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[詩] 罪状


クリスマスになったら死のうか、
恋人がうなずいて
終りの練習がはじまる
得るものなんてなくて失ってゆくものの重さが日々のくりかえしに荷重してもう「耐える」なんて毎日使う言葉だし特段嬉しくも楽しくもなく寂しいと殺してやると悲しいが音もせず積もってゆく満たされないとかじゃない誰が悪いとかじゃない懶惰と飽食が押し寄せて押し寄せてその矛先が部屋をいっぱいにしてどこからも声感情のノイズのようなけれども意味のあるようなそんな声が
「いいよぉ」
思わずふりかえり
きみのみどりの眼を見る
それはエメラルドと大阪湾のあいだのような
ぼくはその眼球にキスをしたいと思った
ふたつのスクリーンは
瞬間と追憶を映写して
正論と我儘を湛えて
切断された
すべては凪いだ
眼はとじられた。

彼女はそれ以来彫像であり
それはまさしくそのかたちへ
記念碑であった
そしてほかならぬ
わたしへの
罪状であった。