この歳で

「この歳で父親は何をしていたのだろうか」
「この歳で母親は何をしていたのだろうか」
そんなことを考えるようになった、ということは、きっとろきちゃんは焦っているのだろう。うん。焦っている。そりゃ焦る。

この前、妹に
「いつまで親のスネをかじっているんだ」
と何度も言われた。何も言い返せなかった。妹にしてみれば、半分ジョーク、半分本気なんだろ。学年でいえば2個下の妹とは、ろきちゃんが浪人を経験したせいで、年子になってしまった。そんな妹は今、大学3年生として、就活に望む時期になった。何事も無ければ、来年の今頃には春からお世話になる会社が決まっており、残りの学生生活を謳歌しているだろう。18年前、入園式で新入園生として同級生たちと列をなしていた妹は、知らない人の中に1人なのが不安だったのだろう。周りをキョロキョロし出して、兄であるろきちゃんを見つけ、トコトコトコと歩いてきて、入園式をろきちゃんの隣で過ごしていた、あの妹に、まさか
「いつまで親のスネをかじっているんだ」
と言われるとは。結局、ろきちゃんの方が長く、学生として過ごすことになるなんて思っていなかった。

そして、何も言い返せぬのじゃ。妹に。一応学生だから、学生にしてはまともな仕送り額だろうし、パチンコとかタバコとか無駄遣いしてる訳でもないし、頭ごなしに批判を受けることではないとは思っているのだが。そりゃもちろん、感謝してますけど。

でもまさか、23にして芸人をしていて、春から東大の大学院に通うことになっているとは。東大の大学院といえど、文系でしかも経済史を学んでるとなると、玉の輿を狙う女性すら寄ってこない。しかも、悲しい哉。入学前にして、研究を行うことのハードルの高さ、今活躍している研究者の皆様の凄さを目の当たりにして四面楚歌だ。圧倒されている。芸人でなくとも、修士の先を研究に注ぎ込もうと思えないほどには打ちのめされている。自分が優秀だと思ったことなかったし、要領が良くないと思っていたから、人の何倍も、量だけはこなしてきた。でもそんなもんはここまで来たら限界に直面する。そんなレベルじゃない。軽く文章を読んでその内容を簡単に理解できる、なんてことは全くできない。ゆっくりゆっくり読んでやっと5割くらい理解出る。だし、読んでも身に付かない。あぉこんなんだったなぁ。

「この歳で父親は何をしていたのだろうか」
「この歳で母親は何をしていたのだろうか」
結婚してないにしても、それなりの苦労をしていたとしても、今のろきちゃんほどに精神も幼かったのだろうか。少なくとも、親からの仕送りを受け取っていた訳はなかろう。その点だけを考慮しても、今のろきちゃんの社会的人間としてのなってなさに、深い深い、もはや絶望とも取ることができるほどのため息が漏れそうになる。

そんなろきちゃん、贅沢と思って外食に行こうと思うが、優柔不断で散々迷った挙句、その店はあんま美味しくなくて泣きそうになる。でも、これだけは大事にしたい。今時期、瑛人の「香水」をユーセンで流してるお店は、どんだけ美味しくても、もう絶対に行かない。この歳で見つけたひとつの真実だ。

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