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『平穏に不協和音が』公演直前!大河原準介インタビュー

いよいよ3月29日からLondonPANDA『平穏に不協和音が』東京・仙台2都市公演が始まります。3年ぶりの東京本公演、初の2人芝居、2都市公演となる本作について、LondonPANDA主宰・大河原準介が語ります。


──今作は”離婚ラブストーリー”ということですが、どのように着想されたんでしょうか?

大河原:もともと2人芝居を作りたいと思っていて。小劇場ってどうしてもキャストが多いほうがチケットが売れたりとかあるんですが、細部までとことん細かく詰め寄っていく芝居を創ってみたかった。昔から一緒にやりたいと思っている俳優2人が同じ時期にスケジュールが取れたので、この2人でやりたいと思って。

 離婚ラブストーリーというのは最終的にたどり着いた場所で、最初は自死について書こうと思っていたんです。人の死についてよく考える経験がこれまでいろいろあって、でその自死って何による自死なのか、死にたいって口癖のように言う人はいても本当に死ぬ人の確率は低いわけで、その一歩先、その最後のひと押しってなんなんだろうという問いがずっとあって。考えたときに、日本人の責任感なのかなと思ったことがあったんですよね。何かを言われて、ちゃんとしなければならないと強く思ってしまう人ほど、会社をクビになったり、大きな過ちを犯してしまったり、事故に巡り合ってしまったりという大きなショックに対して弱いのかなと思って。自分の人生を背負い過ぎてる人、まじめな人ほどそこに弱いんじゃないのかなと。

 そこを軸に夫婦の話をといったときに、とある事件をずっと隠していた夫と、それに気付いていたけれどずっと言い出せなかった妻、という2人芝居は書いてみたいと思い、今回作品にしました。

──妻は気付いていたんですか?

大河原:何かを隠していることは気付いていたけども、それがなんなのかは分からない。それに気付いたときに、2人が何か大きな出来事を共有したときに、価値観がどう変わるのか。それをシンプルな構造で、片方は隠してる、片方はそれを暴きたいというのを、どれだけ楽しく興味深く描けるだろうかと。

──俳優は昔からよく知る2人ということですが、稽古ではどのように創っているんでしょうか?

大河原:違うフィールドで演劇をやってきているとは思うんですが、信頼があるからなのか、感覚的なダメ出しと、3人の経験を総動員しての情報の共有がすごく多くなっていると思います。絶対にほかの現場ではやらないことを、この3人だからできているというのはある意味貴重で、3人とも納得するクオリティというところをめざせてるという気はします。いいものって、面白いってこういうことだよねというのは3人ともほぼほぼ共通してると思うので。

 俳優たちが、2人芝居だからかまったく同じ感覚に陥ることがあるというのは、見ていてもおもしろいですね。稽古を止めたくなるぐらいつらいとか、すっごく今泣けるとか、バイオリズムが相互作用してしかつくれない芝居。芝居って作用し合う、リアクションし合ってしかつくれないっていうのは僕はいつも言うんですが。

舞台の入口」でさまざまな演出家や俳優、作家の方からもらったことは生きていますね。イメージをどう伝えるかとか、あとはその場の空気感というか、稽古場をどういうふうにつくっていくかだったり。自分の中に落とし込んで、それをどう自分の現場で使おうかというのはあります。

 変わったのは、俳優に対しての信頼が今までより強くなったという気はします。いろんな演劇論、演出論を見聞きした中で、俳優という職業の人、俳優という生き物に対して任せられる余裕みたいなものができた。日澤雄介さん(劇団チョコレートケーキ主宰/演出家)のWSで、相手を完全に肯定した上での提案っていう、美しい言葉のダメ出しを見たことにも影響されていると思うし。サイモン=ゴドウィンさんのWSのときもそう。サイモンのダメ出しは、基本的にはグッドから始まる。「オーケー、それは分かる。君のこれはすごくいいチャレンジだね」って。でもこうしたかったらもっとこうしたほうがいいんじゃない? こうだとしたらこうじゃない? とか。やっぱりやっている側は良かったと言われると気持ちいいし、俳優に対してまずリスペクト、そして愛情を持つというのは、去年おととしに比べれば強くなってきています。俳優から生まれてくるものがどんなものでも面白がれる、選択肢として1つ加えられるというか。前は面白いものだけをたぶんキャッチしていて、自分の選択肢が絶対だった。今さらながら少し大人になったのかなと。

──3年ぶりの東京本公演ですが?

大河原:思ったより感慨深くないです(笑)。去年若手演出家コンクールで「劇」小劇場に行かせてもらったのもあるし、あとは楽園での芝居を観に行ったりもしているし。東京時代の友人に会ったりすると面白がられたりはして、みんなからするとご無沙汰なんだなと思うけど、僕の中では全然ご無沙汰感がない。むしろ仙台に移転してから活動が活発化してそこから知り合った人が多いので。演出者協会に入ったのも仙台に移転してからだし。

──逆に仙台での上演についてはいかがですか?

大河原:そっちのほうが特別感がありますね。浦川と中村の2人芝居を仙台のパトナシアターというすごくいい劇場でやらせてもらうことのほうが。

──2人の俳優の魅力を教えてください。

大河原: 浦川くんはやっぱりコメディの劇団にいるだけあって、台本の中で笑わせられそうなところを探していく人なんですよね。それをどうやるかだったりとか、あと普通に読んでたら笑えないけどこれはこうやったら笑わせられるんじゃないかとか、お客さんの笑い声っていうものを自分のエネルギーにするタイプだって自分でも言ってるんですけど。もちろん笑いが一切ないお芝居もうまいけど、笑いがあるお芝居になると輝きが増すと思うんですね。そういう意味では今回やっぱり笑いを作れるシーンもふんだんに盛り込んでいるんで、浦川くんはいつも通り輝いてくれるんだろうと思っています。

 中村さんに関してはもう、観ればすぐに魅力が伝わる女優さんだと思うのでとにかく観てくださいと。彼女も『ピーターパン』からはじまり大きな舞台も小劇場も、舞台経験も人生経験もその全てを俳優としての栄養にしている。本当にそれらを全部芝居に費やすほど、お芝居が大好きな人だと思うので、やっぱり観ていて飽きないですよね。ずっと目が行っちゃう、惹きつけられます。

 あとは2人とも努力家ですね。絶対にステップアップしていく俳優たちだと思います。あとは、この2人が共演するというのはロンドンパンダだけだと思うので、存分に楽しんでもらいたいですね。

──2人芝居なので、2人を余すことなく見ることができますね。

大河原:2人芝居って面白いなって、つくっていて思います。どこまでいっても2人で、3人目が出てくることはないので、お客さん自身がちょっとラフにいられるところもあると思う。ストーリーばかりにならずに俳優をじっくり見るような時間を持てたり。1人当たりを見てもらえる時間が多いということだけでなく、俳優の魅力が伝わるのではと思っています。

──今回、海外での上演を目指して英語字幕を付けるということですが?

大河原:ロンドンでたくさんいい芝居を観たときに、自分が創るものがこの土地で伝わるんだろうかという気持ちが生まれたんですよね。日本人とかイギリス人とかそういう人種、国籍、バックグラウンド関係なく、もっと人間のコアな部分を描きたいと思ってふだんからつくっているところがあるので。ロンドンでいろんな国から来た人たちと友だちになったけど、笑う感覚は一緒なんだ、世界共通なんだとは思った。笑わせるためのロジック、計算式っていうのはだいたい一緒。ロンドンの場合は世界中から人が集まっているから、文化もみんなが違うのが当たり前っていう生活だった。ましてや夫婦のあり方は国ごとではなくてその夫婦ごとだと思うし、そのまま持っていっても楽しんでもらえるんじゃないかと思っています。

『平穏に不協和音が』                                                                                 東京公演 2018.3/29(木)-4/1(日)小劇場 楽園           仙台公演 2018.4/4(水)-4/6(金)宮城野区文化センター     ◉公演情報・チケットはこちら

           

    

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