Regenerative Farm 奮闘記② - 土地の風土で作物を育む
前回は「 Regenerative Farm 奮闘記①」として、
1. 未利用資源の活用
2. 土に還らないものは使わない
という話をしました。
今回は、「土地の風土で作物を育む」という話です。
1. 水は自然に任せる
私は今までにも自宅のベランダや、民間運営の貸し農園やで野菜を育ててきましたが、基本的に必ず水をあげていました。特に夏場は水をあげないと野菜が枯れてしまったからです。
ところが佐久で、農作業のお手伝いを頻繁にさせていただいている農家さんの畑を見ると、夏場でも水をあげている気配がありません。聞いてみると、
「夏場に長期間雨が降らないとか、播種・定植直後で水分が必要な場合以外、よっぽどのことがないと水はあげないですね」
とのこと。
作物が順調に育つような土壌環境を整備すれば、自然の雨と土壌の保水力だけで、追加で水をあげなくても作物は育つということでした。
具体的には、土壌の水分量が一定程度保たれるように、土の団粒構造を維持し、土をふかふかにする。
そのためには多様な土壌微生物・土壌生物を増やす。
そのために前回書いたような廃菌床、バイオ炭、籾殻に代表される有機物を畑に投入し、適度な炭素分・窒素分を土壌に維持することが大切なようです。
もちろんこれは日本全国どの地域でも同じ考え方・条件で成り立つということではありません。
Regenerative Farmは標高約700mに位置し、近年は最高気温は東京と同じくらいになる日もありますが、比較的冷涼で、昼夜の寒暖差が大きいという好条件だからこそでもあります。
ということで、Regenerative Farmは今年は畑を整備してから今まで、一度も水を与えることなく、水分は降雨と朝晩の寒暖差による朝露のみで、夏野菜の爆誕を迎えました(汗)。
2. そこに生える草を生かす
上の写真はRegenerative Farmのメインの畝があるエリアです。
草刈機で草刈は定期的にやっていますが、ぶっちゃけそんなにきめ細かく、念入りにやっているかというと、そんなことはなく、育てている作物以外の草を敢えて生やしています。
畑の見栄え的には草が生えてない方がキレイな気もしますが、なぜこんな状態にしているかというと、まず第一に、その方が楽だからです!(笑)
第二に、いろんな草が生えていると、畑の生物多様性が高まり、思いの外、作物への病害虫被害が少ない(と思われる)のです。
初夏の定植期こそ、今年はピーマンの苗にアブラムシがびっしりついたり、トマトにニジュウヤホシテントウやオオタバコガの幼虫が発生しましたが、最盛期にはそれほどでもなくなり、順調に収穫できています。
同一環境下で草を生やしたエリアとそうでないエリアで比較実験をしたわけではないのでエビデンスはありませんが、土の中(様々な植物の根っこと土壌微生物)と土の上(草と作物部分)の環境が多様であるほうが、生態系のバランスがいいようなのです。
ちなみにこのことは、「土と内臓」、「土・牛・微生物」、そして近著が出た「土と脂」の著者D.モントゴメリーも指摘しています。
また「土を育てる」の著者ゲイブ・ブラウンは、同書で健康な土の条件についてこのように述べています。
水(と養分の適切な循環)
日光(の照射量)
土壌生物(の多様性)
炭素(の貯留量)
土壌流出への耐性
もちろん単に草を生やせと言っているのではなく、被覆作物や作物残渣を土壌に残すことで生物多様性が増し、結果として農作物に対する害虫を抑える益虫が増えることにより、作物が育つと私は考えています。
3. 農薬・肥料を使わない
要は、畑を人間が育てたい作物だけにしてしまうと、そこに目掛けてあらゆる虫や病原菌が集中してしまうので、対抗措置として農薬が必要になるわけです。
「おひとり農業」の著者、岡本よりたかさんは、同書でこう指摘しています。
農薬・化学肥料を使用すると、土壌微生物が減少する。
除草剤を使うと、本来植物が必要とするミネラルの元となる植物(それが枯れて枯葉・枯れ茎・枯れ根になり、微生物が分解史土壌にミネラルを供給する)が減少する。
農薬に関する私個人のスタンスは、使う必然性がある場合は適量・適切に使えばよいです。栽培環境と農産物の取り扱い条件(例えば規格品として市場流通させるか否かなど)に基づいて対応すればよいのではないかと考えます。
ですが、せっかく水もあげない、草も(不用意に)刈らない、土に還らないものは使わないというコンセプトで始めた Regenerative Farm なので、農薬も使わなくて済むなら使わずになんとかしようと思っています。
ちなみに上述したピーマンの定植初期に大発生したアブラムシ対策には、唐辛子とにんにくと酢で作ったスプレーが効くと農業系の本やHPに記載があったので、実践してみました。これが効いたのか、畑の生態系バランスが結果的に整ったからなのか、その後アブラムシによる食害はほとんど見受けられませんでした。
肥料については、地域由来の有機肥料(例えば鶏糞・馬糞堆肥・油粕・米糠など)を購入して使ってみようかと思ったのですが、昨年も何も使わずにそこそこ収穫できたので、今年も使いませんでした。
地域の未利用資源である廃菌床・バイオ炭・籾殻・淡竹パウダーなどを秋冬〜春の休耕期に投入することで、ある程度土壌環境が健全であるという認識です。
とはいえ客観的根拠があるわけではないので、来年度はちゃんと土壌分析してみようかな・・・
4. 種を採る
昨年栽培した野菜のうち、うすいえんどう(グリーンピース)、ぼたんこしょう、埼玉青大丸ナス、ローザビアンカ(ナス)は昨年のうちに種を採り(いわゆる「自家採取」というやつ)、今年その種を播種し収穫しました。
こちらの知り合いの農家さんが昨年自家採取しているのをお手伝いして、自分もやってみよう!と思いたち、在来品種で種採りしやすい品目を数種類選びました。
今年の成果は?
種採り含めて写真に収めたのはうすいえんどうだけですが、感覚値ですが去年の5倍の収量が採れました。種代ゼロ円です。
このような種採りは、市場に出回っている登録品種、中でもF1種ではあまり成果が出ないとされており、いわゆる固定種と言われる昔からある品種の方が自家採取に向いているとされています。
(もっと詳しくF1種と固定種について知りたい方はこちらをどうぞhttps://minorasu.basf.co.jp/80722)
私がなぜ種を採るかというと、以下のような思いからです。
種代がかからない
自家採取を繰り返すことにより、よりその土地に合った作物になる
生命の営みに微力ながら関わることができる
去年初めてやってみて感じたのは、種採りをすると、すごく心が豊になるというか、生命の連続性を感じたんですよね。
「スローフード宣言 食べることは生きること」の著者、アリス・ウォータースは同書でこう述べています。
自分の食べ物を育てることは、お金を刷るようなもの。
もちろん買った種でもこの感覚は味わえますが、種を自家採取することでこの感覚は何倍にも増幅されるな〜という実感があります。
ということで、今年も夏野菜が終わりを迎えた今日この頃、来年に向けての種取りを始めました。
みなさんも野菜を育てたことはあると思いますが、是非一度、種の自家採取から翌年の栽培を始めてみてはいかがでしょうか?
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