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雨の夜に散歩したら正解だった

今日はずっと雨が降っていて、強くなったり弱くなったりしたものの、途切れることはなかった。

昼間なのに部屋の中は肌寒く、これ幸いとばかりに私は一日中、本を読んで過ごした。

この時期、夕方4時を過ぎれば薄暗く、30分もしないうちに日が落ちて真っ暗になる。

窓を開けて暗くなった外を眺めた。雨は降り続けていた。土砂降りではないが、小雨でもない。

あまりにもちょうど良い。

というわけで、私は買い物のついでに、雨夜の散歩に出ることにした。傘に長靴にウインドブレーカー、更にマスクと、完全防備で。


外に出たら空気が冷えていて、少し目が覚めた。

住宅地からドラッグストアに向かう途中、意外と人がすれ違うので、ちょっと驚いた。たぶんこれから帰宅する人たちだ。

みんなこんな天気でも出かけてるんだな。自分は一日引きこもって、灰色の空を眺めるばかりだったので、そんな中で外出した人がいたのは、新鮮だった。

というより、実は、外の道路を人が歩いている光景そのものが、わりと新鮮だった。育った地域が、今の居住地以上の車社会で、雨の日に外を歩く人はほとんど見なかった。

外に出たら人がいた、という単純な事実に驚いて、自分がものすごく狭い世界にこもっていたことに気がついた。大げさに言うとそうなる。

買い物を済ませた帰り道、いくつもの家に門灯がつき、窓から中の明かりがもれていた。どこの家にも明かりがついていた。

明かりがつくとなんとなく安心するのは、昼間はじっと押し黙っている家に、実はちゃんと人が住んで生活している、ということがわかるからだ。

明かりのおかげで温かみが感じられるとか、そういうことなのか、とも思ったが、それは的を外れている気がした。

もともと家並みを眺めて散歩するのは好きだが、夕暮れや夜になってからの景色はまた違う。

特に集合住宅を遠くから眺めると、窓から放たれる明かりは色や光の強さがばらばらで、住む人の個性が垣間見えるような心地になる(明かりで個性がわかる、とは言わない)。

雨の日や夜の時間帯だと特に、外が寒くて心細い感じがするので、そういう人の生活の断片のようなものが感じられると、何かしら心の動きが際立つ。

と、いうわけで。

雨の日の夕方、日が暮れた頃を見計らって外に出たのは、正解だった。という話。

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