今年のVtuberのオリジナル曲100ぐらい振り返っていく①『1月ごちゃまぜ編』

 Vtuberがオリジナル曲をどんどん創るから今年の曲を想い出そうと書いてます。さて、年末までに何曲振り返れるか。順番はなるべく1月から行きますが気分です。一応、断っておきますがVtuberのシーン的に重要な曲を特別取り上げるつもりは全くないです。好き嫌いというか私が感想を書けるくらいひっかかった曲のみ取り上げます。私の感想です。あなたの感想はあなたが書いてください。

1.ミライトミライ/ミライアカリ

 いきなりド安定どころでがっくりきた方もいるかと。けれども、ここで取り上げたのはミライトミライって「オリジナルソングってなんでしょう?」っていう問いの一つの答えとして明瞭だと思ってるからなんです。その答えというのは聴いていて本人が歌っているシーンをはっきりとイメージできる曲ということです。

 ミライトミライはコールアンドレスポンスがカッコつきで示されていることからも、ライブで観客と盛り上がる曲というのが想像しやすいですよね。さらに、リズムも本当に乗りやすいリズムが随所に盛り込まれてます。また、「らーらーらーらーらららら」でライブに来たファンもおもいっきり声をあげられるます。ここに関して言えば長くミライアカリを追ってきた人ほど感情が高ぶると思います。みなさんもそれぞれに『あ、オレこの曲ライブで歌われたら泣くな』って曲あると思いますけどそんな一曲です。というふうに、実際にはライブに行っていないのに聴いた時に情景が想起させられるというのがこの曲がすごいと思ってる点です。

 他にもLyricにミライアカリ本人が関わっていることが明示されていることも嬉しいポイントです。オリジナルの難しいところは想いを伝えるにはある程度のテクニックも必要になってくるところです。しかし、完全にプロに任せてしまうと「これは誰の曲なのか」「キャラソンではないのか」という考えが生まれてしまいます。
 本人が伝えたい想いと、届けるからにはコンテンツとしてのクオリティを高くしたいという思いのバランスをとることは難しいですが、その点もこの曲はクリアできていると思っています。ナユタン星人さんの既にある明確な音楽の方向性にミライアカリのメッセージが相性よく乗っているので聴いている方は素直にその言葉を受け取れます。ミライアカリさん素晴らしい……

2.ハツユメポップ / ぼっちぼろまる 

 実は意図的に感想を書く事を避けてるVが何人かいるんですよね。というのも、そのVはまとめて書きたいなっていう欲があるからなんです。物語性も併せて紹介したいタイプのVですね。そんなVの物語性とは別軸で音楽をしているのがぼっちぼろまるさんです。曲だけで完結しているから紹介しやすいです。

 歌も歌うバラエティなVと音楽一本でやっているVの差は何をもってメッセージを伝えるか、という重心の置き方です。あらゆる問題提議がされるこの世界に対して配信で答えるのか、音楽に込めるのか。もちろんそこには一本の線で区切れるような違いはなく、グラデーションになっているとは思います。しかし、ぼっちぼろまるは音楽に限りなく重心を傾けています。そこが素晴らしい。

 なんでいきなりぼっちぼろまる語りをしたかというと、2018年のVtuber界隈の12月~1月って引退っていうのが一つ目に見えるワードとしてあったんですね。それに対して各々が各々の形でアプローチをかけていた。そんな中でぼっちぼろまるが出してきた曲が『ハツユメポップ』です。正直なところ、そういうVtuberのシーンに対してアプローチするタイプではないと思っていたのでびっくりして腰が抜けました。

 この曲のすごいのは新年のあいさつとVtuberとしての己のスタイルの提示と引退というワードに対するアプローチを自分の音楽として説教くさくなくやり遂げているという点です。『あ、正月だから正月の曲出したんだな』とも取れるくらいのポップさを残しつつも、込めるものを込めていくカッコよさ。ぼっちぼろまる、すごすぎる……

3.Cloud Identifier: 集合知に偏在する残滓による自意識の再構成 / memex

 これ見た時「2019年はこういうのがもっと見られるのか……!!」とものすごくワクワクしたのを覚えています。狭いところから広いところへの空間の広がりというのは2Dから3Dや、一方通行から双方向とかいろいろ表現として魅せ方があるテーマだと思うんです。一発どりながらもこれはライブとしての魅せ方の広がりを感じさせてくれました。また、この曲はそれまで名前がTLで飛び交うようなVに向いていた私の視点を、それ以外の世界へと広げていくきっかけとなった曲です。

 バーチャル空間における自我の構成を歌っていると思うんですけど、結局の所は誰かの記憶や認識によって輪郭を成していて、誰かに認識されるためにまた声をあげるというところに落ち着いています。これはVtuberに限らず、自分を構成しているのは何かという普遍的な問いに対する、普遍的な着地点だと思うんですよね。Vtuber、Avatar、VR、memexという新しいものはあるけれどその問答自体は従来からあったものなわけです。

 こう書くと批判していると感じる人もいると思うんですけど批判するつもりは全くありません。そもそも、普遍的な問いに対する答えを自分の作品としてどう表現するか、というのはそれだけで素晴らしくオリジナリティが伴う活動です。表現としての新しさはこの先もずっと更新されていくでしょうけど、問いとして長く残るのは普遍的なものが残っていると思います。それに問いに対する答えを目を引くためにあまりにとっぴな物にしてしまえば共感性を失って、それこそ誰の意識の上にも構成されなくなってしまいます。だから、この曲は極めて普遍的な問いに対しての答えを極めて新しい表現で歌うことに挑戦しているのですごく記憶に残っています。すげぇぜ、memex。

4.魔女 / 花譜

 花譜をここで書くかとても悩みました。花譜さんは動画にナンバリングがあるタイプのSingerでMVも時系列を感じる作りなんですよ。個人的に特別にしたい存在でもありますし。でも、だからこそ曲単品としての物語、メッセージについても考えて行きたいなと考えてあえてこの流れに組み込みました。

 この曲だけではないんですが花譜さんの楽曲はカンザキイオリさんが詩を書いてらっしゃるんですよね。楽曲提供というとすこし他人のもの、その人の歌ではない、という感じというか匂いがするというのはミライトミライでも触れたんですが、それが一切ないんですよね。歌詞や音楽の方向性と花譜さんの歌声から感じるメッセージが完全に同じ方向を向いているからだと妄想しています。

 この曲の解釈、というか一辺倒に解釈できるほど生易しい歌じゃないんですけど。この曲が難しいのって花譜からどの距離にいる人にとっても強烈な問いを投げかけているからだと思うんですよね。距離というのは花譜を含めVtuberにどっぷりハマっている人を近い、Vtuberを知らずにたまたまこの曲を聴いた人が遠いとしたときの表現です。

 近い人はVの文脈でこの曲を解釈します。これまでの努力だったり、苦労してきたものがバーチャル空間(電子の海)で結実しようとしている。しかし、今はまだ、仮だったり偽物だったりと確かなモノとしての確信はない。このやっと手に入れた楽園を証明するためにも花譜は歌うんだな。とかまぁそいういう風に解釈するでしょう。

 でも、遠い人にとってはバーチャルだとかはどうでもいい話ですよね。ピンとこない訳です。それこそ偽物の世界な訳です。だから、花譜がバーチャルで歌っているというところにはメッセージ性を感じないと思うんですよね。ただ、その分歌詞の中にある問いに対してはVの文脈ではなく、今までの自分の人生の文脈で解釈しますよね。そして、その問というのは明確に示されていますが『言葉に魂はあるか』『存在に確信はあるか』です。非常に普遍的な問いですね。

 ここらへんの問いというのはカンザキイオリさんが得意としている問いで、この問いにひっかかりを覚えてしまった人はもれなくこの歌が気になって仕方なくなるでしょう。幾多の思惑の中で夢を声高らかに叫びに嘘はないのか、魂はあるのか? 夢を諦めずに走るあなたの存在価値にあなた自身は確信が持てるのか? わたしはこういう人間だと叫ぶ声に魂はあるかと。こんな残酷な問いを明らかに自分の年齢より幼い花譜に向けられて目を背けられるでしょうか。いや、むしろ目を背けたくなるからこそ、その問いの答えが自分の中にまだ存在しないことを自覚せざるを得ないというか。

 と、まぁ受け取る側の距離によって解釈というか受け取り方が変わってきます。この曲のもつ問いがVに留まらない問いで、それが広範に投げかけられていることに成功しているという点がこの曲の持つパワーの由来なのではないかな、と思います。恐ろしいぞ、花譜。

5.だんだんダンスうまくなる / ぼっちぼろまる 

 あくまで曲の感想メインだから同じnoteにおなじアーティストが出てくることもあるよ。今回の曲は特にシーンにおける意味は考えなくていいと思います。というか、別に他の曲もそんな事考えなくて良いんですけど。そんな事考えなくてもいいから好きなんですけど。

 この曲の好きなポイントは『こういうストーリー好きやろ?』というのをしっかり抑えているところです。曲を素直に追うだけで楽しい、ラスサビ激アツ、だんだんダンスうまくなる、素晴らしい。単純明快に楽しい。ぼっちぼろまるには光るものがある。ぼくにはちゃんとわかる。ぼっちぼろまるはすごい。

6.daydream / MonsterZ MATE

 空想の曲。届かないと知りながらも書かずにはいられなかった奴の歌。

 最近Vtuberに宛てる手紙みたいな記事を書いているのでとてもこの曲が刺さって鬱陶しい。明らかな指向性をもって記事を書いて、手紙の返事を期待するのってすごくおこがましいと思うんですよね。長文の空リプみたいなもんですからね。でも、返事を貰えるととても嬉しいんですよね。どうしようもないですね。

 この曲は返事が貰えなかった歌なのですごく辛いし、伝えればよかったという後悔の叫びも入っているし、作品としても素晴らしいし、シーンにおけるタイミングもエモいし、別にシーンを考えなくても大事な人との決別としての普遍的なテーマに対する答えになってるからとても良い!!でも、素直にエモいと言いたくない!!

 一言で言うと羨ましいっていう話なんですけど。こんだけ赤裸々なのに作品としての完成度が高くて、私の文章は駄文なのが嫌になる。そのタイムスタンプつけてぎりぎりクサくならないのはずるいし、届かない手紙のはずなのに実際には届いてるのズルい。この曲聴いて私は脳死でエモいなんて言わないぞ馬鹿野郎、なにがバイバイじゃという気持ちでいっぱい。でも、作品として出してる時点で、私みたいのもいることは想定済みだろうなと思って腹立つ。次のソロ曲いつだ楽しみに待ってるぞ、コーサカさん。と、書いてしまうとこれもまた届かない手紙になる。

1月の終わりに

 ただのオリジナル曲の感想の書きなぐりですがどうでしょう。7曲ですけど読む方も結構カロリーを使うと思います。でも、引っかかった曲を何回も聴いていろいろ考えながら書くとこのくらいの感想は出てくるもんです。読まれた方の中には既に数字を持ってる人ばっかりだな、と思うかもしれません。それは1月から3月まではまだそれほど個人のオリジナル曲に目を向けてなかったから、というのが理由の一つとしてあります。この期間ですごい曲があったらぜひコメントなんかで教えてください。あと、あくまでYouTubeのチャンネル登録数でのものさしですが、すごいと思うなら100万までは足りないと思って押し上げたいと思います。

 とりあえず1月を書きましたが、AZKiさんとかエルセとさめのぽきさんはたぶん月の枠とは別に書くと思います。というか難しいんだよな、特にエルセとさめのぽき。難しい理由はその時に書くと思いますけど。でも、結局のところはどっかのおっさんの集まりに感想をしゃべられて、それに共感するのが癪なので、なるべく多くの曲の感想を言えたらなと思います。永いシリーズになると思いますがお付き合いよろしくおねがいします。

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