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公園で億万長者(仮)としゃべる


すべり台のある公園

末っ子が通う保育園の目の前に、小さな公園がある。

小さな二つのすべり台がくっついたような遊具が一つだけあって。真ん中の大きめの階段をのぼる。すべり台の一つは砂場にまっすぐすべり降りるもので、その反対側は、らせん状のすべり台になっている。二つのすべり台の間には、段差があったり、通路になっている。

保育園からの帰りに、この公園に寄るのが日課になっていて。同じような時間帯に帰るお友達2~3人と一緒に遊ぶのが楽しいらしい。保育園の門から出たら、待ちきれず公園に向かって走り出す。

公園にはベンチが3つあって。子どもがかばんを置いたり、座って休憩したりする。

おじいさんと犬

先日、いつものように公園に寄ったら、小さな犬を連れたおじいさんがベンチに座っていた。

うちの末っ子ともう一人、同じ保育園の子が犬をさわらせてもらっていた。その子は、だいぶ前から公園に居たようで、お母さんはもう帰りたそうに自転車のそばにいる。少しおしゃべりして満足したのか、おじいさんに「お母さん待ってるで」と言われて帰っていった。

うちの末っ子、最近、やたら犬を飼いたいと言っている。おじいさんに犬さんをさわらせてもらって、すごくうれしそう。小型犬で短い毛がクルクルっとなっていて可愛い。

おじいさんは80歳ぐらいかな。たまに犬の散歩をしているのを、お見かけするような気もする。

不思議な会話

末っ子が飽きもせず、ずっと犬さんをさわっている。かわいくて仕方がないみたい。というか、こんなにじっくり犬をさわらせてもらったのは、初めてかもしれない。

おもむろに、おじいさんが話し出す。
昔は3匹飼ってたんやけど、1匹になってしまったわー。よくしつけされてるから、いくらさわっても大丈夫やで。おじいさん、しんどいなーと思って寝てたら、大丈夫かいなーって顔をなめてくれんねん。

私は犬を飼ったことがないので、ちょっとドキドキするけど、私もさわらせてもらう。めっちゃ優しい犬さんですねー、とか言いながら。

何かおじいさんのスイッチが入った瞬間があったかもしれない。

「この犬、テレビに何回も出てるんやでー。」
と言われたので、どういうことかと思って。「ドラマとかに出てるんですか?」と聞いたら、どうも、そういうことではないらしい。はっきりとは言ってくれないけど。

「この犬、この市内には1匹しかおらんねんでー。昔は3匹やったけど。」
数えれるということは、きっと血統書付きの犬さんだな、と思った。

「へぇーそうなんですねー!首輪にイギリスのマークがついてるのは、イギリスの犬さんなんですか?」
なんちゃらテリアだな!と思って聞いてみたけど、やっぱりおじいさんの期待する反応ではなかったらしく、ごにょごにょっと話が続かない。私としては、そうそう、なんちゃらテリアで~とかって話が続くかと、うっすら期待していた。

おじいさんが「ぼく、幼稚園か?何歳や?」って聞いた。でも、末っ子がはっきり返事しないので、私がかわりに「保育園の年中ですー」と答える。「おじいさん幼稚園持ってるわ。300人ぐらい子どもおるでー。」と言ったと思う。うん?話が見えない。お孫さんの話ではなくて??

そこで、末っ子が会話に入ってくる。
「ぼく、犬飼いたいねん。ママお仕事してるし、こんな犬さん買ってほしいわ。」とか言い出した。いやいや、こんな犬さん、めっちゃ高いやろ、と思って「いや、ママのお給料で買える犬さんじゃないと思うで」と言ってみた。はっきりとは言いづらく、私もごにょごにょ言ってたかも。

そしたら、末っ子はまぁいいやと思ったのか、いきなり「うち、金魚飼ってんねん。」と言い出した。「お祭りでいっぱい、もらって帰ってんけど、今、一匹やねん。この前、白い方が死んじゃってん。」とか言う。

いきなりやなー!と思ったけど、あえて何も言わず、見守る。ここまでも、別に会話続いてないし。3人がそれぞれ話してはいるけど、会話のラリーが続いてるわけではない。投げたボールはまっすぐには打ち返されず、また新たなボールが投げられる。
なんか不思議な会話。

億万長者か

そしたら、おじいさん「おじいさんなー、馬持ってるでー!」とか言い出した。ふぁー、出た。馬主や。と思ったけど、直接おじいさんにはコメントしがたく、末っ子に向かって「馬主さんやって。すごいなー」とトーン抑え気味に言う私。まぁ末っ子は馬主って言われてもわからんと思うけど。

案の定、会話に入ってこない末っ子。遊具で遊び出す。私も、もっとつっこんで話を聞きたい気もするけど、ちょっと、どうしたらいいかわからず、そっと末っ子に近寄る。

遊具から「おっちゃーん、どこに住んでんのー」とまた、おもむろに聞く末っ子。「おじいさんは、すぐそこに住んでるわー」とちゃんと返してくれるおじいさん。

「いっぱい家あるねんけどなー、仕事に近いし便利やから、ここらへんに住んでんねん。」
ははー、いろんなところにおうち持ってるんやな。東京と各地方の都市に家持ってたりするんかな。まぁ馬主さんやもんな。

また犬さんのところに戻ってくる末っ子。また、ちょっとさわらせてもらう。「じぃじとばぁばの家は、トイレとお風呂が一緒やねん。」と言った。さすがに、いきなりすぎるやろ、と思って「じぃじとばぁばがどこに住んでるか言わな、わからんと思うで」とそっと言ったら、「アメリカやねん!」と言った。(パパがアメリカ出身です。)

そのときは、また脈略のない話を持ち出したように思った。でも、今、ここに書いてて、ちゃんと話がつながってたんだな、と気づいた。私がおじいさんの話にびっくりして、あわあわ考えてるだけで、長男の中では全部話がつながっていってるんだな。ちゃんと家の話を続けているだけだ。

おじいさんはアメリカに反応した。「そんなん、おっちゃんはアメリカもイギリスも行ったことがあるに決まってるやろー。」
そうか。もちろんアメリカもイギリスも仕事で当たり前に行ってたんやな。ふむふむ。

「なんやかんや昭和37年からやってるわー。」話が見えないまま進む。とりあえず、だいぶ前やな、と思って「ママが生まれるより、もっと前からやってはるねんなぁ」と末っ子に言う。

ちょっと待てよー、もう60年ほどやってるって、かなり長い仕事やな。大きい会社かもな。家がいろんなところにあって、馬主さんかー。
この方ではないけど、そういう人の話を聞いたことがあるぞ。その人、いわゆる億万長者やぞ。住民税、いっぱい払ってくれるから、その人が住む自治体は潤うんだぞ。

とか、なんやかんや、私が考えてるのをわかっててか、わからないでか、ぽろっと、おじいさんが大企業の名前を口にした。

ふぁー!テレビでCMガンガンやってるし、CMに超有名人いっぱい使ってるし!!てか、グループ会社どんだけある!?という会社でした。

ちょっと、そのあたりから頭の中が忙しすぎて、びっくりしすぎて、興奮しすぎて、あんまり記憶がないんだけれども。

って、そんな人が、保育園の前の小さい公園のベンチで座ってるとか、なんかのマンガ!?
万が一困ってはるところを助けたら、次の日、職場で呼び出されて、あ、あのときのおじいさん!?みたいな展開になりそう。笑。いえ、私の職場はその会社とは全く関係ありませんけれども。

帰宅後

家に帰って、おじいさんの言った会社を検索する。はぁ、たしかに昭和37年創業ですね。はぁ、たしかに、あのおじいさんのもう少し若い頃の写真ですね。会長さん。

大興奮で夫と娘たちにおじいさんの話をする。面白すぎるやろ、マンガやろ。

長女に冷静につっこまれる。それ、おじいさん、絶対「すごいー!!!」って言ってほしかったやろ。

えぇ、まぁ、気づいていましたよ。でも、なんか私の本能が、すごーい!って言わせなかったのです。

また今度会えたら、どんなことを聞いてみようか。もしかしたら、私の質問には答えてもらえないかもしれないけど。子どもにはちゃんと答えてくれるし。ただ遊んでもらうだけでもいいけれど。

それにしても、会話がカオス過ぎて面白かった。

そんな身近でマンガみたいな!と思った出来事でした。
なんかよくわからないけど、わーーい!面白ーーい!!な出来事でした。

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