにしたところ、ラストスパートのためのアイデアを一緒に考えてくれたんです。さらに、以前豊中市での音楽イベントに実行委員会としてかかわったご縁で、ミュージシャンの方が僕の応援ソングを作ってくれたんです!

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豊中市の音楽イベント収益で高校生にギターを寄付する寺戸さん(右)

――それはとてもうれしいことですね!心強い後押しでしたね。

寺戸さん:ほかのミュージシャンの方を含む友人たちも応援ソングをカバーして歌ってくれました。みんなが「#寺戸祭り」とハッシュタグをつけて応援してくれたり、追加で支援をしてくれたりもしました。たくさんの人の後押しが、最後まであきらめずにやりきる力になりました。

――本当に素敵な後押しですね。豊中市からどんどん広がっていった一大ムーヴメントだ。

寺戸さん:とてもうれしかったです。僕はクラウドファンディングは市場のひとつで「人と人との関係性を換金する場所」とイメージしています。

――寺戸さんが豊中市の人たちと築いていた関係性が、クラウドファンディングで返ってきたわけですね。

寺戸さん:大好きな豊中市で地域活動を行い、豊中市の方々とちゃんと関係を築けていたからこそ、良いカタチで自分に返ってきたんだと思います。

――豊中市で仕事や地域活動をがんばっていた経験も成功には欠かせなかった、と。

寺戸さん:あとは若い人の「なにかやりたい」という気持ちを応援できる大人になりたいという想いがあったことも、最後まであきらめなかった理由のひとつかもしれません。

――その想いはどういう経験で生まれたものですか?

寺戸さん:地域活動やイベントの実行委員の経験を通じて、そう考えるようになりました。「そんなことやって何になるの?」と言って、若い人のチャレンジ精神を潰すような大人にはなりたくないなと。

――なるほど。自分がチャレンジする姿を見せたかったわけですね。

寺戸さん:豊中市では、まだ発達障害について知らない人が多いと思います。でも、絶対に諦めたくはなかったですね。

クラウドファンディングは普段の活動がすべて

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寺戸さん自身も音楽活動をしています

――クラウドファンディングに挑戦してみたいと思っている人へ、何かアドバイスやメッセージがあればどうぞ。

寺戸さん:クラウドファンディングは「普段の活動がすべて」です。「クラウドファンディングのために活動をする」という活動では成功しにくいと思います。

――普段の活動が成功の可否を決めるわけですね。

寺戸さん:僕は発達障害のある方も含む若者の就労支援をこれからも続けます。僕は就労支援でしたが、普段の活動に対して「どれだけ純度の高い思い入れがあるか?」が大事だと思います。

――普段、就労支援の仕事に真剣に向き合ってるからこその成功ですね。

寺戸さん:はい。僕もクラウドファンディングを始めるまえに「今、大事にしていることってなんだろう」と問いかけました。

――たしかに、これまでお話しいただいたことやブログを見ても、寺戸さんは自己分析ができている方だと思います。しっかりと問いかけて、自分なりの答えが出ていたからこそ、チャレンジが成功するんですね。

寺戸さん:「CONDUCTOR」のリリースだけでなく「発達障害のある人が働きやすい=みんなにとっても働きやすい」。そんな未来を実現させたいです。

――もう次の目標があるんですね!

寺戸さん:挑戦してみて「目標は遠くに置いたほうがいい」ということも分かりました。実現できるかどうか分からない遠くの目標だからこそ、エネルギーを持ってがんばりたいです。

――なるほど。ほかに、クラウドファンディングに挑戦するうえで大切だと思うことはありますか?

寺戸さん:一番大事なのは、最後まで諦めないことです。たとえ成功しなくても絶対に自分のためになるから、意図をもって、自分を盛り上げるような夢を持って挑戦してみてください!

成功を引き寄せたのは日ごろの活動の成果

寺戸さんのクラウドファンディングが成功した要因は以下の通りです。

・発達障害者の直面する就労の現状をなんとかしたい情熱
・最後まであきらめず、手をうち続けたこと
・目標はアプリのリリースの向こう側にあったこと
・クラウドファンディングのための活動ではなく、普段の活動を大切にしたこと(寺戸さんの場合は発達障害のある方も含む若者の就労支援)
・#寺戸祭り


などなど。寺戸さんは「さまざまな偶然が重なった結果」とおっしゃいますが、すべてが必要なタイミングで重なったのは、単なる偶然ではなく、日ごろの活動の成果だと思いました。

「CONDUCTOR」は、発達障害のある人が働きやすい環境をつくるためのアプリですが、その先に見据えていたのはみんなの働きやすさ。

だからこそ、発達障害のある人以外からもたくさんの支援を集められました。

ライターの私も、発達障害の診断を受けたことのある当事者です。今まであいまいな指示やごちゃごちゃした仕事内容に頭を抱えることが多かったので、素直に使ってみたいと思いました。

「CONDUCTOR」のリリース、心待ちにしています!

執筆/カジヤマシオリ

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