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『平凡パンチの時代』 第八章 生沢徹の疾走

時々、自分の若かったころのことを思い出して、アレはなんだったのだろうと考えるのだが、子供のころというか、若いころ、とにかく仕事でも勉強でも、自分を人に認めてもらいたくてしょうがなかった。人間が4人集まったら、そのなかの一番にならないと気がすまなかったし、50人集まったら、せめて先頭の5人くらいのなかに入っていないと気がすまなかった。
これは男の闘争本能なのかもしれないが、時代の雰囲気ということもあったと思っている。戦後すぐの生まれはベビーブームということで、とにかくどこにいっても人数が多かったから、仲間を押しのけないといい目ころべないということを親から「ゆきチャン、勉強しなきゃダメじゃない」とかいわれて、お尻を叩かれて教え込まれた。そういう競争に対する一種の目覚めは、戦後の昭和という時代が持っていた特質だったと思う。

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