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2023 Best Album30

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初めに


本来なら別のプラットフォームで記すべきなのだが、それだけのために開設も面倒なので。今年も色々聴いたし、聴き逃しもたくさん。簡単に言葉にしてみることにします。

一応紹介のような意味合いもあるので、手前味噌ながらお勧め楽曲を厳選して一曲記載しておきます。当然個人の趣味。アルバムとは頭からケツまで通して聴いてなんぼ。あくまで参考程度。

ちなみに、筆者は未だに各種ストリーミング、サブスクに移行できない時代に取り残された人間。音源は全て一度購入してから。「え、これは聴いてあれは聴いてへんの?」、的音楽は盛り沢山だということを、最初に明示しておきます。

始めたはいいものの思った以上に長くなるうえ、実はまだ聴けていない2023リリース作品が数点。変動もおそらくあり。気まぐれに更新していきます。


最終更新日12/11、14、16、21、23暫定完成

14日更新ですでに新作が追加され、必然的に30位の作品はOUTとなるのだが・・・一旦面倒なので、最後にしっかりまとめるようにします。時間があれば。




30~26



30.Kelela「Raven」(お勧め⑦)

タイトルの烏は、彼女自身が「白い鳥は良くて、黒い鳥は悪いイメージがある。そんなのは馬鹿げている」と考えて名付けたのが理由の一つ。彼女が黒人女性であること。作品には様々なメッセージが込められている。

アルバムの開始と終幕からアンビエントな音に流れるは、ジャケット通り「水」をイメージさせる歌詞の多さに同じ。しかし蓋を開けてみればダンスビートも。緩やかに流れ、強かに踊る。そんな決意表明でもあるのかもしれない。



29.Jamila Woods「Water Made Us」(お勧め⑪)

黒人女性が水をテーマにR&Bとは、奇しくも上記Kelelaのモチーフに同じ。「すべての水は完璧な記憶を持っていて、絶えず元の場所に戻ろうとしている」、というToni Morrisonの言葉を引用しつつのアルバムタイトルとは、私たち人間もみな同じであることを表現している。

歌詞は経験を元に自らを癒すパーソナルなものが中心だが、テーマ通り「ありのままに生きる」ということを、けっしてシリアスになりすぎず、彼女は軽やかに歌い上げる。あくまで前向きなそのサウンドに、私は共鳴することができた。



28.what is your name?「My Name Is...」(お勧め⑦)

おそらくはソロだと思われるが、一体彼がどのようなプロフィール、バックボーンを以てして活動しているかはまったくの不明。ただただ音に惹かれて。

およそメジャーでは成しえないこのへろへろローファイサウンドは、時折無性に耳にしたくなる。まるで入道雲の下、どこか遠くを眺めて見えるその原風景とは、誰しも一つは心にある、あの夏の想い出。そんな感じ。



27.Sampha「Lahai」(お勧め②)

まず、約7年ぶりに2ndがリリースされた事実が何よりも嬉しい出来事。多数のゲスト迎えつつも、ドラムマシンとの一人セッションをメインに構築された大胆なビートは、明らかに1stの時とは違うものに。

対比するかのように、楽曲はとても繊細でパーソナル。娘が生まれたことから自らのルーツを探すべくミドルネームをタイトルに冠したこの作品は、彼にしか成しえない計算された音で満たされている。この建築美ともいえる絶妙なバランスが、私は好きだ。



26.Tim Hecker「No Highs」(お勧め①)

もはや説明不要のアンビエント巨匠、Tim Heckerの最新作。作品名でググれば幾らでもリリースに対する、奇怪でぞくぞくするようなステートメント文が出てくるので、多くは割愛したい。簡単に意訳すると、「蔓延るフェイク・アンビエントにはうんざりする」といった具合か。

引き算の美学すら感じられる不穏な音と空気はジャケット通り曇天、あるいは真夜中から理由なく去来する不安や悲観、孤独といった感情と、ともに無二の友人となるか、あるいは逆さまに堕ちていくのか。





25~21


25.The Chemical Brothers「For That Beautiful Feeling」(お勧め⑧、⑩)

続く巨匠はビッグ・ビート。実に十作目となる長いキャリアから導き出される音とは、今も昔もマクロで見ればほとんど変化のない、一貫してフロアに向けられたサウンド

そこに乗っかるサイケデリックな上物もまた変わらぬ音。後半の畳みかけるようなダンスビートから、ラストはスロウバラードにて、頭のイントロと循環する構成とは、「お前らを永遠に躍らせてやる」という意志表示すら感じる。それこそがタイトルである、「美しい感情」なのかもしれない。



24.Animal Collective「Isn't It Now?」(お勧め①)

サイケデリック職人の長いキャリアから12枚目の作品となる今作は、昨年リリース(早っ!)に地続きの生楽器でのセッションが有機的ながら、まるでローラープレスで飴か餅かを極限にまで引き延ばした約20分越えナンバー「Defeat」が示す通り、これまでで最も「声」にフォーカスした仕上がりに。

いつも彼らは実験、挑戦的でありながら、その名の示す通り、どこか得体のしれない生き物アニマルが鳴き声を出すかのように、時に静かに、時に躍動感のある、そんな音を私たちにぶん投げてきた。

そんないつも面白い彼らが「今なんじゃない?」というアルバムタイトルからの問いとともに提示するは、何よりも「歌声」だったのだと、私にはそう思える。




23.Alfa Mist「Variables」(お勧め⑧、⑩)

ロンドンで育ったピアニストであり、プロデューサーでもあり、ラッパーでもあり・・・そんな彼のプロジェクトの一つが、このジャズバンド。実を言うと彼の音を聴くのは本作が初めて。この青いジャケットにはとにかく惹かれた。

タイトルから「無限の可能性」をテーマに作られた今作は、十曲ともそれぞれが違うテーマ=十種類のアルバムが実現する可能性もあった、という表現であり、それは同時に刺激的でありながら、優雅でもあり、奥深さもあれば、静謐でもあり、ジャズとは切っても切り離せぬラップもあって・・・

そんなアルバムの最終楽曲「BC」はジャズの定番である即興演奏となるが、私たちもまた同様に一秒先の未来すら何もわからない、いわば即興人生の渦中にいる。だからこそなんにでもなれて、どういうふうにも生きていける。しかしそんなテーマとは関係なしに、ただただ音にも惚れた作品。クール




22.Black Country, New Road「Live at Bush Hall」(お勧め⑦)

全編新曲でのライブ
とはバンドが望んだものではなく、Voアイザックの脱退から、彼にリスペクトを込めて「過去の楽曲は一切演奏しない」と固く誓ったものだったから。

残されたメンバーがたった3~4か月で書き上げ、ライブのために用意されたセットリストがそのまま作品となった事実上の3rdアルバムとは、あたかも「惜別と新たな門出」をそのまま音にして奏でたかのよう。

リリースされたタイミングはだったことと、そのテーマから、どの楽曲を聴いても私は桜吹雪が頭と耳に降りかかってくる。その桃色の涙とは、このバンドが新たな未来へと繰り出した祝砲。けっして悲しくはない。喜びなのだ。

(奇しくも推し卒業とリンクする内容に。歌詞は少し苛烈だが、でも7曲目は本当に名曲。涙)





21.Sufjan Stevens「Javelin」(お勧め⑦)

完全なシンガー・ソングライターモード、また彼の亡き親友に捧げられた一枚。大きなプロダクション感じられる瞬間もあるが、レコーディングの一切は彼の所有する、けして大きくはないスタジオで収録されたそう。

フィジカルには各楽曲と連動しているかのような、全十篇の詩(エッセイ)も付随される。歌詞は総じて悲痛だが、音にはどこか祈りを捧げ、それが神に届いたかのような、そんな天上からのに救われる瞬間も訪れている。タイトルのジャベリン(投げ槍)とは、そんな想いを形に変えて空へと投げかけるものなのかもしれない。

アルバムのクロージング・ナンバーはNeil Youngのカバー曲となるが、なぜこの楽曲を最後としたかは、歌詞の一節がすべてを証明しているだろう。

君の住んでいる世界では
誰も君の代わりを務めることなんてできないから
すべての神の子は
風をいっぱいに吸い込んで そして激しく吹きつける




20~16



20.Jane Remover「Census Designated」(お勧め③、⑤、⑦)

トランス女性であることを公言している二十歳となった若き才能の音は、この2023にて再隆盛しつつあるシューゲイズと、エモシーンからポスト・ロックにてその二つを見事に一つにし、昇華させた作品となっている。その素晴らしい整合性に、私はとても惹かれた。

アメリカ横断の旅の途中、吹雪の中でのドライブから臨死体験をしたことにより、「自分のために物事を台無しにするのをやめたいと思えるようになった」というパーソナルな出来事がこの作品のマテリアルとなったようだが、歌詞はわからずとも、彼女の体験よろしく吹雪のような轟音に身を浸していれば、それはおのずと理解できるものなのかもしれない。




19.Hotline TNT「Cartwheel」(お勧め①、②)

詳細なバックボーンはよくわからないのだが、とにかく音に惚れ込んだ作品。上記でも述べた通り、この2023においてシューゲイズは一つキーワードとなっている。とかく豊作。その素晴らしい作品群の一つ。

ギターによるウォール・オブ・サウンドは勿論、ドリーミーでありながらも、しかしノスタルジアとのせめぎ合いにてパワーポップの押し切る瞬間もあり、シューゲイズと数多くあれど、この絶妙なバランスはウィル・アンダーソンにしか成しえない妙のように思う。




18.George Clanton「Ooh Rap I Ya」(お勧め④、⑩)

元は別名義にてヴァイパーウェイヴ畑出身であり、2019年には初のヴァイパーウェイブフェス「100% Electronicon」を立ち上げたぐらいだが、それはあくまで主にマーケティング目的だそう。

1980年代後半から90年代頭にて流行したバギーなビートに、これまた昨今のキーワードであるシューゲイズ的要素のあるチルウェイブが耳に心地よい。ジャケット通りの酩酊を音で味わえる、合法薬物的作品。

ちなみに、タイトルにあるラップは作中にはない。どういった意図でこのタイトルとなったのは不明である。




17.Indigo De Souza「All of This Will End」(お勧め⑪)

実を言うと、彼女の作品と出会ったのはこれが初めて。今作が3rdとなるが、いやはや、「もっと早く教えてよ」と言いたくなるくらい、シンガー・ソングライターとしてのポップがぎゅっと詰め込まれているように思う。

「毎日これが終わりかもしれない、という思いで目覚める」、と言う彼女が冠したタイトルは「すべてに終わりはある」というもの。「悲しいことと捉えられるし、貴重なこととも捉えられる」「生きていればできることは多くある」と、けっして悲観的でなく、死を享受しつつも和解するというテーマも含蓄されている。

全11曲、約33分という単曲主義的な昨今にも適応しつつ、しかしアルバムとしてのまとまりもしっかりと感じられる今作は、シンプルでありながら奥深さもある。もし私が同じシンガー・ソングライターとして活動していたのなら、きっと嫉妬で部屋を狂い回ったことだろう。俗語でいうなら、「こういうのでいいんだよ、こういうので」





ずれた関係上、12/19更新はここからの6枚より



16.King Krule「Space Heavy」(お勧めは②だが、全体通してグッド)

もはや説明不要のシンガー・ソングライター from UK。この四枚目は、生まれたばかりの娘がいるロンドンと、マンチェスター郊外にあるスタジオとの往来にて、「愛(娘)への憧れ」「宇宙のギロチンによって断絶された機会」「間に存在する空間」について歌われているそう。

つまりは、ポジティブとネガティブの狭間にあるもの。暗い部分は今まで通りだが、今までよりメロウな楽曲が多いのは、子供の誕生に対し「平和を見つけた」「世界に愛が存在するんだと実感できている」と話すアーチー・マーシャルの言葉そのものなのだろう。

アイデアやディティールはシンプルに響くのに、今作もまたどこからどう聴いても彼にしか成しえない音で形成されている。その「空間」とは間違いなく彼だけのもの。作品の鑑賞から、そんな空間と少しでも接続、共有できることに、私もまた愛を感じることができる。個人的好みサウンド。




15~11

15.Mammal Hands「Gift From the Trees」(お勧め⑧、⑩)

UKからのベースレスなジャズ・トリオの五作品目は、彼らが初めて在宅でのスタジオに臨んだもの。しかしそんなこととは関係のないくらい今までの作品から大きく逸脱はせず、しかし確かな変化も同時に包括されている。

レコーディング時期は春と冬で別れたらしく、春には躍動的なものを、冬には閉塞的な音をそれぞれ録音したという事実は、同じ四季に暮らす島国の一人として、なんだか好感がもてる。「木々からの贈り物」、というタイトルもまさにそのものなサウンド。

今作品もまた私の個人的な好みが強く反映されて、この位置にある。彼らの作品はどれも素晴らしく、油断するとついループし、幾度となく聴き入ってしまう。現代ジャズに格別な想いや知識があるわけでもなしに、どうしても耳にすることを止められない。それが「音を楽しむ」、というものなのかもしれない。





14.Squid「O Monolith」(お勧め①、③)

新進気鋭UKバンドの2ndである今作は、かのWarpからリリースされたというのがまずポイント。タイトルの「モノリス」からは、映画「2001年宇宙の旅」からの謎の石板を彷彿とさせるものがあり、それは今作の中枢である不穏なコードとメロディに強く反映されているように、私は感じる。

その不可思議な宇宙で作られた音は1stと比較すると一聴パワーダウンしたように響き、リリース当初、私は「うーん、悪くはないんだけど」、といった浅はかな感想を抱いていた。

しかし、本当に強い力とは速さや勢いなどではなく、もっと重くて、とても遅いものに宿る。そう理解できたとき、あたかも宇宙からモノリスが何億光年とかけてこの星ににじり寄ってくるかのような、そんな不気味な気配を、それこそゆっくりと気づくことができたのだ。




13.The National「First Two Pages of Frankenstein」(お勧め④)

US大御所バンドの九枚目は、あるいはリリースされずに解散する可能性すらあったもの。コロナ渦から多くの音楽家は休止を余儀なくされ、彼らもまたツアー休止。その復帰作としてフロントマンであるマットは筆を持つも、歌詞もメロディーもまったく思いつかず・・・

やっとのことで作曲されたナンバーが五曲目。妻との共作で生まれたその楽曲から「突然生き返ったように感じた」とマットは述べ、結果としてバンドにあった暗い閉塞感をも切り裂いて、今作は完成された。

今や世界でもっともチケットが取れないであろうTaylor Swiftととのコラボ楽曲もさることながら、Sufjan Stevens、Phoebe Bridgersの名も連なり、そのインディー精神は未だ忘れられていない。感動的なドラマもさることながら、ただただ単純に、私は彼らの楽曲がとても好きだ





12.Purelink「Signs」(お勧め全部)

シカゴの三人組が最高のアンビエント、ミニマル、チルを携えて作り出した作品。

もうね、この作品に関しては全てが私のツボ。真夜中のBGMとしておよそ最適解。とにかく大好き。以上!






11.Yves Tumor「Praise a Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)」(お勧め⑧、⑨)

そのサウンドは常に変化し続け、今やロックの衣纏いつつも、その中に一体何が潜んでいるのかは誰にもわからない。もはや地球外生命体。宇宙人が火星でライブでもしようものなら、きっとこんな音なんだろう。「齧るが口にはしない神を讃えよ(あるいは世界の狭間にある熱)」という、およそ意味不明なタイトルだなんて、もはやこの星の言語では到底理解できぬもの。

歌詞もまた至極曖昧だが、タイトルと「天国」というワードが多いことから「信仰」をテーマにしたようにも思えるが、しかし悲痛な叫びから始まる入り口から、その後に広がる音像にて頭に浮かぶ風景とは、ただただすべてを焼き尽くさんとする、天国とは対極にある地獄の業火のようにも感じ。

彼は我々を救いたいのか、裁きたいのか。あるいは、すべては彼の音を聴く私たち次第なのかもしれない。解剖のしようがない異形のサウンドに、ただただ私は圧倒された。

このような意味不明なものに裏切られて、私はいつでも混乱していたい。それは私にとってある種の救いであり、罪深い裁きでもあるから。





10~6



10.Yo La Tengo「This Stupid World」(お勧め①、②、⑨)
今なおインディを語るにおいて外せないこのバンドの、なんと17作目となる今作は、この長いキャリアにて初の完全セルフプロデュース作品に。

バンドのシグネチャーの一つである長尺クラウトロックナンバーからアルバムはスタート。今作もはっきりと動、静の対比ある楽曲が存在するも、全9曲約49分とはいつになくスマートな構成に。余計なものが削ぎ落されたようにも聴こえ、結果として何度目かの最高傑作に匹敵する作品に。

「この愚かな世界」とは、なるほどコロナ渦に製作されたと鑑みれば納得もできるタイトルだが、しかしインタビュー等でも相変わらずその真意は語られず。答えは大衆に任せるスタイル、私は好きです。

リスナーを煙に巻くスタイルとは、結成から三十年以上のロングキャリアが経過しても相変わらず。音とともに変わらないものもあり、それはこの世界がたとえ愚かであれ、私は幾らか安堵することができる。





09.Sofia Kourtesis「Madres」(お勧め⑥、⑩ でもほぼ全部)
タイトルはフランス語にて「母親」。癌と診断されたその母親の命を救った医者の名が、三曲目「ヴァイコツィ」。つまりは、快方となった母親への福音サウンドトラック

一見テーマは重いのだが、音はどこか喜びに満ちている。ハウスの享楽的なサウンドをベースに、今流行りとされているラテンアレンジもプラス。ただただシンプルに、フロアを笑顔で踊らせるための作品といえよう。

ここ数年、なにかにかけて「ダンス」が主題にある音が増えたように思う。実に喜ばしい。というわけで、こういった音は完全な私の好みであり、ハートを真っすぐに射貫くのです。中でも今作は最高と呼ぶに躊躇いのない作品。これ、むちゃくちゃに好き。今からでも次が楽しみなくらいに。




08.James Blake「Playing Robots Into Heaven」(お勧め③)
古くはダブステップを世に広めたイギリスのシンガー・ソングライターの六枚目とは、本人曰く「原点回帰」となるサウンドとなった。

代表曲「Retrograde」(超好き)にあるような美しい歌声は鳴りを潜め、まるで声も楽器のように扱い、加工してはただ曲に添えるだけ。そういった初期に多かった、歌声聴こえるもほぼインストナンバーな楽曲の割合が増える仕上がりに。

これまでもあったとはいえ、こと前半ではその印象は顕著であり、2~4の流れは今までになくアグレッシヴ。歌よりもビートを、座って静かに聴き浸る落ち着いた者よりも(東京国際フォーラムでの来日公演では実際着席スタイルだった)、立ち上がって踊り出すフロアに向けたサウンドを求めた結果、なのかもしれない。

とはいえ、もはや流行り尽くされたジャンルであるトラップを取り入れた、アルバム丁度真ん中にある「Big Hammer」を皮切りに、作品は少しずつチルアウト。後半「Fire the Editor」では彼のシグネチャーである艶のあるも堪能でき、続く「If You Can Hear Me」ではそのタイトル通りかのような子守唄を展開。最後は表題曲アンビエント・ナンバーにて、彼と私たちはゆっくりとロボットで天国へと遊びにゆく。

楽曲でいえば小粒のように響くのだが、アルバムとしては中々どうして、個人的過去最高傑作。ここへきてようやく、時代が彼に追いついたかのような。さながら声は天国、ロボットはビート。有機物と無機物の見事なまでの抱擁に、これからも酔いしれていたい。




07.Slowdive「Everything is Alive」(お勧め①)
再結成から二枚目となる今作は、前作から約6年を経てのものに。ただリリースしてくれただけでもありがたい。

バンドメンバーであるレイチェルの母、サイモンの父と二名が亡くなったのちのレコーディングとなり、当初は難航を覚悟していたようだが、バンドとして集まるうち、一部ではあるが暗さも晴れたとのこと。確かに各楽曲には暗いトーンや、まるで死を悼む祈りのような音もあり、それはそのままアルバムタイトルにも反映されているように思う。

これまた直近シューゲイズの潮流にありつつも、元はエレクトロな素材からミニマルなものになる予定だったそう。特に②や④はその静けさから顕著だが、これもまたバンドで集まるうち、作品を聴けばわかる通りの、どこからどう聴いてもSlowdiveでしかないサウンドへと次第に変貌。レイチェル曰く「私たち五人が一部屋に集まると数値化できないことが起こる」

あたかも吹雪の中にいるかのような凍てつくサウンドでアルバムはスタートするが、その後は雪解けを知らせるかのような暖かいナンバーも通し、最後にはすべてを切り裂いて希望へと向かうような、そんな力強い残響を残して幕は閉じる。

「すべては生きている」と冠された今作からは、ただ生きることの悲しみや喜びの、そのすべての感情が包括されている。そこには音楽でしか呼び起こすことのできない感情も、きっと。





06.Róisín Murphy「Hit Parade」(お勧め⑤、⑧)
元々彼女のシグネチャーでもあったディスコ・スタイルは時代の潮流に乗り、結果大きな成功を収めることができた前作の要素も含みつつ、Dj Koze(こちらも好き)との共作となった今作は、彼女の言葉と奇妙なアートワーク通り、「活気に満ち、色彩が爆発する」仕上がりに。

お互いに顔を合わせず完全なリモート共作となったことは、「アプローチをより親密にし、秘密を打ち明けることができた」とマーフィは言う。それは喜びだけでなく暗い部分、つまり黒色も含まれたものとなり、それらも一つにし、「ヒット・パレード」と呼べる作品となったようだ。

入口こそ暗いトーンで始まるものの、それは少しずつ様々なカラーが広がりを魅せるための布石。どの楽曲もリズムが強調されており、歌と同時にビートが前面にあるのはいつも通り。彼女なりのポップが随所に散りばめられ、また⑦~⑨には往年の武器であるハウス・ナンバーもしっかり収録。これがまた最高に踊れる。

ともすればそれだけでも良かったのに、彼女は前作の成功に引っ張られず、けっして過去をこするような真似はしなかった。それこそが、アートワークの示す通りの自由な色であり、音楽で表現するということ。私にはそう感じられる。





5~1




05.Lana Del Rey「Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd」(お勧め②、⑬)
現代シンガー・ソングライターの中では説明不要の有名人の一人、Lana Del Rayの最新作。

大勢のミュージシャンを呼んで収録されたとは思えないほど、作品はとても静謐でミニマル。かの名盤「Norman Fucking Rockwell!」(最高に好き)以降の流れを汲んだ仕上がりに。まるで少しでも触れるとひび割れるガラス細工のよう。

しかし彼女の特筆すべきは、網羅しつくせないほどの巧みな引用と比喩が光る歌詞にある。タイトル楽曲である「オーシャンブルーバードの下にトンネルがあることを知っていましたか」、とは実際にある地名にて彼女が赴いた際、「そのトンネルの美しいモザイク天井は綺麗なままだが、今はもう封鎖されている」ことから、「(このトンネルのように)私はまだ誰にも見つけられていない 私を忘れないで」と願うものとなっている。
(ちなみに、Harry Nilssonの1974年作「Don't Forget Me」という楽曲からの影響も。インプットもアウトウットも素晴らしい)

このようなデティールある楽曲を、素晴らしいメロディに乗せて幾つも世に生み出しつつ、誰もが共感できそうな親しみも忘れずに。現代のポップ・スターの一人にて、彼女ほど詩人と呼べるシンガー・ソングライターもそういないだろう。

国内盤CDには対訳もつくが、ある時から一貫して数曲しか歌詞を提示しないその秘匿、神秘性もまた彼女の魅力。詳細を綴るにはあまりに時間もなく。調べればきっと、こんな辺境のものよりよほど豊かな記事が見つかることだろう。この作品の本質は、そちらのほうに丸投げしてしまいたい。

ただ、そんなことがわからずとも、この作品はとても美しい。ただそれだけはわかる。一体誰が忘れられようか。しかし、彼女は今も待ち続けている。その美しいトンネルを見つけたように、彼女もまた、誰かから見つけられることを。




04.cero「e o」(お勧め②、⑧、⑪)
「真新しいものがなくなり ようやく静けさのなかページが開く」
そう歌って、このアルバムは始まる。続く二曲目では最後の便が地上を発ち、いよいよ艘は宇宙へとゆく。

今まで様々なテーマをもって製作された作品から、この五作目は特に意識せずに楽曲が集められたそうだが、してどうか。各楽曲タイトルに、どの曲にも一つはなんぞやの神話をモチーフとした単語があり、またそのサウンドはまるで地面に戻る気のないような、浮遊感強いサイケデリック

以上のことから、私はどうしても「宇宙」を連想せずにはいられない。二曲目はタイトルからしても、製作時期に放映された「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」から着想を得ていそうな。

どこかで聴いたことがあるような、しかし強烈にceroでしかないこの音と整合性に、私の耳もまたふらふらとくうを舞って、そのまま宇宙へと還ってゆく・・・かと思いきや、最終楽曲のイントロにはまるでエアコンでもつけたかのような起動音と、空気のない宇宙ではけっして吹くことのない風が。そういえば、各楽曲にもどこか「風」が感じられる言葉が多いような・・・

「街は夕凪 嵐がくる 楽園から吹きつける 透明な未来」
一曲目の歌詞をモチーフにするように、クロージング・トラックもまたページを開くような音を立てる。あるいは、その音はページを閉じるものなのかもしれない。つまりこのアルバムとは、地上にいた私たちが一度宇宙へ放り出されるも、最終的には地上であるこの星へとまた還っていく、その一連の流れを表現したものなのかもしれない。

個々の楽曲は勿論、アルバム単位としても文句なしの完成度。これがただの宇宙への小旅行なのかどうかはわからない。ただ、なにもない虚空の彼方へと逃げ出すには早い。この国にはまだ、ceroがいる。





03.Wednesday「Rat Saw God」(お勧め②、⑤、⑦)
カントリーを主軸にしたアメリカからのインディ・ロックバンド5thアルバムとは、いかにもインディらしく、ともすれば誰しも少しぐらいは身に覚えのあるような、なんてない郊外の田舎の日常をシリアスになりすぎず、多少のファニーも織り込んで作り上げた作品となった。また、今までのレビューにもあった通り、今作もまた直近旺盛なシューゲイズ要素も。

バンドのポリシーであるカントリーは音楽のジャンルでありながら、意味はそのまま「田舎」。フロントマンであるカーリーは、その田舎での日常をただ歌にする。時になんてなく、時に感情的に。それだけでもなんとドラマのあることか。これまさしく、事実は小説より奇なり

違う国の、他人のドラマ。にもかかわらず、あたかもこれは私たちの日常でもあるかのような。そんな言葉たちを、どこか親しみあるサウンドの上で彼女は歌う。そういえば、バンド名はただ「水曜日」。日常も日常である。

「鼠は神を見た」というタイトルとは、ともすればくそったれな日常に生きる私たち鼠が神を見つけたところでどうしようもねぇ、といった諦念、あるいは開き直りのように響き、しかしそんな糞な日々にも神を見つけたかのような救いはある、といったポジティブなメッセージ、その両方でもあるように響く。

作り込まれた構成も、社会や政治に訴える痛烈なアイロニーも、誰もが歌い出すメロディや共感も。全部大切だが、しかし「そんなもんどうでもいいよ。私たちは私たちのやりたいことをやる」、なんて大層ご都合な解釈だが、だからこそこういったインディ・サウンドには、そんな身勝手なわがままも丸ごと受け止めてくれるような、そんな懐の深さと自由がある。

Wednesdayのような芳醇なインディ・バンドの音を聴いていると、なぜだか私は田舎の山から匂いたつ「木の香り」を感じることができる。個人的な話だが、メンタルを痛めているときに私はこのアルバムと出会い、聴いているうち「くそったれだが、しかし愛すべき普通の日常」へと戻れるような、そんな感覚に、ただただ癒しを覚えることができた。





02.Jessie Ware「That! Feels Good!」(お勧め③、⑤、⑩)
先ほど紹介したRóisín Murphy(共作曲も別でリリース済み)に同じ、前作からディスコを取り入れてから大きな評価を経たディーバの一人。余談だが、今作は椎名林檎が丸ごとカバーしてもおかしくないくらい親和性があるように思う。

前作ではややダークなトーンもあり、腰を揺らすことに躊躇いもあるように感じられたが、今作ではその迷いを完全払拭。ミラーボールに照らされた音は、その輝きとともにエネルギーに満ち満ちている。さながら舞踏会のためのサウンドトラック。なんの捻りもないド直球なアルバムタイトルがこれでもかと証明している。もう踊るしかねぇ!

様々なダンスナンバーで躍らせてくる中、歌を全面に出したソウルフル、メロウな楽曲も収録。ポップとしてもなに差し支えない強度も内包されており、まさに敵なし。女王様 on Stage. 五曲目「もう一度始めよう」とは、あたかも彼女のためのテーマソングかのように力強く鳴り響く。

作品最後の手前9曲目にて一度落ち着かせたかと思いきや、それはただの様式美とでも言わんばかりにラストも躍動的。南からの風をなびかせて彼女は最後まで我々を踊り狂わし、まるで何事もなかったかのように颯爽と舞台から去ってゆく。その一切のエネルギーが圧倒的。

宇多田ヒカルもまた2022作「BADモード」(傑作!)にてサウンドにダンスを取り入れ、一躍世界から脚光を浴びたように、2023年もまた、世界は躍らせてくれることに期待をしている。その最前線には間違いなく、彼女がいる。






01.Parannoul「After the Magic」(お勧め①、②、⑦)
韓国から現れた彼の作品には、ドラマがある。彼が世に広まるきっかけとなった前作「To See the Next Part of the Dream」(夢の続きを見るために)のBandcamp内にあるステートメントの翻訳の一部を切り抜き、まとめたものを下記に。

私が音楽を志すきっかけとなった憧れのミュージシャンは、しかし世間には評価されず、今やどこにいるかもわからない。私もまたロックスターに憧れるも、21歳の時に一度もギターを弾いたことがなく、歌もクソ下手で、身長も容姿も何もかもが平均以下。理想と現実のギャップが大きく、体は大人でも心は子供のままの人間についてのアルバム。

この3年間感じてきた気持ちも正直に込められています。 妄想、劣等感、過去、不適応、現実逃避、空想と幻滅、闘争、最も平凡な存在、無気力、自殺。 このアルバムにはその感情に対する不満だけが残っており、それを克服するということはありません。 甘い慰めの言葉をかけることはできません。 「いつかは大丈夫」とは言えません。 私のような積極的な敗者が世の中にもっと増えることを願うばかりです。

https://parannoul.bandcamp.com/


実際に歌詞も痛烈なものが多く、世界を呪いつつも、しかしもっとも忌むべきは自分自身・・・あたかもすべての鬱屈とした日々を送るティーンエイジャーを代弁したかのような言葉と音に、モラトリアムなんぞとっくに過ぎ去った私の心でさえ奥深くに突き刺さった。「これはいつかの、私のために作られた音楽だ」、と。

しかし、彼は忘れ去られていったミュージシャンのようにはならなかった。数多の口コミから大手批評サイトにも作品は取り上げられ、その結果前作は大きな評価を得た。

部屋の中でたった一人作られた、そのへの憧れが込められた楽曲(ドラムはおろかギターから何から何まで、歌声以外すべて打ち込みというのも驚異的)は、瞬く間に世界へと広がり、暗い部屋に真っ白な光が射し込んでいった。

その光をもって今作「魔法のあとに」は2023年、1/28にリリースされた。

このアルバムについてのステートメントも記しておきたい。

私はいつも、今持っているものがいつなくなってしまうのか、いつ人々が私から離れてしまうのかを恐れています。 これはある種の魔法だと思います。しばらくの間明るく輝いて、その後何事もなかったかのように消えます。 2ndアルバムの後に見た夢を込めて作ったアルバムです。 助けてくれた世界中の人々に感謝します。

https://parannoul.bandcamp.com/


もう一度記載するが、前作のタイトルとは「夢の続きを見るために」。その、まるで夢のような世界は現実となり、彼は魔法にかかった。

そして作り上げられた今作「魔法のあと」とは、彼が作品を評価されたのちのことを指すのは言うまでもない。「あの時私は世界に見つけられたが、いずれすぐ忘れ去られるのではないか」。そういった不安がタイトルに同じ、最終楽曲の歌詞にも込められている。

前作同様これまたシューゲイズ・サウンドは継続。さらに打ち込みからエレクトロ、トランペットやストリングスによるアレンジはチェンバー要素も追加。曲中のリズム転換も多くあり、音像は前作から非常にカラフルな仕上がりに。

何よりも聴き逃したくないのは、ジャケットが示す通りの「輝き」。彼のかかった魔法をそのまま音にしたかのようなこの作品は、五曲目にもある通り、まさに光のパレード。歌詞とともに、すべてにおいて希望に溢れている。それはまるで前作と対を成すかのように対極で、やはり彼の音楽にはドラマがあり、その夢や魔法は今も続いていることがよくわかる。

この世のあらゆる喜びを爆発させたかのような今作は、アルバムタイトルに同じ最終曲にて主題へと還る。まるで魔法が消えて、同時に彼自身も消え去っていくかのような音ともに、「私を忘れないで」と何度も希って、この作品は静かにエンディングを迎える。

音楽としては当然、ことティーンにとって、誰しもが一度は感じたことがある想い。それが彼の作品には、音楽として見事に表現されているように思う。

様々な色彩が散りばめられた中、シューゲイズだけは一貫しており、それはただ足元を見るだけの項垂れる姿を彷彿としながらも、自身諸共世界すべてをかき消してしまいたい想いとも捉えられ、同時に精一杯の喜びと祝福を表現しているようにも響き・・・

さながら、韓国から見つけられた「若者のすべて」。だからこそ、大人にも響くものがある。すべてのティーンエイジャーと、青さを捨てきれない大人たちへ。




終わりに


なんやこれ、むちゃくちゃ時間かかるやん・・・

が、最初に出た本音である。

国内盤がリリースされたものは解説等もう一度目を通しつつ、ないものはひとまず英語版wikiを翻訳してそこから拝借したりもして・・・当然アルバムを聴きながらの作業となるのだが、何なら「あれもこれも聴きてぇ」と耳が疼いては横道に逸れ・・・

相当手抜きした作品でさえも一つ三、四十分はザラ、たった数行でもこの具合。毎回長文をしたためる方々はきっと、作品に愛が溢れて仕方ないのだと思います。リスペクト。

あとから見返すと大体「この順番はおかしいw」と思うし、音楽なんてそんときの気分でいくらでも変わる。だからこそ、その時に格付けするのも面白い、のかもしれない。

ちなみに、聴き逃し多数ある中どうしても聴いておきたかったものが二つ。


前者は12月に聴くにはいささか重く、後者はCDが発送されねぇ。無念。でもいつか聴きます。



「シューゲイズ多すぎ」
実を言うと、せいぜい「そこそこ好み」ぐらいの立ち位置であって、このジャンルに固執しているわけではない。それを差し引いても、今年は本当に豊作だったように思う。かのマイブラも次作リリースの予定があるとか。時代は巡る。90年代再勃興の兆しあり?


「J-Popは聴かないの?」
そういうわけではないのだが、一度気になると全てのディスコグラフィーを網羅したくなる=漁るのが非常に遅いのである。つまりは、時間がない。

海外はでけぇ大陸を長い時間かけてツアーをする=リリーススピードが遅い(大体三年に一枚)。対して、国内は一年に一枚のアルバムなんてザラ

掘りたいものはいくらでもあるが、でも知ったところで時間はない。海外だって今年はよく聴けたほう。音楽好きって、一生困んない趣味だと思う。いや、本も漫画も映画もゲームもなんでもそうか。一秒も無駄にできねぇよ、ほんと。


「この時世にラップ聴かないマジ?」
マジでそう思う。けど、ラップって本当に把握するまでが大変で大変で・・・
特にライムとメッセージ性。前者はほぼ諦め。後者は対訳があって初めてスタート地点。当然、国内でも。

今年でいうなら、Little Simzやnonameはチェックしました。が、音だけでいうならすんなりとは沁み込まず・・・深掘りすればきっと見方は変わるし、音だけでもおいしい作品は探せばきっといくらでもある。時間がねぇんだ、ほんと。




選外傑作


もう少し聴き込めば、数年先には、時代が違えば、単純に紹介しときたい、etc…

聴き逃すには惜しいんじゃない? って作品はここで簡単に。便利な言葉よね、選外傑作。グッドミュージックはいくらあったっていいんだから。



くるり「愛の太陽 EP」
シンプルなポップと実験的な楽曲が同居するのがくるりというものだが、今作は前者。全曲夏に合いそうな、からっとした仕上がりも良し。最終曲「真夏日」は名曲。



Parannoul「After the Night」
ライブアルバムのため除外したが、傑作であることに変わりなく。たどたどしいドラムが逆にエモい。セットリストも完璧。そもそもほぼ打ち込み作品をライブで再現、というより、あのParannoulがライブを開催したという事実だけでも喜ばしい出来事。最終曲、優勝。



BrokenTeeth「추락은 천천히 (How to Sink Slowly) 」
上記Parannoulに同じ、韓国からのシューゲイズ・シーンから発見されたマテリアルの一人。最近は本当にシューゲイズが豊作。



loscil「ALTA」
アルバムと呼んでいいのかどうか、一曲のみ約42分のドローン。完全睡眠導入的なものだが、真夜中の作業と相性抜群。とかく気持ちいい。



Kara Jackson「Why Does The Earth Give Us People To Love?」
楽曲もさることながら、真髄は歌詞にあり。「dickhead blues」なんてタイトルの楽曲もあるほど、そのメッセージ性は強い。

はずなのだが、逐一和訳し、デティールを深堀りするほどの熱意、時間はなく。英語圏の住人であれば、あるいは彼女の作品の深さをもっと理解できたとは思うが・・・無念。



くるり「感覚は道標」
初期メンバーである森信行が戻っての製作。しかしけっして原点回帰ではなく、あくまでその時に出したい音をただ奏でるだけ。彼らの作品に酔いしれられないのであれば、それはただ私の耳がその域に到達できていないだけである。



The National「Laugh Track」
スランプを打破した結果、レコーディングされた楽曲はアルバム二枚分以上。それを同年にリリースとは嬉しい限り。リハ音源をそのまま収録したりと、アルバムとしてはやや精彩を欠くも、それもまた魅力と言えるものに。



ROTH BART BARON「8」
一年に一枚のリリーススピードを保ちつつ、作品はとうとう八枚目まで。個人的小粒揃いといったところだが、貪欲にひたむきに、何より真摯に作曲しては世に放つその継続を評価したい。



Duster「Remote Echoes」
正確にはアルバムではなくアウトテイク、デモ集。しかし、元々がローファイのデモのようなサウンド。つまりは、むちゃくちゃよろしい。最近は素ラッカー・ロックって言うそうです。ローファイは逆に死語?



Sigur Rós「Átta」
実を言うと聴き始めたのは数日前。このオーケストラ・アンビエント路線は数年後に膝を打ちそうだが、今はすんなりと染み渡らず。間違いなく悪い作品ではないんだけども。



Oneohtrix Point Never「Again」
ジャケットにあるスピーカーが心臓だとすれば、赤と青はそれぞれ動脈、静脈を表しているのだろう。ともすれば、タイトル「Again」とは心肺蘇生。彼なりにもう一度音楽を「再生」しようと試みた作品、なのかもしれない。



UnisonChouette「ぼくらのたからもの」
さすがに私の耳ではランクインとはならず。推しにはどこまでも真っすぐに。忖度なしの記事は推しの卒業までに間に合えば。




というわけで、記事は「2023 Best Track60」に続く。有閑な方がいれば是非。




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