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小説 『オイディプス王の町』
削られ、きめ細かく磨き上げられた、なめらかな大理石の表面が、雨風に晒されて、ざらざらになってしまうまで、どれほどの年月が必要なのだろうか。一千年、二千年……。
テバイの街中にある博物館、客はわたしたちのほかにいなかった。
ガラスの陳列棚に青く錆を吹いた青銅の髪飾りや、剣、それに黄金の腕輪、兵士のトルソ、陶器、石版に刻まれた男のレリーフ、部屋の中央に石を組み立てて作った古代の棺、なかにネズミ色の人骨がほとんど形をとどめないほどに崩れ果てていた。
テバイ、ギリシヤ悲劇の最高傑作といわれる『オイディプス王』。
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