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小説 『岬にて〜くちづけ〜』

八月の日の光が、この小さな入り江、めぐりあいにふさわしい明るい海に満ちあふれ、膚に熱く、まぶしかった。満ち潮が置き忘れていった名も知れぬ海藻が、すえた海のにおいを漂わせて、茶色く乾涸らびていた。
やけ焦げたように熱い、砂浜の波打ち際、黒く濡れた砂づたいに磯に向けて、二人は歩いた。二人とも、日に焼けて、麦わら帽子がよく似合った。彼らは、波の音ではっきりとは聞き取れぬ言葉を交わし、うれしそうに笑った。白く泡だった波が打ちよせ、もつれて続く四つの足跡を消していった。

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