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都市の速度

もはや 確からしいものはない午後二時
雨の反響だけが輪郭を探り
柘榴の光が落ちる
人間も踏切もしばしの午睡
歩道橋に雲を見下ろす
都市 アスファルトのゆれる水
そのとき風は有楽町駅を吹きすぎて
浜松町方面快速の速度を後押しする
山紫陽花の白い花弁から
東京の六畳の部屋のペン先の滲みから
台風の影響で運転を見合わせる車内から
鬱蒼とした記憶の森の
名も知らぬ植物たちの犇く
その暗みから
素晴らしい速度で目覚めたのは私
亜光速でモーニング・ルーティンを済ませては
「本日はどうぞよろしくお願いいたしま」
 と言いながら死ぬ。