ケミカル入りのChemical の話(by METAFIVE)
METAFIVEの "Chemical" という曲を繰り返し聞いている内に生じた、ここが好き!な部分や、発見、そして少しの考察をまとめてみました。
独断と偏見満載の解釈とネタバレが沢山含まれるので、ご自身で紐解きたい方はお気をつけ下さい(‥;
また、METAFIVE(と言うかLEO今井さんが携わっている作品?)はアルバムの歌詞カードに全て対訳が付いているので、より詳細でストレートな内容を知りたい場合はそちらもご覧下さい!
0. おさらい
METAFIVE公式のYoutubeには、アルバムやシングルがアップロードされているのでアルバム購入前は大変お世話になりましたが、ハーフだけは何故かないのでStudio Live Versionを貼っておきます。原曲と比べて小山田さんの6弦ギター/ バリトンギター(Fender BassⅥ だそうです)のアレンジがより鮮明に聴こえたり、手元が映る度メンバーがどのパートを弾いているかなどが分かったりと新たな発見や気付きが多く、時たま不意に観たくなります。
1. イントロでの気付き
1.1 男性ボイスの意味
歌詞カードには載っていないセリフ部分。耳コピなので、正しくない部分があるかもしれませんが、この曲始まりで設定を入れて来ます。
冒頭さり気なくこの曲の主題を差し込んでくるクールさに痺れました。この先どんな内容が来るのかがイメージしやすくなり、解像度が上がっていきます。
1.2 流水音?
一方でボイスの後ろでは液体の流れる様な音が鳴っていますが、先程のボイス内容と照らし合わせて考察するに、体内の水、もしくは血液を模しているのではないかと個人的には思っています。感覚的に水かなと思いつつも、血液の粘度が約3.00~4.00 [cP (mPa・s)] (37℃)、比較し易いように料理などで用いられるウスターソースも調べたところ、常温で5.00~10.0 [cP]であるため(*1)、血液の線も有り得そうだなと…。因みに水の粘度は0.719 [cP](35℃) なので、上記の両者と比べると低めの粘性を持っています。
Chemicalの内容的には、血液を表現したいもしくは体内の約50~60%が水分量で占めている象徴としての水なのか何なのか。あるいは特に深い意味はなく、面白そうだから、でサンプル音源を入れただけかもしれませんが、曲始めの掴みとしては抜群の効果を持っているなと感じました。
2. Aメロの秘密
音楽理論等に詳しくないためフィーリングで書きますが、全体の構成を[AB A'B' 間奏 A'B' アウトロ] だとすると(書いてから気付いたけどサビない曲…?)、Chemicalを聴いててまずやべぇと思った点が、1、2番のAメロ(AとA')でした。歌詞を見ながらの方が逆に気付かなかったのですが、フレーズを置き換えると違う意味を持つ文字列に。
意味の噛み合わせや訳の捉え方、どこで区切るかによって1番の化学式は変わって来ます(*2)が、一先ず上記の解釈で詳細を調べました。
1番のAメロで出てくる化学式です。ODはOver Dose、過剰摂取の事で、薬などを大量に接種することを意味しますが、その後の歌詞にも "朦朧" や "昏睡状態" などのワードが続きます。
2番のAメロでの化学式は、シンプルで分かり易い(だけかも)ので、恐らくこれかなと思います。その後の歌詞も意味深な点が多く、勝手にドキドキしてしまいました。
ここで面白いのは、何と言っても化学式が隠されている点でしょうか。抽象的な言葉の連なりの中に、急に具体性を持った化学物質が浮かび上がって来るインパクトと、その置き換えられた言葉にも全体を通じて確立した意味として表現が成立する器用さに驚愕しました。対訳と照らし合わせながら読むと意訳以上の内容が記載されているので面白いです。
もう一つは、Hを"age"と"Itch"の2つの異なる単語で対応させている点。Cは共通してSeeで表現しているものの、前者の言葉選びにセンスを感じて流石LEOさんと小山田さんだな~~。上記の内容と少し重複しますが、1番2番とで化学式が違い、自ずとケミカルの性質が異なるにも関わらず、空気感や臨場感がヒシヒシと伝わってくる単語のチョイスになっているのがこのChemicalの魅力とも言えるんじゃないでしょうかね…。
3. ちょっと歌詞考察
1番のAメロでは、精神的苦痛から逃れたい"僕"は、薬をODをして何も考えられない朦朧とした状態になる。その後(Bメロ)、投与した薬の効能を期待すべく、"蒸気発電のタービンになってほしい"、"僕自身の中に入って"と思う様が綴られる。(steamなのは体内メカニズムに1番近かったから?)
2番では拍車をかけるように、ドラッグを摂取している様な描写が。いや分からんけど、この辺 "あんまり考えたくないというか言語化しない方がいいのでは…?" という逃避の選択肢を選びそうになってるのもこの曲のせい…?(怖)
"O2"→酸素不足、"pipes of peace"→平和のパイプを吹かせて、"so that I can release"→発散できるために、の部分も合わせると、アブナイ事をしているんじゃないかなんて連想してしまいます。想像力が無さ過ぎる。
アウトロ前のフレーズでは、攻めた表現になっているのも刺さります。"Oooh, I gotta get it out somehow" の "Oooh" 部分、実際に吐き出しながら歌われている点にLEOさんの遊び心と表現力の高さが垣間見えます。Flavourがイギリス英語なのもとても好きポイントです。
尖った直接的な言葉選びだと感じる一方で、やはり比喩が前提としてあって構築されたChemicaの世界観なのではないかと感じています。何かから逃避したり縋る様子から二面性を感じたし、現実世界と自分の夢や、性格など…色んなテーマの二面性を含んでいるのではないかとボヤボヤと思い耽っていました。この辺の考察はキーワードしか出てこずまだまだ言語化出来ずにいるので、持論をお持ちの方がいらっしゃいましたらご教授頂けましたら幸いです。
4. 曲調と内容のギャップ
個人的に"曲部分だけ"で聴くと、明るい曲調(こういうのコードの話とかになってくるのかな)や、2番のAメロでは裏拍を強調したアレンジになっているなど、音的に面白い構成で組み上がっている印象がありました。しかし、歌詞も加味すると案外低空飛行をしているイメージに変わったのがとても興味深かったです。
5. METAFIVEの沼は深い
METAFIVEは、メンバー誰かから出されたアイディアを元に、オンライン上で順番に回しながら足し引きをして曲を作っていくグループなので、"アルバム"というよりかは"個"の世界観が自分の中ではかなり先行してしまっていました。そのため今回のChemical考察中に湧いてきた、"アルバム全体を通じて主軸となるテーマがあるのか。またそれは何なのか。"という疑問を元に、METAFIVEのアルバム全部を取り上げ、それを次のnoteにしてみようかなと思っています。
ここまで読んで下さってありがとうございます。やっぱりMETAFIVEの世界は縦にも横にも奥にも果てしなく広いな~。
○注釈
*1…温度が低ければ低いほど粘度は高くなる。
*2…C18H21N3Oではなく、C18H21NO3な可能性もあります。いずれにせよ、何かしらの治療薬として用いられている事実に注目したい。因みにC18H21NO3はコデインと呼ばれる咳止めなどに含有される化学物質。ドラストなどの市販薬(咳止め薬など)を大量に買い、それをODとして使用する事があるというのを聞いたことがあります。
○引用
・サムネ画像はMETAFIVE Chemical MVよりお借りしました。
・©AS ONE Corporation. , Lab BRAINS, https://lab-brains.as-1.co.jp/document/academy/2021/07/1527/
・ACE DIKEN, 粘度の目安・接着剤の種類, http://www.ace-giken.co.jp/photo/NENDO_M.pdf
・©SUMICO LUBRICANT CO., LTD, 【用語解説】動粘度、粘度指数/オイルについて, https://www.sumico.co.jp/qa/qa_o_vi_j.html
・Wikipedia, テトラヒドロカンナビノール, https://onl.tw/LagiRz7
・Wikipedia, ヘモレオジー, https://onl.tw/4fh2ifk
・Wikipedia, C18H21N3O, https://onl.tw/akSuZeV
・Wikipedia, Dibenzepin, https://onl.tw/Qac4bW1
・PubChem, National Liberary of Medicine, Dibenzepin, https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Dibenzepin
・Wikipedia, Tricyclic antidepressant, https://onl.tw/eTTQSXE
・Wikipedia, ベンゾジアゼピン, https://onl.tw/n3iqBKg
・Wikipedia, ジベンザゼピン, https://onl.tw/cfT5ZfS
・おくすり110番, コデインリン酸塩水和物, http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se81/se8115001.html