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「やりたいことは、見つかったときが最短。」アメリカンフットボール選手・山﨑丈路さん

このマガジンではクラウドファンディングを成功させた方々に、プロジェクトへの情熱や人の心を動かせた理由をインタビューし、ご紹介しています。

今回ご紹介するのは、プロアメリカンフットボールの最高峰リーグである「NFL」でプレーする初めての日本人になるためのクラウドファンディングを成功させた山﨑丈路(@takeruyamasaki)さん。

咲き誇る桜のように、一瞬一瞬にすべてを懸けることができたなら。
きっと散りゆくその瞬間まで、誰かの心を震わすはず。

山﨑さんの生き方は、桜の花のように、とことん潔く、ためらわず、美しいものでした。

どこにでもいる普通の少年が、アメフトの本場リーグを目指すまで。
一人の人間がもがきながら、悩みながら、それでも挑み続けた軌跡をアメリカにいる山﨑さんにお尋ねしました。

山﨑さんの想いに触れた後には、一歩を踏み出す勇気がきっと湧いてくるはずです。

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山﨑丈路さん / アメリカンフットボール選手。社会人アメフト「Xleague」の上位リーグチーム「オービックシーガル」に所属。「Japan Kicking Academy」所属のプロコーチとしても活動。2019年度Xleagueの最優秀Punter受賞。2020年 CFL(Canadian Football League) combineの招待選手。1993年生まれ。大分県出身。

信念を貫くためにはゴールの明確化が重要

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――まずは渡米されてからの生活について、お尋ねしてもいいでしょうか?

山﨑さん:コーチと一緒に調整してトライアウトに向けて練習をしています。今日もトレーニングして、練習してみたいな感じですね。インタビューの後も練習です。

―わぁ~。お忙しいのに朝早くからインタビューを受けてくださり、ありがとうございます。

山﨑さん:いえいえ! そちら(日本)は夜ですよね。ありがとうございます。

――山﨑さんはアメフトの中でも「キッカー」というポジションを極められていますよね。「キッカー」を極めようと思った理由は何でしょうか?

山﨑さん:単純ですが「楽しかったから」だと思います。「楽しい」と思える選択をしただけ、という感覚ですね。

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――「楽しいと思ったことをやる」という選択は、自分が自分に正直であり続けないとできないと思うんです。周囲の影響を受けて、その気持ちが揺らぐことはなかったんですか?

山﨑さん:世間の常識と天秤にかけてしまうこともありました。「現実味があることなのか」「生きていくためにお金が稼げることなのか」とか周囲から言われることもありましたし、自分でも考えました。

――それでも続けることができた理由は何でしょうか?

山﨑さん:高校の時に同級生が亡くなったことがありまして。それが、大きく心にとどまっているんです。「自分がやりたいことをできるときにやらないと」と、沸々と思うようになりました。

――ご友人の悲報がきっかけだったんですね。ちなみに今でも、想いが揺らぐということはあるんですか?

山﨑さん:今でももちろん友達が働いている姿をみて、ふと「自分は何をしてるんだろう」と思うこともあります。でも、自分の中でアメフト以上に楽しいと思っていることはなくて……。

――どんなに強い信念を持っていても、想いが揺らぐタイミングって、必ずあると思います。初心に返るために意識して実行していることはありますか?

山﨑さん:必要な時はnoteやTwitterに想いを綴っています。なぜ今の自分がこの道を選択したのかを一度書いてみるんです。

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――一度書いてみる、ですか。書くという行為にどのような意味を見出していますか?

山﨑さん:一度書くことで「あの選択にはもしかしたらこういう要因もあったのかも」と発見できるんですよ。自分がやっていることの事象と理由に対して、一つひとつ深堀をしていくことは大事だと思っています。

――なるほど、書くという行為を通じて、自分と対話しているんですね。

山﨑さん「自分がやりたいことは常識とは外れる」と認識したときに「それでも自分がやりたいのはなぜか」という根拠を深く探っていく。その根拠を認識して「じゃあ俺、これしよう」と決意できました。自分の気持ちを熟知しておかないと、ブレてしまうと思うので。

――書くだけでなく、言語化するプロセスも大切なんですね。

山﨑さん:想いを言語化することで、自分を客観的にも主観的にも見ることが大切だと思っています。アメフトのプレーやトレーニングにおいても、自分を多角的に見るスキルは必要になってくるので。

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――アメフトでも必要になるんですね。

山﨑さん:「自分のゴールが明確にあるか」が大切なんです。あとは自分が描いた明確なゴールに向かって真っすぐ歩いていくだけなんです。目指す方向が決まります。

――ゴールが明確になっていると、強いですね。

山﨑さん:歩いていたら邪魔なモノって出てくるじゃないですか。登るのがつらそうな山とか、複雑な迷いそうな道とか。目的地が分かっていない人は何か障害が出た段階で「もうやめようか」と思ってしまうと思うんです。でも、ゴールが明確にあれば「どうすれば行けるかな?」と考えますよね。

――なるほど! たとえがとても分かりやすい。ゴールを明確に理解できているからこそ、壁にぶつかっても冷静に状況を分析して、課題を見つけて、乗り越えていくことができるんですね。

お互いに遠慮なく頼り合えばいい

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クラウドファンディングページのアイキャッチ

――クラウドファンディングへの挑戦はどのように決まったのでしょうか? 最初から、ご自身のNFL挑戦に周囲を巻き込もうと考えていました?

山﨑さん:いえ、最初は「自分のエゴでやりたいことに人様を巻き込むなんて滅相もない」と思っていたんです。

――えっ、そうなんですか!

山﨑さん:はい。そこではじめは、コーチに相談しました。するとコーチが「すごいな、応援したいと思ってくれる人は必ずいる。やってみたらいいんちゃう。」と言ってくれて。

――コーチの後押しがあって始められたんですね。

山﨑さん:「応援してくれる人を増やす」「知ってもらえる人を増やす」この2つを目標に、とりあえずやってみました。そこでいざやってみると、コーチの言った通りで、多くの人が支援してくださいました。本当にありがたかったです。

――クラウドファンディングをやってみたことで、自分を応援してくれる人の多さに気がつけたんですね。

山﨑さん:あと、クラウドファンディングを通じていろいろな人と知り合っていく中で、自分の人生が深くなっていった感覚があります。縁がつながって、様々な人と話すことで、また新たな価値観がつくられていく。

――様々な人と話すことで、気づきはありました?

山﨑さん:「自分という主体は、周囲という客体が無ければ、人として大きくなれない」と気づきました。人間として生きていくうえで、この感覚はきっと必要なことなので、大事にしたいなと思っています。

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――哲学的……。クラウドファンディングをきっかけに、周囲との関わり方にも変化があったんですね。

山﨑さん:人間は人に頼らなければいけない場面も必ずあると思っています。お互い遠慮なく頼り合うことで、無償の愛を贈り合えばいいと思っています。

――周りの人を頼ることは恥ずかしいことではないですもんね。

山﨑さん:自分の本音を言わずに建前で生きてしまっていたら関係性はつくれないと思っています。壁をつくってしまっていたら、信頼もできないじゃないですか。心から信頼できる関係をつくろうと思うと、やっぱり自分から脱いで晒していかないといけないと思うんです。

――助けが必要な時ははっきり伝えることが、逆に信頼関係につながるんですね……。

山﨑さん:頼り合う対象は1対1じゃなくてもいいと思っています。たとえばですけど、他の方もクラウドファンディングを始めたときに、まず自分が助ける立場になればいいと思っていて。

――まずは自分が支援してみるということですね。

山﨑さん:はい。そこからどんどん応援する気持ちや姿勢が広がっていって、その縁の中で「頼り合う」均衡がとれていたらいいのかなと思うようになりました。

――頼り合う世界の中に入って行って、その輪を広げていくと。

山﨑さん:やってもらった人に返したらいい、だけではなく、支援してくださった方の考え方・価値観を自分も大切にしながら周囲に接することが、健全なコミュニケーションの取り方だと思っています。

人間だから顔を突き合わせないと

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――クラウドファンディングを始めた当初の反応はどうでしたか?

山﨑さん:資金調達だけでなく、自分の認知度を上げることも大きな目標でした。でも、ネット上で情報発信しているだけでは、その目標は達成できないと気づいたんです。

――どういうきっかけで気づいたんですか?

山﨑さん:2週間弱くらいで支援が滞ったんですよね。それで「ネットで見た人は、自分のことを知っているようで知らない」と感じました。支援する立場からすると、生身の自分を知ってもらわないと、支援までは踏み込んでもらえないなと思いました。

――なるほど。では、そこからは直接人と合う行動を始めたんですか?

山﨑さん:そうですね。「人間だから顔を突き合わせないと」と考えて、ネットで興味を持って下さった方にアプローチしてアポイントをとったり、誘っていただいた会に自分の足でお伺いしたりして、繋がっていきました。

――でもきっと、会って嫌われてしまう人もいると思うんですよ(笑)山﨑さんが「他の人に紹介したい」と思える人だったから、輪が広がったと思います。

山﨑さん:自分の積み重ねてきているものもあるのかもしれませんが、僕は周囲の人に恵まれていたなと思います。周りに共感して頂ける方も多くて、縁もどんどん広がっていって。運がとてもいいなと思いますね。

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――周囲の近い関係の方との関係性には変化はあったんですか?

山﨑さん:もともと、疑問を持ちつつも「応援したらんでもないよ」と言ってくれてはいました。最近は現実味を帯びてきて友達や先輩にも「すごい」「自分も頑張らないと」と言ってくれることが増えましたね。

――山﨑さんの夢に対する周囲の評価が変わったんですね。

山﨑さん:応援されるようになると、自分のやりたいことを成し遂げることが、周りへの恩返しになります。熱量を持って自分のやりたいことをやるのが大切です。

「やりたいことが見つかったときに、実際にやれるか」が大事

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――やりたいことを実現されている山﨑さんのお話をうかがっていると、私も山﨑さんみたいに「やりたいことを頑張りたいなあ」とやる気や勇気が湧いてくる気がします。

山﨑さん:僕は「そんな年齢から自分のやりたいことが見つかっているっていいね」と言われることが多いんです。でも「やりたいことが見つかっているからすごい」と思ったことは無いんですよね。特にスポーツ界では、小学校からプロを目指している人も多いので、自分は遅い方ですし。

――たしかに、スポーツ界だと親御さんが幼少期からビシバシ練習して……というエピソードもよく聞きますね。

山﨑さん:「やりたいことをいつ見つけるか」ではなくて「やりたいことが見つかったときに、実際にやれるか」が勝負だと思っています。そこだけが、自分でコントロールできるところなのかなと。

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――やりたいことはあるけど、行動に移せないということも多いですもんね……。

山﨑さん:何にするしても遅すぎることはないと思います。「やりたいことは、見つかったときが最短」です。

――「見つかったときが最短」ですか。なるほど……。

山﨑さん:夢が見つからない、とか、やりたいことが見つからない、と思っている方は、そういう自分を卑下する必要はありません。それ以上に、やりたいことが見つかった時にスピード感を持って対応できるかが大事です。

――山﨑さんの、この言葉に救われる方は多そうですね。

山﨑さん:そうですかね。でも正直に言うと、僕の記事を読んで「分かる~!!」という同感だけで、終わってほしくないですね。

――山﨑さんは、この記事を読んだ方にどうなってほしいですか?

山﨑さん:僕の言葉を鵜呑みにして気づくのではなく、この言葉をあくまでも経験のひとつとして取り入れてもらい、ご自身で考え、体現してほしいと思っています。なので、僕の言葉を軽く思ってほしくないな、とも思います(笑)

すごい人じゃなくても、結果を出せることを証明したい

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――クラウドファンディングでの支援をうけて、NFLという夢へのチャンスを掴まれていますよね。今後、どういう姿を目指していらっしゃいますか?

山﨑さん:これは自分の中で考えさせられていることなんですけど、今の目標を達成したことでどうなりたいかという部分は考えられていなくて。

――へぇ~、なんだか意外です。

山﨑さん:今自分の持っている目標に対して頑張ることが、周囲への恩返しになっているのかなと思っています。まずは目の前のことを頑張るしかないですね。結果を出すことはある意味、「義務」と感じています。

――結果を出すことは、自分との約束、支援者の皆さんとの約束、なのですね。

山﨑さん:あとは、もともとそんなに大きくない人間が、結果を出すことによって「適切な努力をすることによって、目標を達成できるんだ」「やればできるんだ」と思う人が増えたらいいなと思っています。

――なるほど。社会に対してのメッセージでもあるんですね。

山﨑さん:結果を出す人に対して「あの人は全然住んでる世界が違う人だから」と思ってほしくないんですよね。すごい人じゃなくても、結果を出せることを証明したいなと。それが僕の使命だと思っています。

――本日は貴重なお話をありがとうございました!

自分の中のバリアを壊そう

知らず知らずのうちに私たちは「結果を出す人は元々自分とは違ってすごい」というバリアを勝手に作っている気がします。

そして、わたしたちは頭から水をかぶっても、目覚まし時計を100個鳴らされても、そのバリアが「自分で勝手に作った幻」だとなかなか気づけません。

山﨑さんは、じっくり自分と向き合い、「本当にやりたいこと」を「やる」ための素地を、思索しながら、自分で丁寧にコツコツと作られていました。

自分で自分をきちんとお手入れしているからこそ、「熱量」が一定保たれている。

その素地のもと、適切な努力によって新たなチャレンジの切符をつかみ歩み続けている姿。

私たちも生きているだけで無限の可能性があることを感じさせてくれます。圧倒的な説得力がありました。

今からでも、遅くない。やりたいことをやる。

言うのは易し、するのは難し。簡単そうで一番難しいこと。

でも挫けそうなときの一番の味方は、「自分と向き合い続けたもう一人の自分」なのかもしれません。

思っているよりも人生は一瞬で過ぎ去ります。

自分が行くべきゴールが見えてくれば、きっと来年の桜が咲く頃にはもう一人の自分が迎えてくれるはずです。

「よくがんばったね。」と。


執筆/齊藤美結

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