さよなら孤独な教祖様

初めて彼女を感じた時悔しかった私もこう歌いたかった、私もこう伝えたかった。悔しい悔しい私だってずっとこう思ってたのに。その日から彼女が私の神様になった。大嫌いで大好きで嫉妬もできないくらいの圧倒的な敗北を教えてくれた彼女だけが私の教祖になった。
彼女の歌うことが全てだ。彼女の書く詩が全てだ。彼女は私だった。私は彼女だった。
私の中に貴方がいて、貴方の中に私がいるようだった。アルコールを含んだ口に深いキスをするように彼女と私は頭がくらくらして何も考えられなくなるくらい溶け合ったのに触れ合ったのに満たしあったのに世界に2人だけで2人だけで孤独を感じていたのに。嘘つき、嘘つき、嘘つき。
憎むほど噛みちぎってしまいたいほど殺しておけばよかったと思うほど奇跡だと思った。運命だと思った。独占欲なんてちっぽけな感情ひとつもなかった。鏡に映る1番醜い私が貴方だった。
でも違った。私よりも深い地獄を見た貴方に私は尻込みしてしまって、結局貴方を地獄にひとりぼっちにしてしまった。一緒に堕ちていって受け止めあったのに。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。でも神様、でも教祖様、こんなはずじゃなかった。どうかどうか二度とその唇が自身を消費するために使われませんように。歌われませんように。来世ではもっと深くまで溶け合えますように。地獄の果てでケタケタと笑いどこまでも深くその短い腕で抱きしめてくれた貴方が大好きでした。さようなら、私の教祖様。もう二度と貴方の孤独が私を救いませんように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?