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ある地名の風景

線路の向こう、北千束の赤い風     senzoku-2

北千束の跨線橋から大井町方面をながめていると
爽やかな日差しの中、
大井町線の赤い電車が風のごとく通り過ぎました。

日蓮上人が足を洗ったから
洗足池と呼ばれるようになった。

さすがにこれは文字から生まれた付会でしょうが、
千束についてもしかり。
昔は千束も収穫できる稲田があったから・・

元々は一つの地名で同じ意味だったはずですが、
いつの時代にか文字が書き換わると、
それぞれに別な伝説が生まれます。

文字が持つ力は大きいですね。
地名の面白いところでもあります。

このあたり、中世には”千束郷”だったといいます。
今でいう郡みたいなものでしょうか。

現在の目黒区と大田区にまたがった範囲だったとすると
両区に”せんぞく”が生き残っているわけです。

もその意味するところは何でしょう。

中世に郷名になっているということは
もっと古い時代に生まれたのかもしれません。

千人の僧侶を集めて行う供養を”千僧供養”といい、
これが変わったもの・・こんな説もあります。

まぁ、確かにここの近くには池上本門寺、
台東区の千束近くには浅草寺があります。

うーん、でもちょっとキビシイですよね(笑)
これも言葉から生まれた付会でしょうね。

宗教の関係でいうなら、
一番もっともらしいのが雨乞い行事に関連するという説です。

以前、千駄木の地名で触れましたが、
日照りが続き、雨が降らない年に
昔は小高い場所を選んで雨乞いが行われました。

これは、千把(大量)もの萱や柴を集めて燃やす行事です。
日本各地に関係した地名があり、
都内の千駄木や千駄ヶ谷もそうだと言われています。

この”千把”や”千駄”と”千束”は同じだというわけです。

このあたりにかつて
雨乞いの歴史があったかどうかわかりませんが、
足を洗ったとか、千人のお坊さんとか
これらよりはそれらしいと思うのです(笑)

本当だとしたら地形に限らず、
こうした民俗的な行事も隠れている日本の地名。
やはり面白いですね。

(大田区北千束)

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