俺たちのKIZAWA!

首位街道を突き進むヤクルトスワローズ。
強いだけでなく若手も次々と台頭している。
野手では長岡と内山。
ショートとキャッチャーの最重要ポジションなので、スワローズファンの希望の星。
連日スレが立ち盛り上がっている。

そしてもう一人、絶大な人気を誇る若手投手がいる。
通称『俺たちの!』
木澤尚文。
2020年のドラフト1位選手である。

なぜ木澤投手は『俺たちの』なのだろうか?
そこにはプロ入り後、イバラの道を歩んだ彼の1年が関係している。

外れ外れ1位ではあったが、歴としたドラフト1位。慶応のエース。高校から慶応の文武両道。
最速155キロ。
当時最弱だった投手陣のヤクルト。
ファンは即戦力の先発ピッチャーの獲得に心踊らせた。
本人も目標は「1年間1軍で活躍する」と話していた。

ところが……
彼のプロ1年目は散々なものだった。
2軍の試合に出れば打たれ炎上。
翌週も、その翌週も……

最終的2021年2軍での成績2勝8敗、防御率6.07
極めつけは10月に行われたフェニックスリーグ。
4回1/3を投げ、17安打15失点の大炎上。

ドラ1の1年目でなければ、戦力外通告されてもおかしくない成績だった。

スワローズファンの失望は最大限だった。
チームが日本一になった喜びも逆に重なり、木澤は腫れ物にさわる様な忘れられた存在になった。

このまま消えていく、外れのドラ1。
ヤクルトファンには慣れた事だった。


このフェニックスリーグの大惨事はほんの数ヶ月前の事である。
一体彼に何が起こったのか!

オープン戦辺りから、ファンの間で
「ん?」
「どーした木澤?」
と囁かれる様になる。

連続四球からの大量失点しか見てこなかった、残念な外れドラ1が躍動している。
打たれない。
また、抑える。
また、また、また……

そして2022年のペナントレースが開幕する。
当然のように木澤は1軍にいた。
役割は敗戦処理。

しかし、投げても、投げても打たれない。
勝ち星がひとつ、またひとつと彼のもとに転がってくる。

いつの間にか木澤はファンの希望になっていた。
『俺たちのKIZAWA!』
『KIZAWA!KIZAWA!KIZAWA!』
負けてるゲームでも木澤投手が登場すると、スレッドはお祭り騒ぎになる。

そして颯爽に回跨ぎでゼロに抑えチームは逆転。
勝ち投手木澤。

2年連続最下位のヤクルトが突然日本一になった事と、木澤投手の活躍はどこかリンクする。
弱かった俺たちが、いつの間にか強者に変貌している。
誰がスタートか知らないが、それが『俺たちの!』と最大限の愛称で呼ばれだした原因だと思う。

今年のスワローズの調子を見ると、俺たちの木澤の勝ち星はどんどん増え続けるかも知れない。

巷では、巨人の大勢で決まり!
スワローズファンも長岡くんがワンチャン取れたらなと思っている新人王。

私は、いや。
俺たちは、新人王は木澤尚文だと信じている。
そしてヒーローインタビューの様な、聡明な受賞コメントを待っている。
頑張れ!『俺たちのKIZAWA!』

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