エピタフ

 孤独は、過去の影の上に立つ。今、ひとりでいることはそんなに問題じゃない。問題なのは、過去にひとりではなかったという事実だ。あなたが過去に、何を知っているかによって、あなたは欠乏し、欲望することになる。あなたがもし、親に愛されたなら、それが欠けた瞬間に、その欲望が可視化される。あなたがもし、恋人と愛し合うことを知っていたなら、恋人の不在は愛の不在になる。

 孤独は、過去の影の上に立つ。あなたが今孤独であると感じるなら、あなたをひとりにしたものは何か。不在と分断の中から湧き上がる、一つの望みを見極めること。みずからの過去を、絶えず見つめ返しながら、他人の物語ではなく、自分を生きること。孤独を駆逐するのでなく、孤独を見据えていること。(孤独を飼いならそうとするのも、飼い慣らされてもいけない。)

 現在を織りなす糸を解きほぐしたところにあるのは紛れもない過去のすがた。そこには充足があり、野心があり、閉塞がある。

 忘れてはならない。それらは変容しながらも、途切れることなく繋がっているのだ。現在へと。